私は緊急着陸を招いた「マスク拒否おじさん」にむしろエールを送りたい
プレジデントオンライン / 2020年9月12日 15時15分
■騒動の「当事者」がTwitterで持論を大展開
ここしばらく「飛行機内マスク拒否男性」がネットを含め、メディアで多数取り沙汰されている。9月7日、釧路空港から関西国際空港に向かう予定だったLCCのピーチ・アビエーションの機内でマスク着用を拒否した男性が、当騒動の主人公だ。
客室乗務員に対して威圧的な態度を取ったとされ、航空法73条の「機内の秩序を乱す安全阻害行為」にあたるとして新潟空港に同機は緊急着陸。男性は機内から降ろされた。結局、同機は2時間15分遅れで関空に到着した。
今後同社は燃料費や新潟でのスタッフの人件費等を請求する可能性もあるという。場合によっては、乗客も「商談が吹っ飛んで損害が出た!」などと言い、裁判を起こすかもしれない。彼のマスク非着用を危惧する周辺の乗客は別の席に移動し、彼が飛行機から降ろされる時は拍手も巻き起こった。
その後、「マスク未着用途中降機乗客」というツイッターIDが登場し、本人と思われる人物が見解を述べ続け、フォロワーは9178人(9月11日午後10時半現在)と続々と増えている。
■「場の調和を乱す厄介者」としてバッシング
この報道直後、男性に対するバッシングがネット上では加熱した。「炎上評論家」としての活動も行っている私としては「これは注視すべき案件だ」と判断し、見続けてきたのだが、結論としては男性に対するシンパシーを感じるようになってしまったのだ。もちろん、彼への批判も納得できるものだが、「どちらの側に立つ?」と聞かれたら「彼の側に立つ」と私は言う。彼に対する批判は以下に集約される。
・お前が感染するのは良いが、お前が他人を感染させたらどうするのだ?
・わざわざ大きな声をあげる必要はない
・客室乗務員への乱暴行為(腕を払う、等)も行っているのは許されない(同IDは否定)
・お前のエゴとプライドのために人々の貴重な時間を奪われるのは問題である
・女性客室乗務員への不遜な態度は許されるものではない
・全体最適の考えは持て。お前の主張はただのワガママである
要するに「場の調和を乱す厄介者」というのが彼に対する評価だ。いずれも正論である。だが、私の見解は以下の通りである。
■マスクしなかったら「反社会的」認定する社会って…
・そもそも日本人にとっては大したウイルスではない
・現在、飲食店の客でマスクをしている者なんてほぼ見かけない。外に出る時にいそいそとマスクをつける。要するに「皆がつけているからつけているだけ」の同調圧力なのである
・ただし、周囲が恐怖におびえているのであれば、多少の配慮をあなたはしてもいいのでは
・マスクで鼻を出していても「一応マスクはつけている」と見られるため、それでいいではないか
・悔しいけど日本って「空気」「世間に吹く風」が支配するから、とりあえずそれに従っておけば波風は立たないものなんだよね
・オレもマスクはバカらしいと思うけど、この「空気」が変わるまでは仕方なくマスクはつけようと思う
・あなたの気持ちは分かるが、ここから無駄に裁判を起こされたりするリスクは面倒ではないか?
・とはいっても、マスクをしていない人間を「反社会的存在」認定するこの日本社会ってどーよ? 狂ってない? とは思う
■それなら「搭乗禁止」と先に宣言すべき
そして、ピーチに対する考えは以下の通りだ。
・後世、「コロナに過敏反応したバカ企業」というレッテルを貼られるリスクは考えていましたか?
・もう男性のことは「面倒な人」ということで隔離し、放置しておけばいいではないか。そして「今後わが社を使うな」と「出禁」にすればいいだけ
・で、この飛行機に乗った人からコロナ陽性者は出たのですか? 出ていないですよね? この男性、うるさかったかもしれないけど、そもそもの原因、あなたの会社の従業員が執拗にマスク着用を求めたからですよね?
・そこまでの事態になるのなら「マスク非着用者はわが飛行機の搭乗禁止」を明言しておけよ
・あくまでも航空法73条の「機内の秩序を乱す安全阻害行為」を原因としているが、そこに至るのは「マスクをしたくない客vsマスクをなんとしてもつけさせたい客室乗務員・客」の思想的対立があるわけで、73条を盾にするのはおかしい
・「マスクをしない人は乗れません」は先に宣言すべきだった
・そうすれば、彼の搭乗は拒否できたわけだし、貴重な2時間15分は失われないで済んだ
■「害悪」扱いの風潮、もうやめませんか?
同氏(と見られるID)は、むしろピーチの対応こそ問題であると主張しており、ピーチの言い分、そしてNHK等の報道に対しても納得していない。これについては私は男性にエールを送りたい。マジで日本人のこの「長いものに巻かれろ」的姿勢って何なの?
いちいち「自粛命令出してください!」みたいにお上に懇願し、遊び歩いている人間がいたら「自粛せよ!」と「自粛警察」が登場するし、「他県ナンバー狩り」なんてものも登場する。東京から山梨の実家に帰省した女性が陽性者だった場合は猛バッシングをし、彼女のことを特定しようとする。青森に帰省した東京の人は「早く帰れ」と貼り紙を家に貼られる。
で、こうした批判をしている皆様方、あなたの周りに陽性者はいましたか? 私はとんでもなく知り合いが多いし、毎晩飲み歩いているけど、感染していません。そして知り合いにも一人も陽性者はいません。
いい加減に陽性者を「悪魔」「害悪」のように扱う風潮、やめませんか? 別に陽性になった人だってなりたくてなったわけでもないし、慎重に生きていたと思うんですよ。でも、日本社会を覆う「空気」ってヤツがこの方々を「ふしだら」「バカ」「クズ」「カス」「死んでお詫びしろ」のように扱ってしまう。
■「面倒臭い人」かもしれないけれど…
今回の騒動の渦中の男性に対しては、他にも「機長に直談判すべくコックピットに乗り込んだ。これではハイジャック犯ではないか」といった説も登場したが、本人のツイートによると「あくまでも前方の客質乗務員の詰所で話すために行った」とのことだ。また「大声をあげた」などと報じられたことについては、「元々私は声が大きい」と説明している。他にも同氏はこうツイートしている。
〈「エチケットを守らない」「空気を読まない」人を過剰に追いやる風潮が問題です。〉
〈我々の社会が長年に渡って築き上げてきた自由や尊厳や寛容が、コロナ禍で過度の全体利益の蜃気楼の下に、いとも簡単に手放されそうとしている現状は大変残念です。アフターコロナの時代に禍根を残すと思います。〉
同氏に対しては「時計が安物」といったどうでもいい批判まで書き込まれ、どんだけお前らマスクが好きなんだよ、と思う次第である。マスクをしない人間はいちいち持ち物までdisられなくてはいけないってどんだけ世紀末だ。
常に敬語でツイートをし、冷静な分析をする同氏は多少は「面倒臭い人」かもしれない。ただ、同氏の理路整然とした言い分を見ていると「あなた、いいこと言うじゃん」と思ってしまったのだ。むしろ彼を批判する人々が完全に飼いならされた家畜のごとき「人畜」になっているとさえ思うようになった。
■マスクは局部を隠すのと同じレベルになった
実際、コロナの陽性者については日本の人口の0.06%でしかない。それなのに飛行機の中ではマスク着用率100%を求められるし、路上でも9割方は着用している。しかも、死者も1412人(9月11日現在、厚生労働省調べ)で、高齢者が多いだけに「コロナで死んだ」というよりは「肺炎で死んだ」ことである。それなのに「コロナ関連死」と扱われてしまう。年齢階級別の陽性者は20代が突出して多いが、20代の死者は2人だけだ。
今回の男性の行為は決してホメられたものではないが、「皆さん、コロナごとき過剰に騒ぎ過ぎていませんか? そして、暑いのにマスクをつける人生って理不尽じゃないですか?」という「正義感」から行った行為だと私は解釈している。もはや今の時代、マスクで口と鼻をおおうことは、パンツとズボンやスカートをはいて局部を隠すのと同じレベルになってしまったのだ。
リスクが少ないにもかかわらず、鼻と口を隠すような人生はおかしい。
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ネットニュース編集者/PRプランナー
1973年東京都生まれ。ネットニュース編集者/PRプランナー。1997年一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ではCC局(現PR戦略局)に配属され、企業のPR業務に携わる。2001年に退社後、雑誌ライター、「TVブロス」編集者などを経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『バカざんまい』など多数。
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(ネットニュース編集者/PRプランナー 中川 淳一郎)
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