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毎日がつらい時はスケジュール帳に「10分間悩む」と書くといい

プレジデントオンライン / 2020年10月3日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kitzcorner

苦しい時はどうすれば楽になるのか。自身も躁鬱病(双極性障害Ⅱ型)の診断を受けている建築家の坂口恭平氏は「10分間と時間を決めて、集中して悩むといい。悪い妄想は他の作業をしている時のほうが増殖しやすい」という――。

※本稿は、坂口恭平『苦しい時は電話して』(講談社現代新書)の一部を再編集したものです。

■朝が来たらとりあえず起きてみよう

夜眠れなくても、朝が来たら一応起きてみましょう。二度寝をすると、また起きるのがだるくなりますからここは目が覚めた時点で、すぐに起き上がってみましょう。

起きてすぐはまだ頭がぼんやりとしていますが、しばらくすると、すぐにいつもの否定的な思考がはじまってしまいます。というわけで、ぼんやりとしている間でも自動的に動くために、あらかじめスケジュールをつくっておきましょう。自分でつくるのも面倒でしょうから、僕が勝手につくってみます。それをただやるだけにしてみてはどうでしょうか。

朝起きる。きついとかきつくないとか考えずに、とりあえず起きてみる。そのあと、着替えてみる。気持ちがいいか確認してみる。余計に気持ちが悪くなることは、実はありません。もちろん、まだ眠りたいのかもしれませんが、寝てしまうと、どうしても「ああ、自分はどうしてサボってしまっているんだ」と考えてしまいます。別にサボっているわけではなく、ただ休んでいるだけなのですが、そう感じてしまいます。そう感じることを消そうとする必要はありませんが、そう感じない方法を試してみましょう。

やらないよりもやったほうが、気持ちが楽になります。

■いつも通りのふりをしてみる

だから多少きついかもしれないですが、気持ちがいいことをやってみましょう。

いつも通りのふりをしてみる。どうせきついのは簡単には変わりません。でも、そこで諦めるのではなくて、自分の感情はとりあえずおいておいて、気持ちよさ(つまりこれは体が感じているわけです)のほうに焦点を合わせてみるのです。

着替えたら、歯磨きと顔洗いをしてみましょう。ゆっくりとやれればいいですが、死にたい時は焦ってしまっていますので、どれも気が入りません。それでも気にせずやってみましょう。できるだけでいいです。とにかく次にやることをつくり出していくだけですから、多少、適当であっても構いません。ただそのふりをするような感じで。そして少し動いたら、そのたびに体に聞いてみましょう。気持ちがいいかどうかを。

結論は、やらないよりも、やったほうが気持ちいいです。でも、しんどい。ぼうっとしたいのに、リラックスすると、すぐに頭の中で否定の声が聞こえてきます。もう少し健康でいられないものか、僕はどうしてこうなのかと考えてしまいます。これは死にたい時の自動的な思考回路ですので、あまりそちらに引っ張られないようにしましょう。そんなこと難しい──僕もいつもそう思います。しかし、手を止めると、また反省がはじまりますし、そうすると体が動けなくなってしまいます。

これじゃいつまでたっても、ゆっくりできないじゃないか。

そう思います。

これじゃせっかく気持ちよくしているのに、疲れるだけじゃないか。

そうやってまた手が止まりそうになります。

そうなったら、そこでやっていることはすぐに止めてみましょう。そして、悩んでみましょう。悩む行為自体もスケジュールに組み込んでみましょう。

■時間を決めてとことん“妄想”する

10分、休まずにしっかり悩みまくってみる。

時間を決めずにやりはじめてしまうと、延々と止まりません。この妄想は同じところをぐるぐる回るだけでなく、少しずつ増殖していきます。もともと悪いことが何か起きているわけではなく、ただ妄想が広がっているだけです。

それを完全に止めるのも、無理な話です。というわけで、反省をはじめてください。できるだけ短い時間がいいですが、自分で時間も決めてみましょう。そして、じっくり真剣に否定してみましょう。後悔してみましょう。反省してみましょう。「これは症状であって自分の考えではない」と時々突っ込みながらできるといいですね。もちろん、それは難しいことなので、できなくても構いません。

今から否定する妄想をはじめるぞ、どれだけ妄想するのかな、と少し離れた感覚で味わうと、全く違って感じられると思います。

さあ、妄想をしばらくどうぞ。10分間だけ!

■「死にたい」と思うのは妄想

僕の経験では、こうやって、自分の意志で、限られた時間だけ妄想するぞと意気込むと、不思議なことに妄想が減ります。詳しいことはわかりませんが、妄想はどうやら、自分が他の作業をしている時のほうが増殖しやすいようです。はっきりとした意志を持って妄想しようとしても、ぼんやりとしてしまいます。何か悪いことが起きそうな気がしますが、何が起きるのかと具体的に考えると、実ははっきりしていないのです。

あれ? と思えたら、別に10分間も続ける必要はありません。すぐに次の行動に移りましょう。

やることは多いです。何もやることがないなんてことはありません。もちろん、すべて面倒臭いと思っているからやることなんてないと思うのですが、それでも妄想に苦しめられるよりもマシじゃないですか。

はっきりと言ってしまいますが、死にたい、と思うのは、やはり妄想なんです。

ただ妄想だと気づけない。でも、妄想に焦点を合わせようとするとぼんやりして、妄想だとわかる。

さ、気を取り直して、着替えて、顔を洗って歯を磨きましょう。

さて、次は何をしましょうか。布団を畳んでみましょう。ベッドに寝ている人は掛け布団を綺麗に整えてみましょう。部屋も少し汚くなっているかもしれません。今すぐ取り掛かってもいいですが、面倒臭いと思ったらやめておきましょう。できるだけ簡単なことから、少しずつやってみましょう。

やっている最中も、こんなことをやって何になるんだと考えてしまいますよね?

僕もすぐそうなります。それですぐへこたれてしまいそうになります。すぐ横になって、また自分はダメだと攻撃する状態に、なぜか戻りたくなってしまいます。体はやっぱり横になりたいということなんでしょうか。

本当にそうしたいと思ったら、横になりましょう。そして、また10分間限定の妄想タイムを設けましょう。でも、横になってもまたあの攻撃がはじまるだけで、多分きついよなあと思った人は、次の行動に移りましょう。

■朝ごはんだけ、つくってみる

調子が悪く、横になってばかりいたので、実はお腹が減っています。

食べる気はないのですが、それは面倒臭いということもあるし、そうやって食べさせないことで、罰している感覚もあるのかもしれません。お前なんか、という妄想が食事を抜くということにもつながっているように思います。

でも実は、多くの人がお腹が減っています。

朝ごはんだけ、つくってみるのはどうでしょうか?

死にたくなっている時、料理からは遠く離れてしまいます。食欲もないし、とにかく面倒臭い。ところが、体のどこかでは、ちゃんと料理をして、美味しいご飯を食べたいと思ってはいないですか? 僕は倒れてしまっている時いつも、そう思っています。

■死にたいのは酸欠っぽい状態になっているからかもしれない

今、あなたは起き上がって着替えて顔を洗って歯を磨いて、少しだけ気持ちよくなっている。それは確かだと思います。

カーテンを開けて、窓を開けて、少し風を入れてみませんか?

換気も大事です。死にたいのは、酸欠っぽい状態になっているからかもしれません。

そして、お腹が減っているからかもしれません。

死にたいのは一体何なのかは抽象的でなかなかわかりませんが、酸欠かどうか、お腹が減っているかどうかは確認できます。確認できることを一つずつやってみましょう。

僕が「いのっちの電話」に出て確認した結果、死にたい人のほとんどが食事を摂っていませんでした。つまり、死にたい人のほとんどがお腹が減っているのです。

■まずはお米を研ぐ

お米を研ぐ、なんてことを書きましたが、調子が悪い時は僕だってもちろんできません。すぐにうなだれてしまいます。体を起こすだけでも必死です。しばらく立っているとすぐに横になりたくなってしまいます。

もちろん無理はしないでください。

でも、体を動かしたほうが、気持ちがいいことは知っています。朝起きて、ご飯でもつくったほうが、うじうじしているよりも気持ちいいことも知っています。

ぐったりするのは、料理のあとにして、もうちょっとだけ動いてみませんか?

台所には洗っていないお皿などが残っていて、なかなかやる気になれないかもしれませんが、そこは放っておきましょう。必要なものだけ洗って、まずはお米を研いでみましょう。

僕は、家で土鍋を使っているので、土鍋でご飯を炊き、味噌汁をつくり、目玉焼きをつくってご飯にのっけて、醤油をかけて食べます。僕はこの3点セットが何よりも好きなので、調子が悪い時でもどうにかつくることができ、食べると、やっぱり美味しいです。みなさんも好きなものをつくってみましょう。とにかく簡単なものを。

はっきり言うと、食べることが重要なのではありません。手を動かすことのほうが大事なので、つくるだけつくっておいて、残してもいいじゃないですか。ラップをかけて冷蔵庫に入れておいて、お腹が減ったなと思った時に食べればいいんです。

食べましたか? どうでしょうか。意外とお腹が減っていたんじゃないでしょうか。

僕の場合、いつも食欲がないと言いつつ、目の前にご飯があれば、すぐに食べきってしまいます。口の中が鈍感になっているのか、味があんまりしない時もありますが、それでも美味しいとは感じます。

ゆっくり食べることはできず、やはり焦りがありますので、ささっと食べてしまいますが、気にしないでいきましょう。気にするべきは、気持ちがいいか、どうかです。

食べ終わったら、そのまま台所で、お皿を洗ってみるのはどうでしょうか?

きつくない程度に。きつくなったらやめればいいだけです。

でもやればやるほど、体は心地よさを感じているはずです。

もちろん、これは僕の方法を書いているだけなので、自分は全く自炊なんかしない、外で買うほうがいいという人もいると思います。それはそれでいいと思います。

■ついでに外に出かける

でも、外に出にくくないですか?

僕は死にたい時に、外に出られなくなってしまいます。近所に住んでいる人に会いたくない、調子が悪いところを見られたくないってことがあるんだと思います。恥ずかしいという気持ちが全開になっていて、自信も失っていますし、なんだか暗く落ち込んでいる顔を見られたくないなと思ってしまうんです。

自意識過剰と言われたら、それまでですが、確かに自意識過剰になっているんだと思います。人は別にそんなに他人のことなんか目に入っていません。気にしないで好きに外を歩けばいいのにと心では思うのですが、なかなかそれができません。

じゃあ、家にいて、安心できるのかというとそうでもありません。外に出られないというのはやっぱり息が詰まって、家の中にいても、どうしようと焦って、部屋をぐるぐる歩き回るだけで、やはり体は気持ちよさを感じていません。

僕も結構、ひどいでしょ?

「いのっちの電話」でみんなの状態を聞いていても、僕よりマシなんじゃないかと思うことが多々あります。よくそんな僕がこんな電話サービスをやってるよな、バカじゃないか、そもそもあまりにも頼りないサービスだなと思っています。

朝ごはんをつくった後、気持ちよくなった体はまだもう少し心地よさを求めているようです。もうちょっと何かできるよと言っているような感じ。

この勢いが残っている時は、ついでに外に出かけましょう。

何の目的もなくぼうっと歩けばいいですが、ぼうっとすると、また妄想がはじまってしまいますので、ある程度目的があるといいですね。冷蔵庫を見て、必要なものを確認して、買い出しに行ってみましょう。やっぱり太陽の光は大事です。こもっていないと思うと、それもまた体が楽になるきっかけになります。

公園でヨガのポーズをとる
写真=iStock.com/maruco
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maruco

■「気持ちがいい」と感じることで少しずつ楽になる

とりあえず、悩みは止まらないわけですから、体だけは以前と同じように動かしてみようというわけです。でも、なかなかそれが難しいんですけど。

坂口恭平『苦しい時は電話して』(講談社現代新書)
坂口恭平『苦しい時は電話して』(講談社現代新書)

僕もこうやって書きながら、今は少し調子が悪いのかもしれません。

死にたいとまでは思っていませんが、敏感にはなっています。さっきまで書いたことも、そりゃそうなんだけど、それができたら、悩まないよ。体がどうしても動かないんだから、仕方がないんだよと文句を言っているジャイアンの気配を感じます。

その一方で、言われたことは理解できるよ、それができたら、すごく楽になるよ、と思っている自分もいます。このように、体を動かしても、必ず気持ちは揺らぎます。敏感な状態であることには変わりない。それでも「気持ちがいい」と感じることが少しずつ、あなたを楽にしていくはずです。

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坂口 恭平(さかぐち・きょうへい)
建築家
1978年、熊本県生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。卒論をもとに日本の路上生活者の住居を収めた写真集『0円ハウス』(リトルモア)を2004年に刊行。その後、『TOKYO 0円ハウス 0円生活』(河出文庫)『ゼロから始める都市型狩猟採集生活』(角川文庫)を発表し、「都市の幸」をもとに金を使わず生きる術を示す。東日本大震災後の2011年5月、故郷熊本で独立国家の樹立を宣言し、新政府総理大臣に就任。その経緯と思想を綴った『独立国家のつくりかた』(講談社現代新書)が話題となった。その他に、『幻年時代』(幻冬舎文庫)『徘徊タクシー』(新潮文庫)『現実宿り』(河出書房新社)など著書多数。文筆のほか、音楽、美術の分野でも多彩な活動を行う。

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(建築家 坂口 恭平)

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