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連載・伊藤詩織「情報の9割が突然遮断されたとき、あなたは生きていけるか」

プレジデントオンライン / 2020年9月16日 11時15分

2018年に北海道夕張市で筆者撮影。*写真はイメージです

■情報の9割が突然遮断されたとき、人はどう反応するのか

ダイアログ・イン・ザ・ダーク(DID)という体験型施設をご存じだろうか。1988年にドイツで開発されたもので、日本に上陸して2020年で21年になる。

参加者は真っ暗闇の空間で、自分の五感の豊かさを実感する。目が見える人は情報の9割を視覚から得ると言われるが、DIDでは音、感触、空気の流れといった情報を普段以上に感じとれる。

暗闇の世界でグループになり、さまざまなアクティビティーをこなす中、視覚障がいのあるアテンドがガイドする。彼らにとって暗闇の世界は日常だ。私も体験する中で人に寄り添い、支えあうことの大切さを実感した。暗闇から光のある世界に戻る際、アテンドから言われた「皆さんの見る世界がどうか素敵な世界でありますように」という言葉が忘れられない。

20年、新型コロナウイルスという目には見えない恐怖が世界を覆った。日本では東京・神宮外苑にDIDを体験できる施設があったが、コロナの影響で休館していた。そんな中、暗闇ではなく光の中で対話を通し見えない世界を体感できる「ダイアログ・イン・ザ・ライト」という新たなDID施設が、東京・竹芝のミュージアム「対話の森」に設置された。

■恐怖は人を孤独にする。だから今、対話をしよう

DID理事の志村季世恵さんは「DIDは決して、暗闇を体験するだけの場所なのではない」と話す。「暗闇を使ってさまざまな壁を取り払い、視覚障がいのある人、そうでない人との間に対等な対話を生む、それがDIDでした。しかしコロナですべての人が対等にこの危機と向き合う中、あえて暗闇を使う必要がないと感じました。恐怖は人を孤独にする。だから今、対話をしようと思いました」

ダイアログ・イン・ザ・ライトの開設に向けて準備を進める視覚障がいのあるアテンドは「目が見えなくなってから、光は希望や人の温かさという認識になりました」と語る。また別のアテンドはコロナが問題になり始めた当初、街で助けを求めても相手が躊躇するのではないか不安だった。だが「予想以上に人から声をかけられ、こんな社会情勢でも、人には変わらないものもあることが嬉しかった」と話した。アテンドとの対話で大切なことに気づく。そんな体験を今こそ体感してほしい。

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伊藤 詩織(いとう・しおり)
ジャーナリスト
1989年生まれ。フリーランスとして、エコノミスト、アルジャジーラ、ロイターなど、主に海外メディアで映像ニュースやドキュメンタリーを発信し、国際的な賞を複数受賞。著者『BlackBox』(文藝春秋)が第7回自由報道協会賞大賞を受賞した。

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(ジャーナリスト 伊藤 詩織)

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