大企業のサラリーマンこそ、Twitterの「ネタ投稿」に力を入れるべきだ
プレジデントオンライン / 2020年9月19日 11時15分
■2019年までツイッターに触れたことがなかった
私がツイッターを始めたのは、2019年の5月でした。広告会社で営業として働いている私は、仕事でツイッターキャンペーンなどに関わるものの、プライベートでは触れたことがありませんでした。当時、社会人2年目だった私は「若手だからSNSに詳しいよね」なんて言われながら先輩方やクライアントからSNS施策のアドバイスを求められることがありましたが、ツイッターに触れたことがないため、答えに困ることも少なくありませんでした。
だから勉強のためにツイッターを始めました。しかし始めてみたものの、何を投稿すればいいのかわかりません。どこに向かって言葉を放っていいのかもわかりません。
■「切なかった体験」ツイートでフォロワー6万人に
しばらく考えた末に、まずは思いつくままに、自分の切なかった体験をつぶやくことにしました。
例えば、下記のような投稿です。
「大学生の頃、付き合っていた彼女に『誕生日に何が欲しい?』と尋ねたら、『取り鉢が欲しい。』と言われたことがありました。変な子だなぁと思いつつ、僕なりに一生懸命選んで、取り鉢をプレゼントしました。すると、号泣されました。彼女が欲しかったのは、トリーバーチでした。」
「YouTubeでローラが料理を作っていたので、美味しそうだな、食べてみたいな、と思っていたら、ローラが作っていたのは犬のエサでした。」
こんなことを、毎日つぶやいています。すると、フォロワー数は1年間で6万人以上増えました。そして私の投稿は出版社の編集者の目にとまり、せつないエピソードをまとめた本も出版しました。こうして私は、インフルエンサーと呼ばれるようになりました。
■大企業にとって社員のSNS運用はリスクになる
伝統的な大企業の多くは、社員のSNS運用を「リスク」と捉えています。私の働く会社も例外ではありません。確かに個人が炎上した際にもたらす、企業への被害は甚大です。いくら気をつけていても、炎上してしまうことはあるし、そんな「リスク」を抱える以上の「メリット」はないと、大企業サイドは考えています。
また、大企業の社員にとっても、大企業というブランドの恩恵を受けているため、リスクを取ってまでSNSで個人をブランディングする必要がない、と考える人が多数です。
かつて、SNSで頻繁に発信していたサイバーエージェントの藤田晋社長は、近頃SNSを更新しない理由を、新R25のインタビューでこのように答えていました。
「会社の規模が大きくなってきたのか、社会に対する影響が大きくなったのか、なんか言うと(まわりから)言われやすくなったじゃん。だからSNS自体がちょっと窮屈になってきたんだよね」
さらに、「名を上げる段階はSNSを駆使してメッセージを伝えて、何がしたいのか、自分は何者なのかを伝えていたけど、今はもう、そういうフェーズではない」と答えていました。
大きくなった企業ほど、SNSで得られる恩恵は少ないのかもしれません。しかし今回はあえて、大企業で働くサラリーマンがSNSを活用することで得られる「メリット」のほうにフォーカスして、お伝えしたいと思います。
■ツイッターを活用して“指名”の仕事が増えた
私がツイッターを活用して得られたビジネス上での最大のメリットは、指名の仕事が増えたことです。
大企業の若手社員は一般的に裁量権が小さく、何か提案しても、まずは主任に報告し、その上の課長、さらにその上の部長、とたくさんの人から承認を得る必要があります。そもそも最終承認者まで提案が届くことはほとんどありません。仮に届いたとしても、多くの人から承認を得る過程で、元の提案と全く違うものになっていることも少なくありません。
小学生の頃、伝言ゲームをおこなった際に「パンを食べるなら、焼き立てがいちばん!」が「パンツを舐めるなら、履きたてがいちばん!」に変わってしまい、しばらく教室が変な空気になるというショッキングな事件がありましたが、大企業の伝言ゲームでも同じようなことが起こります。
一方、指名でいただく仕事は、個人の裁量権が大きいため、やりたいと思ったことに挑戦しやすくなります。
■ツイッターを通じて「やりたい仕事を発信できる」
私の場合、切ないことをつぶやいているだけなので、いわゆるビジネス系インフルエンサーとは違います。だから私の仕事ぶりや実績などは、一緒に仕事をした人にしかわからないはずです。しかし、それでも指名でお仕事をいただく機会が増えました。指名される理由は、2つあります。
1つ目は、ツイッターを通じて多くの人に「やりたい仕事を発信できる」からです。
私は今、広告会社で営業職をしていますが、クリエーターとしての仕事にも挑戦したいと思っています。しかし、いくら私が挑戦したいと言っても、気付いてもらえなければ、誰からも指名してもらえません。ですが、ツイッターで「こんなことできたらいいな」と意思表明すると、任命権を持つ社内の管理職の方や、決裁権を持つクライアントに、まれに声が届くことがあります。もちろん、やりたいことがなんでも叶うわけではありませんが、うまくいけば、希望の仕事に挑戦するチャンスをいただけることがあります。
■大企業だからこそ「名前を覚えてもらう」が大事になる
2つ目は、SNSでの発信を通じて「社内で名前を覚えてもらえる」からです。
管理職などの裁量権の大きい人のもとには、日々あらゆる案件が舞い込みます。通常は、人によってアウトプットの差が出にくい仕事は若手社員に振り分けられることが多く、アウトプットの差が大きい「創造的な仕事」はエース社員や、管理職が信頼する社員に振り分けられることが多いです。コロナの影響でリモートワーク中心になったことで、人間関係の構築が難しくなっている今、管理職の方が全く知らない社員に「創造的な仕事」を依頼することはほとんどなくなりました。
とはいえ、まれに予算の都合などから、「創造的な仕事」を若手に振らざるを得ない状況もあります。これは若手にとって大きなチャンスです。しかし大企業の若手社員は、普段アウトプットの差が出にくい仕事をしているため、管理職の方は明確に優劣をつけられません。そんな時に、ツイッターでなんとなく「存在」を知られていることは、大変有利に働きます。どれも同じに見えるとき、なんとなく知っているほうを選ぶという構造は、CMと同じです。大企業では、たくさんの人が働いているので、名前を覚えてもらうこと、それだけでも大きな価値があります。
■個人発信のポジティブな口コミが重視される時代
大企業で働く会社員がSNSを活用するメリットはまだまだたくさんあります。今回は、「会社員側」のメリットを挙げましたが、私は「企業側」にもメリットがあると思っています。
これまでの時代は、大企業が一方的にポジティブなメッセージを発信すると、それらに対する一部のネガティブな声は拾われなかったので、なんとなく「大企業=良い会社」というイメージを醸成することができました。しかし、ソーシャルメディアによって生活者の声が可視化され、企業のネガティブな情報も拡散されるようになったことで、単純に「大企業=良い会社」というイメージを抱く人は、ほとんどいなくなりました。
そして良い会社の評価基準は、企業発信のポジティブなメッセージよりも、個人発信のポジティブな口コミのほうが重視されるようになりました。
そんな時代だからこそ、企業目線での一方的な声ではなく、大企業で働く個人の自由な声が、結果的に企業ブランドを育てるうえで大切になってくると私は思っています。
Nizi Projectでも話題になった韓国の名プロデューサーのJ.Y.Parkさんが、アイドル候補生の方々に向かって「カメラの前でできない言動や行動は、カメラがない場所でも絶対にしないでください。気をつけようと考えないで、気をつける必要がない立派な人になってください。」と言っていました。個人が、企業の人格をつくっていくこの時代に、J.Y.Parkさんの言葉がやけに胸に残りました。
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実家が全焼したことのある新橋の会社員。ホストクラブ、バーテンを経て、現在は広告会社に勤務。京都大学でMBAを取得するも、経営していたバーは閉店。親が始めたカフェの経営にアドバイスするも、食べログの評価は2.9。Twitterで毎日切なかった出来事を投稿している。近著に『実家が全焼したらインフルエンサーになりました』(KADOKAWA)がある。
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(インフルエンサー/ラジオCMプランナー 実家が全焼したサノ)
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