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「死ぬまで働けば大丈夫」6500万円のローンを抱える58歳の明るすぎる老後プラン

プレジデントオンライン / 2020年8月28日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Wavebreakmedia

妻と大学生の長男と同居しながら、自宅兼事務所でWEB制作・デザインの仕事をしている男性(58歳)は貯金が80万円しかない。世帯月収は手取り97万円だが、17年後の75歳まで支払いの続くローン残債が計6500万円ある。本当に働き続けられるのか。相談に応じたファイナンシャルプランナーが出した結論とは——。

■手取り世帯月収97万円がたちまち「蒸発」してしまう58歳の生活

「老後資金がかなり少なくなってしまったんですけど、自分、長く働くつもりなので、大丈夫ですよね?」

ご夫婦でWEB制作・デザインの会社を経営しているFさん(58)。会社は順調で、同い年の妻と二人合わせ、毎月手取り97万円ほどの収入を得ています。しかし、驚くべきことに貯金はほぼありません。一般的に「貯金がないんです」というご相談の場合でも、実際は200万〜300万円は持っているケースが多いのですが、本当に100万円もないのです(80万円)。バブル世代の方らしいといえば、らしいのですが……。

聞けば、今まであまり貯金ということを意識したことがなく、「使う分だけ稼げばいいじゃん」と思ってきたそうです。企業に雇われているわけではないので、仕事は60歳以降も長く続けられる。だから生活は大丈夫だろうと思っていたそうですが、「やがて退職した時のことを考えると、急に不安になったんだよね」(Fさん)とのことです。

子供は2人います。長女(28)は就職して独立、長男(22)は専門学校から大学に入り直し、現在大学2年生です。長男は同居で、学費のほか、生活費、こづかいなどの面倒をみています。

■業績好調で収入アップ、「節約よりも稼ぐ」ほうがよい

会社を設立したのは、今から10年前。それ以前は個人事業者で売上額は微々たるもの。収入から国民健康保険料、国民年金保険料を支払っていたこともあり、ほぼゆとりのない家計でした。

ところが、幸いにもその後、徐々に売り上げが伸び、10年前に個人事業から法人になり、社会保険適応事業所となりました。手取り額も増え、生活費にゆとりができたそうです。そして自宅兼事業所を建て、2人の従業員も雇い、現在のような状況になりました。

成長を果たしたこの10年間を質素に暮らしていれば、貯金が増えたのは確実です。しかし、収入が増えたことで、生活費もそれに比例して増えてしまいました。

お金について、次第に「節約よりも稼ぐ」ほうが良いと考えるように。その結果、「手取り97万円」もきれいさっぱり使い切る暮らしになってしまったのです。

家計状況を見ると、それがよくわかりました。

■月54万円以上の固定費、ローン残債の合計は6500万円もあった

3人暮らしで食費が月10万円を超え(10万9000円)、水道光熱費も3万円を超えています(3万1000円)。被服費(3万7000円)、娯楽費(2万6000円)も多めです。全体にこれら変動費が多いのですが、削減しにくい固定費は、この変動費以上にかかっています。

Fさんは以前、事業を拡大する時に父に借りた500万円の返済(毎月7万円)や、事業のやりくりに困って利用した数社のカードローン総額200万円の返済(毎月5万円)がまだまだ続くうえに、自宅兼事業所の住宅ローン(管理費を含め30万円)が残り17年もあります。ローンの残債はあわせて約6500万円にもなります。

夫婦で支出の計算中
写真=iStock.com/fizkes
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fizkes

ざっと計算すると、固定費だけで54万円を超えているのです。しかも、大学生の長男の所属するサークル費も親が負担し、小遣いも渡しています(計月4万円)。3台あるスマートフォンは格安にしているといいますが、使い方と金額から見ると中途半端な契約のようです(1万9000円)。いずれも毎月の収支が黒字になっているから、「まあ、いいか」ということなのでしょう。

収支上は毎月15万円以上の黒字になっています。年間130万円以上貯められるはずですが、これがほとんど「年間の特別支出」に消えてしまっていました。例えば、固定資産税や長男の学費、帰省を含めた旅行、スーツの買い替えなどです。ほぼ貯金を食いつぶして暮らしている状況でした。お金の使い方としては無計画としか言いようがなく、毎月の収入でその場しのぎに支払っているという状況です。

■住宅ローンは残り17年、75歳まで続くが「ずっと働けるから大丈夫」

心配なのは、このまま老後生活に入ってしまったら、どうなるかということです。

あと7年、65歳まで働くと考えると、もらえる年金は夫婦で計約22万2000円になります。50代以上の方は、ねんきん定期便を見ると、おおよその金額がすぐわかります。この額は、今の収入の4分の1。しかも、住宅ローンが75歳まで残っているのです。

ということは、2年後、長男が大学卒業し、独立すれば支出は減るでしょうが、リタイア後はざっと計算すると毎月40万円を超える補塡(ほてん)が必要となってしまうのです。今すぐ生活費を下げ、貯金をしっかり作らないと、あっという間に老後破綻です。

このような緊急事態でありながら、Fさんは「生きているうちは働ける」という思いがあり、具体的にどう支出を下げるか、考えられないようです。

確かに会社を経営していると、いつまでも働き、収入を得られると思いがちですし、実際かなりの年齢まで収入を得られる人もいらっしゃいます。

ただ、それは結果論であり、Fさんもそのようにできるかといえば、その保証はありません。働けなくなった時、収入を得られなくなった時を想定し、しっかり備えておかなければならないのです。そしてその備えができるのは、収入がある時だけなのです。

客観的に不安に思う点を伝えすると、それに同意し、家計の削減に取りかかることとなりました。

■大学生の長男にかかるサークル費も親が肩代わりする「大甘浪費」

まず食費は外食が多かったので、自宅での食事を心がけるようにしました(約11万円→6万7000円)。

いまだ感染拡大が続くコロナの問題は、今後も長引きそうです。そのため、外食よりは中食、自炊で楽しむ方法を見つけたほうが、安全安心で充実したものにもなります。

また、水道光熱費はその使い方を見直し(3万1000円→2万7000円)、通信費はすでに格安スマホに変更していたので、その契約内容を使い方と照らし合わせて変更しました(1万9000円→1万1000円)。

被服費、娯楽費など「贅沢支出」といえる部分は全部カットするのではなく、楽しみを残しつつも削減するようにして、頻度や優先度を見ていきました(順に、3万7000円→2万1000円、2万6000円→8000円)。

大学生の長男にかかるサークル費やこづかいは、アルバイトをしていることを踏まえ、また、今後の自立にもつながるよう、話し合いの上、大部分を自己負担することにしました(4万円→2万円)。長男も両親の老後資金がないと、自分が面倒を見なくてはいけなくなることを理解し、不安に感じたようで、同意してくれました。

メタボ家計BEFORE→AFTER

■年間300万円以上貯金できる家計に

以上のようなコストカットを断行した結果、最終的に支出は月12万円も圧縮することができ、月の黒字額は計27万円とすることができた。これをしっかり貯金に回していくことにしました。安定して貯金ができるようになったら、一部をつみたてNISAなどでリスク(不確実性)の少ない投資信託で運用し、複利で増やしていくことを期待することにしています。

数字上は年間で300万円以上貯金ができる計算です。2年後に、長男の学費が終われば、その分も蓄えていけますから、かなりのスピードで最低限度の老後資金を作っていける見込みです。あとは、生活費をかけないようにし、年金受給額(月22万円)に近い金額で生活できるようになる訓練もしておかなくてはならないでしょう。

筆者の横山光昭氏の最新刊『「逃げ切れない世代」のための黄金のお金設計』(プレジデント社)が好評発売中。
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Fさんの世帯に限らず、収入がある人は、つい油断して、蓄えを持たないという傾向があります。なんとかなるさ、と思っている場合もありますし、自然と支出が上がり、貯めたくても貯められないという場合もあります。

どちらにしても貯められないというのは、もったいないことです。それまでは豊かに暮らせていても、仕事を辞めて年金受給者になった途端に貧しい暮らしに転じる場合もあるのです。

お金が足りないというのなら収入を上げる。

そう考えてばかりいると、いくらお金があっても足りない、という事態が起きます。収入を上げることも大事ですが、その分を蓄えるということも大事です。いつまでもバリバリと稼げるわけではありません。自分の人生がどのように進んでいくのか、現在の収入、支出、ローンなどを総合的に考え、見据えて準備していくことが大切なのではないでしょうか。

■【メタボ家計 BEFORE→AFTER コストカット額ランキング】

1位 -4万2000円 食費
外食を減らし、食品ロスを出さないように1週間単位で買い物をした
2位 -2万円 小遣い
長男のこづかいを半減した(アルバイトしているため)
3位  -1万8000円 娯楽費
長男のゴルフの費用(サークル)を負担していたため、それをやめた
4位 -1万6000円 被服費
衝動買いをしないように、欲しいものは2〜3日考えて購入
5位 -1万4000円 その他
美容室、化粧品、定期購読などを見直した
6位 -8000円 通信費
格安スマホを利用していたが、改めて契約プランを見直した
7位 -4000円 水道光熱費
必要のないときは止める、消すに気をつけ、できるだけ無駄を出さないことを徹底

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横山 光昭(よこやま・みつあき)
家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表
お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の確実な再生をめざし、個別の相談・指導に高い評価を受けている。これまでの相談件数は2万3000件を突破。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。著書は60万部を超える『はじめての人のための3000円投資生活』(アスコム)や『年収200万円からの貯金生活宣言』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を代表作とし、著作は143冊、累計330万部となる。オンラインサロン「横山光昭のFPコンサル研究所」を主宰。

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(家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表 横山 光昭)

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