元国税庁調査官が「不況の時こそ賃貸をやめて家を買いなさい」と言う理由

プレジデントオンライン / 2020年10月7日 9時15分

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家がほしくても、「この不況下で買う勇気はない」とためらう人がいる。だが、元国税調査官の大村大次郎氏は「節税対策の中で、実は住宅ローン控除が最も効率が高い。ほとんど節税ができない会社員は、賃貸よりも家を買ったほうがいい」と指摘する――。

※本稿は、大村大次郎『やってはいけないお金の貯め方』(宝島社)の一部を再編集したものです。

■家を持てば2つの節税対策になる

持ち家には大きなメリットがあります。それは、税金が安くなるということです。

しかも、二つの意味で節税になるのです。

現在、日本の税制には、住宅ローン控除というものがあります。

ローンを組んで家を購入した場合は、税金が非常に安くなる、という制度です。この住宅ローン控除には、様々なバリエーションがあり、うまく利用すれば、10年近く、所得税、住民税をほとんど払わなくて済むことになります。

ほとんど節税の余地がないサラリーマンにとっては、非常に効果的な節税策だといえます。

そして、もう一つ、家を持つことは「相続税対策」にもなるのです。

相続税というのは、3600万円以上の遺産があればかかってくる可能性がある税金です。庶民にとっても、決して他人事とは言えない税金です。そして、相続税の対象となる相続財産というのは、預金、金融商品で残すのが、一番の不利なのです。

預金、金融商品の場合は、実額がそのまま相続財産に換算されるからです。が、不動産の場合は、そうではありません。実額よりもかなり低い金額しか換算されません。

その不動産が「自宅」となると、なおさら換算価値は低くなります。家族と一緒に住んでいた家を、家族が相続した場合、家の土地の価値は8割も軽減されます(土地の広さが330平方メートル以内の場合)。

だから家の土地が1億円だったとしても同居していた家族が相続すれば、相続税はかかってこないのです。

簡単に言えば、相続資産を預金、金融商品で残すのと、持ち家で残すのと比べれば、相続税に格段の差が出てくるということです。

「持ち家論争」では、この税金対策の部分がすっぽり抜け落ちていると言えます。税金を含めて考えれば、圧倒的に持ち家のほうが優位になるのです。

■最大40万円安くなる住宅ローン控除

家を持つことで節税になる「住宅ローン控除」について具体的にご説明しますね。

大村大次郎『やってはいけないお金の貯め方』(宝島社)
大村大次郎『やってはいけないお金の貯め方』(宝島社)

住宅ローン控除というのは、簡単に言えば、住宅ローン残高の1%分の税金が安くなるという制度です。

サラリーマンで言えば、住宅ローン残高の1%が年末調整で還ってくる感じになります。

たとえば2000万円の住宅ローン残高がある人ならば、所得税が20万円安くなるのです。平均年収程度のサラリーマンならば、所得税がゼロになってしまうことも多いのです。

この住宅ローン控除は、平成26年4月以降に居住の場合は、限度額は年間40万円です。

つまり、ローン残高4000万円までは1%の住宅ローン控除が受けられるということです。ローン残高がそれ以上ある人も、40万円までの控除しか受けられません。

住宅ローン控除は10年間受けられますので最大で400万円になります。

この住宅ローン控除、実は、非常に節税効果が高いものです。筆者は、所得税の控除の中では、住宅ローン控除がもっとも節税効率が高いものと思っています。

サラリーマンにとっては、最大の節税策と言えるでしょう。筆者が家を買うことを勧めるのは、この住宅ローン控除も理由の一つです。

住宅ローン控除は、普通の人でも年間数十万円単位で税金が安くなるのです。これを知っているのと知らないのとでは、経済生活がかなり違うと思われます。考えても見てください。

家を買った人が、税金が毎年数十万円も安くなるのです。家を買わない人は、その数十万円の税金を払わされているわけです。家を持っている人と持っていない人の差はどんどん広がっていくのです。

■注意! 土地は控除の対象にならない

住宅ローン控除は、手続きも簡単です。

住宅ローン控除は、1年目は必ず確定申告をしなければなりませんが、サラリーマンの場合は2年目からは、会社でやってくれます。サラリーマン以外の人も2年目の確定申告からは、住宅ローンの年末残高証明書を添付するだけでいいのです。

初めの年の確定申告は、必要書類をそろえて、税務署で申告書を作成してもらうのがいいでしょう。

ただし、住宅ローン控除にはいくつか気をつけなくてはならない点があります。

住宅ローン控除というのは、住宅取得による「借入金の残高」が控除の基準となります。だから、原則として住宅ローンを組んでいない人は、受けることができません。後に特例として、自己資金だけで家を建てた人も控除を受けられるようになりました。

住宅ローン控除の対象になるローンというのは、住宅部分に関するものだけです。家を買う場合、土地と建物を同時に購入することが多いと思われますが、土地の部分のローンは含まれないのです。

敷地等の購入にかかる借入金の年末残高があっても、住宅借入等特別控除の対象とはなりません。つまり、土地を買った借金ではなく、建物を買った借金がないとダメなのです。

だから、もし家を買うときある程度、手持ちの現金があるのなら、それは土地の購入にあて、建物はローンを組むべきです。

■条件と必要書類を確認しよう

・新築の場合

1 住宅取得後6月以内に居住の用に供していること
2 家屋の床面積が50平方メートル以上であり、床面積の2分の1以上が居住用であること
3 その年の所得金額が3000万円以下であること
4 住宅ローン等の返済期間が10年以上で、割賦による返済であること

・中古住宅の場合

基本的には新築住宅の場合と同じだが、取得の日以前20年以内(マンションは25年以内)に建築されたものでなければならない。

(必要書類)
①住民票
②登記簿謄本
③売買契約書の写し
④住宅ローンの年末残高証明書
⑤給与所得者の場合には源泉徴収票
ここにサインしてください
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■年内なら「住宅ローン控除の延長」を受けられる

さらに現在は消費税増税対策として、住宅ローン控除は拡充されています。消費税が増税されると景気が冷え込みますのでその対策というわけです。

具体的にどうなるかと言いますと、ざっくり言えば、消費税増税後1年間に住宅を購入し10%の消費税を払った場合は、住宅ローン控除の期間が3年延長され、全部で13年間控除が受けられるということです。

ただし、この「住宅ローン控除の延長」は、従来の住宅ローン控除とは若干条件が違います。まず、「住宅ローン控除の延長」を受けるには、消費税10%が適用される住宅の取得等をして、令和元年10月1日から令和2年12月31日までの間に入居しなければなりません。

今回の消費税増税時には経過措置というものがあり、住宅に関しては令和元年10月1日以降に引き渡し入居がされた住宅であっても半年前まで契約した注文したものであれば、増税前の8%の消費税でいいということになっています(この措置を受けられるのは、原則として個別の注文でつくられる「注文住宅」ですが、建売住宅やマンションなどの場合でもドアの形状を注文できるなど個別の契約が可能な住宅は対象となります)。

この経過措置を受けて8%の消費税となっている場合は、「住宅ローン控除の延長」を受けることができません。

「住宅ローン控除の延長」を受けられるのは、あくまで10%の消費税を払って住宅を購入した人のみなのです。

■延長しても、限度額は26万6667円

また「住宅ローン控除の延長」を受ける場合、延長期間の控除額の計算は、既存の住宅ローン控除とは少し違います。住宅ローン控除の延長期間(11年目から13年目まで)の各年の控除限度額は、次の二つのうちのいずれか小さい額となっています。

・1 住宅借入金等の年末残高(4000万円を限度)×1%
・2 建物購入価格(4000万円を限度)×2/3%(2%÷3年)

2の場合、限度額が26万6667円となります。つまりは住宅ローン控除の金額は最高でも26万6667円しか受けられないのです。普通の住宅ローン控除の場合は、最高が40万円受けられるので、約30%減ということになります。

ただし長期優良住宅や低炭素住宅の場合は、借入金年末残高の上限は5000万円、建物購入価格の上限は5000万円となっています。

モダンなリビングルーム
写真=iStock.com/CreativaStudio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/CreativaStudio

■家賃を払う金があれば家は買える

家を買うにはそれなりのお金が必要です。が、よく言われていることですが、家賃を払う金があれば家は買えるものです。家賃というのはその物件の購入費以上に設定されているのですから、その物件を購入すれば家賃以下の支払いで済むのです。特にサラリーマンの場合は、ローンも組みやすいです。

また贅沢を言わなければ首都圏でも数百万円の中古マンションなどざらにあります。中には200~300万円で買える物件もあります。普通に就職していれば誰もがちょっと頑張れば買えるはずです。

「持ち家が有利だと言ってもこの不況下で家を買う勇気はない」

と思っている人もいるかと思います。この不況の中で多額のローンを組むことに躊躇してしまう人もいるでしょう。

■ローンを組む際は「残業代」を外すこと

が、この不況下で金利は下げられるだけ下げられていますし、不況が続いているうちは金利が上がることはありません。日銀や与党も不況下で金利を上げるようなバカなことはしないはずだからです。

もちろん家を買う際やローンを組む際には「自分の身の丈に合った金額」に抑えなければなりません。ローンが払えなくなって失敗するケースとして、「残業代を含めた年収でローンを組む」ということがあります。残業代は不況になったら減ってしまうかもしれませんので、ローンを組む際には「残業代を含めない年収」を基準にして無理のない金額を設定すべきです。

また自分の会社の先行きや景気に不安があるような人は、一戸建てより駅近のマンションを買う方がいいでしょう。駅近のマンションならば、いざというときに売りやすいし、価格も下がりにくいからです。都心部から電車で小1時間くらいかかる駅のマンションでは、駅近といってもそう値が張るものではありません。

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大村 大次郎(おおむら・おおじろう)
元国税調査官
1960年生まれ。大阪府出身。元国税調査官。国税局、税務署で主に法人税担当調査官として10年間勤務後、経営コンサルタント、フリーライターとなる。難しい税金問題をわかりやすく解説。執筆活動のほか、ラジオ出演、「マルサ!! 東京国税局査察部」(フジテレビ系列)、「ナサケの女~国税局査察官~」(テレビ朝日系列)などの監修も務める。主な著書に『あらゆる領収書は経費で落とせる』(中公新書ラクレ)、『ズバリ回答! どんな領収書でも経費で落とす方法』『こんなモノまで! 領収書をストンと経費で落とす抜け道』『脱税の世界史』(すべて宝島社)ほか多数。

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(元国税調査官 大村 大次郎)

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