「会長報酬は2億円超」超割安のまま放置されるユニデンHDは変われるか

プレジデントオンライン / 2020年9月24日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/hxdbzxy

■かつて2万人超だった従業員数は800人以下に

無線通信・応用機器を製造・販売するユニデンホールディングスが10日、株主総会の招集通知を株主に発送した。今年2月に不適切な売上計上が見つかったとして、決算発表を再三再四延期した揚げ句、6月の株主総会も開けずにいたが、決算・監査報告を後日に持ち越す「継続会」制度を用いて総会を開くという。

長期にわたって株価が低迷しているうえ、創業家の恣意的な経営に株主の反発も高まっているだけに、総会では藤本秀朗会長以下、現経営陣の選任にどれだけ支持が集まるかが焦点になる。

ユニデンHDは北米やオーストラリアで無線機やコードレスフォンのメーカーとして高い知名度を保ってきたが、インターネットの普及に伴ってエレクトロニクス事業全般が衰退。2006年3月期には857億円を計上した売上高は、2019年3月期には212億円にまで転がり落ちた。かつては2万人を超えた従業員数も2019年3月期末時点で800人を割り込んでいる。

■水増し収益をもとに2億円超の会長報酬が決められている

ユニデンHDが収益規模や存在感をしぼませながら生き永らえているのは、銀座や八丁堀などに抱える優良不動産のおかげだ。「無線通信機器も作る不動産屋」に転じたことで命脈を保っている。

しかし2018年4月から2019年12月までの期間に、米国と豪州子会社で売上計上や売上計上時期の不適切な会計処理が見つかり、今年1月に海外の法律事務所に調査を依頼。その結果、米国現地法人社長などの関与が判明した。報告書には問題点や責任は「ユニデンHD本社にある」と明記されているが、その責任を誰が取ったのか一切開示がない。

こうした報告書では公正を期すために、いつ、どの役職の誰に、どんな内容をどれくらいヒアリングしたのかを明記するものだが、ユニデンHDが和訳、公表した報告書からはそうした点がすっぽり抜け落ちており、責任者が誰なのか判然としないのも問題だろう。

不適切な会計処理によって水増し計上された売上高や利益は比較的小さく、ユニデンHDの存続に影響を及ぼすほどのものではない。しかし水増しした収益をもとに2億円を超える藤本会長の役員報酬が決められているのだから、株主は納得していない。

■知る人ぞ知る、超割安のまま放置されている優良銘柄

今年に入ってユニデンHD株の大株主として投資ファンドが相次いで大量保有報告書上に名乗りを上げたのは、この会社が知る人ぞ知る、超割安のまま放置されている優良銘柄だからだ。

自己資本比率は70%を超えているうえ、その株価は9月18日現在1616円で、株価純資産倍率は0.32倍。理論上の解散価値と株価が釣り合う1倍を大きく割り込んでおり、東証一部市場でも下から数えたほうが早いほど評価が低い。これなら株主が会社の解散を申し立てて負債を返済し、残余資産を配当したほうが株主にとって大きな利益になる。

なにしろ銀座と八丁堀に保有する不動産だけで約200億円の価値があり、これに有利子負債を差し引いた現預金やエレクトロニクス事業の価値を加えれば、企業価値は「300億円に達するのではないか」(金融関係者)とみられている。ところがユニデンHDの上場時価総額は100億円に満たない水準までしぼんだまま。割安株投資のファンドにとって、うまみが大きく見えるのも不思議ではない。

■信用調査会社も「株主は会長の資産管理会社とみられる」と推測

しかし「割安のまま放置されている状況が解消されるには……」と、ある金融関係者は条件を付ける。

「……経営者を交代させることが不可欠」

金融関係者がここまで言い切るのは、不適切な会計処理やまともに株主総会を開けないことばかりが理由ではない。「創業者の藤本秀朗会長ら一族による会社の私物化が著しい」(同)からだ。

有価証券報告書によると、旧ユニデンが持ち株会社に移行した翌期の2017年3月期には、子会社のユニデン不動産に対するユニデンHDの保有比率が100%から33%へと低下。関連当事者間の取引として、藤本会長の資産管理会社フジファンドがユニデンHDから子会社の譲渡を受けたことや、その増資を引き受けたことが記載されている。どの子会社が譲渡されたのか、有報には記されていない。

しかし保有比率が低下したのと「子会社の譲渡」が同じ期に重なっているうえ、信用調査会社も「ユニデン不動産の株主は藤本会長の資産管理会社であるフジファンドとみられる」と推測している。また譲渡の価格が適正かどうかもはっきりしない。

■株主総会で現経営陣に対する支持がどれほど集まるのか

しかもユニデンHDでは取締役や監査役の一部を創業家出身者で固めているうえ、黒田克司監査役は「東京証券取引所の監査役を兼任しているうえ、藤本会長の友人で、独立した監査役とは言えないのではないか」(ファンドマネジャー)との指摘もある。これでは企業統治が有効に機能しているのか疑問視されるのも当然だろう。

株主の現経営陣に対する不信感が強く、ネット上の書き込みには「今回の株主総会は中身無し! 株主の為のものでは無く空虚なインチキのセレモニー」「腹立ったから、株主総会の3議案、否に○付けて返信してやった」など、個人投資家の怨嗟の声が飛び交う。

近年、株主総会で藤本会長の取締役選任案に賛成したのは70%前後と低かったが、昨年6月の総会では57.87%へとさらに落ち込んだ。今年は粉飾決算が明るみに出て、第三者委がユニデンHD本体にもその責任があると明確に指摘するなかで、藤本会長に対する支持がどれほど集まるのか、そして何よりユニデンHDは変わることができるのか。株主の審判が下る注目の株主総会は9月25日だ。

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山口 義正(やまぐち・よしまさ)
ジャーナリスト
1967年生まれ。 愛知県出身。法政大学法学部卒。日本公社債研究所(現格付投資情報センター)アナリスト、日本経済新聞社証券部記者などを経て、現在は経済ジャーナリスト。月刊誌『FACTA』でオリンパスの不透明な買収案件を暴き、第18回「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」の大賞を受賞。 著書に『サムライと愚か者 暗闘オリンパス事件』(講談社)などがある。

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チーム「ストイカ」 オピニオン誌「ストイカ」を準備中の阿部重夫氏(前FACTA発行人)が、臨機応変に記者と組んで取材するチーム。仮開設中のオンライン版は「http://stoica.jp」。

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(ジャーナリスト 山口 義正、チーム「ストイカ」)

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