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人間と、ご長寿動物のイルカ。共通していること、何だと思いますか?

プレジデントオンライン / 2020年10月23日 9時15分

PIXTA=写真

■ホンマでっか!? 人間の寿命のフシギ

生物学的には、人間の寿命ってせいぜい45歳から50歳なんだ。50歳を過ぎたら、あとは余分な人生。動物って普通は、繁殖年齢が終わったら死んでしまう。人間みたいに繁殖年齢が過ぎてから、倍ほども生きている動物はいないよ。

女の人は50歳を過ぎたら、まず子どもを産まないでしょう。「おばあさん仮説」というものがあって、孫の面倒をみて孫の生存率を上げる貢献をすれば、リスクを冒して子どもを産むより自分の遺伝子がたくさん残る、という仮説だ。

人間みたいに、孫が認識できる動物は長生きしてもむだじゃない。繁殖年齢を過ぎてから孫の面倒をみるイルカも長生きで、50~60年は生きるんじゃないかな。ゾウは60~70年だね。シロナガスクジラは、もっと生きる。人間よりも長生きで、120年ぐらいだ。

長生きするかどうかは、DNAを調べるとわかるんだよ。絶滅種でもDNAが採取できればわかる。ケナガマンモスは60年。恐竜まで遡ると古すぎて、DNAをうまく採取できないからだめだけど。動物園で生きるか野生で生きるかでも寿命は違うね。動物園で飼われると、事故や病気や餓死が少ないから、長生きする。

人間も、野生の頃は寿命が短かったと思う。縄文時代の日本人の平均寿命は15歳っていわれてるんだ。でもさ、厳密に言えば、生命はずっとつながってて、38億年前に生まれた生命が、細胞分裂を繰り返して、我々が誕生してるわけだ。そうなると、僕だと本当は38億73歳だよね。

生物学者 池田清彦氏

そう考えると、先のことを考えても意味がないんじゃないかな。若い頃なら10年後の夢を想像するのが楽しいけど、じいさんになると10年後なんて墓の中かもしれないじゃん。死ぬことを考えると、それが頭にこびりついて離れないから、未来のことは考えなきゃいいんだよ。年を取ったら、今日、明日のことだけ考えて、先のことは考えない。先のことを考えると楽しくないからね。これが僕のモットーだ。

生き生きしている年寄りは、今だけを考えて生きている。それって、動物に近い生き方だよ。動物は現在のことしか考えない。「今、痛い」とか「苦しい」とかは取り除きたいけど、数年先の生活を不安に思いながら生きているということはない。小さな子どももそうだよね。今のことしか考えてない。

子どもは大人になるにつれて人生のことを考えて、じいさん、ばあさんになったらまた、子どもに戻っていくよね。だから、70歳過ぎのじいさん、ばあさんが、5歳ぐらいの子どもと遊ぶと、加減がちょうどよくて面白い。

今の新型コロナウイルスだって正体がわからないんだから、先を案じるより、今日を楽しく生きたほうがいいじゃん。

■マイナーな虫を採集する情熱を見よ

今を楽しく生きるには、趣味は大事だね。趣味って人間ならではのもの。他の動物には趣味がない。生きることだけ。余計なことはあんまりしない。脳が大きくて発達した動物でないと、遊んだりしないんだよね。人間に次いで体の割合的に脳がでかいのはイルカ。イルカは遊ぶし、長生きもする。

年を取ってから、何を趣味に持てばいいか。今までやってきたものが一番いいんじゃないかな。例えば絵とか、ゴルフとか。スキルは落ちていくんだけど、知識は蓄積されていくから、それなりにできるようになる。

人間には承認欲求があるから、人に認められて、慕われたら嬉しいよね。定年前は、趣味がなくても、会社で偉くなれば職場で承認欲求が満たされる。でも、定年になって辞めた途端、誰も持ち上げてくれない。趣味を始めたはいいけれど、一番ぺーぺーだから誰も尊敬してくれない。そうすると、生きる気力がなくなっちゃうんだ。

そういう人はね、なるべくマイナーな趣味を始めるといいよ。メジャーな趣味は優秀な人がいっぱいいるから、60歳から頑張っても上にはいけない。だから、マイナーな趣味がいい。

虫捕りなんていいよ。蝶やクワガタなどメジャーな虫は研究し尽くされている。だからマイナーな虫がいいね。

例えば、横浜国立大学の名誉教授で青木淳一さんというダニの世界的な権威がいる。今、85歳ぐらいかな。ササラダニというダニの研究で、定年までに300種以上を発見して名前を付けた。でもさ、ダニを趣味にする人はあまりいないし、新種を見つけても弟子と研究仲間ぐらいしか褒めてくれない。だから僕は「カミキリムシとかやったら」って言ったんだけど、嫌だって。「カミキリムシは上がたくさんいるだろ、絶対追いつかないから嫌だ」って。その後、ホソカタムシっていう、あまり研究されてない甲虫のグループを一生懸命研究し始めて、あっという間に日本の第一人者になったよ。

新種を見つけると、自分で名前を付けたりもできるでしょ。自分が死んでも、永久に図鑑に残る。楽しいよね。青木先生は78歳のとき、「人生で今が一番楽しい」って言っていた。いい人生だよね。蝶やクワガタじゃ、こうはならなかった。

ただ、マイナーなものがいいと言ったけど、誰もやってないものはお勧めしない。理解してくれる人がいないから面白くない。ちょっとは知られているもので、なるべくマイナーなものがポイントだね。あと、夫婦で同じ趣味だと、時間や費用の感覚を共有できていいよね。

■天皇家も生き物がお好きなんだ

新種といえば、先日、上皇陛下が新種のハゼを見つけて論文を書くというニュースがあったね。陛下はずっとハゼの研究をライフワークとしてやっておられてね。まだ皇太子だった頃、魚類学会に来られて、一番前に座って熱心にお聞きになっていたと人づてに聞いたことがある。

天皇の家系は、みな生物学の研究をされていて、昭和天皇はずっとヒドラを研究されていた。今の天皇陛下が幼少の頃も、皇居に弟さんもみんなで集まって、虫を捕ったりしたんだって。雅子さまも虫がお好きなんだよね。僕の友達で日本蛾類学会の会長の岸田泰則っていうのが、雅子さまが小学生のときの生物部の先生で。岸田は「俺、雅子さまに展足させた、展翅させた」とか「標本作らせた」とか嬉しそうに言ってたなあ。

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池田 清彦(いけだ・きよひこ)
早稲田大学名誉教授
早稲田大学名誉教授。1947年、東京都生まれ。東京教育大学理学部生物学科卒。東京都立大学大学院理学研究科博士課程単位取得満期退学。専門は、理論生物学と構造主義生物学。フジテレビ系「ホンマでっか!?TV」への出演など、メディアでも活躍。ビートたけしとは同じ小・中学校の出身。

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(早稲田大学名誉教授 池田 清彦 構成=力武亜矢 撮影=的野弘路)

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