Google、メルカリが採用、心おどる「すごい目標」の立て方とは
プレジデントオンライン / 2020年10月29日 11時15分
■達成率6、7割の目標を設定することが重要
「OKR」が注目されたのは、数年前から。もともとインテルが始めて、シリコンバレーで成功した企業が採用しているということで、話題になりました。Googleやメルカリでも取り入れていることが知られています。
OKRとは、Objectives and Key Resultのこと。単語としては「O」(Objectives=目標設定)と「KR」(Key Results=主要な成果)に分かれています。心躍るような、追いかけたくなるような「O」という目標を立て、その目標に一致する指標を「KR」として設定していきます。OKRの特徴は、次の4つです。
①目標設定が組織から個人に紐づいている
Googleもメルカリもそうですが、まず会社全体のOKRがあり、その下の事業部門のOKR、さらに下のチームのOKR、最終的に個人のOKRまでブレークダウンされます。
②達成度は6、7割でOK
達成度が100%にならない目標を立てるのがコツ。目標は具体的で誰もが理解できて、客観的である。ゴールは達成すれば価値のある、ストレッチしたゴール。本当はこのゴールに達成できればいいけど、6、7割できていれば経営的には問題ない、というものを設定します。
③評価のスパンが短い
期初に目標を設定し、1カ月に一度、あるいは四半期に一度といった短期間でのフィードバックループをまわします。具体的には1on1などを通して、どのぐらい達成したか、前向きに動けているかというプロセスを確認します。
④透明性が高い
各部署、各人のOKRが全社員にオープンにされるのもポイント。高い透明性で運用されるため、どこの誰が何を目指しているのか、ジョブディスクリプションが明確です。これを定期的に評価するとともに、そのつど変化に対応していくことが可能になります。
■なぜ目標管理を失敗する企業が多いのか
実は、当社もOKRを取り入れています。われわれはソフトウエア会社ですから、いかに長くソフトウエアを使っていただくかが重要。ですから、そのソフトウエアに関する知識を共有するイベントをよく催しています。
そこでOは「100%のユーザーに長くソフトウエアを使ってもらう」、KRは「70%のユーザーにイベントに来てもらう」と設定します。そのKRを達成するために、どういうことを仕掛ければいいか、どんなことをすれば喜んでもらえるだろうということを考えて、Oにつなげていくということです。
では、なぜ今この手法に注目する動きがあるのでしょうか。それは、もともと多くの企業が取り入れていた「MBO」(Management By Objective)に課題意識があったからです。
ご存じのとおり、MBOは目標に対して100%の達成を成功とみなし、年に一度評価される人事考課手法です。私たちのお客様も8割が、このMBO方式を採用されています。
OKRとMBO、目標を立ててそれを追いかけていくという点は似ていますが、やはり大きく違うのは「目標設定の仕方」「サイクルの回し方」「透明性」です。
もともとMBOは、100%達成することで評価されるわけですから、どうしても目標を低く設定したり、難易度を下げたりしがち。また評価する側も、点数を高くつけたり低くつけたりすることに躊躇があり、つい真ん中につけてしまう。OKRでストレッチした目標にすれば、こうした評価の誤謬が避けられるでしょう。
またMBOの場合、期初に目標を立てても、その後は日常の忙しさに紛れて思い出すこともありません。期末になってあわててシートをひっくり返して、ああ、こんなことも書いたっけとなりがちです。しかしOKRは月に一回、あるいは3カ月に一回と、クイックに確認のサイクルを回していくので、目標が形骸化しにくい。プロセスの中で、そのつど達成度や課題を確認できるのはMBOと違うメリットです。
■最大のポイントは透明性
またMBOでトライしようとしても、なかなかうまくいかないのが透明性です。日本企業では、たとえば研究開発部門が開発中の情報をオープンにすることに、ためらうことが多いからです。
OKRで重要なのは、部署や各自の目標がオープンになっている、隠し事がないという事実です。OKRは、たいてい社内システムで見られます。全員が全員、わざわざそれを見に行くわけではないでしょうが、マネジメント層はどこで何が起きているか把握しやすいのです。
また別の部門に協力を求めるときに、OKRを確認することで、相手の目標がわかれば、そこに合わせて準備することもできます。
■低い目標の集合体にならないように
とはいえ、せっかくOKRを取り入れても、現場が低い目標の集合体になってしまったり、全体の目標を高く掲げて現場と乖離ができてしまったりして、失敗しているところも少なくありません。OKRがうまく機能せず、業績につながらないのです。
OKRを成功させるには、やはり「意思」の力が必要です。「やり遂げる」ということですね。
特にベンチャー企業では、経営者の意思やその意図をくんだ人事の意思が非常に重要になってきます。
正直、MBOやOKRに取り組むことは、忙しい現場では余計な仕事に見えます。しかし、そこをあきらめずに、経営層が働きかける。最終的に意思の問題になるといえるのです。
その意思を体現するコツとしては、より使いやすいシステムを導入する、ふだんからコミュニケーションツールでやりとりして面談は短めにする、日報やデイリーリポートにOKRのことを埋め込んでおく、といったことが挙げられます。
そして会社の意思が大切であると同時に、働く本人の意思も大切です。変化の大きい今、会社の意思と自分の意思が一致しているか、一致度が高いか低いかといったところに意識をもっていると、よりよいキャリアを選択できるでしょう。個人個人が意思を持ったよい選択をするほど、それが社会や組織を動かす力になります。
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Works Human Intelligence 経営企画 Div.
2001年、ワークスアプリケーションズ入社。コンサルタント、HR製品の開発責任者を経て、1100社を超えるユーザー会の企画運営を務める。現在は、Works Human Intelligenceの経営企画部門責任者として、経営戦略の立案・企業文化の醸成・組織改革等、幅広く手がけており、年間100名以上の経営者・人事との面談実績を持つ。
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(Works Human Intelligence 経営企画 Div. 伊藤 秀也 構成=池田純子 写真=iStock.com)
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