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「唯一の誤算は内閣支持率の高さ」浮上する1月解散が示す意味

プレジデントオンライン / 2020年9月28日 18時15分

公明党の党大会で、壇上で山口那津男代表(右)と両手を上げる来賓として出席した菅義偉首相=2020年9月27日、東京都千代田区 - 写真=時事通信フォト

■菅政権は安倍内閣の弱点をあっさり克服した

菅義偉首相の船出は、順調のようだ。内閣支持率は上々。行政の縦割りを排除して規制改革を行うという姿勢も評価されている。当初ささやかれた10月初旬の衆院解散、「10・25選挙」の線は消えたが、次は年明けの1月選挙説が本命視されはじめた。

「唯一の誤算は内閣支持率が予想以上に高いことだ」

自民党幹部の1人は冗談交じりに打ち明ける。NHKが9月23日に公表した世論調査では菅内閣の支持率は62%。他の新聞、テレビの支持率も6割台から70%超となっている。政権発足時に内閣支持が上がるのはよくあることだが、7割前後という数字は、特に人気の高かった細川護煕、小泉純一郎、鳩山由紀夫の3政権に匹敵する。

どちらかというと地味な印象のあった菅氏がこれほどの「高値スタート」となるとは、菅氏自身も思わなかっただろう。

7年8カ月続いた安倍政権の内閣支持はおおむね40%台から50%台で安定していたが、安保法制を制定したり憲法改正を目指したりしてタカ派イメージが強かったこともあり、女性の支持率が低かった。菅氏の場合「パンケーキ好き」というソフトイメージ戦略が功を奏しているのか、女性の支持率も高い。菅政権は安倍内閣の弱点をあっさり克服したのだ。

■自民党若手はほぼ全員が「即解散」を主張しているが…

さて、ここで問題となるのが衆院解散の時期である。想定外の高支持率で自民党議員たちは、浮ついている。今、衆院選が行われれば勝利確実なのだから当然だ。下村博文党政調会長は21日のBS番組で「自民党の国会議員のほぼ総意、即解散。若手はほぼ全員が早く選挙をやってもらいたい」と党内の空気を代弁している。

だが、菅氏は、下村氏のいう「即解散」の道は選ばない考えだ。菅氏も世論調査の数字を重視していないわけではない。7年8カ月の官房長官時代、毎週のように各社の世論調査についての質問を裁いてきた。誰よりも世論調査の結果に敏感だといってもいいだろう。

菅氏に近い政府関係者によると、菅氏は世論調査で3つのデータを注目しているという。

1つ目が「内閣支持率」、2つ目が「内閣が優先して取り組む課題」、3つ目が「衆院解散のタイミング」だ。

共同通信社が9月16、17の両日に行った世論調査を基に分析したい。

■菅氏が注視している世論調査の「他の2問」

この調査での菅内閣支持率は66.4%。3分の2が支持している。

「菅内閣が優先して取り組むべき課題は何ですか」(2つまで回答可)の設問は「新型コロナウイルス対策」が64.1%。2位の「景気・雇用」の35.2%をはるかに上回った。

「衆院の解散・総選挙はいつがよいと思いますか」との質問には「任期満了かそれに近い時期」が55.1%。「なるべく早く」は11.7%にとどまっている。

つまり国民は「当面解散はせずに、新型コロナ対策に全力をあげる菅政権」を支持していることになる。このことを知っているから菅氏は「国民のために働く内閣」を標榜し、衆院解散には慎重なのだ。

ただし、誤解してはいけないのは、菅氏が早期解散を完全に封印したわけではないことだ。解散権を持つ首相にとって約3分の2という支持率は魅力的な数字であることは間違いない。

■「国民のだまし討ち」だと受け止められてはいけない

菅氏が目指す、携帯電話料金の値下げや、地方銀行の再編などのテーマは半年や1年では決着はつかない。いったん国民に信を問い、4年間の衆院任期の間に改革を成し遂げようという選択肢もあるだろう。

そのとき早期解散を決断すると、「国民のために働く」と宣言したこととの整合性が問われる。「国民のだまし討ち」だと受け止められるようだと内閣支持率が一気にしぼんでしまいかねない。

そこで浮上するのが「2021年度予算編成後の衆院解散」というシナリオだ。新年度予算案には、新型コロナウイルス対策の他「菅改革」関連の銘柄が並ぶことになるだろう。その予算を編成し、それを国民に示し、事実上の公約として国民に示せば「だまし討ち」とは映らないのではないか。

予算編成は年末になるだろうから、年明け通常国会の冒頭の衆院解散、1月末あたりの選挙、というのが具体的な日程となるだろう。もちろん、新型コロナウイルスの感染状況の推移を見なければならないが、感染状況が落ち着いていれば、「冬の選挙」は現実味を増すだろう。

連立のパートナー・公明党は年内の衆院選には反対だが、年明けであれば容認の構えだ。障害は少ない。

■野党の国会追及が解散の引き金を引く皮肉な展開も

10月下旬には臨時国会が召集される。国会論戦の中で野党側は、安倍氏の後継である菅氏は国民の信を受けていない正統性のない政権であるという指摘をすることだろう。そのことは9月3日に配信した「菅氏の勝利は確実なのに、世論に不評の『党員投票の省略』を決めた本当の理由」でも紹介した通りだ。

野党が正統性を追求すれば、「ならば」ということで伝家の宝刀を抜くチャンスが生まれる。言い換えれば野党の追及が、「国民のために働く」といいながら早期解散することの整合性を与えることになる。

野党は今、本音では衆院解散を1日でも先送りしたい。その間に衆院選への陣形を整え、菅内閣の支持が目減りすることを期待している。しかし、国会が始まれば菅氏の正統性を突かないわけにいかない。早期解散を避けたい野党が、その引き金を引くことになれば、これ以上ない皮肉な展開となる。

(永田町コンフィデンシャル)

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