マジシャン精神科医が教える｢コロナ不安を消すたった2つのルール｣

不安や悩みに振り回されないためには、どうすればいいのか。精神科医でありマジシャンでもある志村祥瑚氏は、「ネガティブなことばかりに注意を向けていると、視野が狭くなり楽しさや充実感に気づかなくなってしまう。『2つのルール』を守ることで不安を和らげることができる」という——。

■成果が出る人と出にくい人の差は何なのか

不安やネガティブな考えにとらわれてしまう時ってないですか？

私はありました。「こんなはずじゃなかった」「コロナさえなければ今頃は……」と、自分の人生を変えたくて悶々(もんもん)としていました。もし自分の人生を変えたいと感じているなら、もし何かが足りない、まだ十分じゃないと思っているなら、あなたはまだ本来の自分の力を5％しか発揮できていないのです。

成果が出る人と、出にくい人。一体何がこの差をつくっているのでしょうか。

それは、一言で言うと「注意力」。

挫折や失敗したときに、クヨクヨと後悔したり、他人と比較して劣等感にとらわれていたら、あなたは本来の力を発揮しきることができません。それどころか、暴飲暴食したり、ストレスをためこんで、前へ進むことができなくなるでしょう。しかし、スパッと注意を切り替えられれば、もっと前に進むことができます。

あなたの「注意力」が、あなたの人生を左右しているのです。

突然ですが、写真1を見てください。

あなたはこれが何の写真に見えますか？

「海岸にいる美女」の図に見えるでしょう。しかし、それだけでは間違いです。

■悩みに心を奪われている状態はマジックを見ている時と同じ

実は、なんとこの写真の中にフランシスコ・ザビエル師が隠れています。あなたはどれくらい早く、ザビエル師にお気づきになったでしょうか？

最初は、美女に目を取られてしまい、気がつかないかもしれません。ですが、視野を広げてみると、右下の岩の影にザビエル師が隠れているのです。美女に注目がいくと、右下に隠れているザビエル師が見えない。この「注意したもの以外気づかなくなる」現象を「ミスディレクション」と言います。

「ミスディレクション」はマジックで使われる用語。マジシャンがタネから観客の注意をそらすために使われます。しかし、実は日常生活でも、あなたは注意を「ミスディレクション」されているんです。ミスディレクションされたあなたは、視野が狭くなりネガティブな方ばかり注意してしまうでしょう。しかも、あなたはミスディレクションされていること自体気づきません。

友人と楽しい食事をしていても、注意が「不安や悩み」に向いていれば、楽しさや充実感に気づかなくなってしまいます。美女に夢中になってザビエル師に気がつかないのと同じように。

つまり、あなたが心ここにあらずの時は「ミスディレクション」されているのです。

■現実は注意を向ける方向によって作られる

注意はテレビのチャンネルのようなもの。例えば、未来の心配にばかりチャンネルを合わせていると不安や焦りがつのり、過去にばかりチャンネルを合わせていると後悔でふさぎ込み、欠点にばかりチャンネルを合わせていれば自分を責めすぎて鬱(うつ)になってしまうでしょう。その結果、目の前に平穏や高揚感、チャンスがあってもあなたは気づけません。

もしあなたが、夫や妻、彼氏や彼女に対して「もし浮気されていたらどうしよう」「なんで返事をくれないんだろう」「嫌われているのかも」といったネガティブなチャンネルにフォーカスしていると、本当にネガティブな部分ばかり目につくようになります。たとえポジティブな部分があっても、ザビエル師が見えなくなるのと同じように、ミスディレクションによって隠されてしまいます。

あなたの「注意」があなたの「現実」を創り出しています。

注意していないものは、私たちは気づけません。例えば、この文を読んでいる間、あなたは「まばたき」していた感覚を感じていましたか？　足が床に触れている感覚を感じていましたか？

間違った方向にばかり注意してしまえば、あなたは鬱やメンタル不調になってしまいます。

例えば、新型コロナウイルスの感染拡大が気になってしまって、注意を切り替えようとしても、Twitterで情報をひたすらあさったり、ニュースを調べ続けたり。その時あなたは「不安」な方に注意をミスディレクションされています。

すると本当はリラックスするはずの貴重な時間が、気づいたら不安との格闘の時間になってしまった……ということも。

もし不安や悩みに振り回されてしまうのなら、あなたは人生を「ミスディレクション」されています。

しかし、注意力を鍛えれば、あなたがもしマイナスな方へ注意を向けてしまっても、スパッと注意を切り替えて大切なことへ意識を100％集中させることができます。

■コントロールできないことには注意を向けない

では、どのように注意力を鍛えれば良いのでしょうか？

実は、たった2つのポイントを意識するだけで、注意力が劇的にアップします。

1つ目のポイントは、「コントロールできないこと」は注意しないこと

もし自分の本来の力を100％発揮したいのなら、自分がコントロールできないことに注意してはいけません。自分でコントロールできないものに注意を向けると、永遠と悩み続け、ミスディレクションから脱出できなくなってしまいます。では、自分ではコントロールできないこととは何でしょうか。

・他人はコントロールできない

私たちはついつい相手に期待してしまいます。しかし、他人の行動や気持ち、考え方を変えようとすることにフォーカスしてはいけません。

例えば、職場で上司があなたを褒めたり叱ったりすることはコントロールできません。同じく、部下があなたの依頼した仕事をこなすかどうかも、コントロールできません。また、子供が宿題をしたり片づけをしたりするかもコントロールできません。相手が自分の指示や依頼に従うかどうかは、誰もコントロールできないのです。牛を水辺まで連れて行くことはできても、実際に水を飲むかどうかは牛自身の意思なのですから。

・未来はコントロールできない

未来の話も、誰にもコントロールできません。新型コロナウイルスの感染者が何人増えるのか、医療崩壊するのか、会社が倒産するのか、自分ではコントロールできません。もちろん、手洗いやマスクをする、融資を申し入れるといった行動はとれますが、未来の結果はコントロールできません。大会で優勝できるか、金メダルを獲れるか、受験に合格できるか、面接で通るか、昇給できるか、勝負事の結果も同じです。できる限り努力することはできますが、自分が最高のパフォーマンスをしても相手がそれ以上だったら負けるのです。

■自分の行動にフォーカスする

2つ目のポイントは、「コントロールできる自分の行動にだけ注意を向けること」

相手のうれしい行動はあくまでボーナス。自分の行動の結果、ボーナスで相手のいい反応が得られます。そして未来の結果も「運」が支配する領域。自分の行動は努力することができますが、結果そのものはコントロールできません。

志村 祥瑚『人生のタネ明かし 成果を出す人に共通する心の秘密』（講談社）

自分でコントロールできないことはすっぱり諦めたほうが心は楽になります。天気と同じようなもので、自分でコントロールできない自然現象を楽しむくらいのほうが健全です。

相手からうれしい反応が得られたり、未来の結果が変わったり、いい気持ちになったり……それらの結果は、自分の行動に100％フォーカスしたことで手に入るボーナスのようなもの。結果に至る一つひとつの行動にフォーカスを向けることで、本来の自分の力が100％発揮できるようになるのです。

コントロールできないことには注意せず、コントロールできるものにだけ注意すれば、ミスディレクションされづらくなります。ぜひ、注意力をマスターして、人生を大きく前進させてみてください。

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志村 祥瑚（しむら・しょうご）
精神科医、マジシャン
日本認知科学研究所代表理事。慶應義塾大学医学部卒業。幼少期よりマジックを始め、マジックの持つ錯覚や思い込みのメカニズムに興味を持つ。2012年ラスベガスジュニアマジック世界大会優勝。「思い込み」の研究をしていくために精神医学を専攻し、精神科医としてマジックを融合させたメンタルトレーニングライブを全国で行っている。カヌースラロームオリンピック日本代表選手、新体操日本代表「フェアリージャパンPOLA」等、トップアスリート、企業経営者などのメンタルコーチを務める。著書に『人生のタネ明かし　成果を出す人に共通の心の秘密』（講談社）。

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（精神科医、マジシャン 志村 祥瑚）