日米関係の悪化をたくらむ文在寅大統領には辞めてもらうしかない
プレジデントオンライン / 2020年10月9日 18時15分
■菅義偉首相がポンペオ国務長官と首相官邸で会談
菅義偉首相が10月6日午後、この日の未明に来日したアメリカのマイケル・R・ポンペオ国務長官と首相官邸で会談した。菅首相にとって就任後初めての対面による外交だった。
会談では日本とアメリカが提唱する「自由で開かれたインド太平洋」構想について話し合われた。これによって日米同盟、つまり日本とアメリカの関係はより強固なものとなった。
この日夕方には日本とアメリカ、オーストラリア、インドによる「4カ国外相会談」も行われた。新型コロナの感染拡大後、日本で初めて開かれた多国間の閣僚級会議となった。茂木敏充外相が議長を務め、4カ国の外相は、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた結束を確認し、今後、会談を定例化することで合意した。
また、この4カ国外相会談でポンペオ米国務長官は、中国が軍事的介入を強めている東シナ海や南シナ海の現状を踏まえ、「中国共産党の脅威から地域を守るため、4カ国がこれまで以上に連携していくことが重要だ」と求めた。
■なぜ韓国は日米豪印の4カ国外相会談から外されたのか
4カ国外相会談の目的は中国の脅威に対抗するところにある。対中国外交に関して事情が異なり、しかも会談開催国の日本との関係が悪化している韓国は参加していない。
ポンペオ氏の来日に先立ち、アメリカの国務省は10月3日、ポンペオ氏が予定していた日本、韓国、モンゴルのアジア歴訪に関し、韓国とモンゴルへの訪問を取りやめる、と発表した。トランプ大統領が新型コロナウイルスに感染して入院したことで、万一に備えた対応だというが、日本は例外だった。アメリカは間違いなく韓国よりも日本に期待している。
国防省はポンペオ氏が10月中に改めてアジアを訪れ、韓国とモンゴルを訪問できるよう再調整しているというが、韓国よりも日本を重視するアメリカ政府の姿勢に、韓国政府は大きなショックを受けたことだろう。
とりわけ文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長とトランプ氏の間に入って史上初の米朝首脳会談(2018年6月にシンガポールで開催された1回目の会談)を実現したことを誇りに思っているだけにかなり落胆しているはずだ。
■読売が「文在寅政権が金与正氏訪米の仲介図る」とスクープ
ところで、10月7日付の読売新聞が国際面にこんなスクープ記事を書いている。主見出しが「与正氏訪米の仲介図る」で、サブ見出しが「韓国、米大統領選前に」と「ポンペオ氏 訪韓せず時間切れ」である。
この記事では、韓国の文在寅政権が北朝鮮の金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党第1副部長の訪米の仲介を図っていたと、複数の日米韓協議筋が明らかにしている。金与正氏は金正恩委員長の実の妹で、彼の権限の一部を譲渡されているとされ、事実上、北朝鮮ナンバー2の地位にある。
米朝首脳会談の次は米朝トップ級会談を狙う。韓国もなんとかアメリカ政府の信頼を得ようと、懸命なのだろう。
■韓国は良好な日米関係を切り崩そうとしているのではないか
読売の記事によると、文政権はオクトーバー・サプライズを狙ったが、トランプ氏の感染によってポンペオ氏の訪韓が中止となった。暗礁に乗り上げている米朝非核化協議を再開させるため、韓国は米朝のトップ級会談の実施を検討した。韓国は「苦戦するトランプ氏に外交で点を稼がせ、恩を売れば北朝鮮に有利になる」と北朝鮮を説得した。
韓国は当初、大胆な決断ができる首脳会談を考えた。しかし、物別れに終わった2019年2月のベトナム・ハノイでの首脳会談のようになると、南北関係がさらに悪化すると判断。正恩氏の妹の金与正氏を代わりに訪米させる案に差し替えた。ナンバー2の金与正氏ならばトランプ氏やポンペオ氏との会談相手になるうえ、実務者協議の積み上げを主張するアメリカの理解も得やすいだろうと、韓国は考えたのである。
オクトーバー・サプライズを単純なトランプ氏は喜ぶかもしれないが、文氏は何としてでもアメリカに気に入られたいのだ。そのために作戦を練りに練る。策略家である。もしかしたら強固な日米関係を切り崩し、日本に取って代わろうと画策しているのかもしれない。文氏は日本にとって危険な人物である。沙鴎一歩は繰り返し主張しているが、文氏には大統領を辞めてもらうしかない。
■間違っているのが韓国で、悪いのも文在寅政権だ
「コロナ禍の中、隣国との門が少し広がった。日本と韓国は今日から水際対策を緩和しビジネス目的の往来を再開する。この成果を、徴用工問題をはじめとする両国間にある課題の解決につなげたい」
こう書き出すのは10月8日付の東京新聞の社説だ。見出しは「日韓往来再開 合意重ねて信頼回復を」である。
東京社説は「日韓合計で実に年間一千万人を超えていた人的交流は、新型コロナウイルスの感染拡大により、約七カ月間ほぼ途絶えていた。ビジネス目的に限定されたものとはいえ、再開実現は朗報だ」と書いた後にこう指摘する。
「一方、両国間には難題が多い。まずは、韓国大法院(最高裁)が日本企業に元徴用工への賠償を命じた判決と、これに対する日本の対韓輸出規制問題だ」
「判決に従い、韓国で差し押さえられた日本企業の資産売却手続きも進んでいる。この問題に関して、日本と韓国の立場の差は埋まっておらず、平行線のままだ」
「今回の往来再開は、あくまで経済回復が目的だろう。しかし、両国とも局面打開の糸口として期待をかけているのは間違いない」
「局面の打開」「両国間にある課題の解決」は外交上、あるいはお互いの経済的利益上、重要なことではある。しかし、韓国は条約で日本と決めたことを無視した。国際ルール違反を犯していることは明白だ。間違っているのが韓国政府であるとの認識を、日本政府は堅持するべきだ。悪いのは文在寅政権なのである。
■外交の基本は「自国の利益を優先すること」である
東京社説はさらに指摘する。
「先月二十四日に行われた日韓首脳の電話会談で基本的に合意してから、時間を置かずに実現したことからも分かる」
「茂木敏充外相は、今回の措置を発表する際、韓国をわざわざ『極めて重要な隣国』と呼び、『厳しい状況だからこそ国民の交流が大切だ』と強調してみせた」
10月8日に再開された日韓の往来は、確かに菅首相と文大統領による電話会談からすぐに実施された。しかし、だからといって元徴用工の問題が即座に解決できるとみなすのは甘すぎる。東京社説は策略に満ちた文在寅氏をどう見ているのだろうか。
東京社説は書く。
「菅義偉首相は、日本人拉致問題の解決に意欲を示し、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との対話の機会を探っている」
「韓国の文在寅大統領は、その正恩氏と直接対話してきた仲だ。韓国の協力も必要になるはずだ」
「まずは今回のような小さな合意を積み重ね、当局間の信頼を深めていくことが大切だ」
日本政府は北朝鮮との会話の機会を探ってはいるが、いまの歪んだ韓国政府から協力を得てまで北朝鮮と対話しようとは考えていないはずだ。「合意を重ねることによってお互いの信頼感を高める」ことができれば、これほど素晴らしいことはない。しかし、外交はそんなに単純ではない。自国の利益を優先するのが、外交の基本である。
■地域の安定をはかる動きに、中国が反発するのは筋違い
今回の日本、アメリカ、オーストラリア、インドの4カ国会議については新聞の社説はどうみているのか。
たとえば、10月8日付の朝日新聞の社説は「米中対立が激化するなか、この枠組みを米国の覇権争いの道具としてはならない」と書き出す。見出しは「日米豪印会合 覇権争いの具とするな」である。
朝日社説は指摘する。
「この枠組みは、台頭する中国を意識し、安倍前首相が第1次政権の時に提唱し、第2次政権で本格的に取り組んできた」
「豪印両国はこれまで、中国との関係に配慮し、ときに慎重姿勢を示してきた。ここにきて連携強化に応じ、外相会談の定例化にも合意したのは、中国の度重なる強引な行動への危機感からだろう。南シナ海や東シナ海での海洋進出などを受けて、地域の安定をはかろうとする動きに、中国が反発するとすれば筋違いだ」
斜に構える傾向のある朝日社説も、真っすぐにものをいうときがある。中国への危機感。まったくその通りだと、沙鴎一歩は思う。
■朝日社説の主張はなんとも小難しい「机上の空論」だ
しかし、読み進めてがっかりさせられた。朝日社説は書く。
「とはいえ、参加国の間にも、なお考え方に差異がある」
「米国のポンペオ国務長官は会談で『4カ国が連携し、国民を中国共産党の腐敗や搾取、威圧から守る重要性は増している』と強調した。11月の大統領選を前に中国に対抗する強硬姿勢をアピールし、対中包囲網につなげる狙いをあらわにした」
「だが、米国の同盟国であるとともに、経済では中国との関係も深い日豪にとって、米中の確執は好ましくない。『非同盟』の伝統をもつインドはなおさらで、中国ともバランスをとる外交を続けるだろう」
国家にはそれぞれ固有の立場がある。それゆえ、条約や会談によって立場を越えて協力し合い、均等に利益を分け合う。韓国についてはすでに前述したが、対中外交ひとつとっても国によって異なる。朝日社説は当然のことを複雑に指摘しているだけなのである。
最後に朝日社説は主張する。
「既存の秩序に挑む中国の行動を抑えつつ、時間をかけて変化を促し、協調による共存をはかるほかない。米政府には、多国間の安全保障の枠組みに発展させたい考えもあるようだが、地域の緊張と分断を深める恐れがある。軍事とは切り離し、外交的な協力関係とすべきだ」
「法の支配や人権の尊重といった普遍的な価値を、この地域に根付かせることが重要だ。日米豪印の各国も、それにもとる振る舞いをするようでは、連携を呼びかけても説得力を欠くことになるだろう」
現実離れした主張だ。なんとも小難しく、そしておもしろくもない社説である。こういうのを「机上の空論」というのだ。
(ジャーナリスト 沙鴎 一歩)
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