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「例年とパターンが違う」なぜ8月の自殺者が東京で45%も増えたのか

プレジデントオンライン / 2020年10月6日 15時15分

■ここ数年、自殺者数は減少傾向にあったが…

厚生労働省と警察庁のまとめによると、8月の自殺者が1800人を超え、今年の月別ランキングで一番多かった。

ここ数年、自殺者の人数は減少傾向にある。しかし、8月は1849人と前年同月に比べ、246人(15%)も増えた。都道府県別では東京都が最多の210人で、前年同月比で65人(45%)も増えた。千葉、愛知、埼玉などでも前年より増加していた。

生きていれば何でもできる。未来は常にある。自殺ほど馬鹿げた行為はない。自殺をなくすにはどうすればいいのか。

厚労省は「心の健康電話相談」(0570・064・556)への相談を呼びかけている。

沙鴎一歩は親しい知人に手紙を書くことを勧めたい。スマートフォンやパソコンのメールではなく、便箋にペンで一字一字ていねいに書こう。手紙の内容は何でも構わない。今日あった出来事でもペットのことでもいい。きっと書いているうちに心の高まりがおさまり、冷静さを取り戻せるはずだ。そうなればしめたものだ。手紙は出さなくてもいいだろう。

■社会と経済をもとの状態に戻さなければならない

この夏、なぜここまで自殺者が増えたのか。ひとつは新型コロナウイルス感染症の影響だろう。

3月~5月の第1波に比べ、7月~9月の第2波の感染者の数は多く、グラフ上の波の大きさも見た目は2倍以上にも大きくなっている。その感染者数の増加が連日、テレビや新聞それにネットで報じられ、視聴者や読者は「第2波で都内の感染者が増えた。また緊急事態宣言かもしれない」「全国でも増え続けているけど、昨日よりは低い数字になった」などと一喜一憂させられる。

この状態が春先からずっと続き、しかも自宅にこもる生活が続いている。これでは滅入ってしまう。こうした要因が重なり合って、8月の自殺の増加に結び付いたのではないか。

新型コロナ対策で社会・経済活動が鈍り、人と人との交流が減った。多くの企業の経営も悪化しており、失業者が増えはじめている。早く社会と経済をもとの状態に戻さなければならない。

■わずか4カ月間に多くの芸能人の自殺報道があった

芸能人の自殺が相次いでいることも原因のひとつかもしれない。5月下旬以降、わずか4カ月余りの間に多くの芸能人や有名人が自ら命を絶った。女子プロレスラーの木村花さん、俳優の三浦春馬さんや藤木孝さん、竹内結子さんたちだ。短期間にこれだけ多くの著名人が自殺すると、「連鎖自殺」も起こりやすい。

自殺は決して格好の良いものではない。その遺体はいずれも無残でとても表現などできない。「あの俳優のように死ぬ方法もある」とは思わないことである。イメージと現実は違う。

※厚生労働省「令和元年中における自殺の状況」より抜粋
※厚生労働省「令和元年中における自殺の状況」より抜粋

9月28日の産経新聞が「コロナと自殺増 きめ細かな相談と支援を」という見出しを付けた社説を書いている。

冒頭で「自殺者の数が増加する兆しをみせている。かけがえのない命を守るため警戒を強めるべきだ」と主張し、こう続ける。

「自殺には、失業や倒産、多重債務、過労や健康問題などの要因が複雑に絡み合っている。新型コロナウイルスの感染拡大が続き、人々に精神的なストレスも根強い」
「また一般的に景気が悪いときに自殺は増えるとされる。コロナ禍で苦しい経済状況が続き、さらなる自殺者増も心配される。官民挙げ、きめ細かな対策に心を配るときである」

■特に女性の自殺が前年8月と比べ約4割の増加で顕著

産経社説はさらに主張する。

「特に女性の自殺が前年8月と比べ約4割の増加で、顕著なのが気がかりである」
「女性の自殺の増加は、雇用不安が最初に表面化した可能性も否定できない。非正規雇用が多く、景気悪化の中で、職を失う現実がある。単身や母子世帯など生活基盤が脆弱な世帯には、さらなる目配りが必要である」

社会のひずみは立場の弱い人々の間に出てくる。それゆえ女性の自殺が増えるのだ。産経社説の指摘は鋭い。

産経社説は最後にこう訴える。

「新型コロナの感染拡大が続き、すでに半年以上、多くの人が他人と接することを避け、家に引きこもるように暮らしている」
「こんなときだからこそ、友人や知人、隣人同士で声をかけあったり、いたわったりする心の余裕を持ちたい。それが、相手の思い詰めた心に風を吹き込むこともあるだろう」

産経社説にしては優しさが際立つ書きぶりであるが、その主張は理解できる。

■「一緒に自殺しよう」と自室におびき寄せて絞殺した疑い

自殺関連の事件といえば、神奈川県座間市のアパートで15歳~26歳の男女計9人を殺害したとして強盗・強制性交殺人罪などに問われた無職の白石隆浩被告(29)の裁判員裁判の初公判が9月30日、東京地裁立川支部で始まった。

男女9人の遺体が見つかった、白石隆浩被告が住んでいたアパート=2018年10月29日、神奈川県座間市
写真=時事通信フォト
男女9人の遺体が見つかった、白石隆浩被告が住んでいたアパート=2018年10月29日、神奈川県座間市 - 写真=時事通信フォト

白石被告は2017年10月に逮捕された。罪状認否で白石被告は「起訴状の通り、間違いありません」と述べたが、弁護側は「被害者はみな、被告に殺害されることを承諾していた」と承諾殺人罪の適用を主張し、被告の刑事責任能力についても争う姿勢を見せた。論告求刑は11月26日に、判決は12月15日に予定されている。

白石被告には2017年8月~10月にかけ、ツイッターなどのSNSを使って相談相手を装い、自殺願望の男女(女性8人、男性1人)に対して「一緒に自殺しよう」と自室におびき寄せて絞殺した疑いがある。女性に乱暴し、9人から現金を奪った疑いもある。

相談を装って、相手を騙して殺してしまう。到底、許しがたい犯行である。

■「SNSに潜む危険が、改めて浮き彫りになった」

初公判に当たり、読売新聞(10月2日付)が社説で取り上げている。見出しは「座間事件初公判 SNS犯罪の抑止につなげよ」で、書き出しから「SNSに潜む危険が、改めて浮き彫りになったと言えよう。事件の教訓を、同様の犯罪の防止に生かさねばならない」と訴える。

ネット社会は便利さと危険性のある両刃の剣である。フェイスブックやツイッターなどのSNSを使う際は、頭に必ず入れなければいけない。

読売社説は主張する。

「検察側は冒頭陳述で、被告が『自殺願望のある女性なら言いなりにしやすい』と考え、自らも自殺志願者のように装って投稿を始めたと指摘した。金づるにならないと判断すると乱暴し、殺害して金を奪ったとしている」
「そうだとすれば、被害者の悩みや揺れる心情につけこんだ、許しがたい犯行である」

なぜ犠牲者たちは白石被告を頼ってしまったのだろうか。ほかに相談する相手はいなかったのか。白石被告の騙しのテクニックがうまかったのか。それともSNSという気軽さが事件を引き起こしたのだろうか。

■「死にたい」は「話を聞いてもらいたい」の裏返しだ

読売社説は指摘する。

「インターネット上には、自殺を示唆する書き込みがあふれている。事件後、国やSNS事業者が監視を強化し、相談体制も拡充したが、追いついていない」
「『死にたい』という訴えは、助けてほしい、誰かに話を聞いてもらいたい、という気持ちの裏返しだと指摘する専門家もいる」

だからこそ、悩んだときには信頼できる人に手紙を書いてほしいと思う。他人に相談すること自体が苦しいという人もいるだろう。その手紙は投函しなくても構わない。まずは紙とペンを手に取ってみてほしい。書けば必ず、心が落ち着くはずだ。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩)

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