日韓関係を改善するには、文在寅大統領に辞めてもらうしかない

プレジデントオンライン / 2020年9月30日 11時15分

韓国の文在寅大統領がソウルの事務所で日本の菅義偉首相と電話で話をしている様子=2020年9月24日 - 写真=AFP PHOTO/青瓦台

■日韓首脳の会談は昨年12月以来だったが…

菅義偉首相が9月24日、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と20分間、就任後初めての電話会談を行った。日本と韓国の首脳同士が会談するのは昨年12月以来のことで、関係の悪化からしばらく行われていなかった。

会談の途中で、菅首相から元徴用工の訴訟問題に触れ、「非常に厳しい状況にある両国関係をこのまま放置してはならない」と文大統領に解決のための対応策を求めるとともに韓国側の努力を促した。

韓国大統領府の発表によれば、菅首相のこの求めに文氏は「両国政府と全ての当事者が受け入れられる最適の解決策を共に模索することを望む」と応じたものの、「日韓の間には立場の違いがある」とこれまでの考えを繰り返した。

菅首相が先手を打って文氏に釘を刺したのは評価できる。外交の秘訣は先手必勝だ。会談後、菅首相は記者団に対して「日本の一貫した立場に基づいて今後も韓国に適切な対応を強く求めていきたい」と述べた。これからもその姿勢を変えず、文政権に屈しないでほしい。

■なぜ、文政権は駄々っ子のように自説を変えないのか

間違っているのは文政権である。2018年10月、日本の最高裁に当たる韓国大法院が日本企業に賠償を命じる判決を下し、資産を差し押さえた。これが元徴用工問題の始まりだった。

日本政府は1965年の日韓請求権・経済協力協定で賠償問題は解決済みとの立場を主張したが、文政権は司法判断をそのまま追認し、日本側の主張を真っ向から否定した。これまでに日韓の外交ルートを通じていくつかの妥協案も出たが、どれも問題の解決には結び付いていない。

差し押さえられた資産の現金化の手続きは着々と進んでいる。日本企業の差し押さえ資産が現金化にされると、日韓関係に大きな亀裂が生じる。それだけ事態は深刻なのである。

なぜ、韓国の文政権は駄々っ子のように歪んだ自説を変えないのか。8月11日の記事「『徴用工問題』を解決するには、文在寅大統領に辞めてもらうしかない」でも指摘したが、文氏の脳裏には日本を永遠の敵とみなす敵対感情の「反日種族主義」がある。文氏は韓国民の反日種族主義をテコに4月15日の総選挙で圧勝し、さらには2022年春の大統領選でも絶対的勝利を得ようと画策している。

■「最終的かつ不可逆的な解決」という日韓合意を突然破棄

安倍晋三政権下での日韓関係は「戦後最悪」といわれた。元徴用工の問題がそこまで日韓関係を悪化させたのだが、前兆はあった。まず慰安婦問題では2015年12月の「最終的かつ不可逆的な解決」という日韓合意を、文政権は突然覆し、日本に何度も謝罪を求めた。

2019年夏に日本が韓国向けの半導体素材の輸出管理を厳格化するとともに優遇措置の受けられるホワイト国から韓国を除外すると、今度は「徴用工問題の対抗措置だ」としてWTO(世界貿易機関)に提訴。さらには日本が輸出管理の厳格化を撤回しなければ、北朝鮮対応の要となるGSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)の破棄までちらつかせ、日本を脅した。

2年前には軍事衝突になりかねない事件も起きている。2018年12月20日に能登半島沖を飛行中の海上自衛隊のP1哨戒機が、韓国軍の駆逐艦から火器管制レーダーを照射された「ロックオン事件」である。

哨戒機「P-1」
出典:海上自衛隊ホームページ
哨戒機「P-1」 - 出典:海上自衛隊ホームページ

火器管制レーダーは航空機や艦船がミサイルなどを発射するときに放射する電波で、これを照射することによって敵機までの距離や方向が測定され、敵機を自動追尾できる。ロックオンは照準を合わせた状態を示し、武器使用に準じる軍事行動なのである。韓国の行為は異常だった。当時、日本側が強く抗議したのは当然だ。

■日韓関係がギクシャクすると困るのはアメリカだ

韓国にとって日本は単なる隣国ではない。アメリカを介して安全保障を構築できる信頼に足る国家でなければならない。国際社会に逆らって核・ミサイル開発を続ける北朝鮮を制するには、日米韓の協力が欠かせない。

アメリカは日本や韓国からの軍事情報を頼りにしている。日韓関係がギクシャクすると、アメリカが困る。戦後最悪という日韓関係を改善するためにアメリカはどう動くだろうか。沙鴎一歩はすべてはアメリカの今後の動きに掛かっているとにらんでいる。

文政権はアメリカと北朝鮮の間に入って史上初の米朝首脳会談を実現するなど北朝鮮に誠意を見せてきた。しかし、北朝鮮は文政権を相手にしていないように見える。そのことを韓国の文在寅大統領はどう感じているのだろうか。

■「国力の差が大きかった時代」という指摘は韓国の言い訳

「菅義偉首相と韓国の文在寅大統領がきのう、電話で協議した。首脳間の対話が9カ月ぶりに実現したことは評価したい」

こう書き出すのは、9月25日付の毎日新聞の社説だ。

毎日社説は中盤で「背景にあるのは、1965年の国交正常化時に結んだ請求権協定への認識の違いだ。韓国側には、国力の差が大きかった時代に結んだ不平等条約だという思いがあるようだ」と書く。

しかし、日本は終戦直後から敗戦国の扱いを受け、1965年当時も前年に東京オリンピックを開催したものの、国際社会で強い立場にあるとはいえなかった。「国力の差が大きかった時代」という韓国の指摘は言い訳にすぎない。

毎日社説も「(韓国最高裁)判決は(請求権)協定の解釈を一方的に変更するものである。半世紀もたってからそれが認められるのなら、国家間関係の安定は望めない。新しい時代に合った関係を作るためには、互いに協力する姿勢が不可欠だ」と文政権の駄々っ子ぶりを批判している。

ただし、「協力する姿勢が不可欠」との指摘は無用の長物だ。異常で間違っているのは文政権だからである。

■韓国政府を批判することで日本政府も批判しようとしている

毎日社説は指摘する。

「関係悪化には、30年前の冷戦終結に伴う意識の変化も影響している。緊張緩和によって、自らの安全保障のために日韓関係が重要だという認識が双方で薄れた」

「日韓関係の重要性」について日本はその認識を弱めてはいない。いやむしろ、北朝鮮問題が解決しないなかで日韓の関係をかなり重視している。どうも毎日社説は韓国政府を批判することによって日本政府も批判しようとしているようだ。

続けて毎日社説は指摘する。

「ただ米中の対立激化で東アジア情勢は再び厳しさを増している」
「歴史的な背景が違う日本と韓国の対中観が一致することはないだろう。しかし米国の同盟国でありつつ、隣国の中国とも決定的対立を避けねばならない点は共通している」
「北朝鮮情勢や感染症対策などでも近隣国の協力は必要だ。その中での日韓の役割は大きい」

「東アジア情勢」「対中観」「北朝鮮情勢」「感染症対策」とどれもその通りなのだが、毎日社説の最後の主張は納得できない。

「ナショナリズムをあおることなく、冷静に出口を探るのが責任ある指導者の務めだ。丁寧な対話の積み重ねを両首脳に求めたい」

これまで日本政府は冷静だった。韓国との関係改善の取り組みに関し、安倍晋三前首相は指導者としての役目を果たしてきたし、菅首相もそれは変わらないはずだ。間違っているのは韓国なのである。

どうして毎日社説は日韓関係の悪化の責任を「韓国政府だけでなく、日本政府にもある」とみなすのだろうか。その辺りに毎日社説の体質があるようだ。

■日本は低所得国を支援し、国際社会での地位を高めていくべき

9月27日付の読売新聞の社説は「菅政権の外交 国際協調へ主導的役割果たせ」との見出しを掲げ、国連総会でのビデオ演説や中国の習近平国家主席らとの電話による首脳会談を進める菅義偉首相の外交を論じている。

「国際秩序の安定に向けて、日本の外交力がこれまで以上に試されよう。菅首相は重責を担う覚悟を持ち、様々な課題に取り組まねばならない」と書き出した後、読売社説は、収録ビデオを配信する形で実施された国連総会での菅首相の一般討論演説を取り上げる。

「新型コロナウイルスの世界的な流行を踏まえ、東南アジアやアフリカの途上国などにもワクチンや治療薬が行き渡るよう、支援する方針を表明した。首相は『各国と協調しながら、国際的な取り組みを主導していく』と述べた」
「感染症の収束に向けて、日本の保健や医療の仕組みを低所得の国々に広げていく意義は大きい。現地の医療機関の整備や、人材育成を進めることが重要である」

発展途上にある貧困国への援助は、先進国日本の義務である。WHO(国際保健機関)もそうした国際協力を強く呼び掛けている。いまこそ日本は、医学・医療や公衆衛生の分野で培った実力をもとに低所得国を支援し、国際社会での地位を高めていくべきだ。

■ロシアも北朝鮮も日本の力だけでは思うようには動かせない

さらに読売社説は書く。

「前政権から積み残された重い課題は、北朝鮮による拉致問題とロシアとの北方領土交渉だ」
「首相は演説で、拉致解決に向けた協力を各国に呼びかけるとともに、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と『条件を付けずに会う用意がある』と述べた」
「無条件での会談は、安倍氏も提案していたが、北朝鮮は反応しなかった。4島一括返還から2島返還に舵を切ったロシアとの領土交渉も、行き詰まっている」

ロシアのプーチン大統領も北朝鮮の金正恩委員長も一筋縄ではいかない。日本の力だけでは思うようには動かせないだろう。ここは前述した韓国問題と同様、同盟を結ぶアメリカと協力して問題を解決していくべきである。

読売社説も「前政権が掲げた『戦後外交の総決算』を首相が踏襲するのなら、懸案に関する新たな戦略が求められよう。周到に準備し、着実な進展を目指してもらいたい」と主張する。その通りだ。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩)

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