タワマンを買えない30代に伝えたい「新築戸建て」購入の必須条件
プレジデントオンライン / 2020年10月7日 15時15分
■「マンションは高くて買えない」という嘆き
「マンションは高くて、もう買えない」
最近、私がよく聞く嘆きだ。マンションが値上がりしやすく、資産性が高いことは既に常識になった。マンション大手7社連合のメジャーセブンの調査によると、マンション購入理由の1位は「資産性」となっている。こうした背景の下で、マンション価格は2013年以降値上がりを続け、当時の5割増しになった。
年収が大きくは上がらない中、もう買えないと言われても致し方ない状況にある。実際購入しているのは、共働きのパワーカップルと呼ばれる世帯中心に変わってきている。結局、資産性がある(値下がりしにくい)物件は金持ちしか買えないというのでは資産格差は広がる一方だ。
しかし、戸建てにも資産性の風が吹きつつある。
■今年の新築分譲は「マンション2割:戸建て8割」
コロナショックで首都圏の新築分譲マンションの2020年の供給戸数は前年比で大幅に減りそうだ。2万戸を割りそうな水準で、前年の3万1000戸の3分の2にすぎない。
新築マンションの代替案の1つが中古マンションだ。中古マンションの成約戸数は既に新築マンションの供給戸数を逆転している。マンション買っている人の半分以上は今や中古なのだ。ただし、中古マンションも新築マンションに引っ張られて高騰している。
そこで浮かび上がるのが、新築の分譲戸建てである。日本では新築信仰と言われるほど、「新築しか嫌だ」という人は多い。他人の手垢がついてないものを買いたい気持ちは理解できる。こうして、2019年の東京都を中心とする1都3県の着工戸数は6万3360戸と分譲マンションの供給戸数の既に2倍になっている。
そんな新築分譲戸建てはコロナショック後も順調に売れている。こうして、今年に限っては新築分譲される住宅のシェアがマンション2割、戸建て8割になりそうな状態にある。
マンションが値上がりしたのに対して、戸建てはほぼ横ばいの価格で推移している。理由は簡単だ。戸建て用の土地は相続の発生等でコンスタントに供給され、木造の建築費は低位安定しているからだ。こうして、分譲戸建て価格は割安となり、手頃感が増した。
![不動産価格指数(出典)国土交通省](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/6/9/500/img_698b6917dd75225bae9fd45c24fa235b259816.jpg)
■30代が「マンション」から「戸建て」に移行
「コロナ禍を受けた『住宅購入・建築検討者』調査(首都圏)」をリクルートが行った。緊急事態宣言後に行われたこの調査によると、アフターコロナで働き方が変わったことで家に対するニーズが変わってきている。
![ホームオフィス](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/2/9/670/img_29284e4b8c7b6aae26b4b459af11e99e718150.jpg)
通勤回数が減ることで、駅から離れた立地に居住する志向が強くなり、在宅ワークが増えることで、広さと部屋数を求めるニーズが強くなった。これにより、マンションよりも戸建てを検討する世帯が増えた。
確かに、戸建ての主要な面積・間取りは100平方メートル・4LDKだが、マンションは70平方メートル・3LDKになる。「もう1部屋需要」は戸建てが受け皿になっている。
このリクルートの調査では、マンション志向から戸建て志向に移った人が以前の調査より10%多く出現している。特にこの傾向は都区部から離れた郊外において、20~30代の若年層に顕著で、最も取得者が多い30代では戸建て志向に移った人が20%増えるに至っている。こうして、持ち家ではマンション離れの傾向が進んでいる。
昨年12月調査と比較して、「広さ派」が10ポイント増加(52%)し、「駅距離派」が10ポイント減少(30%)し、その結果として、「一戸建て派」が63%と7ポイント増加している。ちなみに、マンション派は22%と10%も減っている。
■「都心寄り、駅近、丈夫で長持ち」が最優先
分譲戸建ての建物価格はおおよそ1200万円である。分譲戸建ての平均価格は首都圏が3500万円で、35年の住宅ローン返済なら、年間100万円に相当するので、12年程で建物価格は全額返済し終えたことになる。
土地の資産価値はあまり変わらないので、土地代が高いところのほうが物件価格の値下がり幅は小さくなる。つまり、都心寄りで駅近の物件のほうが資産性では有利ということだ。不動産においては立地が常に最優先事項である。
資産性のある戸建てを選ぶ方法のその次は、建物の資産価値が落ちない物件を選ぶことに尽きる。そこで丈夫で長持ちする家を探すことになるが、そこには国の制度がある。住宅性能表示制度と長期優良住宅だ。
住宅性能表示制度は良質な住宅を安心して取得できる市場を形成するために国が作った制度である。良質な住宅という基本性能を10項目で評価し、比較可能にしている。これには、設計段階だけではなく、施工品質についても第三者が検査することが行われている。この10項目の中でも資産価値に大きく影響するのが、耐震等級と劣化等級だ。
■鉄筋コンクリート造を上回る資産価値を維持する住宅
住宅性能評価を取っている物件の耐震等級はおおむね最高等級の3を取得している。その内容は、数百年に一度程度発生する地震による力の1.5倍の力に対して倒壊、崩壊等しない程度である。
阪神淡路大震災の死因は建物の倒壊による窒息・圧死で72.57%(3979人)を占めた。つまり、人命が損なわれるような壊れ方はしない安心は大きい。また、劣化等級もおおむね最高等級の3を取得している。等級3とは、3世代(おおむね75~90年)住めるということだ。
もう1つの制度である長期優良住宅は、その認定基準は住宅性能表示と重なる部分が多い。耐震性は等級2以上なので住宅性能表示よりやや緩いが、劣化等級は3(おおむね75~90年)が必要である。このように、住宅性能評価付き住宅と長期優良住宅は国のお墨付きで、鉄筋コンクリート造住宅の47年をはるかに上回る資産価値を維持すると考えられている。
■優良な分譲戸建てはマンション同様に売却できる
こうした制度の最も重要な価値は、売却する時の価格に表れる。マンションの場合は立地と物件属性の基準を満たすと、値下がり幅が小さくなることが分かっている。これと同じことで、住宅性能評価書付き住宅と長期優良住宅の場合、値下がり幅が小さくなることが分かった。
中古で売買された取引価格は、住宅性能評価付き住宅で年間下落率-1.4%、長期優良住宅で年間下落率-1.6%だった。これは建物の減価償却後の価値と比較してほぼ同等かそれ以上に当たる。ここから言えることは、住宅ローンの返済スピード(年2.7%)よりも下落率が小さいこうした国のお墨付き戸建てはマンション同様にいつでも売却できるということだ。
分譲マンションも分譲戸建ても既製品という意味では同じだ。そこには注文住宅のような奇抜さはなく、多くの人のニーズを満たす最大公約数的な商品企画になる。そのスタンダードな商品企画こそが取引量を増やしている要因になる。こうした企画だからこそマンションが立地で価格が決まるように、戸建ては立地に加え、住宅性能評価書・長期優良住宅が付いているかどうかで決まるのだ。
■「国のお墨付き戸建て」には希少価値がある
新築の分譲戸建ては既に建っているので、購入する際に住宅性能評価書を付けてくれとは言えない。戸建てにはこうした分譲とオーダーメードの注文住宅があるが、後者の注文住宅は平均取得価格が1000万円ほど高い(リクルートマイホーム購入者アンケート調べ)。こうなると、元々リーズナブルな価格で供給されていて、取引価格が下がりにくい分譲戸建てが選択肢になる。
注文も含めた戸建てのうち、国のお墨付きが付いている割合は前述の通り住宅性能評価付き住宅、長期優良住宅ともに新築戸建て市場全体の4分の1程度にすぎない。できることなら、両方付いているほうが望ましいが、こうなると多く見積もっても20%程しかない。しかし、その効果は家の耐久性が高いことによる安心感だけでなく、これを背景にした取引価格の下がりにくさが売買しやすさにつながっている。
この再販可能な市場こそが私たちのライフスタイルに柔軟さをもたらしてくれる尊いものだと考えている。
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スタイルアクト代表
1988年、慶應義塾大学経済学部卒業。監査法人トーマツ系列のコンサルティング会社、不動産コンサルティング会社を経て、1998年にアトラクターズ・ラボ株式会社(現在のスタイルアクト株式会社)を設立、代表取締役に就任。著書に『マンションは10年で買い替えなさい』(朝日新書)、『独身こそ自宅マンションを買いなさい』(朝日新聞出版)など多数。分譲マンション情報サイト「住まいサーフィン」(https://www.sumai-surfin.com/)、独身の住まい探し情報サイト「家活」(https://iekatu.com/)を運営している。
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(スタイルアクト代表 沖 有人)
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