「会社を見返してやる」そう言って早期退職を選んだシニアたちの末路

プレジデントオンライン / 2020年10月28日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PierreDesrosiers

コロナ禍で多くの企業が早期・希望退職の実施に踏み切っている。応じてもいいのだろうか。早期退職経験者で、現在は行政書士として中高年の相談を多く受けているという寺田淳氏は「早期退職で失敗する人には共通点がある」という――。

■「なぜ生え抜きの私が優遇されないんだ」と退職

ほぼ一昔前の2008年秋から始まったリーマンショックの時に、生き残り策の一環としてのリストラや割り増し退職金による早期退職勧奨が多くの企業で実施されました。

そして今、先の見えてこないコロナ禍によってあの事態が再来する可能性が濃厚になっています。実際に早期退職に応募した結果、明暗が分かれたケースは少なくありません。ここでは実例に基づく、早期退職後の失敗例の中から、特に管理職世代を中心に紹介したいと思います。なお、年齢と役職は退職時のものです。

【事例1】処遇への不満からの選択

55歳営業企画部部長

「なんで生え抜きの私が彼の下風に立たなくてはいけないのか!」彼の不満は企画部生え抜きの自分ではなく、他事業部から異動してきた「外様」が部のトップに就任したことでした。正直な話では実力差があることは認識しており、年齢も近いため、ほぼ自分が企画部長になる可能性が無くなったことは感じてはいたのですが、結局「この会社は自分のポテンシャルを活かせないダメな会社、組織だから」という結論に納得し、早期退職に応じました。できれば同業他社に再就職をして見返してやると考えていましたが、10カ月間の再就職活動は全て虚しい結果となり、ようやく異業種で契約社員として営業職に就いたそうです。

■同業他社に転職できると思っていたのに…

【事例2】本音と建前の見極めの失敗

・52歳営業所長

「得意先だけでなく、競争相手の同業他社もことあるごとに私の営業センスを称賛してくれて、すぐにでもウチの会社で営業マンを鍛えてほしいと言われ続けていたんです」
「そりゃ、営業一本で首都圏の大型拠点長を同期のトップで就任したという自負がありましたし、まだまだ自分のノウハウやスキルは役に立つとも」

この営業所長は若くして所長に就任したものの、その後やや伸び悩んでいました。そこで「この好機を活かしてステップアップを目指す!」と早期退職に応じたのですが、見事な手のひら返しで同業他社への再就職は叶わず、結局は人材派遣会社の派遣社員に落ち着きました。

■感情的な早期退職で消えた「47歳課長」

【事例3】自負心の取り違え

47歳企画課長

この企画課長は、営業職から企画職に異動し、何度も高い実績を残した企画を手掛けてきましたが、課長職も5年が経つ頃、次第に不満を募らせていったのです。その会社では50歳で課長職というのが平均的で、遅れているどころか人並み以上の肩書だったのですが、本人はこう話していました。

「実際は私一人の企画で、課員はただ私の指示通りに動けばよかったんです、企画力も若手以上に今にマッチしたものを生み出しているんです、これだけの貢献をしたんですよ、自負の一つもあって当然でしょう?」

ですが会社からの評価は正反対でした。

「いくら言っても自分ひとりで全てをやったような錯覚に気付かない」
「あの新製品だったら誰が担当してもあの程度の実績はあがった。そんなことすらわかってない」
「部下に対しての感謝が皆無」

また、「謙遜が無い、空気が読めない」という思いもよらない辛口評価をされていました。

結局彼は早期退職をほのめかせば慰留されると思ったものの、全く顧みられることが無かったことに腹を立てて当てもないのに感情的に早期退職に応じたのです。

「自分ならどこにでも居場所がある!」というのが退職の挨拶だったそうです。

この方とは、残念ながら1年後から音信不通になりました。

オフィス
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■「客観的視点が欠けている」という共通点

傍目八目とは言い得て妙でして、第三者の視点で見れば何を間違えたかは明白でしょう。

これらの事例に共通する点のひとつは、客観的視点に欠けている点です。自分ならできるという自信や自負は必要ですが、やはり利害関係のない第三者からの評価を確認することは事実誤認(過信・錯誤)を防ぐ意味でも欠かせないポイントと思います。

【事例1】であれば、在職中に時間をかけて第二の仕事の選択を検討するべきでした。今の会社を離れて何ができるか、どんな仕事なら自信があるかを見直し、再就職時の具体的な職種や業種を設定しておけば、速やかに行動に移れたはずです。

【事例2】では、本人は勝手に再就職の準備は完了したものと思い込んでいた点が問題でした。せめて在職中に、声をかけてくれた会社に対して再就職の可能性をただしておくべきでした。

【事例3】は当人に自信がある分、今と同格かそれ以上の会社への再就職を第一義に考える傾向がありました。肩書にもかなりの執着があったようで、第三者からの評価には全く無関心でした。まさに「唯我独尊」だったことがこの結果を招いたと言えるでしょう。

■元常務取締役が、再就職に成功した理由

さて、ごく少数ではありますが、再就職に成功した事例もあります。

【成功例1】自分の強みを考えていた

・60才関連会社常務取締役

「親会社で言えば取締役一歩手前の役職でした。65才までは雇用延長の途もあったんですが片道1時間半の通勤をあと5年も続けるのはちょっとと思い、応募しました」
「工学部出身で現場主義だったこともあり、ここは60の手習いも厭わず現場仕事を探そうと役職・肩書無用で活動をした結果、自動車部品の開発スタッフとして平社員で再就職できました」
「いざ配属されると、そこは自分以外30才以下のメンバーばかりという別次元の職場でした」
「当然、息子以下の年齢のチームリーダーに仕えて現場仕事を始めました」

こう話していた彼が、わずか1年後の人事異動でチームリーダーに昇進しました。

決して出しゃばらず、前歴を鼻にかけない。その一方で、豊富な経験に裏打ちされた提案をし、チームのムードメーカーかつ仕事の生き字引的な存在にごく自然になっていたとのことで、人事評価でも満場一致の昇進だったそうです。

■退職後、複数の会社から声がかかった

【成功例2】第三者の意見を受け入れていた

53歳経理部長

次は、少々変わった形での成功例です。

「実は早期退職の最大の理由は住宅ローン完済のためで、あとは何とかなるだろうと気楽に考えてました」と、早期退職の理由は、一見すると感心できないものでした。しかし、彼は少年野球の監督を手弁当で長年続けており、社外の人脈はごく自然に多岐にわたっていたのです。

「でも、一応まだ在職中に子供つながりのいろいろな人たちに自分でもできる仕事は何だろうかと尋ねたり、自分の強みについては聞いてました」
「その結果、いざ退職した際に、いきなり五指に余る再就職口を紹介してもらいまして、退職後わずか2カ月で再就職できました」

「失業手当の手続き、してみたかった」と、最後はいささか噴飯ものの感想まで口にしていました。

少年野球チーム
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この2人に共通するのは、自分は何をしたいのか、自分の強みは何だろうかという点を自己責任で考えたこと、または第三者からの意見を受け入れたことです。肩書や会社の知名度といった世間体や見栄を捨て去ることできが、結果的にいい出会いを手繰り寄せたのです。

■安易な理由で早期退職をしてはいけない

冒頭に書いたように、今回のコロナ禍では早期退職勧奨どころか会社の存続自体が危ぶまれる状況も視野に入れるべきで、リーマンショック時以上の高リスクと言えます。このような中で前述したような極めて安易な理由だけで早期退職を目指すのだけは厳禁です。

「○○だからこんなことになった(こんな目に遭った)」
「○○だったら、こうはならなかった」

他責追及と失敗をひきずっているだけの将来を招きたい人はいないはずです。

今だから残る、今だから外に出る。その結論が正解か否かは個々の事情で異なります。

せめて悔いのない準備の結果として、早期退職後の結果を受け入れられるように心がけたいものです。

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寺田 淳(てらだ・あつし)
行政書士
寺田淳行政書士事務所代表。52歳で早期退職に応じて事務所を開設。本業に加えて、自らの経験に基づく再就職・起業相談と支援を行う。

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(行政書士 寺田 淳)

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