1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

「家族じゃないからいい」アラフォー女性4人が1年半の共同生活で得た気づき

プレジデントオンライン / 2020年10月21日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/recep-bg

家族や恋人がいなければ、ずっとひとりだ。それではさみしいと思ったアラフォー女性4人が、1年半前から都内の一軒家で共同生活をしている。その家に住むフリーライターの藤谷千明さんは「一人暮らしより生活費は安く、いまのところ快適だ。家族ではないからこそうまくいく暮らし方もある」という——。

■「将来が不安」で唐突に始めたルームシェア

私は現在、都内の一軒家でアラフォー女性4人によるルームシェア生活を送っている。仕事も年齢も出身地も出身校もバラバラで、共通点といえば「なんらかのオタク」であることくらいだ。一緒に住み始めてかれこれ1年半ほどだが、とくに大きなトラブルもなく、快適に暮らせている。

4人での共同生活を思いついたのは、2年前の秋のこと。身体の不調がきっかけで、唐突に将来に不安を覚えた私は、「寂しさを解消したい」「家賃を下げたい」などを理由にして、mixiやツイッターなどのSNSを通じて知り合ったオタク仲間たちに声をかけた。

私はかれこれ20年以上ヴィジュアル系バンドのファンをやっており、CDや雑誌の収納は常に逼迫(ひっぱく)している。さらに、根がミーハーかつエンタメ系のライターをしているため、推しジャンルは増える一方である。

■増え続けるグッズで自宅が狭くなる

藤谷千明『オタク女子が、4人で暮らしてみたら』(幻冬舎
藤谷千明『オタク女子が、4人で暮らしてみたら』(幻冬舎)

書籍やグッズなどを収集するオタクにとって、住宅事情は常に悩みの種だ。収納たっぷりの広い部屋に住みたいが、都内の家賃は高い。都心を離れれば家賃は下げられるとわかっているが、ライブや演劇、同人誌即売会などのイベントごとはほぼ都内で行われるため、そうした利便性は維持したい。

同じような悩みを持つ友人たち3人が、私の提案に乗ってくれた。それぞれ少年マンガやコスプレ、アイドル、2.5次元舞台などを愛好するジャンル違いのオタクたちだ。

家族や恋人などの「明確な関係」に基づいた同居を選択しなかったのは、過去にそれで何度か失敗をしているからだ。むしろ強い感情が介在しない関係、例えば「年単位でつながっているSNSのフォロワー(※何度か面識あり)」同士のほうが、私の場合、うまくいくような予感がしたのだ。そしてその予感は、今のところは的中している。

■「金銭感覚、衛生観念、貞操観念」が肝

「そんな関係で大丈夫か?」という声も聞こえてきそうだが、こちとら骨の髄までインターネットに浸かったオタクである。10年近くアカウントを見ていたら、その人の表裏がすべてわかるとまでは言わないが、何を大事にしているのか、何に対して苦手意識を持っているのか、人格の輪郭くらいは判断がつく……と、勝手に思っている。

とはいえ、「誰でもいい」というわけでは当然ない。ある程度の価値観は近い人でないと、トラブルのもとになるだろう。

例えば、金銭感覚がある程度一致してないと、日用品や食料品を選ぶときに誰かが我慢を強いられてしまうし、衛生観念がバラバラだと掃除の頻度などにバラツキが出てしまう。ほかにも、すぐ恋人を家に連れ込むタイプとそうでないタイプの同居も、あまりうまくいきそうにない。そういった貞操観念も近しいほうがいいのではないだろうか。以上の3点については、事前に確認を行った。

■「友人同士はすぐ退去する」は本当なのか

メンバーが集まってから、各自の希望を出し合って物件探しをスタートさせた。

だが、予想はしていたものの「ルームシェア可」物件は少ない。2人でも少ないが、4人となるとさらに激減する。基本的に不動産サイトの備考欄に「ルームシェア可(あるいは相談)」とある物件でないと、ほぼ門前払いである。そういった記載のある物件でも、フリーランスNGだったり、兄弟や姉妹のルームシェアじゃないとダメだったりと、さまざまな制約があったのだ。

点線で分けられた住宅
写真=iStock.com/Andrii Yalanskyi
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Andrii Yalanskyi

当時やりとりをした不動産業者の話によると、「友人同士だと、すぐトラブルになって退去してしまう」というのが大家と業者側の理屈だという。戸籍が同じならもめ事が少ないというのなら、世の中はこんなに離婚であふれていないだろうし、逆に他人同士でも長続きするケースだってあるはずだ。現にわれわれの暮らしは継続している。

その後、4人がかりの不動産サイトローラー作戦により、奇跡的に自分たちの希望に沿う物件に出会い、無事審査も通過し、晴れてルームシェア生活が始まった。

■家族じゃないからこそうまくやっていけている

住んでいる人の構成は、私をふくめてフリーランスが2名、会社勤めが2名。この編成は、生活をまわすのにバランスが良い。例えば会社員組が不在の間の宅配便の受け取りは在宅フリーランス組が行い、帰宅時に会社員組が駅前のスーパーで買い物をするなど、「持ちつ持たれつ」の関係が出来上がっている。4人もいると、誰かが出張やオタク趣味の遠征(※ライブや観劇の地方公演に行くこと)で家をあけても、誰かしら家に残っているので、防犯の面でも心強い。

もちろん、常に人がいるというのは、メリットでもありデメリットでもある。誰かに話を聞いてほしいときもあるし、1人になりたいときもある。おのおのの個室があるので、最低限のプライバシーは確保されている。どうしても1人になりたいときは、24時間営業のファミレスなどにいけばいい。

「家族じゃなくても暮らせる」というよりは、家族じゃないからこそ、ほどほどの距離感でうまくやっていけている。オタクらしく(?)『鬼滅の刃』を共有費で購入したり、推しコンテンツの上映会をすることもあるが、皆それぞれ推し活動や仕事に忙しいこともあり、連絡事項はLINEのみ、ほぼ対面会話のない時期もある。これがかなり快適で、われわれに合っている生活である。

■家賃含む固定費は一人暮らしより半減

そしてなにより、金銭面でのメリットが大きい。都心に出るのにそこまで不便ではない住宅街の5LDKで家賃は21万円。おのおのの個室の広さや在宅時間を考慮して分担し、私の負担は6万円ほどだ。

それ以前の1人暮らし時代は8万5000円の1Kに住んでいたので、共有とはいえ、広いリビングやキッチン、足を伸ばせる追い焚き機能付きのお風呂、趣味の本やグッズ用を収納する倉庫部屋など、生活のクオリティはかなり上がった。固定費のビフォー/アフターは以下の通りである。

2018年12月
・家賃(ネット回線込み):8万5000円
・シェアオフィス代:2万5000円(部屋が狭いので借りていた)
・水道代:2200円
・ガス、電気代:9000円(東京ガスで一括払い)
合計12万1200円
2019年12月
・家賃:6万円
・水道代:1800円
・ガス、電気代:5500円
・ネット回線:1100円
合計6万8400円

固定費はほぼ半減した。シェアオフィス代を引いても、約4万円は節約できている。

■コロナで収入減でも「なんとかなる」と思えた

新型コロナウイルスの影響で、家にこもることが多くなった時期も、不安や愚痴をこぼす相手が家にいるということは、大きな支えとなった。とくに私はエンタメ関係のライターをしているため、4〜5月は大きく収入が下がったのだが、先述のとおり固定費を抑えることができていたので、「なんとかなる」と前向きな気持ちでいることができた。

「このまま老後まで暮らすの?」と聞かれることもあるが、そもそもわれわれは永遠を誓った仲でもない。生活は共有しているが、人生は共有していないのだ。

「この生活は快適だし、向こう5〜6年はこの家に住みたいね」と話してはいるが、誰かの仕事や家庭の事情で、この生活にもいつか終わりがくるかもしれない。誰か1人抜けても、新しい同居人を見つけるか、家賃分担の見直しをして住み続けるか、引っ越すか、選択肢はいろいろある。私としては、そのどれも結構楽しそうだと思っている。

----------

藤谷 千明(ふじたに・ちあき)
ライター
1981年、山口県生まれ。工業高校を卒業後、自衛隊に入隊。その後職を転々とし、フリーランスのライターに。ヴィジュアル系やギャルなど、国内のポップ・カルチャーに造詣が深い。主な執筆媒体は「サイゾー」「ウレぴあ総研」「リアルサウンド」など。著書に『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』(幻冬舎)ほか

----------

(ライター 藤谷 千明)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください