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GMO代表「最速で在宅勤務を始めても、オフィス縮小は急がない理由」

プレジデントオンライン / 2020年9月18日 11時15分

GMOインターネット 会長兼社長・グループ代表 熊谷正寿氏

■オフィスの縮小、今はしません

GMOインターネットグループでは、新型コロナウイルスの感染拡大に備え、おそらく国内上場企業としては最も早く大規模なリモートワークを開始しました。2020年1月27日から本社がある東京・渋谷などに勤務する約4000人を在宅勤務とし、緊急事態宣言が解除されるまでその体制を維持。現在も週に1日から3日、グループ推奨として週2日を在宅勤務とする働き方を継続しています。ただし、これはあくまで現段階での施策。最終的な勤務体制や行動様式をどうするかは、コロナが収束するまで決めない。それが私の方針です。

なぜなら、商売には相手がいるからです。お客様もいれば競合もいて、相手の動きによって戦い方を変えなくてはいけないのに、自分たちの都合だけで戦略を決めるわけにはいきません。ビジネスは戦(いくさ)ですから。

今回リモートワークを経験した企業の中には、「100%在宅勤務にして、オフィスは解約する」とか「地方に移転する」といった意思決定をするケースが出てきていますが、私は今決めるべき話ではないと思っています。現時点で極端なアクションを起こしてしまうと、アフターコロナの動きに対応できず、取り返しがつかなくなる可能性があるからです。

現在のオフィスについても、縮小は考えていません。ただし週5日のうち2日が在宅勤務になれば、出勤する人数は4割減になる。弊社は毎年人員を増やしてきましたが、これから4割増員するまでオフィスの増床はいらない計算になる。本来なら支払うはずだったオフィス代、すなわち「未来家賃」の削減につながるわけです。

削減した未来家賃は、私たちがパートナーと呼ぶ弊社の従業員と株主の皆様に、それぞれ50%ずつ還元する方針です。現在、渋谷地区のオフィスにかかる1カ月の家賃は約3億円。その4割が浮くので、毎月6000万円がパートナーに在宅手当として支給され、残りの6000万円が利益計上されることになります。

■在宅勤務に移行してからも混乱はありません

リモートワークは社内のコミュニケーションやマネジメントが難しいという声がよく聞かれますが、GMOでは在宅勤務に移行してからも混乱はありませんでした。仕事のパフォーマンスにも影響はなく、フルリモート体制だった4カ月間の業績は落ちるどころか、むしろ上がったくらいです。

会議の冒頭で目を合わせて挨拶。そして、目的を唱和します

そもそも経営者である私自身、以前からリモートワークを最大限に使ってきました。24時間を1分1秒単位で有効活用するには、本当に必要なときだけ出社するスタイルが合理的だからです。おそらく日本の上場企業経営者で一番多くリモートワークを使っているので、私は社内でも「画面の中の人」だと思われています(笑)。

なぜGMOはリモートワークでも成果を出せるかといえば、過去25年間で蓄えてきた「コミュニケーションの貯金」と「組織の習慣」があるからです。

弊社では、会社のヴィジョンや経営マインド、組織運営のノウハウや心構えなどをまとめた「GMOイズム」と題した冊子を作り、パートナー全員と日頃から共有しています。ですから経営陣やマネジメントがいちいち事細かに指示しなくても、個人が別々の場所で働きながら1つの組織としてまとまって動くことが可能です。

加えて、組織の仕事を円滑に回すための習慣も定着しています。例えば私たちは、期限管理の習慣を徹底しています。仕事の締め切りを伝える際、多くの会社では「今週中」や「今月中」といった言い方をするでしょう。しかしGMOでは、「金曜日の17時30分まで」などと「何時何分」の単位まで明確に設定します。

「今週中」と言われると、人によっては「金曜日の深夜0時まで」と解釈するかもしれません。すると夕方までのつもりで依頼した上司は、イライラしながら何時間も待つことになる。リモートでは部下の顔が見えないので、なおさら精神的なストレスは増すはずです。もちろん仕事の進行も、その分だけ遅くなる。期限管理の習慣が根付いている組織とそうでない組織では、マネジメントの質や仕事のスピードで大きな差がつきます。

■宗教に学んだ百年企業の条件

コミュニケーションについても、様々な習慣をつくっています。オンラインの会議でも、まずはお互いの目を見て挨拶する。各会議の目的はスローガン化されているので、それを全員で唱和してからスタートする。会議中は画面にアジェンダを表示しながら進行し、終了したら即座に内容を議事録で共有する。この一連の流れが習慣化されています。

ちなみに、社内の会議はすべて定例です。何かあるたびに会議を設定し、出席者のスケジュールを調整する手間と時間が発生するのを防ぐためです。その代わり、会議の頻度を高くすることでコミュニケーションの密度を高めています。「毎日15分」「週3回30分ずつ」といった短い会議をこまめに行うのがGMOのスタイルです。

リモートワークの成否は、こうした習慣が組織に浸透しているかで決まります。世間ではどのチャットツールが便利かといった議論になりがちですが、ツールの問題ではないのです。

私は20代の頃から、「どうすれば100年単位で続く会社をつくれるか」を考え続けてきました。日本では創業から5年で約7割の会社が廃業し、10年続く会社は全体の6.3%程度、20年続く会社はわずか0.3%。

一方で、2000年前から続くものもある。それは宗教です。私はクリスチャンなので、長く続く理由を考えるうちに、宗教組織には5つの共通点があることに気づきました。定期的に同じ場所に集まること。聖書や聖歌など同じものを読み、歌うこと。クロスや数珠など、同じものを身につけること。十字を切るなどの同じポーズをすること。神話があること。こうした外形的要素があるから、人々の心が1つになり、宗教が長く続くのだろう。そう考えて、自分の会社にもこれらの要素をインプットしました。

先ほど紹介した「GMOイズム」はいわば弊社における聖典ですし、会議のスローガンを全員で読み上げたり、定例会議で頻繁に集まったりするのも、宗教の外形的要素に倣っています。

組織の習慣とコミュニケーションの貯金があれば、リモートワークは性善説で運用できます。もし自社のリモートワークがうまくいっていないなら、まずは良い習慣づくりから始めてはいかがでしょうか。

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熊谷 正寿(くまがい・まさとし)
GMOインターネット 会長兼社長・グループ代表
1991年、前身となるボイスメディアを設立。95年インターネット事業を開始。99年、JASDAQ上場(独立系インターネットベンチャーとして国内初)。現在、上場企業9社を含むグループ114社、社員約6000人を率いる。

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(GMOインターネット 会長兼社長・グループ代表 熊谷 正寿 構成=塚田有香 撮影=門間新弥)

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