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リモート営業の第一人者! ジャパネット髙田「画面越しに売る奥義を教えます」

プレジデントオンライン / 2020年9月23日 9時15分

ジャパネットたかた創業者 髙田 明氏

■今日は紫陽花を飾りました

ジャパネットたかたは初め、東京や福岡のスタジオを借りてテレビショッピングの収録をしていましたが、スピードを重視しようと長崎県佐世保市の本社にスタジオをつくりました。その結果、出演するタレントさんを長崎までお呼びできないので、僕が1人でMCをやるしかない。そこで口下手ながら、伝えるための試行錯誤を続けて何とかやってきました。多いときには1時間で17商品を紹介したこともあります。

この春は僕も一気にオンライン会議が増えました。飛行機や新幹線に乗ることは控えていますから、外の方との打ち合わせやこうした取材も、すべてオンラインでお願いしている状況です。

ここはオフィスの会議室ですが、もとはただの白い壁でね。背景が白一色だと、僕の顔が暗く映ってしまって表情が伝わりにくい。全体が明るく映るようタペストリーで背景を演出したり、季節の花を飾ったりして、雰囲気を変えてみました。今日は紫陽花を飾っています。

使うカメラも試行錯誤です。最初はノートPCに内蔵されているカメラをそのまま使っていましたが、画質があまりよくなかった。それで外付けのカメラにしたり、iPhone 11 Proを使って会議をしてみたり。でもスマホは画面が小さく相手の表情などがわかりづらいので、いまはカメラのスペックが高いノートPCに買い換えました。

このように最初は設備やハード面で準備に手間取りましたが、オンライン会議そのものには100%というくらい違和感はなかったですよ。僕はラジオやテレビもやりましたが、メディアが違っても、伝えるときに大事なことは変わらない。

人に伝えるときに大切なのは、メディアの向こう側にどんな人がいるのかを想像してわかりやすく伝えることです。ラジオショッピングは商品が見えません。

例えば、目がご不自由な方は日常どうされているでしょうか。心の目で見ていらっしゃる。そう思えば、商品を想像できるよう、自然に伝え方を工夫しますよね。

■メッセージは、相手が受け取ってこそ「伝わる」

要は、自分の伝えたいことだけを「伝える」のではダメ。メッセージは、相手が受け取ってこそ「伝わる」のです。これはコミュニケーションの基本で、どんなツールを使っても同じです。そのことがわかっていれば、急にオンライン会議になっても動じることはないはずです。

残念ながら、日本人はコロナ禍の前からコミュニケーションが苦手なように思います。国会の審議や記者会見などを見ても、原稿を読んでいるような言葉はいくら聞いても心に響かないときがありますね。自分の言葉で話すには、自分は「何を」伝えたいのか、「なぜ」そのことを伝えたいのかをはっきりさせることが重要です。

テレビショッピングでも、自分が伝えたい商品を勉強し熟知していないと、いくらトークのテクニックがあっても相手には響きません。逆に言うと、「この商品はこういう理由でみなさんの役に立つ」と明確に示せるなら、表現が多少うまくなくても注文をいただけます。

本気度も重要です。いざ話した後、向こうから質問があって「そこはわかりません」と自分の考えを話せないようでは本気度が疑われます。「なぜこれを伝えるのか」というミッションと、「本気でこれを伝えたい」というパッション。この2つがあってこそ、言葉が自分のものになるのだと思います。

ミッションとパッション、その次にようやく技術が活きてきます。長年遠隔で商品を販売してきた僕が意識していたのは話の展開です。テレビショッピングで商品の魅力を伝えるときに、性能や価格などの話と、どう役に立つのかというソフト面の話を混ぜるのは厳禁。混在させると、人間の脳はついていけずに理解力が落ちてしまう。もちろん機能もソフト面も重要ですから、そこを分けたうえで話の順番を考える必要がある。

いわゆる起承転結でもいいですが、僕は世阿弥の「序破急」を参考にしていました。序は導入、破は展開、急は結論。シンプルですが、これを意識すると話の順番をつくりやすかったです。

世阿弥は「一調二機三声」が大切だとも指摘していました。この言葉は発生するための3つのステップを意味しています。まず声の張りや高さを心と体の中で整えて(一調)、次に声を出すタイミングを計って(二機)、そして最後に声を出す(三声)。

■髙田明が認めた伝える達人とは

さらに大事なのは、話の合間に入れる「間」の取り方です。能の世界では足を踏み出すタイミングがコンマ一秒違うだけでも一流と二流の差がつくと言われますが、コミュニケーションにもそれと近いものがあります。伝え方がうまい人は、あえてところどころで間をつくります。大事な話をした後に少し黙って内容が相手に浸透するまで待ったり、逆に大事なポイントを伝える前に間を取って期待感を持たせたり。間の使い方を覚えると、同じ内容でも深く伝えられるようになるはずです。

ものを言うのは口だけではありません。僕は目に喋らせるし、指にも喋らせます

また、ものを言うのは口だけではありません。僕は目に喋らせるし、指にも喋らせます。ほら、見てください。「このスマホは何グラムで軽いですよ」と言葉だけでなく、スマホを手に持って上下に数回動かしながら「こんなに軽いんです」とやったほうが、軽さが伝わりますよね?もっと強調したいときにはもう片方の人差し指で指す。本当に軽さが伝わるでしょう?

以上、テクニックをいろいろご紹介しましたが、やはり大切なのは伝える人の想いと姿勢です。先日、長崎のローカル局で京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥先生に時間をつくっていただき、コロナ問題についてオンラインで対談をしました。山中先生は「コロナは人類の危機」「桜は来年戻ってくるけど、人の命は戻ってこない」とおっしゃっていて、その言葉は僕の中にすっと入ってきた。心に響いたのは、表現が巧みだったからだけでなく、言葉の向こうにある山中先生のコロナ問題への切実な危機感が伝わるからだと思います。

伝える人のミッションやパッションは、オンライン会議の画面越しでも伝わります。ですから、画面に映る自分の表情・姿勢は非常に大事です。そのことを忘れないでコミュニケーションを取ってもらいたいですね。

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髙田 明(たかた・あきら)
ジャパネットたかた創業者
1948年、長崎県生まれ。大阪経済大学卒。74年にカメラのたかたに入社。86年に独立し、たかたを創業。99年よりジャパネットたかたへ社名を変更。2015年に代表取締役を退任。現在はA and Live代表取締役に。著書に『伝えることから始めよう』(東洋経済新報社)。

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(ジャパネットたかた創業者 髙田 明 構成=村上 敬 撮影=竹内さくら)

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