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小泉進次郎が先輩政治家に「お前なんか大嫌いだ」と言われて喜んだワケ

プレジデントオンライン / 2020年8月31日 9時15分

田村重信氏と小泉環境相 - 写真提供=飛鳥新社

価値ある“人付き合い”をするにはどうすればいいか。小泉進次郎環境相は「陰口を叩いたり、腹の中で『進次郎ふざけるな』と考えたりする人は多い。だからこそ、面と向かって大先輩に『お前なんか大嫌いだ』と言われたとき嬉しかった」と語る。元自民党政務調査会調査役の田村重信氏が聞いた——。(第1回/全2回)

※本稿は、田村重信『気配りが9割 永田町で45年みてきた「うまくいっている人の習慣」』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

■義理人情と浪花節が政治の世界では必要

【田村重信】私は40年以上にわたって政治の仕事に携わってきました。その間、数百人の政治家とやりとりしてきました。そのため、「この政治家のこの部分を学ぶべきだ」ということがたくさんあります。なかでも、とりわけ大切なのが「気くばり」。

政治に気くばりは欠かせないものです。大物であればあるほど、有権者や地元の応援者、マスコミ、他の議員や官僚、そして私のような職員にも気をくばってくれるもの。そしていま、気くばりができる現職の議員といえば誰かと考えたときに、真っ先に進次郎さんを思い描きました。

【小泉進次郎】それは恐縮です。単純に、お世話になった人に対して、何ができるのか。それだけです。でも、この対談を受けるべきではなかったのかもしれませんね。田村さん以外の人への気くばりを考えたら(※編集部注:当時から現在まで、小泉氏は「単独取材」を行っていない)

【田村】ありがとうございます。それがある意味、進次郎さんならではの気くばりと感じます。そういった義理人情も大切ですね。

【小泉】そう、義理人情と浪花節。これは政治の世界では特に必要です。理屈ばかりこだわってもダメですね。

■軽々しく相手の家族のことを聞かない

【田村】進次郎さんが人間関係で「最も大切にしていること」は何ですか?

田村重信『気配りが9割 永田町で45年みてきた「うまくいっている人の習慣」』(飛鳥新社)
田村重信『気配りが9割 永田町で45年みてきた「うまくいっている人の習慣」』(飛鳥新社)

【小泉】私の両親は、私が一歳のときに離婚しています。だからそのことを理解してからは、五月の「母の日」に同級生が「お母さんに手紙を書いた」などといっていると、なんとなく肩身が狭くなったものです。

【田村】近年は一人の親家庭も増えています。

【小泉】だからこそ、一人親家庭が少なくないことを忘れてはならないと思います。私には軽々しく相手の家族のことを聞かないという癖がついています。どんな話が心の傷をえぐるようなことになるか分からないからです。私自身、子供のころから心ない言葉に傷ついてきましたから……。

【田村】確かにずけずけとプライベートのことなどを聞いてくるような人が多い。

【小泉】よくそんな心の傷をえぐってしまう可能性がある質問をできるな……と感じてしまうこともあります。できるだけ顔に出さないようにしているけど、デリカシーのない人だなと思いますよね。

■「小泉くんのお父さんは政治家だから仲良くしておきなさい」

【田村】嫌なことを聞かれても、その場では笑顔で対応できる。それが進次郎さんの人気の理由の一つなのかもしれませんね。

【小泉】中学校のときのことで、いまだに忘れられないことがあります。私は小学校から大学まで関東学院に通っていました。そのため小学校から中学校に進学しても、基本的に友達は変わりませんが、外から新しい同級生が入ってきます。そんな新しい同級生の一人に、以下のようにいわれたのです。

「ねえねえ、小泉くんだよね? お母さんが『小泉くんのお父さんは政治家だから仲良くしておきなさい』というから友達になろうよ」

【田村】あまりにも露骨な言い方ですね。

【小泉】だから怒りを通り越して、この同級生から何か大切なことを教わった気がしました。世の中は私をそう見ているのかと……。

その後、私が大学生になると、父・純一郎が総理大臣になった。すると「小泉進次郎」ではなく、「小泉総理の息子」と見られました。

さらに兄・孝太郎が芸能界に入りました。そうすると「小泉総理の息子であり、孝太郎の弟」と見られるようになり、私のことを「小泉進次郎」と見てくれる人は誰なんだろうかと思った。小学校からの友達は、私を「小泉進次郎」と見てくれて、それ以前と変わりなく付き合ってくれました。だから私はいまも彼らのことを大切にしています。

【田村】人と付き合ううえで、それは大事なことですよ。

【小泉】いま私は様々な分野の有名人と会う機会がたくさんあります。有名人特有の苦労は想像つくし、きっと似たような経験をしている人も多いと思う。

【田村】確かに有名人特有の苦労はありますね。私が政務調査会室長として、政調会長の橋本龍太郎氏に仕えていたとき、毎日多くの人が面会に訪れるものだからビックリしました。次期総理と見られていたのだから当然なのかもしれませんが。

■人一倍応援してくれる人ほど人前で話しかけない

【小泉】政治家には支援してくれる人が大勢います。ただ、支援者の中には講演会などのときにも、私のそばには来ないし、話しかけてもこないのに、人一倍熱く応援してくれる人がいる。幼馴染(おさななじみ)も同様です。言い換えると、人前で仲が良い姿を見せないのです。なぜかというと、自分が近くに行って話しかけてしまうと、他の人が声をかけにくくなってしまうから。

小泉進次郎氏
(写真提供=飛鳥新社)

【田村】「他の人はいまこの瞬間しか会えないけど、私はいつでも会える。だからいま話しかける必要はない」と考えるわけですね。

【小泉】そのとおりです。人から気くばりを学びますね。よく知らない人に限って「小泉は私の友達だ」というような人もいます。一度しか行ったことがない店を常連というようなものですね(笑)。

【田村】見栄を張るわけですね。そういえば一度写真を撮っただけで、「この政治家とは顔見知り」という人もいます。

【小泉】たくさんいますね。政界に限らず有名になると、親戚や友達が増えるというのは本当です。よく知らない人が私の友人を名乗っていることもあります。だからこそ、私は「本当の意味での友達」を大切にしようと心掛けています。

■周りが全員敵でも支えてくれるのが“真の友”

【田村】進次郎さんはインタビューで、友達100人できるは嘘だ、100人ときちんとした付き合いができるわけがないといっています。

【小泉】はい、昔から私はそういっています。童謡「一年生になったら」は「ともだちひゃくにんできるかな」という歌詞です。しかし、友達は100人もいりませんから。もちろん、友達には様々な定義があると思います。しかし、濃い付き合いとなると、絶対に100人も付き合えない。

【田村】本当に大切にできる友達という意味では、100人は無理ですね。

【小泉】そうなのです。だから小学校で子供たちがあの歌を歌うときは、友達とは何かを考えるきっかけにしてほしい。

【田村】きちんとした付き合いとは、具体的にどんな付き合いですか?

【小泉】説明するのは難しいですね。この世界にいると敵も少なくありません。ただ真の友は、仮に周りが全員敵でも、最後まで私を支えてくれると思える友達です。

【田村】それから人付き合いは距離間も重要です。あまり親密になりすぎて、しょっちゅう一緒にいると仲が悪くなることもあります。私が仕えていたころの橋本龍太郎氏は、頭の後ろで手を組んで、宙を見つめていることがありました。おそらく人と会って疲れていたのだろうし、何か考え事をしていたのかもしれません。そんなときは何か用事があっても、なるべく話しかけないようにしました。これは私なりの気くばりでした。

■社会に出てからでも友達はつくれる

【田村】昨今、SNSでつながることがステータスになってきていますが、その点についてはどう考えていますか?

【小泉】もちろん、SNSでつながっているだけで友達だというのはあり得ないでしょう。

【田村】そう思います。でも、SNSで少しやりとりをしただけで、「田村さんは私の友達だ」というような人がときどきいますね。

【小泉】SNSでつながって、ネットワークを広げるのは素晴らしいことだと思います。私自身も、SNSのおかげで新しい情報を得られたり、学んだりすることができます。とはいっても、やはりSNSは友達とは別です。ただ、社会に出てからでも、友達といえる人との出会いはありますね。ひょっとしたら学生時代に友達に恵まれなかった人もいるかもしれません。だからといって、この先友達を作る機会がないかというと、それは違う。人間関係の面白いところです。まずは人と向き合うこと。それが最高の友達を作る第一歩です。

■「お前なんか大嫌いだ」と言われて嬉しかった

【田村】2015年に進次郎さんは農政改革に取り組みました。このとき菅義偉内閣官房長官は、「苦労してこい」というかたちで進次郎さんを農林部会に送り出したそうですね。そして部会で意見をまとめるまでに、江藤拓氏や西川公也氏ら農林のエキスパートとやりとりしたと思います。大変な仕事だったのではないでしょうか?

【小泉】確かに大変でした。しかし面白かった。江藤さんには面と向かって「お前のことなんか大嫌いだ」と言われましたが、最終的には大きな支えになってくれました。政界に限らず会社でもプライベートでも、面と向かって「大嫌い」と言ってくれる人なんて、なかなかいないのではないですか?

【田村】いませんね。

【小泉】実は「大嫌い」と言われて嬉しかったのですよ。なぜならほかの人は陰口を叩いている。「進次郎ふざけるな」って。また、腹のなかでそう考えている人もいます。しかし、江藤さんは直接私に言ってくれました。この人は嘘をつかない、信用できる人だと直感した。だから嬉しかった。

【田村】それは重要なことです。上司が若い部下に注意するでしょう。すると反発するだけの部下もいます。進次郎さんのように上司の苦言をどう受け止めるか、それが重要です。偉くなればなるほど、周りには調子の良いことをいう人しか集まってこなくなります。どんなに偉くなっても、必要なときに意見、反論してくる人を周りに置くべきです。

【小泉】そう感じています。

■先輩政治家が焼き肉に連れて行ってくれた理由

【田村】「大嫌いだ」と言ってきた江藤さんとは、長い時間一緒にいることで、徐々に意思が通じるようになったのですか?

【小泉】長い時間いたというのではなく……部会で席が隣だったんですよ。

【田村】それは嫌でも話すことになる(笑)。

【小泉】そうなのです。「大嫌いだ」と言われて何日か経って会ったときに、私はこう話しました。

「先日、先生から大嫌いと言われて、私は嬉しかったですよ。面と向かっていってくれたので」

すると江藤さんは「お前は気持ち悪い奴だな。大嫌いと言われて喜んでいるのか?」と。確かに「大嫌いだ」と言われて喜ぶ人はいない。でも、面と向かって批判してくれる人はいません。だから非常にありがたかったと説明したのです。そして「今後、飯に連れていってください」と頼んだのです。すると先生は呆れながらも承諾してくれました。

【田村】二人で食事したのですか?

【小泉】そうです。江藤さんから「お前はほかに誰か連れてくる?」と聞かれたので、私は「先生はどなたかお連れになりますか?」と聞き返しました。すると江藤さんは「いや、そういうわけではないけど、お前も俺と二人では間がもたないだろう?」という。私としては二人でじっくり話をしたかったから「せっかくですから二人でお願いします」といい、当日は焼肉屋に連れて行ってもらいました。

【田村】焼肉は焼いているときに話をしなくていいから、間がもちます。

【小泉】そうか。だから江藤さんは焼肉屋を選んだのか(笑)。

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田村 重信(たむら・しげのぶ)
政治評論家、元自民党政務調査会調査役
1953年(昭和28年)、新潟県栃尾市(現長岡市)生まれ。拓殖大学政経学部卒業後、宏池会(大平正芳事務所)を経て、自由民主党本部に勤務。政調会室長、総裁担当として橋本龍太郎に仕え、日本政治の中枢を裏方として支え続ける。政務調査会の調査役、審議役等として外交・国防・憲法・安全保障等の担当を歴任。慶應義塾大学大学院法学研究科非常勤講師も15年にわたり務めた。

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(政治評論家、元自民党政務調査会調査役 田村 重信)

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