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日本のバフェットが明言「必ず伸びる企業」を見抜く3つの要素

プレジデントオンライン / 2020年10月27日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Nuthawut Somsuk

株式投資をするにはどんな企業を選べばいいか。農林中金バリューインベストメンツ最高投資責任者の奥野一成氏は「短期的な株価の動きに一喜一憂する必要はない。3つの要素を満たした伸びる企業の株を買い、ずっと持ち続けるのが一番いい」という――。

■コロナ禍でも動じない投資先の選び方

新型コロナウイルスを契機に新規証券口座開設が増加し、iDeCo(個人型確定拠出年金)口座も160万口座を突破するなど、老後2000万円問題とあいまって、投資や投資信託に対する国民の興味が高まっています。

投資になじみのない多くの日本人に豊かになってもらいたいという強い想いで著書『教養としての投資』を執筆した私にとっては、きっかけはどうあれ、非常に望ましい動きだと思っています。

とはいえ、みなさまの中には保有している株式がコロナを機に大幅に下落したり、逆にコロナショック直後に買った株が2倍に跳ね上がったりして、悲喜こもごもだと思います。11月には米国大統領選なども控え、投資を始めたのはいいものの、枕を高くして眠れない方も多いのではないでしょうか。

そんな方々におススメなのが、「人間の生活に不可欠な企業」の株式をずっと持ち続ける投資手法です。米国の著名投資家ウォーレン・バフェット氏もその手法で長期的に素晴らしい成績を残しています。

これは、株式投資をその企業の「オーナーになる」行為と捉える発想です。

より具体的に言うなら、「アマゾン株を買う」という行為は、世界の小売業界を席巻しようとしているアマゾン社のオーナーになるということなのです。さらに突っ込んだ言い方をするなら、オーナーになるということはアマゾン社のジェフ・ベゾスCEOを部下にすることなのです。

■人間の生活に不可欠な企業の「オーナー」になる

株式投資を単なる株券の売買だと考えている大半の日本人にとっては理解しがたいかもしれませんが、どんなに少ない金額、株数しか持っていなかったとしても、株主であるあなたは法的・経済的に、まぎれもなくアマゾン社のオーナーの一人なのです。本当に素晴らしい企業、人間の生活にとって不可欠な企業を見つけてしまえば、その会社のオーナーになれば良いのです。

貯金箱
写真=iStock.com/erdikocak
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/erdikocak

コロナウイルスで人間の生活そのものが変わることはありません。「コロナが流行したから、ミッキーマウスが嫌いになった」とか、「運動する時に靴を履くのを止める」という人を私は今まで見たことがありません。

もちろん中短期的には業績に影響がでて、株価も下落するかもしれません。しかし長期的にはウォルト・ディズニー社やナイキ社がコロナ後も隆々としている姿を想像するのはそれほど難しいことではないと思います。

「そうはいっても、テレワークが普及するとか、移動が制限されるとか、コロナで変わることだってあるよね」という反論が聞こえてきそうです。でも、著書『教養としての投資』でも述べた通り、コロナ後に起こっている多くの出来事は、もともと社会の底流にあったもので、それがコロナを契機に加速していると考えるべきで、「何かが変わった」わけではありません。

例えば非効率な働き方の是正は、コロナがあろうとなかろうと早晩進めなければならない課題であって、それが顕在化したにすぎないのです。

■長期保有だからこそ重要な企業選び

「オーナー」として会社を長期保有する投資を実践するにあたって、なによりも重要なことは、「どうやって、人間にとって不可欠な会社を選ぶのか」ということであることは明らかです。ダメな会社のオーナーになってしまうことは、ますます不確実性を増している世界経済という大海原の中で、笹舟に乗ってしまうようなものです。

企業選択を見誤ると毎日、毎晩、株価動向をみながら一喜一憂することになるでしょう。もちろん、中短期の売り買いを楽しむことを目的に投資を始めたのであれば、そのような賭け事に一喜一憂することは目的に合ったものだと言えます。

しかし、長期的な資産形成を目的に投資を始めたのであれば、枕を高くして眠れないという状況は、みなさんの本業である、ビジネスのパフォーマンスやプライベートの充実を阻害することになり、百害あって一利なしです。まさによくありがちな精神的に豊かになれない投資手法です。

■「3要素」をすべて満たす企業を選ぶ

ここで私が紹介したい企業選択の手法は「構造的に強靭な企業」というコンセプトで、以下3つの要素をすべて満たす企業です。

レースに勝つ
写真=iStock.com/RichVintage
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/RichVintage
1.高い付加価値:その事業は人にとって必要なのか

そもそもその企業が営む事業が顧客や社会から求められていない、付加価値のないものであれば、その企業には存在意義がないと言えます。言い換えるなら、顧客の抱えた問題を解決するところに企業の存在意義があると言えます。

例えば世界最大のスポーツシューズ企業であるナイキ社は、さまざまなアスリートのニーズに応えるべく新たなコンセプトのスポーツシューズを世に出してきました。古くは「エア・ジョーダン」から、最近ではマラソン選手の8割以上が履いているピンクの厚底シューズ「ヴェイパーフライ」まで枚挙にいとまがありません。

この「ヴェイパーフライ」は靴底にカーボンプレートを埋め込むことで反発力を増し、アスリートの体力消耗を軽減することに成功しました。このようなイノベーションを絶え間なく行う組織的な取組みが同社ではなされています。

2.圧倒的な競争力:競合相手に勝てるのか

上記の「高い付加価値」を満たす企業であったとしても、同等の付加価値を生み出すことのできるライバル企業が多数存在したり、新規参入が容易であったりとすると、その企業は長期的に利益を生み続けることはできません。「その企業にはもうかなわない」と思わせる何か、すなわち新規参入を思いとどまらせる「参入障壁」が必要なのです。

■高い付加価値、圧倒的な競争力、そして長期潮流……

例えば、前述のナイキ社が築き上げている参入障壁とは何でしょうか。ナイキ社、アディダス社のようなスポーツシューズメーカーは、有名アスリート用に製品を開発し、それを使ってもらうことで、一般の人たちに「あのシューズを履けば大坂なおみさんのようなショットが打てる」と思わせる広告戦略を採ります。

この広告戦略を「エンドースメント」というのですが、これを含めた広告宣伝費にナイキ社は年間4000億~5000億円、実に売り上げの10%以上を投下していて、この規模でエンドースメントができる企業は世界中見渡しても他にアディダス社くらいしかありません。これは世界シェア3割、米国シェア4割を持つナイキ社だからこそできる「構造」なのです。

アンダーアーマーのような新興企業は、一時は非常に素晴らしい業績をあげ、株価も急上昇したものですが、今では見る影もありません。同じ戦い方をしていては、勝てない構造になっているからだという仮説を私は持っています。

3.長期潮流:長く続くのか

そしてどんなに高い付加価値をもち、圧倒的な競争力があったとしても、産業そのものが縮小している場合、その企業は長期的に利益を生み続けることはできません。私がここで取り上げる長期潮流とは、多くの株式投資家が大好きな「人工知能(AI)」や「自動運転」のような「成長ストーリー」ではありません。

そんなものは証券会社の人が株式を売買させるためのテーマにすぎず、長期投資家にとってなんの利益ももたらしてくれないばかりか、損害を与えるものであるとすらいえます。私にとっての長期潮流とは、「人口動態」のような不可逆的な性質をもっているものです。

ナイキ社の例でいうなら、「人は健康に長生きしたい」という欲求は、人間が太古の昔から本来的に持っているものであり、だからこそ先進国におけるマラソン人口は増え続けているのです。世界の人口は現在77億人ですが、これからも不可逆的に増加します。

それに加えて、途上国が急速に中産階級化することも明示的な長期潮流です。つまり、増加し続ける世界人口の中で、全人口増加以上のペースでアスリート人口が増え続けることはほぼ間違いはないのです。これこそが、付加価値、競争優位を持っているナイキ社にとっての強い追い風になっていると考えます。

構造的に強靭な企業

以上3つの条件が重なったビジネス、企業を一度みつけてしまったら、株式の売買などする必要はありません。株式を保有することでオーナーになればよいのです。

■感染症、地震、地政学リスクは好機になる

もしあなたが選んだ「構造的に強靭な企業」があなたの見立て通りならば、その企業はあなたが会社で働いている間もベッドで寝ている間も、休むことなくオーナーであるあなたのために利益を生み続けてくれるでしょう。そして、長期的に見れば企業の株価はその利益を反映する形で上昇します。

たとえ少々時間はかかったとしても、あなたが投じたお金は世界中の人々の問題を解決し豊かにしたうえで、より大きくなってあなたの元にもどってくるに違いありません。たしかにこれからも感染症、地震、地政学リスクなどをうけて中短期的には株価は下がるかもしれませんが、それはまさに素晴らしい事業を安く手に入れる絶好の好機なのです。

■ビジネスパーソンが得られる長期投資の効用

私は13年以上にわたり、このような日本では珍しい長期投資の手法を実践し、国内外の機関投資家向けの約3000億円規模のファンドでお金の運用に携わってきました。

その間、リーマンショック、東日本大震災、ユーロ危機、米中対立、コロナショックなど、さまざまなショックを経験してきました。しかし、そういった危機や市場の混乱を受けても、私たちが選んだ「構造的に強靭な企業」たちは、持続的に利益を生み続けるための歩みを止めることはありませんでした。

むしろこのような危機を受けると、競合企業が脱落するので、さらに「強靭に」なっているという実感すらあります。結果として株価も堅調に上昇しています。

あなたがビジネスパーソンであれば、このような長期株式投資を通じて、あなた自身のビジネス上のヒントも手に入れることができるでしょう。これが実は株式投資の隠れた効用であり、長期資産形成との理想的な相乗効果なのです。

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奥野 一成(おくの・かずしげ)
農林中金バリューインベストメンツ常務取締役兼最高投資責任者(CIO)
1992年京大法学部卒。ロンドンビジネススクール、ファイナンス学修士(Master in Finance)修了。日本長期信用銀行入行。長銀証券、UBS 証券を経て 2003 年に農林中央金庫入庫。2014年から現職。バフェットの投資哲学に通ずる「長期厳選投資」を実戦。機関投資家向けファンドの運用総額は3000億以上を突破し、その運用哲学と手法をもとに個人向けにも「おおぶね」ファンドシリーズを展開している。著書に『教養としての投資』(ダイヤモンド社)がある。

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(農林中金バリューインベストメンツ常務取締役兼最高投資責任者(CIO) 奥野 一成)

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