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どんな店でも黒字にする店長は、どこが違うか?

プレジデントオンライン / 2020年10月5日 11時15分

撮影=黒坂明美

あらゆるビジネスで前例が通じなくなっている。変化が連続し、不確実な時代に、結果を残せる人、残せない人の差は何か。1店舗あたりの平均月商を200万円から400万円以上に引き上げて安売り店のイメージを覆し、8年連続赤字の窮地からメガネスーパーをV字回復させた星崎尚彦社長に聞いた——。

*「崎」は正しくは、「﨑」です。

■できる人は、城を取ってくる。

私は歴史好きで、あらゆる場面で、戦国時代に置き換えて考える。店長に求めるものは、たった1つ。「城」を取ってくることだ。

店長にとっての「城」とは、利益にほかならない。城が取れる店長は、もれなく数字への意識が高い。数字への意識をどの程度持っているかは、初対面でも10分も話せばわかる。トップライン(売り上げ)、ボトムライン(最終損益)が言えるのはあたりまえで、直近の人件費はいくらか、家賃は現在の相場に見合っているか、EBITDAはいくらか、このくらいはパッと言えてほしい。

■昨日の生データを持ってくる人を信用する。

月初めのミーティングでは、システムの関係で、前月の数字が締まらないことがある。ならば、30日までの数字に手計算で31日の分を乗せた最新データを持ってきてもらいたい。小売業の戦場は、日々戦局が変わる。昨日までの勝因が、今日の勝因とは限らない。2日前、3日前の数字を基にした議論では心もとない。最新の数字を軽んじる、緊張感の足りない人とは、話す気がしないとハッキリ伝えている。

プレゼンで、過去データから資料を作り込んでくる人がいる。私は、そんなものは求めていない。上がった、下がったという話ではなく、現場にいる人間として、あなたが今何を感じ、どういう仮説を導き出したのか、それを聞かせてもらいたい。1週間前のデータを吟味するくらいなら、昨日の生データを持ってきて、「社長、どこを見たらいいでしょうか?」と率直に言ってくる社員のほうが、よほど信用できる。

■できる人は、過去にとらわれない。

コロナ禍で、城を取れる人のもう1つの資質がハッキリした。それは、ゼロベースで考え、すぐに行動できることだ。

コロナウイルスと闘いながらの営業となり、今までの常識が通用しない。かつての非常識が有効な打ち手になることもある。たとえば、路面店は朝10時半から21時くらいまで、およそ半日営業しているのが当たり前だった。それを8時間勤務に1時間の休憩を加えた、9時間営業にした。「ワンオペ」ではなく、複数のスタッフが同時に出勤し、休憩はずらしてとり、同時に退勤する。残業がほぼ生じない。

ふたを開ければ、2020年8月の売り上げ前期比は、眼鏡、コンタクト、補聴器をまとめた数字で101.8%と伸びた。営業時間は2割以上減らしたのに、売り上げは去年を超えた。人件費は、残業代も含めて5000万円も減った。

「会社帰りのお客様をつかまえられない」とか、「シニアの方は朝早いほうがいい」という、もっともらしい理由で営業時間を維持してきたが、この結果だ。どうしても来店時間を指定されたいお客様は、予約システムを使ってくださる。これまでのやり方を踏襲し、営業時間を据え置いたら、傷が広がっただろう。困難な戦況で、戦をコントロールするには、過去にとらわれず、ゼロベースで考え、ためらわずに実行する力、その力を持った人が必要なのだ。

■頭から決め込む人の店は、進化しない。

一方で、前例踏襲で生き延びてきた人たちは、その座から追われることになるだろう。そういった人にはいくつかの特徴がある。たとえば、頭から決め込んでしまうことだ。

私が「うちも館(商業施設のことを館と呼んでいる)のチラシに載せてもらえないの?」と提案すると、「難しいと思います。前に聞いたとき、ダメと言われましたから」と答えた社員がいた。「それは、いつのこと?」と聞くと、一昨年だという。館の館長が変わっているかもしれないじゃないか。PRの責任者が変わっているかもしれないじゃないか。過去の、たった1回の失敗で、あっさりとあきらめてしまったのか――。

私が「子ども用のフレームを置いてみたら?」と提案すると、「うちの店は、子どもは来ないんで」と答えた社員がいた。子ども用のフレームが売っていないのだから、子ども連れが来店しないに決まっている。店前を子ども連れのお客様が通るのか、通らないのかという視点で見るべきじゃない。そのうえで、できることを検討すべきじゃないか。なぜ「子どもは来ない」と言い切ってしまうのか——。

過去の体験、世の中の常識にとらわれていては、新しい手を打てない。こういった人が率いる店は、進化しない。

■やらないで逃げる人は、一番ダメだ。

何かと、ひとごとのように言う社員がいる。これはダメだ。会議で、「コロナのせいで、お客様が減っています」と報告してくる。私は、めちゃくちゃ怒る。そんなことは、会議を開かなくてもわかっている。理由を前面に出すのではなく、その中でどう戦い、ライバルに比べて君は勝ったのか、負けたのか、次は勝てるのか、勝てないのか、そこを聞かせてもらいたい。売り上げが7掛けになっているのに、「しょうがない」というスタンスで来られると、非常に残念だ。

しかたなくはない。コロナを理由にあなたの給料を下げていいのか、コロナを理由に家賃をゼロにしてもらえるのか(ありがたくも、協力してくださったオーナー様には感謝したい)。コロナ禍だからといって、売り上げや利益を下げていいわけがない。

うまい言い訳をして逃げる社員は、一番ダメだ。「密になるから1組しか入れてない」と言う。店のスペースを見たら、2組入れても3組入れても、密にならない。もっともらしい理由をつけて、逃げる。やらないための理由を巧みにつくる。言い訳をしても、その背景に思考がないから、どうにも浅い。浅い答弁で過去の上司が納得してきたから、浅い答弁をし続けているのだろう。

星崎尚彦社長
撮影=黒坂明美

■話が早く、便利なベテラン社員も危ない。

ここまでダメなら、わかりやすいが、何でも即答できてしまう人も危ない。「待ってました、その質問」とばかりにスラスラ考えを述べる。初めから、自分の答えを持っている。そんな様子を見て、私はこう思う。

「この人、新しいことにチャレンジしていないのかな」

うちでいえば、経験豊富なベテラン店長に多いタイプだ。何でも知っていて、話が早いから、エリアマネジャーあたりから便利がられ、重用されてきた。過去に事例があることは卒なくこなすが、ゼロベースで考え、行動することはできない。守りに強いが、攻めないから、数字が爆発しない。昨対比100%前後を行ったり来たりする。

私が社長になってから、城を取れないベテラン店長には、副店長に降りてもらっている。今、最後の入れ替えをしているところだ。もちろん、彼らはまだまだ活躍できる。いい接客をし、いい検査をし、お客様にも好かれている。店長としてはダメでも、販売員としては非常に優秀だからだ。

■人は変われるか——。

城を取れる人と、取れない人、どこが違うか。一言で言ってしまえば「能力」だと思う。能力は、その人が持っている先天的なものと、会社がその人に与えた教育の掛け算で決まる。私にできることは後者だ。若いときに、思考を深堀りしてあげると、勘のいい人は「しまった!」と気づき、考え方をあらためてくれる。一度「しまった!」と気づいた人は、ミスをしなくなる。私が社員と話すとき、「それはなぜ?」と、バカみたいに何度も、しつこくたずねるのは、彼らの考えを深め、「しまった」と気づいてもらうためにほかならない。

人は変われるか。その問いに、私はこう答えたい。絶対に変われる。どうすれば、結果を出せない人を変えられるのか、機会を改めて話したい。

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星崎 尚彦(ほしざき・なおひこ)
メガネスーパー代表取締役社長
1966年、東京都生まれ。早稲田大学法学部を卒業後、三井物産に入社。99年、スイスのIMDビジネススクールに留学し、MBA取得、同年12月に三井物産退社。その後、フラー・ジャコージャパン、ブルーノマリジャパンなどの代表取締役を経て、2012年にアドバンテッジ・パートナーズの要請で衣料品販売製造「クレッジ」の再建を手掛ける。13年6月にメガネスーパーに入社。同年7月から現職。歴史への造詣が深い。

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(メガネスーパー代表取締役社長 星崎 尚彦 構成=内山賢一)

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