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Yahoo連合に大敗…見えた! まさかの赤字を叩き出した楽天の"ヤバすぎる結末"

プレジデントオンライン / 2020年8月28日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Andrei Stanescu

■モバイル事業で、824億円の損失

楽天の中間決算としては純利益が9年ぶりの「赤字転落」となった。新型コロナの感染拡大で、オンライン需要の高まりによりEC(電子商取引)需要は堅調なはずなのに、楽天の最終損益は275億円の赤字。背景には4月にサービスを開始したモバイル事業の赤字が響いた格好となっています。なぜ堅調なECの売り上げを食い、大幅な損失を出すような、モバイル事業に投資するのか。それは、楽天がこの先、「モバイル通信業界のアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」を目指しているからです。その序章としてスタートした「楽天モバイル」の利用者獲得は堅調のようですが、収益化の道筋はまだめどがついていません。

楽天の事業は「インターネット」「フィンテック」「モバイル」の3つのセグメントに分けられます。8月11日に発表した決算では「モバイル」事業が大幅な損失を出しています。この「モバイル」事業が「インターネット」事業に影響を及ぼすほどになれば、「ヤバイ」シナリオが見えてきます。

直近の業績を見ると、1~6月までの売上高は、前年同期比15.7%増の6787億円となり、中間決算としては過去最高となっています。「インターネット」事業は、新型コロナで外出を控える動きが広がり、ECでの買い物が伸びるとともに、楽天は一定額以上の買い物をした場合の送料を無料にするなどの取り組みで、ネット通販の「楽天市場」の利用が大きく伸長しました。

■基地整備だけが赤字の根本原因ではない

しかし全体では、「モバイル」事業の基地局整備投資がかさんだことにより824億円の損失を出し、純利益は274億円の赤字に転じています。

この赤字の要因となった、「モバイル」事業でカギとなってくる基地局の建設について、楽天の三木谷浩史社長はオンライン会見で「基地局の建設は爆発的なスピードで進んでいる」と述べており、従来の計画を大幅に前倒しし、来年のうちに電波の人口カバー率を96%に近づけたいと伝えています。

この発言からも「モバイル」事業を積極的に拡大させていく意向であり、むしろ「ここからが始まり」だということなのです。

ところが、赤字がかさんだのは基地局の整備費用だけではなく、利用者獲得のためのキャンペーン費用の増加も利益を圧迫しているようです。

楽天モバイルは、6月30日には早くも100万契約を突破したと発表するなど順調なスタートを切っています。料金プラン「Rakuten UN-LIMIT」の契約者300万人が1年間無料で利用できるキャンペーンを実施。また、Rakuten UN-LIMITを契約すると、オリジナル端末の「Rakuten Mini」などを1円で購入できるキャンペーンなどを相次いで実施しており、これらのコストが重くのしかかっています。

現在、契約している100万人の多くは、1年間だけ無料で利用できる「お得感」につられて契約しています。キャンペーンで釣られた利用者は楽天モバイルにとって固定ユーザーではなく、いつでも消えてしまう利用者だと言えます。このキャンペーンで新規獲得した利用者が、2年目に入っても継続するかどうかがポイントになるでしょう。

■KDDIに払うローミング料金が首を絞める

さらに、楽天モバイルのネットワーク整備はまだ途上であるため、地下など多くの場所をKDDIとのローミングでカバーしています。契約数を増やし過ぎるとKDDIに支払うローミング料金が増えてしまうという状況下にあります。そのためにも、自前の基地局の建設を急いでいるわけです。

具体的に見ていくと、ユーザーは5GBまで無料で利用できますが、楽天モバイルはKDDIに対して、1GBあたり約500円を支払っています。つまり、ユーザーが5GB使い切った場合、1ユーザーあたり最高で毎月2500円をKDDIに支払わなければならないのです。

もし、申し込みがあったとされる100万人全員がKDDIローミングを5GB使い切ったとした場合、毎月25億円、年間300億円のローミング費用が楽天モバイルからKDDIに支払いが生じるわけです。このあたりのローミングコストと、自前の基地局の建設費用とのバランスがアクセルを踏んでいる楽天にとって重要になってくるでしょう。

■EC事業でもZホールディングスに大敗

順調なはずの楽天のEC事業の決算に目を凝らすと一概に「とても良い」とは言えないのです。決算の評価としては、ECは順調で、「モバイル」事業が足を引っ張ったかのように見えますが、他のEC企業と比べると楽天のECの伸び率は劣っています。

例えば、ヤフー、ZOZOなどを傘下にもつZホールディングスのショッピング事業の4~6月期の取扱高は85.9%増となっており、楽天の48.1%増と約1.8倍の差が開いています。

楽天は「楽天市場」や「楽天ブックス」などショッピングECの取扱高が伸びましたが、Zホールディングスでは、ZOZO連結子会社化、「PayPayモール」の拡大といったグループ会社とのシナジー効果、と全社的な費用削減ができた「グループ戦略」の効果が大きかったのです。

株式市場では、この「Zホールディングス」と「楽天」の決算がそのまま反映されています。

Zホールディングスの7月31日決算後、株価は517円から窓を開けて上昇し、直近の高値698円まで35%上昇しています。一方、楽天は8月11日決算発表後、1085円から8月20日の927円まで17%下落しています。これがマーケットの評価です。

■Amazonには到底及ばない

コロナの感染拡大の中で、最も恩恵を受けた企業の代表がAmazonでしょう。

米Amazonは4~6月の決算では売上高が前年同期比で40%増の889億1200万ドル(約9兆3900億円)、純利益は同2倍の52億4300万ドル(約5500億円)で、いずれも四半期として過去最高を更新しました。

外出規制によるEC需要を取り込んだほか、在宅勤務の拡大によるクラウドサービス「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」の売り上げも3割伸びています。Amazonと同じ、EC事業を展開する楽天にも好調な決算が期待されていただけに、市場の期待とは少し乖離した結果だと捉えられたのでしょう。

Amazonと言えば、AWS事業の拡大が目を引きます。AWSとは、世界で最も包括的で広く採用されているクラウドプラットフォームであり、Amazonの事業の中でもAWSは多くの営業利益を生み出しています。

楽天は「モバイル通信業界のAWS」版を目指しており、三木谷氏はかねて、「楽天モバイルは、序章」であり、楽天にとって肝心なのは「RCP」(Rakuten Communications Platform)だと説明しています。

RCPを米アマゾン・ドット・コムのクラウドサービス「AWS」になぞらえて、「RCPを世界中の通信会社などに提供し、モバイル通信業界のAWSを目指す」とも話しています。つまり楽天がモバイル事業へ参入したのは、RCPで世界を相手にしたプラットフォームビジネスをすることが狙いだと言えます。

■楽天モバイルはまだプラットフォーマーではない

RCPの世界を構築していくための入口に位置するのが「楽天モバイル」。

しかし、この楽天の新しいチャレンジにはいささか、手厳しい評価が多いように感じます。厳しめの評価の背景には、現状の「楽天モバイル」は、まだ、プラットフォーマーではなく携帯電話会社だという点でしょう。

第4のキャリアとして参入した、「楽天モバイル」には、業界の活性化の期待を背負っています。既存の携帯電話会社3社だけでは、携帯料金は高いままで変わることはないであろう、そのような業界に対して、健全な競争原理を持ち込むことが期待されているのです。

楽天モバイルに、いま、求められることは、「安価で、ユーザーの満足度が高く、質の高いモバイル通信サービスを提供すること」なのです。グローバルを見据えた将来を考えれば、プラットフォーマーの構想は重要かもしれませんが、まずは、楽天モバイルを満足できるサービスに育てることが先だと感じている人が多いのです。消費者が満足できるサービスを提供できなければ顧客は離れてしまいます。そのことが、モバイル価格に転嫁されたり、ECを軸としたインターネット事業に影響が出るようなことがあれば、本末転倒となってしまします。そうならないことを見守る意味も込めて市場では厳しめの評価となっているのでしょう。

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馬渕 磨理子(まぶち・まりこ)
テクニカルアナリスト
京都大学公共政策大学院を卒業後、法人の資産運用を自らトレーダーとして行う。その後、フィスコで、上場企業の社長インタビュー、財務分析を行う。

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(テクニカルアナリスト 馬渕 磨理子)

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