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テレワーク時代の部下指導には「3つのS」が必要だ

プレジデントオンライン / 2020年9月18日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/DisobeyArt

テレワークが前提となり、オフィスで顔を合わせる機会は減ってしまった。そのとき部下をマネジメントすればいいのか。コンサルタントの長尾一洋氏は「部下のメンタルケアにはこれまで以上に気を使わなければならない。特に『3つのS』を意識してほしい」と説く——。

■適度な距離感や関係性をどうつくっていけばいいのか

テレワークという働き方が定着し、営業活動もオンラインで行うようになると、当然ですが上司と部下が顔を合わせる機会や時間は大幅に減少します。「会えない」「働いている様子が見えない」状況の中で、「部下とどのように接すればいいのか」「適度な距離感や関係性をどうつくっていけばいいのか」と悩む管理職の方は多いことと思います。

テレワーク時代の部下指導においては、3つの「S」を意識してください。

See(見る/見守る/見える化する)
Stroke(存在を認める/働きかける)
Suggest(提案する/フィードフォワード)

「See」が見守るという意味を含んでいることにご注意ください。上司が部下を見るときは、どうしても「監視」しようとしがちですが、そうではなく、まるで幼い子に対するが如く「愛」をもって見守ることが大切です。会えないことで、部下の気持ちは見えにくくなります。それをきちんとしっかり見つめる。関心を持つ。管理や監視や干渉ではなく「見守る」姿勢が求められます。

■リアルでの付き合い以上に丁寧な働きかけが不可欠

「Stroke」という言葉は、カナダ出身の精神科医エリック・バーンが提唱した「交流分析」という心理学パーソナリティ理論の1つで、「人の存在や価値を認める働きかけ」のことです。

「がんばっているね」「君に頼んでよかった」と心の中で思うだけではなく、相手に伝えるための働きかけがストロークです。テレワークの生活が続くと、外部との交流が少なくなって孤独感や疎外感をつのらせて、それが大きなストレスになってしまうこともあるでしょう。オンライン上では「阿吽(あうん)の呼吸」も通じにくいようです。リアルでの付き合い以上に丁寧な働きかけが、円滑なコミュニケーションのためには欠かせません。

「Suggest」は提案、つまり未来に向かっての声かけです。「こうしたらいいんじゃないか」「こんなふうに考えたら解決できるのでは?」という前向きなもので、意識したいのは「フィードフォワード」です。フィードバックが、すでに行われたことに対しての反省や叱責になりがちなのに比べて、フィードフォワードは未来に向けて今打つべき手を提案するものです。部下の行動の変化を促し、よりよい結果につなげていくことができます。

■「コンタクトレス・ロープレ」をやってみよう

非常に効果的な部下指導のメソッドとして、ぜひお勧めしたいのが「コンタクトレス・ロープレ(ロールプレイング)」です。テレワークが進み、上司と部下、先輩と後輩が顔を合わせる時間はますます減っていくでしょう。身近な人からちょっとした説明のコツを学んだり、クロージングのテクニックを盗んだりするような機会もなくなってしまいます。

その穴を埋めるのが、コンタクトレス・ロープレです。営業部隊のいる会社では、以前は当り前のように行われていたロープレですが、最近は研修に取り入れるところも減ってしまいました。しかしロープレは、営業力アップに非常に効果があります。コンタクトレス(=非接触)での研修として、この機会にぜひ取り入れていただきたいと思います。

マンツーマンでもいいのですが、より効果的なのはグループ・ロープレです。上司や先輩1人と現場の営業担当者3~4人で1グループをつくります。最初は、上司(先輩)が顧客役、部下(後輩)が営業担当者として商談を行います。他の参加者はその様子を見学します。

一通りの商談が終わったら、見学していた人は気づいたことや感想を発表します。「表情が固かったよ」「説明がわかりにくいところがあった」など、思ったことを率直に伝えます。次は、営業担当者をチェンジして、順に同じように繰り返します。

■「わかってるつもり」を解消できる

上司から一方的に「上から」指導されるよりも、同僚・仲間という目線からのアドバイスの方が受け入れやすいものです。また、自分が第三者として意見を述べる立場を経験することで新たな視点を得ることもできます。

長尾一洋『コンタクトレス・アプローチ テレワーク時代の営業の強化書』(KADOKAWA)
長尾一洋『コンタクトレス・アプローチ テレワーク時代の営業の強化書』(KADOKAWA)

さらに、コンタクトレスでパソコンを通じて行うロープレのメリットとして「録画できる」ということがあります。自分自身の口ぐせや態度は、客観的に見ない限り案外気づかないものです。他人から指摘されたら反発してしまいますが、録画で確認すれば「納得!」となります。

「わかってはいるんだけど、できないんだよね」「やってるつもりだけど、結果が伴わない」。そういう悩みを抱えている人は多いと思いますが、頭でわかっていても行動できていなかったら、わかっていることにはなりません。「知る」「行う」「結果が伴う」の「知行果」を一致させるためにも、コンタクトレス・ロープレが役に立ってくれるでしょう。

じっと見つめられているのがプレッシャーでリアルなロープレに苦手意識をもっていた人も、コンタクトレスでならそれほどの圧迫感を感じずに、メリットだけを享受することができるはずです。

■顔色が見えない中で部下のメンタルをどうケアするか

テレワーク時代のマネジメントを考えるうえで、管理する側として、これまで以上に注意を払いたいのが部下のメンタルケアです。

毎日顔を合わせていれば、「今日は『おはよう』の声にいつもの元気がなかったな」「暗い顔をしているけれど、何かトラブルがあったのかな」というふうに、日々の変化をキャッチして「異常シグナル」が自然とアンテナにひっかかります。声をかけて昼食に誘ったり、別室でゆっくり話を聞いたりすることで早めの対処ができます。

ところが、テレワークでは、それができません。だからと言って、たとえばLINEやチャットなどで雑談をしてコミュニケーションをとるというのも、就業時間を使ってやるには無駄な時間が増えて本末転倒のような気もします。

■オンライン朝礼で一日のリズムをつくる

そこでお勧めしたいのが、オンライン朝礼、または夕礼です。チームの中に新入社員や転職・他部署から異動してきたばかりといったメンバーがいる場合には特にやってみるといいでしょう。

オンライン朝礼(または夕礼)というのは、毎日決まった時間にオンライン上に集まって、コンタクトレスで朝礼(夕礼)を行うということです。時間は10分から15分程度で十分でしょう。仕事の報告を詳しく行うというよりは、チーム全員が顔を見せ合って「おはよう」や「おつかれさま」を言い合うことが主な目的です。連帯感が生まれて、仕事や会社に慣れない新人には心のよりどころになり得ると思います。何より、決まった時間に実施することで1日のリズムにメリハリができて、行動計画を立てるうえでの指標にもなります。

■気軽な情報交換の場として活用する

さらに言えば、テレワークでは、どうしても先輩や同僚のノウハウを学ぶ機会が少なくなります。わざわざ相談するほどのことではないけれど参考にしたいこと、ちょっと聞いてみたいことや教えてもらいたいことは、日々の業務の中でたくさん出てきます。そういう情報を気軽に交換する場としても、オンライン朝礼や夕礼をうまく活用するといいでしょう。

テレワーク時代になったからといって、上司と部下の在り方がガラリと変わってしまうわけではありません。ただ、これまで当たり前だった「毎日、顔を合わせる」ことがなくなったわけですから、その欠けた部分を埋めるための多少の工夫や新たな努力は必要です。さらに一歩進んで、テレワークという環境を活かしたより効率的なマネジメント術を確立していきたいものです。

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長尾 一洋(ながお・かずひろ)
NIコンサルティング代表
1965年、広島市生まれ。1991年、NIコンサルティングを設立。『孫子』の講座やセミナー講師を多数務める。『必勝の営業術55のポイント』(中央経済社)、『小さな会社こそが勝ち続ける 孫子の兵法 経営戦略』(明日香出版社)、『まんがで身につく孫子の兵法』(あさ出版)、『営業の見える化』(KADOKAWA)など著書多数。

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(NIコンサルティング代表 長尾 一洋 編集協力=白鳥美子)

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