各国元首のコロナ対応でわかった、これから台頭していく女性リーダーの強み2つ
プレジデントオンライン / 2020年9月26日 11時15分
■感情の機微を読み取れる女性がコロナ禍で活躍
新型コロナという未曽有の危機の中でリーダーの真価が問われ、本当のリーダーシップが試されました。そこで台頭したのが女性リーダーたちだったことを私は心強く思います。
コロナ危機の本質は、戦う相手が外敵や他国ではなく、見えないウイルスであること。そして人々の恐怖や孤独、不安という内なる感情とも闘わなければいけないとき、その恐怖を鎮めることが求められます。女性はそうした感情の機微を読む力がとてもすぐれています。
敵国をたたくことで、危機を勝ち抜こうと鼓舞するような男性的レトリックはウイルスとの闘いには役に立ちません。人々の不安と向き合い、「大丈夫」と励ましたり、勇気づけたり、やさしく包み込む共感力が必要とされる危機において、女性としての強みが生かされたのだと思います。
もちろんそれだけではなく、非常に能力が高い。とくに女性は「ガラスの天井」といわれる障壁を乗り越えなければいけないので、男性たちと比べてはるかに大変な道を歩んできているわけです。まさに選ばれた超一流の人たちがトップに立ち、こうした非常事態時でもリーダーシップを発揮できたのでしょう。
ドイツ、ニュージーランド、台湾、フィンランド、デンマーク、ノルウェー、アイスランドなど、コロナ対策に成功しているといわれる国では女性リーダーの活躍が目立ちます。それぞれスタイルの違いはあれど、共通しているのはやはり“共感力”です。
ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、本当にどっしりとした重厚感があって、「ドイツのお母さん」といわれています。もともと物理学者としての知見を持っているので、科学的な知識をもとにロジカルに説明される。この人に任せていれば大丈夫と思えるような安心感があります。
そもそも男性と女性ではリスクに対する受容度が違うといわれています。男性のほうがリスクの高い行動に出やすいのに対し、女性はより安全を重んじるところがあるので、リスクに対してきちんと予防行動を取る必要性がわかっている。その姿勢が信頼につながるわけです。
ニュージーランドのアーダーン首相は40歳の若いリーダーですが、地に足の着いた方で強い信念を持っています。非常に親しみやすく、「私はあなたの隣にいて、あなたのことを応援している」というメッセージを発信してきました。いわば隣のお姉さん的な包容力があり、悲しみや喜びを一緒に共有していこうという姿が共感されるのでしょう。
自身も母親であり、家で子どもを寝かしつけた後、部屋着姿のままライブ中継でメッセージを送り、国民を励まし続けている。頻繁に国民とコミュニケーションを取ることの重要性もわかっているのですね。
日本の政界では東京都知事の小池百合子さんの「コミュ力」が際立っています。言葉の選び方、場のさばき方などさまざまな工夫が凝らされ、キャッチフレーズのつくり方もうまい。何より彼女のコミュニケーションで舌を巻くのは、徹底した感情のコントロール。声を荒らげたり、取り乱したりすることがない。ヒステリックに怒って聞こえてしまうという、女性特有のトラップ(わな)をわかっているのでしょう。
各国の女性リーダーを見ていると、強さとやさしさのベストミックスを感じます。世界でもっとも早く対応したリーダーの1人、台湾の蔡英文総統は冷静でロジカルな方ですが、冷たさはありません。ノルウェーのソールバルグ首相も揺るぎない強さがあり、国のお母さんという感じ。テレビを通じて子どもたちに直接語りかけるという革新的なアイディアを実行に移し、共感を集めました。
■女性リーダーは2タイプ。共通点は「共感力」
実は女性リーダーもはっきり2つのタイプにわかれます。ひとつは「おっかさん」系で、どっしりと包容力のあるタイプ。そしてもう一方は「お姉さん」系です。ニュージーランドのアーダーン首相のように若々しく、しなやかな強さを持つタイプですね。
フィンランドのマリン首相は34歳ととても若く、フェミニンな女性。ソーシャルメディア上のインフルエンサーを新型コロナウイルス対策に動員して注目されました。デンマークのフレデリクセン首相は理知的で凛とした人で、ロックダウンの最中には歌を歌いながら皿洗いをする映像をフェイスブックにアップして話題に。子どもたちの質問に答える3分間の記者会見も行いました。
アイスランドのヤコブスドッティル首相も40代の若さながら、しっかりと堅実な印象です。国民全員に対して無料のウイルス検査を提供し、封鎖措置や学校閉鎖も回避したことが評価されています。
いずれの女性リーダーもトップダウンではなく、国民と同じ目線に立つという考え方があるような気がします。共感力や思いやりにあふれ、コロナ禍にある国民の不安に心から寄り添う姿勢が評価されたことで、さらに女性リーダーが増えていくきっかけになると思うのです。
実は女性はリーダーに向いている!
米国の大学の研究で、男性より女性のほうが実はリーダーに向いているとの結果が……。その理由を探る。
■教官型から共感型へ。寄り添うリーダーの時代に
リーダーに求められるものは時代によって変わり、今、台頭しているのが「サーバントリーダー」です。強いリーダーシップで引っ張っていくカリスマリーダーから、支援型のリーダーに変わってきています。私は「教官型」から「共感型」へと言っていますが、いわゆる教官のように上から指示を出すのではなく、共に感じて、共に歩むような共感系のリーダー像ですね。
そもそもリーダーの資質を見たときに、実は女性はリーダーに向いているともいわれます。トップリーダーに求められる資質のなかでも、率先力や自己啓発の実践、誠実さ、結果を出すといった上位の項目は圧倒的に女性のほうが強いのです。
特に関係性を築く資質がすぐれており、それにはコミュニケーションの力が欠かせませんが、女性は感情を読み取る力が高いことも判明。それが裏目に出るのは人前でプレゼンするような場面です。あの人はつまらなそうな顔をしていると感じると堂々と話せなくなる。でも、それを強さに変えていけるようなコミュニケーション術も必要です。
もっとも女性の場合は、強さとやさしさを両方備えていなければいけない。リーダーシップには「有能さ」と「温かみ」の2つの要素があり、この2つのベストマッチが求められます。男性の場合は有能でさえあれば、どんなに冷たかろうが許されてしまうところがある。一方、女性にとって温かみの欠落は致命的です。
冷たそうなイメージは「怒っている」と捉えられやすく、「ヒステリック」に見える。逆に温かみややさしさがすぎると、弱々しい、頼りないなどと見なされ、リーダーとして失格の烙印(らくいん)を押されてしまいます。
アメリカの大統領候補だったヒラリー・クリントンさんや立憲民主党の蓮舫さんのように、いかに有能でも、怒り、叫ぶ女性は批判を浴びやすい。日本の女性政治家はこうした「上から目線」系か「上目遣い」系のどちらかといえます。服装を見ても「ゆるフワ女子風」で媚(こび)を売るか、「武装系女子風」で戦いを売るか。働く女性たちは「あんなふうにはなりたくない」と思うでしょう。
■女性の評価は綱渡り。どちらに転んでも批判される
女性リーダーは強すぎても弱すぎてもダメ。許容範囲が狭いのです。フェイスブックCOOのシェリル・サンドバーグさんは「女性が職場で話すとき、まるで綱渡りをしているようなもの。一方に転べば、まったく耳を貸してもらえない。もう一方に転べば、攻撃的すぎると批判される」と語っています。バランスが難しいのです。
米国のスタンフォード大学の研究では、もっとも成功する女性リーダーは「カメレオンタイプ」であると結論づけています。つまり、男性らしさと女性らしさをカメレオンのようにくるくると上手に使い分けられる人がもっとも出世するのだそう。
共感型リーダー像が求められる今、人の話を聞く力や感情を読み取る力にすぐれた女性こそ、リーダーとして活躍できる時代なのです。
■コロナ禍で注目を集めた、世界各国の女性リーダーの特徴
コロナ禍の外出自粛期間中、日々のニュースをにぎわせたのが、各国の女性リーダーたちの活躍。世界中の女性たちが彼女たちに拍手を送ったことだろう。国を救ったともいわれる彼女たちは、どうやって国民の共感を得ることができたのか。2つのタイプに分類した共感の源をチェックして!
おっかさん系
A・メルケル首相(66歳)/ドイツ
物理学者の知見を生かし、早期に最大で人口の7割の感染を予測。「真剣に」と呼びかけ、徹底した検査と行動制限で抑え込んだ。
蔡 英文総統(64歳)/台湾
冷静な決断力で迅速に対応。感染流行の兆しが見え始めた1月、124の措置を発表し封鎖措置を回避。欧米諸国にマスクを提供。
E・ソールバルグ首相(59歳)/ノルウェー
大人の参加を禁じた記者会見を開き「恐怖を感じるのはいけないことではない」と語りかけた。慈しみの心が共感を集めた。
小池百合子都知事(68歳)/日本・東京都
戦略的コミュニケーションにたけた“小池流”を新型コロナ対策でも発揮。独自のフレーズを使い感染拡大防止を呼び掛けた。
お姉さん系
J・アーダーン首相(40歳)/ニュージーランド
「We must go hard and go early(厳しく早く)」と唱え、早期にロックダウンを断行。迅速で的確な対応とコミュニケーションが絶妙。
M・フレデリクセン首相(42歳)/デンマーク
子どもたちとの3分間の記者会見を開催。ロックダウン中に歌を歌いながら皿洗いする映像をSNSにアップ。ユーモアも評価された。
S・マリン首相(34歳)/フィンランド
ソーシャルメディア上のインフルエンサーを新型コロナ対策に動員。感染拡大防止に向けた正しい情報発信の協力を要請した。
K・ヤコブスドッティル首相(44歳)/アイスランド
全国民に無料のウイルス検査を提供。テクノロジーを活用し、感染者の徹底的な追跡システムを導入。ロックダウンや学校閉鎖も回避。
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コミュニケーション・ストラテジスト
グローコム代表。企業やビジネスプロフェッショナルの「コミュ力」強化支援のスペシャリスト。リーダーシップ人材の育成・研修などを手がけるかたわら、オジサン観察も続ける。著書に『世界一孤独な日本のオジサン』(角川新書)などがある。
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(コミュニケーション・ストラテジスト 岡本 純子 構成=歌代幸子 イラスト=Maiko Sembokuya 写真=iStock.com)
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