これは必読…申請するだけで払わなくて済む「税金・社会保険料」
プレジデントオンライン / 2020年10月9日 15時15分
※本稿は、荻原博子『コロナに負けない! 荻原博子の家計引きしめ術』(毎日新聞出版)の一部を再編集したものです。
■「猶予」と「免除」を駆使し、家計の負担を軽くする
新型コロナウイルスの影響で、給料が減ってしまったため、家計のやりくりに苦労しているという人は多いはず。
こうした家計の負担を、新型コロナウイルスの影響が大きい今だけでも軽減しようと、さまざまな「猶予制度」や「免除制度」が誕生しています。
たとえば、生命保険の保険料が払えなくなってしまった時に使える「生命保険支払い猶予制度」、家賃が払えなくなった場合に補助してもらえる「住居確保給付金」があります。これらについては拙著『荻原博子の家計引きしめ術』に詳しく書いていますので、参考にしてください。
本稿では、「免除制度」や「猶予制度」のうち、家計負担が大きく、逃れることもできない税金や社会保険料について紹介したいと思います。これらの仕組みを利用することで、時間を稼いで助かる家庭も多いはず。ぜひ知って、生き残るために活用してください。
免除とは、基本的には払わなくてもいいお金のことで、猶予とは、あとで払わなくてはいけないお金です。中には、基本的には猶予の対象だけど、支払いが困難であれば免除してもらえるというお金もあります。
今はどこのご家庭も土砂降りの状態。「やまない雨はない」といいますが、いつか雨がやむことを願い、土砂降りの間は、「免除」や「猶予」を傘がわりにしたらいかがでしょうか。
■税金の支払い猶予を利用する(国税)
新型コロナウイルスが経済活動を直撃し、事業や生活の継続が困難になっていて、税金が払えないという人は、税務署に納税期限から6カ月以内に申請すれば、最長で1年間、国に収める税金を猶予してもらうことができます。
対象となるのは、所得税、消費税、法人税、相続税、贈与税など国税で扱うほぼすべての項目になります。ただし、猶予を受けるには、国税以外に滞納がないことが条件です。また、資産のある人の場合には、持っている資産の額に応じて分割納付になる場合もあります。
ちなみに、払えないまま放置していると、「延滞税」が課せられたり、過少申告したりすれば「加算税」が課税されることもあります。そのままの状態を続けていれば、財産や給料が差し押さえられることも。脱税したら、実刑に問われることもありますので、支払いが困難なら、まずは猶予の申請を。
国税の猶予の申請が認められれば、原則として1年間は、税金の支払いを先送りすることができます。ただし、多少の延滞税は課されます。
延滞税は通常、年8.9%ですが、猶予が認められれば、これが年1.6%になります。この通常の「猶予」対象者の認定は、かなり広範囲にわたりますが、さらに新型コロナウイルスの影響で収入が落ち込み、生活の維持が困難になっている人に対しては、手厚い特例が設けられています。
2020年2月1日から2021年2月1日が納付期限対象の国税については、2020年2月以降に任意の1カ月以上、前年同期に比べて2割ほど事業収入が減少し、税金を一度に全額納付することが難しい場合、所轄の税務署に申請すれば、納期の期限から1年間、延滞税が1.6%に減額され、さらに無利息になります。(「新型コロナ税特法第3条」)。
また、通常は担保を提供しなくてはなりませんが、この場合は必要ありません。
詳しくは、最寄りの税務署に問い合わせてください。国税局猶予相談センターでも相談に乗ってくれます。
■税金の支払い猶予を利用する(地方税)
国税だけでなく、地方税にも、新型コロナウイルスによって収入が大幅に減少し、生活が苦しくなった人のために、税金の分割払いや支払猶予の制度があります。対象となるのは、住民税、事業税、地方消費税、自動車税など。
地方税の優遇の対象となる税金は、2020年2月1日から2021年1月31日の間が納付期限のもので、向こう半年間の事業資金を考慮に入れるなど申請する人の事情が、状況によって判断されます。
これらの税金のうち、すでに納期が過ぎている未納の地方税についても、さかのぼって猶予の特例を受けることが可能です。
固定資産税に対しても猶予が設けられています。中小事業者などが所有する固定資産や事務所家屋などの固定資産税については、2020年2月から10月までの任意の3カ月間の売り上げが前年同期比よりも30~50%減少していたら、2分の1に軽減されます。また、50%以上減少していたら、新型コロナウイルス対策として改定された地方税法によって、固定資産税はかけないことになっています。
自動車については、2019年10月1日から2021年3月31日までの間に購入した自家用車(新車・中古)の自動車税環境性能割の税率が、少し安くなります。
詳しくは、最寄りの市区町村の税金窓口に問い合わせてください。
■国民健康保険料も減免の対象になる
会社で健康保険に加入している人以外は、病気やけがに備えて、国民健康保険に加入しなくてはなりません。リストラされて、会社員でなくなった場合も、基本的には国民健康保険に加入することになっています。
日本は国民皆保険なので、すべての国民は何らかの公的医療保険に加入し、保険料を払わなければなりません。保険料を払わずにいると、けがや病気で医師の診察を受けた時の医療費が全額負担になったり、悪質と見なされれば財産が差し押さえられたりすることもあります。
ただ、新型コロナウイルスの影響で収入が激減し、保険料を支払えないという人もいることでしょう。
国民健康保険については、特別な理由がある人に対しては、「国民健康保険法第77条」に基づき、各市区町村、および国民健康保険組合が各自の判断で保険料の減免ができるようになっています。
政府からは、新型コロナの影響で収入が減った人に対しては、減免をするように要請が出され、財政支援の通達も出ています。さらに、数カ月前にさかのぼり減免してほしい旨の通達も出ています。
やむを得ない事情で減免を申請できず、すでに保険料を納めてしまった人でも、収入が激減し、家計が苦しいなどの事情があれば、各自治体の窓口で相談してみましょう。
■国民年金保険料の支払いを減らすには
お店を経営していたのだけれど、新型コロナウイルスで客足が減り、売り上げが立たなくなってしまったという人は多いようです。
自営業の人にとって無視できない出費が、国民年金保険料。2020年4月から2021年3月までの国民年金保険料は、月1万6540円。夫が国民年金だと、妻も国民年金という人が多いので、2人で月3万3080円の出費になります。年間にすると約40万円ですから、かなりの金額といえるでしょう。
実は、2020年5月1日から、新型コロナウイルスの影響で国民年金保険料の納付が困難になった人を対象に、臨時の特例免除申請の受付手続きが開始されました。
対象は、2020年2月以降に、新型コロナウイルスの打撃を受けて、収入が減少した人。また、単に収入が減少しただけでなく、今後の収入の見込みが、現在の国民年金保険料免除の基準に該当する人です。
詳しくは日本年金機構のホームページを参照してください。
■「支払い免除」でも、将来年金を受け取れる?
そもそも国民年金では、収入が少ない場合には、その金額に応じた保険料免除制度があります。免除を申請して承認されれば、国民年金保険料を払っていなくても、将来、本来もらえるはずの年金額の半分程度は受け取ることができます。
また、遺族年金、障害年金の対象にもなるので、自分が死亡した場合に残された家族の生活費や、自分が病気やけがで働けなくなった時などの保障が受けられます。特にうつ病など精神的な障害の場合には長期の治療が必要となることもありますから、障害年金が使えると助かります。
免除には4段階あり、単身者なら全額免除は年収122万円以下、4分の3免除は年収158万円以下、半額免除は年収227万円以下、4分の1免除は年収296万円以下となります。2人世帯、4人世帯でも、年収に合わせてそれぞれ免除が使えます。
収入が減ってしまい、この免除制度を利用したいという人は日本年金機構の「ねんきんダイヤル」で相談してみましょう。
■生活資金に困ったら、社会福祉協議会や労働金庫に相談を
「猶予」や「減免」をしてもなお、入ってくるはずのお金がもらえなかったり、会社を解雇されたりして生活が困窮している人もいるでしょう。そうした人対象に、地域の社会福祉協議会や労働金庫が窓口となって、「生活福祉資金貸付制度」を実施することになりました。
すでにある「緊急小口資金制度」を新型コロナウイルス対策用に拡充したもので、「一時的に生計の維持が困難になった場合」の小口貸付は、「上限10万円、1年以内の返済」から「上限20万円、2年以内の返済」へと条件が広がっています。貸付は無利子で、保証人も不要です。
さらに、「収入の減少や失業で、生活に困窮している人」に対しての「総合支援資金」という融資も拡充されていて、2人以上の世帯では月20万円、単身者は月15万円までを、10年以内の返済条件で、最高3カ月まで貸し付けています。
■2つの制度の併用で融資金はさらに増える
従来は、保証人がいなければ金利が1.5%、保証人がいれば無利子でしたが、この要件が緩和されて、保証人がいてもいなくても無利子となり、据え置き期間も従来の6カ月以内が1年に延びました。
つまり、夫婦で生活に困っていたら、月20万円×3カ月で計60万円のお金が借りられるということ。独身者ならば、月15万円×3カ月で合計45万円を貸してもらえることになります。
さらに、この2つの制度は、併用できるようになっています。ですから、夫婦ならば、最大で80万円、独身ならば最大で65万円まで、合わせて融資してもらえるということ。
■生活が困窮していたら、返済が免除されることも
これだけのお金があれば、もしもの時には一息つくことができるかもしれません。加えて、ここがポイントですが、返済期限を迎えた時点で、まだ生活が困窮していて、とても返済できるような状況にない場合には、このお金は返済しなくてもいいことになっています。
「今回の特例措置では、新たに、償還時において、なお所得の減少が続く住民税非課税世帯の償還を免除することができる」と厚生労働省から各都道府県に出された通達に明記されているからです。
返済できればそれに越したことはありませんが、困窮した状況が続いていれば返済を免れることができます。金銭的に困っている人は、こうしたお金があることをぜひ覚えておきましょう。
それ以外の補助金や支援制度については、『家計引きしめ術』を参考にしてください。使えるものは何でも使って家計を守る! みんな苦しいですが、やまない雨はない、明けない夜はない、です。なんとかみんなで生き抜きましょう!
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経済ジャーナリスト
大学卒業後、経済事務所勤務を経て独立。家計経済のパイオニアとして、経済の仕組みを生活に根ざして平易に解説して活躍中。著書多数。
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(経済ジャーナリスト 荻原 博子)
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