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なぜコンビニで「ニンニクマシマシ系」のカップ麺が急増しているのか

プレジデントオンライン / 2020年10月31日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/KPS

いまコンビニなどで「ニンニク」や「マシマシ」というキーワードを使ったカップ麺やチルド麺が増えている。なぜ増えているのか。ラーメンライターの井手隊長は「コンセプトの“わかりやすさ”が商品開発のハードルを下げたのでは」という――。

■「巣ごもり」でカップ麺の売り上げ増

今年3月以降、インスタント麺やカップ麺の売り上げが大変好調だ。3月のJAS生産量の種別内訳は、袋麺(インスタント麺)が前年比18.2%増、カップ麺8.1%増となっている。日清食品ホールディングスが5月に発表した今年3月期の連結決算を見ると、純利益が293億円(前期比51%増)となり、2期ぶりに過去最高を更新している。

カップ麺の新商品が毎月多数発売される中、ひときわ目を引くのが「ラーメン二郎」のラーメンにインスパイアされた“二郎系”のカップ麺である。

「ラーメン二郎」は港区三田に本店を構える黄色い看板が目立つラーメン店で、濃厚な豚骨醤油スープに極太の麺、その上に盛られる野菜の山に大きな豚肉が特徴の激盛りラーメンの代名詞的な存在である。近年では「ラーメン二郎」に影響を受けた「二郎インスパイア系」が各地にオープンし、ブーム化している。

カップ麺業界にもその動きは見られ、昨年末に話題を集めた「日清のどん兵衛マシマシ篇 ガチ豚ニンニク」の発売を皮切りに、カップ麺売り場に黄色いパッケージの新商品が多数現れる現象が起こっている。

■20種以上も発売されている

「ハイパーファットン」「バリ男」「千里眼」「野郎ラーメン」など二郎インスパイア系の店名が入っているものや、「ニンニク」「マシマシ」「ヤサイ」など「二郎」を想起するキーワードが入っているもの、黄色いパッケージが明らかに「二郎」を意識しているものなど、集計すると、現在発売されているだけでも20種類以上の二郎系カップ麺が存在する。『世界一美味しい「どん二郎」の作り方』(宝島社)の著者で、カップ麺業界に詳しいB級グルメ研究家の野島慎一郎氏は語る。

「傾向としては、日清が二郎系カップ麺を極めた感じがあります。1月に発売した『豚ラ王 ヤサイ、アブラ、ニンニク』は最強です。それに味をしめたのか立て続けに二郎系のカップ麺をたくさん出されていますね。

『日清のどん兵衛マシマシ篇 ガチニンニク背脂風豚骨』や、UFOの二郎系まぜそば『日清焼そばU.F.O.大盛 汁なし豚らーめん ニンニク背脂醤油味』もすごい完成度でした。カップ麺ではありませんがインスタント麺の『豚園』も傑作でしたね」(野島氏)

「豚ラ王 ヤサイ、アブラ、ニンニク」は筆者も以前食べたことがあるが、そのクオリティには大変驚いた。

「二郎」の醤油感をうまく表現したキレのある豚骨醤油スープ。ここに太麺、大ぶりチャーシュー、多めのキャベツ、そして極め付けにニンニクの香りの付いたアブラ増し袋と、極限まで再現性にこだわっている。希望小売価格が368円(税別)と超高額ながら、カップ麺のレベルをはるかに超えた商品だった。

日清食品「豚ラ王 ヤサイ、アブラ、ニンニク」
画像=日清食品株式会社
日清食品「豚ラ王 ヤサイ、アブラ、ニンニク」 - 画像=日清食品株式会社

■手軽にお店の雰囲気が味わえる

緊急事態宣言以降、ラーメン店に足を運べなくなり、「二郎」の代わりに二郎系カップ麺を食べた人も多かったと思うが、それ以上に、「二郎」に行ったことがない人や、興味はあるが怖くて行けなかった人にとってはカップ麺の存在は大きい。

「二郎」ほど量も多くないので食べやすく、気軽に「二郎」の雰囲気を味わうことができるのだ。「ガツンとしたものを食べたい」という欲求を部分的に満たし、手軽に「食べた感」が得られる。さらに、うま味に中毒性があるのでリピーター獲得にもつながりやすいといえる。

■「二郎系」のコンセプトとカップ麺の“親和性”

二郎系カップ麺が多数発売されるなか、商品の味はかぶってこないのか。

実は、「ラーメン二郎」にインスパイアされているといっても、その全てが「二郎」のラーメンを完全に模しているというわけではない。「二郎」の特徴である「ニンニクが効いたガッツリ系」「量が多くて脂っこい」「醤油が強い」などのキーワードを押さえながら、商品によってアレンジを加えているのである。

二郎系カップ麺の火付け役のひとつである「日清のどん兵衛マシマシ篇 ガチ豚ニンニク」は、「どん兵衛」のうどんを二郎風にアレンジした商品。現在発売中の「日清焼そばU.F.O.大盛 汁なし豚らーめん ニンニク背脂醤油味」は焼そばをアレンジした商品だ。「日清ラ王」や「マルちゃん正麺」など麺に特徴のあるブランドも参入し、それぞれの特徴を生かしながら二郎系にアレンジをして商品化しているのだ。

日清食品「日清のどん兵衛マシマシ篇 ガチ豚ニンニク」
画像=日清食品株式会社
日清食品「日清のどん兵衛マシマシ篇 ガチ豚ニンニク」 - 画像=日清食品株式会社

これだけ種類が増えているのは、「二郎」というコンセプトの“わかりやすさ”がカップ麺のアレンジにハマりやすく、商品開発しやすかったことが考えられる。醤油、塩、味噌、豚骨などの基本の味に次ぐ新味として二郎系を採用することで、そのブランドのファンへの目先替えができるとともに、二郎ファンにもアピールできるのだ。

■コンビニ各社も「マシマシ」を再現

さらにカップ麺だけではなく、コンビニで発売しているチルド麺にもその動きは顕著だ。

セブン-イレブンでは「中華蕎麦とみ田監修 ワシワシ食べる豚ラーメン」が人気だ。松戸の大人気店「中華蕎麦とみ田」が監修している本格二郎系で、ゴワゴワの極太麺に大量の野菜、アブラニンニク玉がトッピングされており、強烈なパンチを生み出す。後半にお酢をかけて食べるとおいしい。

セブンイレブン「中華蕎麦とみ田監修 ワシワシ食べる豚ラーメン」
画像=株式会社セブン‐イレブン・ジャパン
セブンイレブン「中華蕎麦とみ田監修 ワシワシ食べる豚ラーメン」 - 画像=株式会社セブン‐イレブン・ジャパン

ファミリーマートでは「大盛にんにく醤油ラーメン」が発売中だ。小麦ブラン(小麦の外皮)入りの極太麺で、小麦の香りと本格感を演出。栄養価も高いので、健康にも訴えかける。そのほか、東北沢の二郎系の人気店「千里眼」監修の「千里眼監修 濃厚マシマシラーメン(ニンニク醤油)」も人気だ。ローソンでも「にんにく豚醤油ラーメン」が発売されている。

生麺や野菜をそのまま使えるので、カップ麺以上に強いスープに合わせやすく、食べた時の満足感も高い。価格は各社500円台と高額だが、クオリティとしては十分すぎるレベルである。

消費者側にも二郎風アレンジの動きはある。

B級グルメ研究家の野島氏の著書『世界一美味しい「どん二郎」の作り方』(宝島社)が火付け役となり、カップ麺に大盛の野菜やニンニクを加えて二郎系ラーメンを自作するアレンジレシピが出てくるようになる。二郎系カップ麺、チルド麺が登場してからは、さらにアレンジを加えることにより、よりリアルに「二郎」に近づけることも可能になった。

カップ麺の進化とともに二郎系カップ麺も進化していくだろう。今後、「豚ラ王 ヤサイ、アブラ、ニンニク」を超える商品が出てくるのか注目しながら、新たなアレンジ二郎カップ麺の登場にも期待したい。

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井手隊長(いでたいちょう)
ラーメンライター、ミュージシャン
全国47都道府県のラーメンを食べ歩くラーメンライター。東洋経済オンライン、AERA dot.など連載のほか、テレビ番組出演・監修、コンテスト審査員、イベントMCなどで活躍中。自身のインターネット番組、ブログ、Twitter、Facebookなどでも定期的にラーメン情報を発信。ミュージシャンとして、サザンオールスターズのトリビュートバンド「井手隊長バンド」や、昭和歌謡・オールディーズユニット「フカイデカフェ」でも活動。

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(ラーメンライター、ミュージシャン 井手隊長)

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