連載・伊藤詩織「米国を変えた"RBG"の死と"TIME誌100"選出の意味」
プレジデントオンライン / 2020年11月26日 9時15分
■米国を変えた“RBG”の死と“TIME誌100”選出の意味
アメリカで性別を理由に阻まれていた法の壁を破り、多くの理不尽な法律の改正を促してきた米連邦最高裁判所の判事、ルース・ベイダー・ギンズバーグ氏が2020年9月18日に死去した。この日、私のメールボックスは世界中の友人たちから「悲報を聞いた?」との連絡で溢れた。私はそんな友人たちとともにギンズバーグ氏の喪失を悲しみ、感謝の意を捧げた。
名前の頭文字を取ってRBGの愛称で親しまれた彼女は、アメリカのみならず世界中の人々の英雄であった。RBGは女性が法律を学ぶことがまだ珍しかった1950年代にコロンビア大学法科大学院を首席で卒業した。しかし、女性だからという理由で当時ニューヨークの法律事務所での働き口はなかった。後に大学教授として働き、ジェンダーに基づく人権をめぐる数多くの重要裁判に関わった。
93年に史上2人目の女性最高裁判所判事に指名された。近年では保守化が進むアメリカの最高裁判所においても、リベラルな意見を鋭く打ち出し続けた。最後まで平等のために声をあげていた。
■彼女の言葉、一つ一つにパワーがある
信念を貫き通す彼女の生き様を題材にした映画も2本発表されている。『RBG 最強の85才』はアカデミー賞の長編ドキュメンタリー部門にもノミネートされた。伝記映画『ビリーブ 未来への大逆転』は私自身も、抱えていた裁判や、オンラインでの誹謗中傷で挫けそうになっていたときに視聴し、勇気付けられた。彼女の言葉、一つ一つにパワーがあるのだ。
そんなRBGは2015年のTIME誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれている。私が性被害を受けた年だ。そしてその5年後の2020年、信じられないことに私自身も20年の“TIME100”に選ばれた。彼女が亡くなった4日後に発表されたこのニュースは、社会に抑圧されてきた性被害者が自分らしく真っ直ぐに生きていていいんだというエールに感じた。この受賞は多くの理不尽な環境に置かれる人々、そして彼らと一緒に声をあげた人々に向けられたものだと思う。
RBGが次の世代のために社会が少しでもよくなるように必死で闘い、希望を与えてくれたことに心から感謝する。彼女は永遠のロールモデルになるだろう。
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ジャーナリスト
1989年生まれ。フリーランスとして、エコノミスト、アルジャジーラ、ロイターなど、主に海外メディアで映像ニュースやドキュメンタリーを発信し、国際的な賞を複数受賞。著者『BlackBox』(文藝春秋)が第7回自由報道協会賞大賞を受賞した。
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(ジャーナリスト 伊藤 詩織)
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