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たばこ税も消費税も法人税も「減税すべき」といえる超シンプルな理由

プレジデントオンライン / 2020年10月28日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Altayb

日本政府の財政は危機的状況にある。だから増税が必要だと論じられる。それは本当だろうか。早稲田大学招聘研究員の渡瀬裕哉氏は「政治家がやるべきことは増税ではなく減税だ」という。その理由とは──。

※本稿は、渡瀬裕哉『税金下げろ、規制をなくせ 日本経済復活の処方箋』(光文社新書)の一部を再編集したものです。

■政治を変えるには3つの約束が必要

日本の税金は、すでに十分に高い。それを「利権をよこせ連合」は、さらに増税しようとしています。僕たちは、この敵と戦うために「税金を下げろ」と言い続け、すべての増税に反対しなければならないのです。

この状況をなんとかするためには、政治を変えなければいけません。

では、どうやって政治を変えるのか。方法は、いたって簡単です。

政治家や御用学者は、ぐちゃぐちゃと難しいことを言いますが、実は、減税しない・規制廃止しない理由を並べているだけです。やさしく表現したのでは、「やらない」と言っていることがバレてしまうので、わざわざ難解に聞こえるように言うのです。さらに言えば、単純に「お前らもっとカネ(税金)を払え」と言っているだけです。僕たちは、そんな敵の化けの皮をはがしてやるためにも、シンプルに行きましょう!

重要なことは三つだけです。

一、すべての増税に反対することを約束させる。
二、規制を減らすことを約束させる。
三、選挙のルール変更を約束させる。

これ以外のことは、気にしなくていい。いろいろ細かいことを言いたい人もいると思いますが、以上のことができなければ、結局、何もできません。

■部分的に減税しても意味がない

「消費税は下げるべきだけれど、所得税と法人税は上げてもいいんじゃないか。金持ちからぶんどってやれ」と言う人がいます。前章ではこの点について、有権者が分断されて敵の思うつぼだから、戦略的に無視せよと言いましたが、ここでは、本質的な話をします。

税金は税金です。一つを下げても、他が上がったのでは意味がありません。

所得税と法人税を増税するとします。増税したお金は何に使われるのでしょうか。本当に福祉に使われると思いますか。基本的に、取られた税金が何に使われるかは定まっていません。税金に色はついていないのです。

そして、あなたが支払った税金はある意味で、増税をするために使われるのです。「そんな、バカな!」と思うでしょうが、事実です。

例えば、財務総合政策研究所は財務省に属する機関です。元財務省の官僚で大学教授に天下った人などが籍を置いているところで、財務省のおかかえ御用学者がずらっと並んでいます。

彼らは一生懸命、ありとあらゆる増税方法を考えます。今年2020年ですと、コロナ関連増税、その一環として交通税を導入しようなどと言っている人たちも、ここに在籍しています。

■たばこ増税もひとごとではない

では、彼らの研究費や人件費、事務経費は、いったいどこから出ているのでしょうか。僕たちが払った税金です。つまり、所得税や法人税を払うと、そういう使われ方をするのです。消費税を下げて所得税や法人税を上げたら、所得税・法人税の上がり分で、どうやって消費税を増税するかを研究する金に使われる。

つまり、めぐりめぐって同じこと。所得税・法人税が上がると、それと引き替えに下がったはずの消費税がまた上がるのです。

「たばこ税」も同様です。たばこが死ぬほど嫌いな人は、「たばこ税なんか、どんどん上げたらいい」と思うでしょう。しかし、これも税収ですから、敵にとっては同じ「上がり」です。彼らは収入が増えると、こちらが下げてほしいと思っている税金、例えば消費税を上げるために使います。

また、少し想像すればわかりますが、税金が増えて利権を受け取る団体が増えると、その関係者は増税に賛成します。自分にお金を運んでくれる仕組みに誰も文句など言うわけがありません。

■政治家は変わっても官僚は変わらない

役人の仕事とは、原則として、増税して規制を増やすことなのです。税金を与えれば与えるほど、役所の人たちは増税をする。彼らはそういう生き物だと思ってください。だから、すべての増税に反対しなければいけません。

自民党の中には逆に「法人税と所得税を下げて、消費税を上げましょう」と主張している人がいますが、これをやると、一瞬、法人税や所得税は下がるかもしれません。

しかし、役人はこう考えます。「万が一自民党政権から野党の左派政権に政権交代したら、政治家を説得して、所得税や法人税はそのときに引き上げればよい。政治力も弱いだろうから、消費税もさらに引き上げられるかも」などと思っていてもおかしくありません。

すでにある所得税や法人税、消費税をいかに増税するかの研究はもちろん、新税導入のための研究をする調査発注費や圧力団体を通じた増税のための広報費用はすべて、僕らから絞り取った税金から出るのです。

■減税に賛成できない議員は落選させろ

だから、僕たちは、すべての増税に反対すべきなのです。何かの税金を上げて、何かの税金を下げるなど、原則として無意味です。

彼らにエサを与えると、さらなるエサを求めて増税するだけ。そして、増税と減税のペースを比較すると、増税のほうが圧倒的に早い。

当たり前です。役所や政治家、そしてその取り巻きの「利権をよこせ連合」は増税したいのです。増税したくてしたくてしょうがない人たちに、無党派層の人が控え目に「すみません、減税してください」と言ったところで、どちらを一生懸命やるかは火を見るより明らかです。

増税の話は一瞬で決まりますが、減税の話はまったく進まない。今のままでは、変わらないのです。

敵は上げやすい瞬間に、上げやすい税金を上げるだけ。つまり、そのときに政治的に抵抗が激しい税や社会保険料はひとまず置いておいて、抵抗が弱いところを狙って上げてくる。国民負担率が増加し続けているのがその証拠です。

だからこそ、すべての増税に反対することを政治家に約束させなければいけません。政治家が「○○増税なら賛成」と言い始めたら、ソイツにはもう票を入れない。落としましょう。一つでも穴が開くと、その穴はだんだん大きくなり、収拾がつかなくなります。

底なしの漏斗に流れ込むお金
写真=iStock.com/Mike_Kiev
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Mike_Kiev

■増税するための言い訳にだまされてはいけない

「すべての増税に反対して、政府が成り立つのか。財源はどうするんだ」と言う御用学者のフレーズに説得力を感じている人たちも安心してください。政治家と役人は原則として全員、増税に賛成です。

だから、これから「税金を下げろ連合」が減税派議員を議会に送り込んで、「増税反対」と言ったところで、すぐには敵う相手ではない。そして、味方が仮に半分の勢力に成長したとしても、勢力が拮抗(きっこう)するだけです。さらに勢力を増し、減税が実現する段になると、どうなるか。

そのときはじめて、役所や政治家が「利権をよこせ連合」の連中の何の役にも立たないゴミのような事業に補助金をバラ撒くことをやめるのです。

渡瀬裕哉『税金下げろ、規制をなくせ 日本経済復活の処方箋』(光文社新書)
渡瀬裕哉『税金下げろ、規制をなくせ 日本経済復活の処方箋』(光文社新書)

繰り返しになりますが、強調しておきます。増税派の理屈は、使う人の主張です。お金を使いたいから「くれ」と要求しているだけ。「オレ、車が欲しいんだ」「私、家が欲しいの」ドラ息子、ドラ娘の際限のない支出リストに合わせて、お父さん、お母さんだってボンボン買い与えません。まして赤の他人の利権屋に誰が貢ぎますか!

「これからますます増えていく社会保障費に備えて……」には、もう騙されない。第二章で言った通り、穴の開いたバケツに水は溜まらないのです。

お金を浪費する側に立って増税する議論をまずやめましょう。言うべきは「お小遣いは渡しません!」です。すべての増税に反対することが大事です。

■減税が「まともな政府」を作る

最近、政府は治水対策のためにさまざまな種類のダムの水量管理を省庁横断的に行うことを決めました。すると、50年で5000億円かけて作った八ッ場ダムの50個分の貯水量を、既存のダムを活用することで確保できることがわかったのです。この見直し自体はよかったですが、「ダムが欲しい」と言って作ってきた成れの果てがこれでした。

増税を許している間は「どうせ後で増税できるから」と、彼らはバンバン、バラ撒き続けます。すべての増税に反対することによって、はじめて政府の効率化を促すことができます。「財源」の心配はいりません。むしろ、まったく増税できなくなったとき、減税したとき、ようやくまともな政府になるのです。

ここに、僕たちがすべての増税に反対し、政治家にそれを約束させることの意味があります。

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渡瀬 裕哉(わたせ・ゆうや)
早稲田大学公共政策研究所 招聘研究員
パシフィック・アライアンス総研所長。1981年東京都生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。創業メンバーとして立ち上げたIT企業が一部上場企業にM&Aされてグループ会社取締役として従事。著書に『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか アメリカから世界に拡散する格差と分断の構図』(すばる舎)などがある。

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(早稲田大学公共政策研究所 招聘研究員 渡瀬 裕哉)

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