コロナ禍の親たちが「うちの子だけ勉強してない」と思いこむワケ

プレジデントオンライン / 2020年10月9日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kohei_hara

今年の中学受験生を取り巻く環境は、例年と大きく違う。プロ家庭教師集団名門指導会代表の西村則康氏は「例年とは違う受験で、不安を感じる親は少なくない。だからといって、子供に勉強をやらせすぎてはいけない」という――。

■「なぜうちの子の時に限って」という怒り

新型コロナウイルスの影響で、今年の中学受験を不安視する親は少なくない。緊急事態宣言下では塾の授業がオンラインに変わり、模試も自宅で受けた。“受験の天王山”と言われる夏休みは、小学校の夏休みが短くなったことで、学校と塾のダブル生活を余儀なくされ、忙しさが増した。

今は塾も通常授業に戻っているが、3密を避けるために入試回数を増やして分散させたり、試験時間を短くしたりするなど、入試のスタイルが変わる学校も出てきており、例年とは違う中学受験に不安の声が高まっている。そこには「なぜうちの子の時に限って」という怒りやもどかしさが見え隠れしている。

■コロナで伸びた子、伸び悩んだ子

だが、受験生の置かれている状況はみな同じだ。むしろ、コロナでオンライン授業になったことで伸びた子もいる。上位層のある子は、小学校が休校になったぶん、しっかり考える時間が確保できるようになり、納得のいく勉強ができた。また、今まで塾の授業のスピードについて来られなかった子は、分からないところをくり返し見ることができる動画のメリットをうまく生かし、「分からないまま」という状態が少なくなった。だが、このようにうまくいったケースはそう多くはない。

どちらかといえば、うまくいかなかった家庭の方が多いように感じる。親子が一緒に過ごす時間が増えたことでストレスが増し、衝突したという声はよく聞く。また、オンラインでPCに触れる機会が増えたことによって、ゲームにのめり込む子が出てきた。休校期間中は、親も一日中子供の面倒をみていられないので、「ちゃんと勉強をしたら、ゲームをやっていいわよ」と言ってしまう。すると、子どもはゲームやりたさに、急いで問題を解くようになる。早く終わらせることが目的の勉強になってしまうのだ。だが、こういうゆがんだ勉強は伸び悩む。

■「うちの子だけ勉強が足りない」と思い込む親

一方、勉強のやらせすぎも悪影響を及ぼす。緊急事態宣言中は、子供たちは友達とも会えず、受験勉強も各家庭に委ねられた。まわりの様子が分からない状況の中で勉強を進めていくと、「他の子はもっと勉強をしているに違いない」と思い込み、あれもこれもやらせてしまう親がいる。

子供が少しでもだらけていたら、学校が休みなのに勉強しないのが許せず、「こんなでは合格できないわよ!」ときつい言葉を投げ、何が何でも勉強をさせようとする。だが、たくさんの時間と量の勉強をすれば、成績が上がるというわけではない。机に向かってやっているふりをして、頭の中にまったく入っていないこともある。また、やらされる勉強は子供のやる気を奪う。

頑張っているのに成績が上がらない。コロナ禍の親の不安から大量の勉強をさせられてきた子供たちが、今もなお成績が上がらずに苦しんでいる。しかし、親はそれに気づかず、「できないのは勉強量が足りないからだ」と、さらに追い打ちをかける。塾から出された宿題は全部やるのが当たり前。9月からは過去問を解くのが常識。苦手対策もやらせなきゃと、さらに市販の問題集を買い集める。

勉強する女の子
写真=iStock.com/miya227
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■過去問対策を急ぐ必要はない

だが、私は常に言っているが、塾の宿題はすべてやる必要はない。すでに分かっているものはやらなくていいし、まったく分からないものは、今は手をつけなくていい。やるべきことは、あと少し頑張ればできそうな問題だ。そうやって、少しずつ得点力を高める学習をしていく。

過去問については、例年であれば9月から始めるのが理想だが、今年は夏休み中に総復習ができていない子もいるだろうし、そもそも学校の説明会の実施日程や入試要項が決まっていないこともあり、学校選びが遅れがちになっている。志望校が決まらなければ、過去問対策は進められない。今年に限っては10月半ばからのスタートになるだろう。急ぐ必要はない。

■苦手強化は「間違える原因」探しから始める

この時期に優先すべきことは、苦手分野の強化だ。だが、ここでも注意してほしいことがある。それは、深掘りしすぎないことだ。

「できないのは勉強量が足りないからだ」と、とにかく量をやらせたがる親は、実はあまり中身を見ていないことが多い。模試の問題で大問の(1)や(2)を間違えていると、「この子は基礎ができていない」と思い込み、基礎問題を何度もやらせようとする。中には、6年生の今の時期に4年生からの2年分のテキストをやらせようとする親もいる。だが、それはハッキリ言って無意味だ。

苦手強化を行う際には、まず理解できない理由や間違える原因を探す必要がある。そもそもやり方が分かっていないのか、答えを導くための書き方がよくないのか、知識そのものが抜けているのかなど、何かしらの理由があるはずだ。そこをしっかり理解できるようになると、意外と簡単に解けてしまうものも多い。

■教えてもらうのは「塾の先生」がいい

できない理由が見つかったら、やり方は塾の先生に教えてもらった方がいい。親が方程式など自己流で教えてしまうと、かえって子供を混乱させてしまうこともあるからだ。だが、子供に「塾の先生に質問してごらん」と促してみても、子供の性格によってはしづらく、なかなかハードルが高い。そこで、具体的に何が理解できていないかをメモに書いて、子供に渡させるといいだろう。

くれぐれも「この問題が分からないのですが」という質問の仕方はしないこと。そういう質問をすると、塾の先生は解法を教えるだけで、根本的な理解にはつながらない。この単元のこの部分が分からないと具体的に質問をすることが、理解の近道になる。

■小学生の集中力は、高校生ほど続かない

中学受験は子供がまだ幼いため、親のサポートが必要になる。それは事実ではあるが、中には過度に気を張ってしまう親がいる。子供に勉強をやらせすぎてしまう親が、まさにその典型的なタイプだ。私の経験からいうと、地方出身の親の方がその傾向が強いと感じている。自分も中学受験を経験している親は、ある程度中学受験について理解できるが、経験したことがない親は、中学受験というものがどういうものかが分からない。分からないから、ものすごく特別なものと思ってしまうのだ。そして、「このくらい勉強をしないと合格できない」と勝手にハードルを上げ、頑張らせすぎてしまう。

だが、小学生の子供は集中力が続かない。大学受験に挑む高校生のように、目的に向かって計画的に頑張ることはできない。だから、時間や量を増やしても、結果にはつながらない。それよりも大事なことは、いかに子供を気持ちよく勉強させるかだ。

■ほめられて嬉しくない子供はいない

大きな目標に向かって頑張らせるのではなく、目標を立てるのであれば、「最低限これだけはやるもの」と「できればここまでやってほしいもの」の2段階に設定し、「できればここまでやってほしいもの」ができたときは、大いにほめてあげよう。「最低限これだけはやるもの」についても、「やって当たり前」ではなく、「いつも頑張っているね」「前よりずいぶん早く解けるようになったね」「ちゃんと式を書いてえらいね」など、子供の頑張りを認める言葉をかけてあげることが大切だ。

親から認め、ほめられて嬉しくない子供なんていない。そうやって、子供を気持ちよく勉強させる親になってほしい。入試本番まであと4カ月。今こそ、親の力が試される時だ。

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西村 則康(にしむら・のりやす)
プロ家庭教師集団「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員
日本初の「塾ソムリエ」として、活躍中。40年以上中学・高校受験指導一筋に行う。コーチングの手法を取り入れ、親を巻き込んで子供が心底やる気になる付加価値の高い指導に定評がある。

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(プロ家庭教師集団「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員 西村 則康 構成=石渡真由美)

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