心理カウンセラー直伝、なぜか他人に否定されやすい人が、自己肯定感を保つコツとは
プレジデントオンライン / 2020年9月21日 11時15分
※本稿は、大嶋信頼『あなたの才能があなたを苦しめる』(すばる舎)の一部を再編集したものです。
■その欠点は、実は欠点ではないのかも?
以前病院に勤めていたときのことです。
新しい病院を立ち上げるための会議で、院長先生が「何か新しい病院に導入したほうがいいことはありますか?」と出席者に質問します。
すると、隣に座っていた頭がよさそうなイケメン男性が、「いや、利用者さんもスタッフも混乱させないように今のままのほうがいいでしょう」と言います。
私は、そのイケメンの保守的な発言になんだかイライラして、「以前の2階建てのクリニックとはちがって、10階建てのビルになるんだし、どの階からでも患者さんの情報を閲覧、記録できる『電子カルテ』のシステムを導入するべきです」と発言しました。
すると、保守派のイケメンが、「コンピューターで患者さんの情報を入力する」なんて、そんな夢物語みたいなことはあり得ない、と即座に否定します。
当時は「電子カルテ」がまだほとんどの病院で普及しておらず、インターネットでさえ、一部の人しか使っていないような時代でした。
私は、自分の意見を否定されて、ムカっときて、「なんで調べもしないのに最初から否定するんだ!」とイケメンに反論してしまいました。
そう、いつも私はこうやって「相手に否定された」と思い、不安になってキレてしまい、攻撃的な発言をして人間関係を壊してしまいます。黙っていれば、他のスタッフのようにうまくできるはずなのに、私は黙っていられないダメ人間……。
心の中で反省していると、院長は「大嶋さんにはいい怒りがあるね!」と、なぜかほめてくれます。続けて、院長は保守派のイケメンに対して、「怒りはエネルギーなんだよ。怒りがなければ想像力は働かないからね」と優しく言ってくれました。
すると、イケメンは私のことを否定するのをあきらめただけでなく、ちょっとだけ尊敬の眼差しで見るようになったのです。
■実は、才能に苦しめられてきた過去
これまで「自分の怒りは自分の最悪なハンディキャップ」とずっと思っていました。これがなければ、人間関係でも勉強でも淡々とこなすことができて、もっと何かを成し遂げることができていたはず。
いつも、この怒りのせいで勉強にも集中することができず、人間関係でもすぐにキレて、バカにされてみんなから見くだされて友だちになることができませんでした。
「怒りはエネルギー」と院長から言われて、「たしかに!」と自分でも思い当たることがその瞬間にたくさん出てきます。
そう! 私をバカにして見下す友だちや両親に対する怒りがなければ、「見返してやる!」と、アメリカに勉強に行くなんてことはしなかった。
怒りがあったからこそ、海外で勉強を続けることができた。それに、怒りがなければ、企業で働いていたときに、社長が嫌がるくらいのたくさんの企画書を書くことはできなかったはず。
たしかに、いつも「この会社のやり方じゃダメだ!」と怒って毎日、新しいアイディアを出して企画書を書き続けていました。
怒って、会社を飛び出してしまったけど、そうしなければ本来、私がしたかった心理学の仕事はできなかった。
「あ! 私の怒りって私の才能だったんだ!」と気づいてびっくりします。
「自分の才能に苦しめられていたんだ」と思ったら、自然と笑みがこぼれてきました。
自信がない人、才能がまったくない、と思い込んでしまっている人ほど、本当は才能の塊だったりします。
その才能のせいで、周りから足を引っ張られてしまっているのです。
周りから足を引っ張られると、才能を気づかないうちに隠してしまい、自信がなくなってしまいます。だからこそ、自信のないところに自分の才能が埋まっている可能性が高いのです。
■「才能なんてない」という謙虚さが足を引っ張る
才能があるせいで、足を引っ張られてしまう人は、「私に才能があるなんて思えな〜い!」と、かまととぶっています。なぜなら、才能があると認めてしまったら、足を引っ張られるのがわかっているから。「私にはそんな足を引っ張られる才能もないし」というのも同じで、「才能を認めてしまったら、本格的に足を引っ張られる」と思っているから。
しかし、実際は才能を隠したら、よけい足を引っ張られます。
その仕組みがわからないから、「才能を認めたら、足を引っ張られるにちがいない」と思い、才能を隠してしまうのです。
人から足を引っ張られる人は、「想像力がものすごく豊か」という特徴があります。
普通の人は「自分の才能のせいで、足を引っ張られている」という想像はできません。自分が何か悪いことをしたのかな、相手は不機嫌なのかな、と思うだけ。
才能豊かな人は、「自分の才能が発揮されると、他人から足を引っ張られるかもしれない」と想像してしまい、その想像した通りに相手から足を引っ張られて、ものすごく嫌な目に合います。
「足を引っ張られているというのは、単なる私の想像で思い込みなのでは?」と思う一方で、実際に相手から不快なことをされるので、「もしかしたら思い込みではないのかも?」といつも心が揺れ動きます。すると、想像力がさらに働いて、「才能を隠さなきゃ」と思い、ますます足を引っ張られるような状況をつくり出してしまう。
そうなんです。想像力が豊かな人ほど足を引っ張られてしまうのです。
でも、それは「想像力の豊かさを認めないから、足を引っ張られる」という仕組みになっています。想像力の豊かさを認めないと、能力を隠していて「謙虚」に振る舞っている、と相手から受け取られてしまいます。だから相手の脳内で嫉妬の発作が起きる。
嫉妬の発作は「自分よりも優れた才能を持っているのに、自分よりも立場が下(謙虚)」という条件で起きます。「才能をちゃんと認めたほうが、実は足を引っ張られない」という仕組みを知ったときに、ぶりっ子仮面をかぶった自分は、実はちゃんと自分の才能を知っていたんだ、という事実に気づくのです。
■自分の「想像力の豊かさ」を認めよう
自分の「想像力の豊かさ」を認めると、他人から足を引っ張られることがなくなり、自由に想像力と才能を発揮できるようになります。
「想像力の豊かさ」を認める方法はいたって簡単で、自分の想像力を決して否定しなければいいだけ。「あの人は私の才能に嫉妬して足を引っ張っているのかもしれない」と想像したら、その想像力の豊かさをちゃんと見てあげます。
自分の才能も想像力も否定しないで見てみると、想像力の触手は足を引っ張ってくる人の方向に伸びていきます。「この人はなぜ足を引っ張ってくるのか?」というところまで想像力の手が伸びていき、「なるほど! あの人は孤独だから、私に置いていかれないように足を引っ張っているんだ!」ということが見えてきます。
想像を「私の勘違いかもしれない」と否定していたときは、その想像力の触手が相手まで伸びていかないので、相手のことがよくわからず、「わからない相手はモンスター」と思って、恐怖の対象になります。モンスターに対しては、「ひたすら自分の存在を隠して相手が過ぎ去るのを待つしかない」という受け身な態度にしかなりません。
ところが、ちゃんと想像力の豊かさを認めて、その手が相手に伸びていったときに、「相手も同じ人間で、孤独におびえているだけなんだ」という相手の本当の姿が見えてきます。
そして、「相手は恐れる対象ではない」ということがわかり、自分の才能も想像力も隠す必要がなくなります。
自分の想像力の豊かさを認め、自由にその力が働くままにしてあげると、その想像力はしっかりと相手の本当の姿を把握してくれて、「足を引っ張られる恐怖」から解放してくれるのです。
「あれ? 想像力って相手に対する恐怖を生み出していたんじゃないの?」と、矛盾を感じるのですが、それは「自分の想像力の豊かさをちゃんと認めてあげていなくて、中途半端になっていた」ことが原因。
豊かな想像力を認めて、その想像力が働くままにすれば、相手におびえる必要がなくなります。すると、才能があればあるほど足を引っ張られる、という悪夢のような現実から抜け出すことができるのです。
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アルコール依存症専門病院、周愛利田クリニックに勤務する傍ら、東京都精神医学総合研究所の研究生として、また嗜癖問題臨床研究所付属原宿相談室非常勤職員として依存症に関する対応を学ぶ。嗜癖問題臨床研究所付属原宿相談室室長、株式会社アイエフエフ代表取締役を経て、現在、株式会社インサイト・カウンセリング代表取締役。短期療法のFAP(Free from Anxiety Program)療法を開発し多くの症例を治療している。
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(心理カウンセラー 大嶋 信頼 写真=iStock.com)
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