「コロナから家族を守る」感染症専門医が自宅でやっている5つのポイント
プレジデントオンライン / 2020年9月21日 11時15分
■物に付着した菌やウイルスの寿命とは
新型コロナウイルスも、「接触感染」するといわれています。「接触感染」とは、感染者の手などからモノへと菌やウイルスが移動し、そこに触れた手などを介して感染するという経路です。
たとえば、感染者Aさんが、自分の口や鼻に触れると、口や鼻の粘膜から手へとウイルスが移動します。その後、Aさんが手を洗わずに電車に乗り、菌やウイルスが付着した手でつり革につかまったとしましょう。
ここでAさんに付着していた菌、ウイルスの何割かがつり革に移動します。そのつり革に健康なBさんがつかまると、今度はつり革からBさんの手へと菌、ウイルスが移動します。そしてBさんが、手を洗わずに自分の口や鼻に触れると、手に付着していた菌、ウイルスがBさんの体内に侵入してしまうのです。
新型コロナウイルスは、人類が初めて出会うウイルスであり、まだまだ実体がつかみきれていません。
現時点で、新型コロナの生存時間は、「ダンボールの表面では約24時間」「ステンレス、プラスチックの表面では48~72時間」と示唆されていますが、さらなる実証研究が待たれるところです。
■手洗いとアルコール消毒は何が違うか
手を石鹸で洗い流す「手洗い」は「洗浄」である一方、「消毒」に当たるのは「アルコール消毒」です。
医療現場では、目に見える汚れがあるときには手洗い、目に見える汚れがないときにはアルコール消毒、としています。
細菌やウイルスは手についても見えませんので、医療従事者は「患者さんに触れる前」「清潔操作(点滴などをするとき)の前」「患者さんの体液に触れた可能性があるとき」「患者さんに触れた後」「患者さんの周囲にある物品に触れた後」の5つのタイミングでアルコール消毒をするようにしています(WHOの推奨する5モーメントといわれるタイミングです)。
アルコールは、それ自体に菌やウイルスを破壊する作用があるため、手やモノに吹きかけてなじませたら、洗い流す必要はありません。
アルコール消毒は、手洗いと同等に感染症予防に効果的ですが、その際にも、いくつか意識していただきたいことがあります。
・「ワンプッシュ押し切った量」が適量
今は、たいていのスーパーや公共施設の出入り口に「プッシュ式のアルコール消毒液」が設置されています。
これを使うときに気をつけたいのは「ワンプッシュ押し切る」ことです。製品によって多少異なりますが、多くの製品がしっかりワンプッシュ押し切って出た量が適量となります。
しっかり押し切ると手からあふれそうな量になるため、「もったいない」「無駄遣いしては申し訳ない」と思っていた方も多いかと思います。しかし、実は「ワンプッシュ押し切って出る量」が、両手をアルコール消毒できる適量なのです。
・手首までなじませながら乾かす
ワンプッシュ押し切って手にアルコールを受け取ったら、乾くまで両手にしっかりともみ込みます。
よく、手をパタパタと振って乾かそうとしている人を見かけますが、それだと、両手全体に行き届かないままアルコールが揮発しているだけで、効果半減です。手首までしっかりと、アルコール消毒液をなじませるようにしてください。
■いつ、どんなときに手を洗うか
最近は、家庭内感染が増えてきました。家庭内の感染を防ぐにも、ひとつに手を洗うことが大事です。
一人暮らしならば、外出から帰ってきたとき、トイレの前後、調理の前後、食事の前後で手を洗えばまず問題はないですが、家族と同居している人は、さらに頻度を上げたほうがいいでしょう。咳やくしゃみを手で押さえたり、鼻をかんだりした後にも手を洗います。同居人に高齢者がいる場合は、なおのことです。
とくに、新型コロナウイルスのように、症状が現れない期間(潜伏期間)が長い感染症が流行しているときは、「自分がすでに感染している可能性」を念頭に置いて、できるだけマメに手を洗うことをおすすめします。
もし症状が現れはじめたら、もはや手洗いの頻度だけの問題ではありません。部屋を別にする、食事を別々にとるなどの「自宅内隔離」が必要です。
■家庭内感染を防ぐ5つのポイント
家庭内感染を防ぐためのいくつかのポイントを紹介しておきましょう。
・家族みんなが触れるドアノブ、電気のスイッチ、テレビのリモコン、食器などは、アルコール消毒液か次亜塩素酸ナトリウムの消毒液を染み込ませたペーパータオルや乾いた布で消毒します(ただし次亜塩素酸ナトリウムはデリケートなものには使えません。また、成分が残っていると素材が傷みますので、後で乾いた布などでふき取るとよいでしょう)。
・枕カバーなどの寝具は個別に洗いましょう。
・食事は、できるだけ個別に盛りましょう。夏場はそうめんなどを1つのざるに盛って、みんなで食べるご家庭もあると思いますが、新型コロナウイルスのように潜伏期間が長い感染症が流行っているときは、避けたほうが無難だと思います。
・感染症が疑われる人の入浴は、同居人全員の入浴後にしましょう(同居人に、「うつさない」ため)。
■子どもと楽しくできる対策がある
手洗い、アルコール消毒、三密を避けること、マスク。こうした基本の感染症対策を、小さなお子さんに実践させる難しさを感じている方もいらっしゃると思います。
「三密」は、親子が一緒に行動していれば、自動的に避けられるでしょう。
となると、手の衛生とマスクの重要性をどう伝えるかですが、遊びの要素を取り入れながら、これらを教える方法があります。
親子一緒に、手にたっぷり「ラメ」をつけて丸一日を過ごします。すると1日が終わるころには、家の中の至るところ、さらには自分の顔中にも、ラメが付着しているはずです。つまり、それだけ菌、ウイルスは、いろいろなところに付着しやすく、そこから感染しやすいと示すことができるのです。
この遊びを、マスクをつけた状態で行えば、マスク表面に多くラメが付着することになります。マスクをつける意味や、マスクの取り扱い方(耳の部分を持つこと)、マスクの表面に触れないことの重要性なども教えられるというわけです。
もちろん、大人にとっても、感染症予防の重要ポイントを再確認できる、有意義な遊びといえます。ラメの代わりに、ブラックライトを当てると光る特殊塗料とブラックライトを準備し、同様に行ってもいいでしょう。
このような予防対策をすることにより、インフルエンザの予防にもなりますので、積極的に取り入れてみてはいかがでしょうか。
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KARADA内科クリニック院長 医学博士 日本感染症学会専門医 日本内科学会認定医
前東京医科大学病院感染制御部副部長、感染症科医局長。スッキリ等情報番組や、NewsPicks「WEEKLY OCHIAI」のコロナウイルス関係の回でコメンテーターをつとめる。東京都感染症マニュアル2018の作成に携わる。2008年 東京医科大学 卒業 その後総合診療や長崎県五島列島での離島医療に携わり、 2013年 東京医科大学病院 感染制御部・感染症科(渡航者医療センター 兼任)助教、2018年東京医科大学茨城医療センター感染制御部部長、感染症科科長 講師、2019年 KARADA内科クリニック 開設。感染症の専門的な知識を持ち、地域医療に携わる。
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(KARADA内科クリニック院長 医学博士 日本感染症学会専門医 日本内科学会認定医 佐藤 昭裕)
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