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「うちの会社ヤバいかも」そう感じたらやるべき2つの正攻法と4つの裏ワザ

プレジデントオンライン / 2020年10月4日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/HAKINMHAN

三菱自動車、ジェットスター、東芝など、9月に入って大手企業が次々に人員整理を発表している。自分の会社でリストラが始まったとき、生き残るにはどうすればいいのか。リストラ評論家の砂山擴三郎氏が「2つの正攻法と4つの裏ワザ」をアドバイスする――。

※本稿は、砂山擴三郎『今どきサラリーマンのためのリストラされずに会社にぶら下がる方法』(主婦の友社)の一部を再編集したものです。

■「うちの会社、ヤバいかも」と感じたら、すぐ対策

必ず前兆があるのがリストラの大きな特徴で、「突然」というのは「前兆に気がつかなかった」だけの話なのだ。この前兆の段階で人に先んじて対策を講じていくことが、リストラの魔の手から逃れる決め手になることが多い。

退職勧奨をされる前に、リストラ候補になることをなんとしてでも阻止したい。「もう遅いのでは」「こんなことやっても無駄では」「どうせ俺なんかリストラされるに決まっている」と思ったときはもう魔の手につかまっていると思ったほうがよい。マイナス思考では人生何をしてもどこに行ってもうまくいくはずがない。

気持ちを萎えさせたり、仕方ないかと思わせたりする情報が意図的に会社から流されることが多い。前兆の段階で社員の様子を見て反応を探るのは、この時期の手段だ。「もうやってられない、俺、真っ先に辞めるよ」と言いふらす輩が出てくるのもこの時期だ。

嵐の海を小舟で漕ぎ出すときの戦術に「逆櫓(さかろ)」がある。源平の屋島の戦いのとき、梶原景時が義経に進言したことで知られているが、「船のへさきにも櫓をつけて、どの方向にもたやすく転換できるようにする」方策だ。魔の手を逃れるためには、正攻法で前に進み、様子を見ながらうまくいかないことに備えて裏技も準備しておくのだ。

以下、正攻法を2つと裏ワザを4つ説明する。最後に、それらを試みる順番を提示するので参照してほしい。

■正攻法1「天の声」を利用する

上層部から人事担当者や上司に飛ぶ指示や依頼が、いわゆる「天の声」である。リストラ候補にならないように、会社の幹部にお願いしておくのだ。キャリアコンサルタントとして多くの企業のリストラに携わってきた筆者が見た、天の声が降ってきたケースを紹介する。

[大手損保会社A社でのリストラ人選会議状況]

人事所管専務、人事部門担当役員、人事部長以下人事部役職者全員によるリストラ候補人選会議が朝9時から特別会議室で淡々と進められていた。人事部で作成した45歳以上基幹職450名全員の学歴・入社年次・年齢・所属部署などの基礎データに過去5年間の賞与・定昇査定、賞罰、特記事項がリストアップされ、その一覧表を出席者に配布。

一人一人を人事課長が説明、A・B・Cに分けられていった。Aは優秀人材、Bは普通人材で共に残留させ、Cは退職勧奨組になる。夕方近くほぼ9割程度が決まり、あと一息という段階になった。人事課長の疲れた声が室内に響いている。

「山口洋二、年齢・査定・持ち点ともオールバツ、C決定です」
「ちょっと待ってくれよ。山口君はね、君たち知らないだろうが15年前のタイの○○社買収の立役者で社長も評価しているんだよ」

そのとき、専務の野太い声が聞こえた。滅多に発言しない専務の一言は何を意味するのか、みんなは瞬時に理解した。

「訂正します、山口洋二、功績配慮でB決定とします」と人事部長が事務的に言い直した。

山口氏は1週間前、大学陸上部の先輩である人事所管専務の自宅を妻と共に訪問し懇願した。その成果がストレートにあらわれた瞬間だった。

「天の声」はきわめて効果的だ。リストラが職場の話題になるころ、必ずそれに頼ろうとする輩が出てくる。リストラは生きるか死ぬかの「椅子取りゲーム」と考えた場合、「お偉いさんに頼むことを潔しとしない」か、「溺れる者は藁をもつかむ」か、自然と答えは決まってくる。自分の生き残りを画策することは、親しい仲間を裏切ることになるかもしれないと人によっては悩む。だが、自分と家族の生活がかかっていることを考えたい。頼むのは早ければ早いほうがよい。

■正攻法2「ゴマすり名人」になれ

ある著名な経営者が「私が絶対やらなかったのは上司のご機嫌取りとゴマすり」と述懐しているほど、「ゴマすり」はひどく嫌われる。ましてやリストラの噂が出始めたときにこれ見よがしにやることは本当に効果があるのだろうか?

もともと仕事ができる人がやれば、圧倒的な効果が発揮できる。できるできないの線上にある人は、使うことにより安全圏に押し上げてくれる。問題は仕事でまったく評価されていない人はどうなのか。「ゴマすり」だけでは十分な効果は見込めない。他のワザ(例えば、後述する「火事場の馬鹿力」とか「意外性の法則」)を併用することで初めて生きてくるだろう。

なぜ「ゴマすり」が効くのか。それは部下の立場ではやるのは嫌だが、上司としては「ゴマすり」をされることは好きで好きで、嬉しくて嬉しくて仕方がないのだ。ならば、仕事には手を抜いても、絶対「ゴマすり」に手を抜いてはならない。ヨイショする部下は、上司にとって「愛(う)い奴」となる。これはサラリーマン社会の通例と知ってほしい。「愛い奴」は成果が低くても、いろいろ理由をこじつけて「彼のことだ、しょうがないか」と思ったり、少しの成果も大きく上げているように見えるものだ。

リストラ候補の選定では上司の発言力、評価を重視する会社が圧倒的に多い。人事部門で一方的に決めるときも所属部門の管理職の考えに反して決めることはない。この場合、上司の判断は好き嫌いで決まる。好き嫌いは仕事ができるできないで決まるのではない。「馬が合うとか、虫が好く」と同じように主観的な判断によるものだから、「ゴマすり」が大きな要素になることが多い。

「ゴマすり」は好きでない人が多いだろうが、会社の中では有効に働くのは誰しも認めるところだ。実力のない人がゴマすりだけで出世できるほど会社は甘くはないが、長くぶら下がりを続けるためには必要条件の一つであることは間違いない。「ゴマすり」をされる上司がいい気持ちになるのは事実だし、その上司がリストラ候補を決めるキーマンであるからには、「ゴマすり」を敬遠することは普通の人にはもったいなくてできないだろう。「どうぞ批判してくれ」と言う上司ほど、欲しているのは賞賛である。

上司と会話するビジネスマン
写真=iStock.com/stockstudioX
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/stockstudioX

■裏ワザ1「火事場の馬鹿力」を発揮しろ

人間はふだん最大能力の20~30%しか使っていない。そのためか火事場で火が間近に迫っていると体重の5倍の荷物が担げるのだとか。「私は、これだけしかできない」と言っていた人ほど、リストラという人生の危難に際して能力のノリ(余裕)が十分にあり、伸びしろが大きいだろう。「火事場の馬鹿力」が期待できるのだ。このとき必要なのは、「できる」「やれる」というプラス思考だ。

長いサラリーマン人生、自分なりのペースを心得て他人に構わず走るのが完走するコツであるが、全力疾走しなければならないときはしなければ元も子もないことになってしまう。

職場の同僚からは、「いまさら」とひんしゅくを買うかもしれない。しかし「仕事を頑張り成果を出す」ことは、付け焼刃であったとしても上司の評価を急上昇させるには効果絶大。数カ月やれば結果が出る。リストラが一段落すれば、また元のペースに戻ればいいのだ。

■裏ワザ2「自分のマイナス情報」の意識的流布

リストラで会社が恐れることはユニオン絡みの労働紛争とか訴訟やトラブル(自殺者、刑事事件)の発生とそれをマスコミの話題にされることだ。

「住宅ローンや教育ローンだけでなくサラ金にも多額の借金があるみたいだ」「学生時代に自殺未遂を2回起こしたんだって」「奥さんが精神的に弱いそうだ」といったマイナスの個人情報を意識して流すのが一つ。「親戚に弁護士がいる」「彼を怒らすと自暴自棄になって手に負えなくなる」「上司の住所や家族関係は調べ済みなんだと」「何かあれば徹底的に争うらしい」「彼は何か部長の弱みを握っているようだ」など、彼をリストラすると手強い、彼をリストラすると心中しかねない、といったイメージ情報を流すのも手段だ。

人事も上司も人の子。ほとんどが初めての経験で、できればこんなことやりたくない。だけどやらないと自分の身が危ないからトラブルなくやりぬきたい。したがって、あいつには間違っても個人的にかかわりたくない、と敬遠され嫌がられればいいのだ。

ただ、これは諸刃の剣になる危険性がある。上司の性格や考え方を十分心得たうえでやらないとしっぺ返しにあう可能性も。ある人が机の上に、緊急連絡先の一つに某ユニオンの名前と電話番号を記しておいたところ、真っ先にリストラ候補に選ばれたそうだ。

オフィスの噂話
写真=iStock.com/PRImageFactory
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PRImageFactory

■裏ワザ3「ご注進役」になれ

リストラの噂が流れだすと、寄ると触ると人が集まり、情報通と称する人からいろんな情報が流れる。

必ず出てくるのは、いざリストラになった場合の社員の抵抗感を少なくするために、会社が労組とつるんで意図的に流す、今期赤字見込み数百億といったニュースだ。次期社長候補が辞めたとか、銀行が見限ったといったたぐいの情報も出てくる。

リストラ候補になりたくない連中は、ライバルを引きずり下ろすために不倫とか使い込みといったデマや退職情報を流して、足を引っ張りおとしめる。

この時期、なぞのアルファベットが横行することがある。Uはユニオンであり、Pはパラシュートを意味する「天の声」だ。「会社側(人事や上司)と通じて、情報を売る人」がSになる。自分から売り込んで、リストラ対象にはしないという身の安全の保証と引き換えにSになるケースと、人事にいる友人から頼まれる場合もある。

助けるふりをし、情報を提供しようとする人の中にSが混じっているのだ。職場にもいると思うべし。うかつなことは発言できないのだ。混沌とした社内状況の中、頼りになる人かそうでないかを見極めるのは難しい。一人一人が生き延びるのに必死なのだから。

ここでも見分け方の一つは、「リストラ時に、退職するかどうか」の一点を聞き出そうとする輩だ。これは上司や人事への大きな手土産になり、「ご注進、ご注進」となる。

■裏ワザ4「意外性の法則」の活用

B印刷工業所でうだつの上がらなかった斎藤係長は、英語を流暢にみんなの前でしゃべることにより、彼の知られざる一面を見せつけ、社内での見方が劇的に変わった。

砂山擴三郎『今どきサラリーマンのためのリストラされずに会社にぶら下がる方法』(主婦の友社)
砂山擴三郎『今どきサラリーマンのためのリストラされずに会社にぶら下がる方法』(主婦の友社)

この話、実は斎藤係長が仕掛けた大芝居だったのだ。1カ月前、残業時に社長室のドアから聞こえてきた社長と専務の話からリストラの危険性を察知。リストラになれば自分は逃げきれないと考えた彼は、10年来続けた観光ボランティアで培った英語力を生かそうと決めたのだ。ボランティア仲間と示し合わせて社長に電話したのだが、こんなに効果があるとは夢にも思わず、リストラ候補にすらならなかった。

「私はこう見えても○○なんです」
「○○なのに、実は△△」と自分の意外性をみつけたい。
「甲子園に出たんだって」(スタンドで応援していたっていい)
「社長と親戚だって」(社長とたまたま姓が一緒なので、社内で言いふらした奴がいる)
「空手三段だって」(実は三級なのが、いつのまにか)

とにかく即効性があるのが「天の声の利用」と「ご注進役になれ」。真っ先にこれにすがり、無理だとわかったら「火事場の馬鹿力」と「ゴマすり名人」にすぐ切り替え、並行してタイミングを見計らって「マイナス情報」と「意外性」がいい。これだけやれば、リストラ候補から外れる確率は格段に高くなる。あれこれ言う前にプラス思考でやってみよう。

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砂山 擴三郎(すなやま・こうざぶろう)
キャリアコンサルタント
1943年生まれ。大阪大学卒。大手企業で人事・総務畑を歩き、人材会社を経て独立、企業のリストラを手伝う。

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(キャリアコンサルタント 砂山 擴三郎)

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