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仕事を失っても利益度外視でマスクを売りまくった男気社長のその後

プレジデントオンライン / 2020年10月19日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/MrJub

コロナ禍でもビジネスチャンスをつかむ人の発想は何が違うのか。経営コンサルタントの小宮一慶氏は「ある企業は日ごろお世話になっている取引先にお金儲けではなく、何か提供できないかとパイプのあった中国企業からふだんは扱わないマスクを輸入。自粛明けにこの会社との取引を希望する申請が一気に増えたそうです」という——。

※本稿は、小宮一慶『できる社長は、「これ」しかやらない 伸びる会社をつくる「リーダーの条件」』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

■コロナ禍で生まれた新たなチャンス

皆さんもコロナで困ったことはたくさんあったでしょうが、こういう状況があったからこそ気づけたこと、できた工夫などもけっこうあるのではないかと思います。

うちの会社では、オンラインで講演やセミナーをやるようになりました。最近はさらに、オンラインとリアルを組み合わせた形でもやるようになりました。会場に直接来て聴きたいという方は会場にお集まりいただき、オンラインで参加を希望される方はオンラインで参加していただく。

やってみる前は、一体感が出るだろうかと心配していましたが、リアルのメリットとオンラインのメリットが両方とも活き、思っていた以上に奏功しています。これまで、定期的なセミナーに参加するために長時間かけて来られていた方たちから、「移動時間も交通費もかからずに参加できるようになった」と好評で、お客さまにとってもメリットになっています。

コロナがなかったら、こうした形にチャレンジすることは考えていなかったと思います。困っている状況があったからこそ生まれた工夫の一つです。どんなにピンチでも、チャンスに変えられることが何かあるものです。必要に迫られて何か新しいことを始める場合、新たな可能性の芽がいろいろあると思うのです。

■お客さまのためにやれることはないか、考え続ける

自粛期間中、たまたまNHKのニュース番組を見ていたら、食品を扱っているところが大量に在庫を抱えて困っているという話をやっていました。それで「うちの会員企業のお客さまの中にも、同じような状況で困っているところがあるのではないか? 何かお役に立てることはできないだろうか」と思い、会員限定のお客さま向けの支援プロジェクトを始めることにしました。

定期的にセミナーを受講していただいている会員の方が、現在、450人ほどいらっしゃいます。当社が仲介機能を果たして、会員相互の助け合いができるのではないかと考え、「販路に困っている商品や、逆にコロナに役立つ商品など、売りたいものがあったら出してください」と呼びかけることにしたのです。

会員同士というご縁を通じて、支え合える場、助け合える場の一つにしていただければという試みです。もちろん、当社はそこでもうけようとは一切考えていません。普通の状況でしたら大きなお世話かもしれませんが、こんなときだからこそ、互助精神のようなものが有難いのではないかと考えたのです。

■イベント会社が「簡易PCR検査場」のアイデアをひらめいたワケ

当社のお客さまでイベントに遊具などの資材を供給する会社の社長は、コロナで予定されていた仕事の多くがキャンセルになりました。すると、すぐに中国からマスクの輸入を始めたのです。

市場にまったくマスクが出回っていなかった時期のことです。とにかくお客さまのために何かしたいと、ほとんど利益を取らずに販売しはじめたのです。これまでマスクとは何の関係もなかった会社なのですが、イベント資材の調達の関係で中国とのパイプがあったので、いちはやく動いた。

この会社の強みは、自社のつながりを活かして、臨機応変に、すばやくアイデアを実行に移せるところです。お金もうけのためではなく、日ごろお世話になっているところに何か提供できないか、という発想から、実際にマスクの輸入まで行いました。自粛などが落ち着いたころに、関係先が再びどこの会社と取引したいと思うかは、明らかです。

しかもこの会社はその後、さらに面白いことを考えました。イベント会場には、よく空気で膨らませる遊具がありますが、その会社はそういう遊具の提供がメインの仕事です。そこで、空気で膨らませて設営する巨大なエアーテントを開発し、それをPCR検査場として活用することを考えたのです。屋外の広いスペースがあるところに設営することで、密になりにくい。設置・移動が簡単なうえ、要らないときはたたんでおけばいいので収納場所もとりません。

普段から中国の企業と共同でいろいろ開発していたところから思いついたそうですが、私はその話を聞いたとき、「やっぱりこの社長はすごいな」と思いました。

小宮一慶「できる社長は、『これ』しかやらない 伸びる会社をつくる『リーダーの条件』」(PHP研究所)
小宮一慶『できる社長は、「これ」しかやらない 伸びる会社をつくる「リーダーの条件」』(PHP研究所)

「いま世の中が求めているのは何なのか」「どうすれば、自分たちの強みを活かして社会に貢献できるか」ということへの感度がとても高い。世の中のニーズを見極めて、必要なものを形にしていく力があるのです。普段からそういうことをよく考えているし、考えたことを実行している。思考力と実行力の両輪が、うまく回り続けているのです。

ドラッカーが言っているように、注視しないといけないのは「市場」と「強み」です。市場は世の中です。自分たちの持っている強みで、どうすればお客さまを喜ばせられるか。「世の中のほうから」という視点を持てるかどうかです。

自分で知恵が出なければ、社員みんなで考えればいいのです。できない理由より「やる方法」を考えて、迅速果敢に動く。これができれば、「逆境に強い会社」がつくれます。

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小宮 一慶(こみや・かずよし)
小宮コンサルタンツ会長CEO
京都大学法学部卒業。米国ダートマス大学タック経営大学院留学、東京銀行などを経て独立。『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座2020年版』など著書多数。

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(小宮コンサルタンツ会長CEO 小宮 一慶)

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