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橋下徹「いよいよスタートする菅政権をどう評価するか」

プレジデントオンライン / 2020年9月16日 11時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Tero Vesalainen)

今日9月16日、いよいよ菅義偉政権がスタートする。しかしメディアでの政治評論が現状のままでは、「日本の政治をよくする」という観点からマイナスが大きい。8年間の政治家経験を持つ橋下徹氏の提言は? プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(9月15日配信)から抜粋記事をお届けします。

(略)

■文句を言うだけでは政治はよくならない

いよいよ菅政権のスタートだ。

日本の政治をよくするには、野党が強くなることと、メディアの質が上がることの2つが柱だ。野党が強くなることは野党に任せるしかない。野党が強くなるための方法として、僕は2年前に『政権奪取論 強い野党の作り方』(朝日新書)を書いたけど、今の野党の状況を見るにつけ、やっぱりその方法論は間違っていなかったなとつくづくと思う。

(略)

そしてもう1つのメディアの質。本メルマガのVol.214(【安倍首相辞任】これが政治をよくするためのメディアの役割だ!)とVol.215(【提言!日本をよくする政治評価システム(1)】不足だけをあげつらう従来型の政治学者やメディアにはできないこと)にそのことは書いてきたけど、菅政権がいい方向に進むためには、ほんとメディアが頑張らなければいけない。

これまでのように政治に文句を言っているだけでは政治はよくならない。メディアが政治を適切に評価することが必要不可欠だ。

では適切な政治の評価システムというものはどういうものか。

政治家といえども人間だ。そんなスーパーマンではない総理大臣が、たった一人の力で世の中のありとあらゆる課題を一気に解決できるなんてあり得ない。

もちろん有権者が政治家に対して、高い望みを持つことは常であろう。

しかし、政治をよくするためには「適切な」評価が必要であり、そのためには「政治に100%の完璧はない」ということを、評価権者である有権者が心得ることが何よりも肝心である。そして個別政策について個々に評価する前に、政治全体の評価基準を示すべきである。

(略)

では、日本の政治において、全体としての100点満点レベルというのはどういうものか。60点の及第点レベルというのはどういうものか。

ここを一生懸命に考えるのが学者やメディアの役割であり、彼ら彼女らの発信を通じて国民も考えることになる。政治に文句を言うばかりが学者やメディアの役割ではない。

(略)

■政治を数字で評価する際の2つのポイント

メディアを通じて政治を評する者の多くがよくやるパターンに、どこかの1つの数字を持ってきて、「こんな悪い数字がある!」「あんな悪い数字がある!」と列挙するという批判手法がある。

これは学者がよくやるね。学者は本ばかり読んで、いろんな数字を持ってくる暇が山ほどあるからね。

社会を表す数字など、世の中には無限にある。成長率、失業率、犯罪率、実質賃金、離婚率、有効求人倍率、貧困率、進学率、財政赤字、国債累積額、本社流出数、人口流出数、経済総生産……。

挙げればきりがない。

これら世の中のありとあらゆる数字を、政治がそして1人の政治家が一気に改善することなど、実現不可能な夢物語だ。

しかし時の政治家、政権を批判することに血眼になっている者は、それらの中の悪い数字だけをピックアップする。僕も知事、市長のときに、この手法でさんざん批判を受けたよ。

・橋下さんが市長を辞めた年の2015年の大阪の街頭犯罪数はワーストワンですよね。
・大阪の子供たちの学力は、全国47都道府県の中でも下位続きですよね。
・大阪の域内経済総生産は、愛知に抜かれましたよね。

もう参ったよ。

橋下 徹『橋下語録 前に進むための思考』(プレジデント社)表紙
橋下 徹『橋下語録 前に進むための思考』(プレジデント社)

もし、あなたの勤める会社が、こんな批判をするためだけの人事評価をしていたら、あなたはそれに耐えられます?

政治を評価する際の数字の取り出し方、評価の仕方のポイントは、以下のとおりである。

1、一点の数字だけではなく、過去から現在に至る数字の「トレンド」を見なければならない。上昇傾向なのか、下降傾向なのか、横ばいなのか。
2、他と比較して、こちらはどの程度のものなのかを評価しなければならない。

基本はこの2つだ。時間的な比較と、他との比較。一点の数字を見るのではなく、グラフで見る思考が必要なのだ。

(略)

■非難することが自己目的化した「悪質な学者」

政治を非難することが自己目的化した悪質な学者も多く存在する。「適切に」政治を評価するのではなく、とにかく嫌いな相手に悪口を言うために、悪い数字を拾い上げる輩だ。

その代表格が、京都大学の藤井聡氏。彼は、僕や大阪維新の会の大阪府政・市政をとにかく非難することだけに自分の全人生をかけているような奴。

2018年3月、「大阪の域内総生産額(2015年度)が愛知のそれに抜かれて3位に転落‼」という報道が躍った。

すかさず、藤井氏は「橋下や大阪維新の会の政治行政の失敗‼」と叫び始めた。

ところが、この域内総生産額の計算方法がその年に変わっただけなのだ。それまでは研究開発費は総生産額に含めなかったのに、この年からこれも含めることになった。

そうすると、研究開発費に1兆円規模の資金を投じるトヨタ自動車を擁する愛知県は、域内総生産額が一気に上がった。つまり計算方法の変更によって愛知県が大阪府を抜いただけなのだ。

過去もこのように研究開発費を総生産額に加える方法で計算すると、実は僕が知事に就任する前の2007年にすでに愛知県が大阪府を抜いていたことになる。2015年になってから大阪経済の実体が3位に転落したわけではない。

(略)

そういえば藤井氏は、大阪府の府民所得が下がっていることも、僕や大阪維新の会の批判理由によく使う。

確かにそれは事実である。

橋下 徹『トランプに学ぶ 現状打破の鉄則』(プレジデント社)
橋下 徹『トランプに学ぶ 現状打破の鉄則』(プレジデント社)

しかし県(府)民所得は、「労働していない」高齢者や生活保護受給者も含めての平均額だ。高齢化が進む大都市で、しかもこれまでもずっと生活保護受給者が多かった大阪という街において府民所得が低くなってしまうのはある意味自然なことだ。

ここは数字の取り方次第であり、県民所得と同じような数字に「雇用者報酬」というものがある。これは「働いている者」の報酬額の平均だ。大阪は、この雇用者報酬については、東京に次いでの高さである。

「労働していない者」も含めての平均所得(府県民所得)と、「働いている者」の平均報酬(雇用者報酬)。どちらが経済指標として有効か。

僕は、当然、後者の雇用者報酬だと思う。経済が活性化しなければ雇用者の報酬は上がらないし、一番重要なのは、まさに働く者の報酬だ。働いていない人の所得は、経済活性化とは無関係の、富裕層の所得や福祉の話になる。

府県民所得の数字だけを持ち出す藤井氏には経済を語る資格はない。

(略)

(ここまでリード文を除き約2500字、メールマガジン全文は約8000字です)

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.216(9月15日配信)の本論を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【提言!日本をよくする政治評価システム(2)】いよいよ菅政権スタート!悪質な学者に左右されない「2つのポイント」》特集です。

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橋下 徹(はしもと・とおる)
元大阪市長・元大阪府知事
1969年東京都生まれ。大阪府立北野高校、早稲田大学政治経済学部卒業。弁護士。2008年から大阪府知事、大阪市長として府市政の改革に尽力。15年12月、政界引退。

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(元大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹)

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