GoToトラベル! 眺望がすばらしい温泉と発酵食を堪能「心も体もデトックスする」旅
プレジデントオンライン / 2020年10月10日 6時15分
■サビない女を目指す発酵食めぐり
「健康」「アンチエイジング」「デトックス」といった言葉に、どうしても敏感になる、女40代。
「大自然のなかでゆっくり温泉に漬かったり、体にいいものを食べたりして健康になりたい!」と思っていたところ、「混浴だけど入りやすい眺望抜群の公共露天風呂があって、流行の『発酵食』の店も豊富な地がある」と情報が。そこは、岡山県の北部、美作(みまさか)エリアにある真庭(まにわ)市だ。
宿をとったのは「湯原(ゆばら)温泉」。ここには露天風呂番付で西の横綱に輝いた「露天風呂 砂湯」がある。
川底からポコポコと湧き出す温泉は、無色透明のアルカリ性。お湯は透き通り、ダム下の河原なので見晴らしもよく、温泉街で人もそれなりにいる。それにもかかわらずなぜ女性でも入りやすいのかといえば、旅館組合のおかみさんたちとワコールが共同開発した湯浴(ゆあ)み着のレンタルがあるからだ。着用してみたところ、透けず、体の線がわかりにくく、うまくお湯を通す構造で、お湯の中でも快適だった。水着姿をさらすのをはばかる年代としてはありがたい。
■早速発酵食巡りへ
温泉でリフレッシュしたら、早速発酵食巡りへ。真庭市で発酵を生業(なりわい)にしている7つの企業が、「まにわ発酵’s(以下、発酵’s)」と称するゆるやかなチームをつくり、コラボレーション商品を作ったり、真庭市の発酵食のPRなどをしたりしている。今回はこのうち、「河野酢噌味(みそ)製造工場(酢・味噌・醤油(しょうゆ))」「御前酒蔵元辻本店(日本酒)」「美作ビアワークス(地ビール)」「ひるぜんワイナリー(ワイン)」「蒜山(ひるぜん)ラッテバンビーノ(チーズ)」を、2日かけて巡った。
最初に向かったのは、発酵’sの代表、河野尚基さんのいる「河野酢味噌製造工場」だ。ここでは創業した1888年当時の蔵や杉桶(おけ)、地下から湧き続ける天然水を用い、自然発酵で酢、味噌、醤油を造る。そのときの気候に合わせた最適な状態で、蔵付き酵母を最大限に生かし、全工程手作業にこだわっている。
これがどのくらいすごいことかを河野さんの案内に沿って味噌で説明すると――米を蒸すところから機械に頼らず、蔵人(くらびと)の手作業で蒸し終わった米をほぐして冷まし、米に麹菌(こうじきん)をまんべんなくつけて、高温の麹室(こうじむろ)に入れる。2日かけて何度も米をほぐしながら、最適な麹を作る。その後、蒸した大豆と麹と塩を混ぜ、樽(たる)に入れて自然の温度で10カ月から1年間かけて発酵・熟成。この間も蔵人が常に状態を見たり、桶の入れ替えを行ったりする――と、すべての工程で気を抜く暇はない。
正直、1つ数百円の味噌にこれだけの手間がかかることを知って衝撃を受けた。こんなに愛情がかけられた商品を食べていたら、体が悪くなるはずがないというのは、感激しすぎだろうか。いや、河野酢味噌製造工場を筆頭に、発酵’sは、強い志を持つ人たちで構成されている。
「御前酒蔵元 辻本店」では、40年前に当時の杜氏(とうじ)が古文書を読み解き、国内で廃れていた酒造りの手法「菩提酛(ぼだいもと)づくり」を復活させたり、現在の女性杜氏になってからは、日本酒になじみの薄い層に向けたシリーズを出したりと、進化を続けている。
創業3年目の「美作ビアワークス」は、ビール原料と地元食材の副原料をかけあわせ、飲みやすく楽しいフレーバーの地ビールを次々と開発中。ワインに向かないヤマブドウを美味しいワインにするため、日夜研究を重ねる「ひるぜんワイナリー」、スイスで食べたチーズに刺激を受けた酪農家が、約25年前から独学でチーズ作りの製法を学び、商品化した「蒜山ラッテバンビーノ」と、それぞれに熱い思いが伝わってきた。
商品の作り手が、どんな環境で発酵を起こす微生物の力をどれだけ引き出せているかは、現場に行けば一目瞭然。発酵食はふいに食べたくなる実家の料理のような優しさがあるが、発酵’sの作る品々は、そんな愛情を感じられるものばかり。カバンに入りきらないほど買い込んだ商品を発送して、帰路についた。
(ライター 干川 美奈子 撮影=葛西亜理沙)
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