「キャバ嬢が1日で1億円を稼ぐ」急成長するライバー市場のヤバすぎる勢い
プレジデントオンライン / 2020年10月30日 15時15分
■昨年の成長率は300%
「いつも決まった時間にライブ配信している。大抵、その日にあったことを話してるけど、毎日来てくれる人もいるから楽しみ」。ある女子高生はライブ配信が習慣になっており、常連と話すのを楽しみにしているという。このように、普通の人達がライブ配信する例が増えている。
ライブ配信サービスには、YouTube Live、LINE LIVE、Twitch、ニコニコ生放送、Mirrativ、SHOWROOMなど、様々なサービスがある。その一つ、17LIVE株式会社が運営する「17LIVE(イチナナ)」をご存知だろうか。吉田鋼太郎さんと生見愛瑠(通称「めるる」)さんのCMで、名前を聞いたことがあるかもしれない。
17LIVEは、全世界合計のユーザー数が執筆時点で4500万人。日本でのサービス開始以来3年で1000万ダウンロードに上る人気のライブ配信アプリだ。2018年9月から2019年9月にかけて約300%の急成長を遂げている。
執筆現在、直接17LIVEと契約しているプロライバー数は2万5000人以上おり、冒頭の女子高生のように自由に配信している一般ユーザーも多い。中には、GACKTや南明奈などの著名ミュージシャン、タレントの配信者もいる。ユーザーは20~30代が多数を占めるが、配信者は10代から70代までと幅広い。配信者は女性が6割と女性のほうが多いが、視聴者は男性が6割だ。
コロナ禍では、多くの業界や企業がダメージを受けたが、ライブ配信市場は伸びており、中でも17LIVEは逆に急速に売上を伸ばしているようだ。理由と背景について見ていきたい。
■「プロデューサー」による手厚いケア
2020年のコロナ禍による外出自粛、緊急事態宣言によって自宅で過ごす人や時間が増えたことで、ライブ配信の視聴時間は伸びた。伸びるライブ配信市場の中でも、17LIVE株式会社は、2019年11月時点の売上が日本市場の約63.9%を占める。17LIVEでは、この5~6月で配信者数が以前と比べて10倍に増加したという。
17LIVE株式会社では、200人ほどいる社員の約半数が「ライバープロデューサー」として、ライバー(配信者)になりたい人、もしくはライバーとして日々活躍している人をサポートする仕事をしている。どういう配信が視聴者から求められているのか、配信内容やオーディエンスとのコミュニケーションの取り方などについてコンサルティングしているのだ。
同社発表の「コロナ禍における副業の月平均6万円以上を稼ぐライバー」(2020年9月)によると、17LIVE内で単月で6万円以上の報酬を得ているライバーは8430人であり、5月時点での4206人から倍増していた。単月で3万円以上の報酬を得ているライバーも12303人と、やはり前回調査時から約2倍となっていた。
伸びるライブ配信市場の中でも17LIVEが群を抜いている理由は、配信者の特性や良さを見極め、適切なサポートができていることではないだろうか。17LIVEは「だれもがなにかのアーティスト」を標榜しているが、一般の人のそのような特性や良さを引き出すことができていることで、支持されている可能性があるのだ。
■「投げ銭」で本業より稼ぐライバーも
17LIVEを語る上ではずせないのが、配信者に視聴者からベイビーコインというポイントを投げ銭できる機能だ。視聴者はベイビーコインを購入し配信者に投げることによって応援でき、配信者は視聴者から贈られたベイビーコインを換金して報酬を得る仕組みだ。
投げ銭機能は、YouTubeのスーパーチャット(スパチャ)やSHOWROOMなどにもあり、配信者を応援できる機能として支持されている。Instagramは過去にも一定時間でメッセージが消える「Snapchat」が流行したら同様の機能を持つ「ストーリーズ」を、ショート動画アプリ「TikTok」が人気になったらやはり同様の機能を持つ「リール」を搭載したが、今回も同様に投げ銭できる「バッジ」機能を試験的にスタートしている。
前述のように、17LIVEで稼ぐ配信者は少なくない。コロナ禍の最中である5月、本業であるキャバ嬢の仕事を控えていた「みゆう」さんは、ライブ配信によって史上最高値である2億ポイントを獲得している。コインの「換金率」は人によって違うため正確な収益は不明だが、換金率が低くても2000万円程度、高い場合は1億円程度だとみられている。
緊急事態宣言で外出自粛となっていても、ライブ配信ならスマホ一台あれば手軽に始められる。しかも収入につながるとあり、コロナ禍で財政事情が厳しくなったスポーツ・音楽・演劇・エンタメ業界にとっては活路となる可能性があるのだ。
■「なけなしのバイト代」でも応援のためなら
キャバ嬢やアイドルなどに投げ銭し、応援することで自分の存在に気づいてもらいたい男性視聴者がいることはわかりやすい。
しかし実際は、視聴者には男性だけでなく女性も多く、配信者も男性や70代のシニア世代もいる。さらに言えば投げ銭も、懐に余裕がある年齢層が高い男性ばかりではない。中には、なけなしのお小遣いから投げ銭する学生もいるのだ。では、なぜ普通の人のライブ配信を見て、時には投げ銭をするのだろうか。
ある大学生は、毎日見るライブ配信がある。「まだそれほど有名じゃないVTuberだけど、自分は推してる」という。毎日見る理由は、「リアルタイムでコメント返してもらえるからかな。声もかわいくて好きだし、友だちに会うみたいな感じで」。
ハマったきっかけは、たまたま初めて視聴した時にIDを呼んでくれたこと。次の日にも見に行ったら、「また来てくれた」と喜んでくれたことだ。前に話したことも覚えてくれており、親しい友人のように感じているそうだ。大学生は、応援の意味でなけなしのバイト代から投げ銭をしたこともある。
SNSがこれだけ普及したことでも分かる通り、人にとってコミュニケーションは根源的な欲求だ。コロナ禍で人と会いづらい状況となっても、代わりにZoomを使ったオンライン飲み会などが流行するなど、誰かとコミュニケーションしたいという欲求は常に我々の中にある。
■新たな「場」としてのライブ配信
人気の配信者の場合はそうではないが、一般の配信者の場合、視聴者はまず無視されることがない。コメントをすれば必ずやり取りが生まれ、馴染みの関係になることも少なくないようだ。先程の大学生は、「『就活が心配』とか弱音を吐いた時に心配してもらえたし、一緒に見ている人たちも応援してくれた」と嬉しそうに教えてくれた。
冒頭でご紹介した女子高生にライブ配信する理由について聞いたところ、「いつものメンバーと時間を共有すると癒やされたり、リラックスできるからかな」と答えてくれた。決まった時間の配信が行きつけの店のようになり、行けば仲間がいるという空間ができあがっているというわけだ。
コロナ禍で休校中の時期に、オンラインゲームが小学生男子のコミュニケーションの場となっていたことをご存知だろうか。ボイスチャットで話しながらプレイできたため、待ち合わせをしてゲーム内でおしゃべりするのが楽しいと、夜中までプレイしている子どもは少なくなかった。
コロナ禍では、ゲームのプレイ時間とともにゲーム実況動画のライブ配信の視聴時間も伸びたという。もともとゲーム実況は人気の分野であり、攻略法を知りたくて見たり、スポーツ観戦に近い形で楽しまれていることが多い。見ていて楽しいということは大きな理由だろうが、あえてライブ配信が選ばれる理由は、やはりコミュニケーションの側面が大きいのではないか。
コロナ禍では同じ時間や体験を共有し、コミュニケーションできるリアルの場が消えた。その代わりに、ライブ配信やオンラインゲームがその機能を果たしていたようだ。ライブ配信ではそのような場が多く提供されており、気軽に覗くことができるので、一度ご覧になってはいかがだろうか。コロナ時代におけるコミュニケーションの場であり、表現の場や稼ぐ場ともなるライブ配信は、まだまだ伸びていきそうだ。
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ITジャーナリスト
情報リテラシーアドバイザー、元小学校教員。書籍、雑誌、webメディアなどの記事の執筆、コンサルタント、講演などを手がける。著書に『ソーシャルメディア中毒』『できるゼロからはじめるLINE超入門』ほか多数。「あさイチ」「クローズアップ現代+」などテレビ出演多数。
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(ITジャーナリスト 高橋 暁子)
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