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コロナリストラがどれだけキツくても会社を辞めてはいけない7つの理由

プレジデントオンライン / 2020年10月3日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AND-ONE

三菱自動車、ジェットスター、東芝など、9月に入って大手企業が次々に人員整理を発表している。自分の会社でリストラが始まったとき、どうすればいいのか。リストラ評論家の砂山擴三郎氏は「退職金を加算されても、絶対辞めてはいけない」と断言する。その理由とは――。

※本稿は、砂山擴三郎『今どきサラリーマンのためのリストラされずに会社にぶら下がる方法』(主婦の友社)の一部を再編集したものです。

■あなたはそれでも辞めますか?

2回リストラを経験し、多くのリストラ退職者の再就職支援をしてきた私から言わせれば、会社の勧奨に応じて退職を決断するのはまったくの短慮に思える。「愚の骨頂」なのだ。

会社側の厳しいプレッシャーに抗しきれないこともあるだろう。こんな会社にいてもろくなことがない。倒産したら元も子もないし給料がカットされるのも確実だ。今なら退職金満額がさらに加算され、再就職支援サービスで次の仕事もみつけられそうだ。

だが、それでも退職することには賛成できない。じっと我慢し、リストラの大嵐をやり過ごすか跳ね返してほしい。業績不振は経営者の責任。そのために自分と家族の人生が犠牲にされることはない。まして、そんな会社に義理立てする筋合いはない。どうするかはもちろん、自己責任・自己判断になるが、考えるための材料を以下に提供したい。人生、我慢で得られる幸せもあるのだ。

■理由1 リストラで会社は持ち直す

「大の虫を生かすために小の虫を殺す」の言葉がある。大の虫である会社を助けるため、小の虫である社員を犠牲にすることだ。犠牲にされた社員を踏み台に会社は生き残る。お荷物社員を辞めさせれば、利益が出ると考えるからリストラをする。そのために必要な巨額の資金も「数年で元が取れて回収できると判断するから」金融機関は資金を貸すのだ。

よく「リストラをする企業には未来はない」とか「リストラをした会社の末路は知れている」と言われるが、それは事実に反するまったく感情的なもので、実はリストラの先には「明るい未来がのぞめる」ことが多いのだ。

■理由2 退職金に加算がされても得しない

「来月から大幅に給料がカット、ボーナスも多分出ないだろうし何よりもこのまま行くと倒産して退職金は出ないだろう」、さらに続けて上司は囁きかける。「だけどね、今辞めたら退職金は加算されるし、再就職支援サービスも受けられて万々歳だよ」

サラリーマンの収入は一時的な損得で判断しないほうがよい。幸いすぐ再就職ができても、中高年者は特に給料が大幅減になるのが当たり前。なぜなら勤続10年、20年の年功部分を喪失するのだから。給料が下がれば、公的年金受給時に報酬比例部分も少なくなる。

退職金の加算金額や再就職先での給与額にもよるが、生涯給与で比較するとリストラ退職は圧倒的に損な選択になることが多いと言える。私自身、57歳でリストラ・自営化の道を選択したが、その際将来的にみると金銭面ではマイナスになると覚悟はしていた。しかし、残留を選択した同期と比較してこれほど大損になるとは思わなかった。

退職金で住宅ローンや教育ローンを返済でき、再就職先の安い給料でも女房と二人食っていければいいという人もいるだろう。退職後の生活設計ができるから辞めてもいいという判断だ。しかし中高年にとって、マイホームと子どもの教育資金をクリアしても、親の介護や自分たちの老後の資金問題がある。当面ではなく将来設計をしたうえでの判断がのぞまれる。

リストラをすることによって会社は大きな利益を生み出し再建を果たそうとする。社員も同じように利益を得られるかというとそうではない。社員が損をすることによって、会社が得をすることを忘れてはならない。両方得をすることは労働経済学上ありえないのだ。

財布のお札
写真=iStock.com/614407150
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/614407150

■理由3 リストラ退職は一生引きずる

再就職支援会社でカウンセラーをしていてわかるのは、どんな人も退職後数カ月は「リストラされた」ことを引きずることだ。

愛着もあり会社のために頑張ってきたと思っているのに情け容赦なく「戦力になっていない、働く場所はない」と「辞めろコール」を浴びせかけられたのだから、そのショックたるや計り知れない。裏切られた、生きていく気力が失せた、と心に大きな傷を受ける。さらに自分自身の自信と誇りを失い、プライドもずたずたにされている。再就職活動をはじめるどころではないのだ。こういうケースで、家族が本人の気持ちを推し量って対応してくれればいいのだがそうでないことも多い。

「夫がリストラされたなんて、親戚や近所に恥ずかしい」と食ってかかる奥さんも珍しくない。「いつになったら就職が決まるの」と毎日就職活動で疲れて帰ってくるたびに家族から罵声を浴びせられる。精神的に追い込まれ、帰宅恐怖症になる人もよくみかける。

仮に運良く就職が決まっても、このときの心の傷がトラウマとなり、家族との間にできた溝が修復されず人生の敗残者のようになってしまう人も出てくる。再就職支援会社のロビーやブースの異様な静けさは、リストラされた人の精神状態そのものと思わずにはいられないのだ。

■理由4 再就職が難航する、長期化する

リストラされた人を見る世間の目は厳しい。仕事ができないから、努力して頑張らないから、本人のせいでリストラされたとまったく見当はずれの見方が多い。求人に応募しても、中高年者や長年勤めた会社を辞めた場合はまずリストラを疑われる。面接で根掘り葉掘り聞かれ、そのうえ敬遠されることが実に多い。リストラ時に再就職支援サービスが提供されても、当てにできないと感じる人も多いのだ。

会社面接でいくら説明しても、「ああ、あの会社でリストラされた人ね」と決めつけられ、能力や意欲に疑問符をつけられる。そのため厳しき門になり、採用されても処遇が一段低くされることがある。リストラの烙印を押され色眼鏡で見られてしまうのだ。

求人企業と求職者の間に立って就職のお世話をする人材紹介会社は、就職が決まれば求人企業から紹介料を受領する。顧客企業からは「リストラされた求職者の場合、半分にしてほしい」とか、ひどい場合は「無料にしろ」、というケースもあるという。

労働力調査によると、完全失業者は214万人(2020年4~6月平均)中、失業期間が1年を超える人が55万人、前年同月比で4万人増えている。新型コロナで企業の業績が急激に悪化し、新卒の内定取り消しも出ている中、条件の悪い中高年のリストラ退職者は必然的に苦戦せざるをえないのが実情だ。「しばらくゆっくりして」という方もいるが、しばらくが一生になりかねないことに気付いてほしい。自分一人でも起業するだけの気概やバイタリティー、それに能力がなければ転職はしないほうがいい、という人もいる。

リストラのストレスで歩道に座っている
写真=iStock.com/SARINYAPINNGAM
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SARINYAPINNGAM

■理由5 リストラ、一度あることは二度三度ある

仕事上、リストラされた方を大勢見てきた。能力や意欲は人それぞれであるが、仕事の取り組み方・周囲の人との接し方・性格などこれほど似ているのかと思うくらいに似ていることが多い。何かリストラされやすい、会社から目をつけられやすい特徴を持っている可能性があるのでは、と思ってしまう。

今の世の中、大樹はない。この会社は危ないと思ってリストラに応じて再就職しても、その会社が長期安定している保証はない。ましてや一度リストラされた人は、そうでない人に比べて自分では気が付かないリストラされやすい何かがあるかもしれない。そういう意味では一度あることは二度あるとも言える。

■理由6 とにかく一呼吸おいて時間稼ぎが有効

この会社はもう見込みがない、と見切りをつけるにしても、そうすぐに再就職先は決まらないだろう。厚労省の調べではリストラされた人が1年以内に再就職できたのは約4割だ。次の就職先を決めるための準備、貯金などの生活設計の見直し、人脈作り、資格の取得、キャリアの充実とやることは山ほどある。「ため」をできるだけ多く作っておけば、飛ぶときに高く飛べる。決めたら急ぐことはない。

■理由7 残り者に福来たる

歯科材料メーカー営業主任の山室健太さん(仮名。33歳)は、「あのとき辞めずにいて良かった」と大声で叫びたい気分だと語る。1年前、製品クレーム対応を誤った会社は従業員3割減の大リストラに着手。山室さんも何回も部長から肩たたきを受けた。ところが直属の課長が家業を継ぐために退職、危うくセーフとなったのだ。山室氏は退職する課長から、懇切丁寧にクライアントの引き継ぎを受け、長年培った営業の心構え、テクニックを教わった。そのせいもあるのか半減した営業部員の中でトップセールスにのし上がったのだ。

砂山擴三郎『今どきサラリーマンのためのリストラされずに会社にぶら下がる方法』(主婦の友社)
砂山擴三郎『今どきサラリーマンのためのリストラされずに会社にぶら下がる方法』(主婦の友社)

リストラで残った者には地獄が待っている。給料カット、ボーナスも出ない、おまけに残業も認められない。それなのに人が減って仕事の量が異常に増え、赤字の会社は仕事の成果のハードルを高くしてくる。やってられないとまた人が辞めていく。会社全体が悪循環に陥って……と、よく聞かれる話だ。しかしこのピンチは逆にチャンスなのだ。人が減って仕事が増えることはポストが空いて昇格するチャンスなのだ。給料がカットされても、再就職先での給料と比較すればずっと上かもしれない。そのうち会社再建がなされれば、カットされた給料以上になるだろう。社員が減った分、潤い方が多くなるに違いない。

去るも地獄残るも地獄なら、天国になる可能性が高い地獄を選択したい。嵐はいつまでも続かない、辛抱すればそのうち止むのだ。

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砂山 擴三郎(すなやま・こうざぶろう)
キャリアコンサルタント
1943年生まれ。大阪大学卒。大手企業で人事・総務畑を歩き、人材会社を経て独立、企業のリストラを手伝う。

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(キャリアコンサルタント 砂山 擴三郎)

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