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炎上騒ぎが大変な事態を招いたとき、「加害者」がまずやるべきこと

プレジデントオンライン / 2020年10月31日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/bee32

今年6月、大阪高裁は誹謗中傷する投稿のリツイートについて名誉毀損の責任を認めた。この結果、炎上騒ぎに参加している人たちが「加害者」として罪を問われる可能性がでてきた。ネット上の名誉毀損に詳しい松尾剛行弁護士は「合理的に行動すればリスクは軽減できる」という——。

■なんとなく「加害者」になる人が増えている

筆者は、「被害者」側、「加害者」側そして「プロバイダ」や「メディア」等のさまざまな立場の依頼者から、多数の法律相談を受けていますが、最近では、とりわけ、いつの間にか「加害者」になってしまった、という事例が目立ちます。たとえば、こんなケースです。

仮想事例1:Aさんは、Bの経営するレストランで食べた食事がおいしくないので、会計の時にBに「あまりおいしくなかった」と述べたところ、Bから「二度と来るな」と言われたので、激昂し、みんながBのレストランに行かないでほしいと考え、ブログ上で「Bのレストランにはゴキブリがいる。それを指摘したら、『二度と来るな』といわれた」と投稿した。

■事実を「盛った」ら違法になる場合も

法律家がこのような相談を受けると、被害者のBの、「名誉権」や「プライバシー」といった権利の侵害の問題であると整理します。つまり、全ての人は、自分の名誉や、私的なことを第三者に知られないことについて権利等を持っていて、それが害された場合、損害賠償や投稿の削除等を求めることができます。

「加害者」となったAにも「表現の自由」という権利がありますが、事実を「盛って」投稿した場合、違法な投稿になりやすくなります。ここで、「盛って」というのは、真実が「60」しかない場合に、「40」を追加して「100」として投稿してしまうことです。

例えば、事例では「Bの店はおいしくなく、その旨を述べたら二度と来るなと言われた」というのが真実です。この旨を投稿しただけなら表現の自由の範囲内とみなされる可能性があります。しかし、「ゴキブリが出た」という部分は、事実ではないので、そのようなものを追加したAの投稿は、表現の自由を超えたとみなされる可能性が高いといえます。

■「共有」「拡散」だけで責任を負うとした事例も

例えば、今年5月に亡くなったプロレスラーの木村花さん(22)は、フジテレビの番組「テラスハウス」に出演し、番組内での行動を巡ってSNS上で誹謗中傷を受けていました。このような事案を念頭に、以下の仮想事例を考えてみたいと思います。

仮想事例2:Xさんは、リアリティーショーで、悪役キャラを演じるYさんが憎らしいと思っていたが、SNSで、たまたま、Zさんが、Yさんを非難する投稿が目に入り、自分の思っていたことをうまく言ってくれたと、その投稿を共有・拡散した。

Xさんとしては、「自分が投稿したわけではないのに」と思うところでしょうが、これは2020年6月23日の大阪高裁判決がもとになっています。大阪高裁は、違法な投稿をリツイートしたジャーナリストの責任を認め、違法な投稿のリツイートは原則として違法だ、という判断を示しています。

暗がりでスマホを操作する手元
写真=iStock.com/time99lek
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/time99lek

リツイートについてはまだ最高裁の判断は出ておらず、高裁や地裁の判断は分かれていますので、リツイートをしても責任を問われない可能性があります。とはいえ、紛争の「予防」という意味では、拡散のボタンを「ポチ」と押すということで、元投稿をすることと同じ責任を負い得るのだ、という意識で対応すべきです。

なお、2020年10月28日現在、ツイッターでは、コメントを付ける「引用リツイート」が標準になっています。「このような投稿には賛同できない」とコメントしてリツイートすることもできる以上、コメントせずにリツイートしたのであれば賛同の趣旨がある、という主張の説得性は相対的に上がっています。

■加害者になった場合の「3つのリスク」

例えば、典型的にはBの代理人は、

・ブログの管理者等を通じて、Aの情報の開示を求める
・ブログの管理者等に、記事削除を求める

といった対応をします。また、ブログに記載されたメールアドレス等に削除請求や損害賠償請求等の連絡が来るかもしれません。

このような連絡を受けたAにはどのようなリスクがあるでしょうか。以下の3つが主なリスクと言えるでしょう。

1つ目は、損害賠償リスクです。例えば、Aの投稿がインフルエンサーによって拡散され、Bの店がゴキブリが出る不衛生な状況だとみんなが思ったために、本当にお客様が来なくなったといった場合もあり得るでしょう。

そのような場合には、Bとしては、Aに対して損害賠償を請求したいと考えるでしょう。実際にどこまでの賠償金になるか、というのは事案にもよります。弁護士が加害者側についてきちんと反論をすれば低額で抑えられることもありますが、きちんと対応しないと、特に実害がある場合には比較的高額になってしまうこともあります。

2つ目は、「身バレ」リスクです。例えば、発信者情報開示手続きによって、匿名でブログをやっていてもAさんが誰だかが分かってしまう、というリスクです。発信者情報開示請求手続においてBの請求が正当と認められると、最終的に、Bに対し、Aの氏名・住所情報が開示されます。

なお、発信者情報開示以外にも特定の方法があり、Aの過去のブログ記事をしらみつぶしに調査した結果、複数の記事に記載された情報から特定されたり、Facebookに過去のブログ記事と同じ記事を挙げていて特定されたり、といった場合もあり得ます。

3つ目は、「炎上」リスクです。Aが適切に対応しないと、この件が炎上する可能性があります。例えば、Bからの請求にAが過剰反応してBをネット上で非難するといった場合に、いわばそのような「インターネット上の中傷合戦」が面白おかしく取り上げられて炎上するといったこともあり得ます。特にAさんが社会的地位が高い方だと、炎上をきっかけにいろいろなトラブルに巻き込まれることもあります。

ネット上のいじめの概念
写真=iStock.com/asiandelight
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/asiandelight

■「絶対に消したくない」投稿なのか考える

上記の3つのリスクは、「合理的に行動」することで、相当程度軽減可能です。特に重要なのは、感情的にならないことです。実際にこのような「加害者」になってしまった場合において、被害者からの請求があると、例えば「自分は投稿してないのに、自分をターゲットにするなんて!」とか、「内容は正当であって、逆恨みされた!」等と不愉快に思うことも多いと思います。

例えば、Xさんとして、「リツイートしただけなのに自分に言ってくるなんて!」という不満があると思います。しかし、そのように、「感情的」になって行動すると、責任がさらに重くなる可能性があります。

まずは、「問題視する人がいることを前提に、それでも、つまり、場合によっては裁判所に訴えられるリスクを負ってでも、その投稿をインターネット上で引き続き閲覧させ続けたいのか」という点について、よくよく考えることが大事です。

感情的になって、最初に削除請求を拒否したがために、損害賠償と弁護士費用を負担することになる、なんて事例もあります。

そのような意図がなければ「消す」こと、また、客観的にみて、本当にひどい投稿なら「謝る」ことによって、早期に紛争を解決することができる可能性もあります。例えば、Xさんも、共有・拡散を直ちに取り消すことで、早期に紛争を解決できるかもしれません。

また、Aさんの場合には単に削除しただけで終わらないかもしれませんが、弁護士に相談して、適切に対応することで、上記の3つのリスクを最小化することができます。例えば、飲食店の売り上げが下がったとして「1000万円」の賠償が請求された、という場合でも、Aさん側で弁護士を立てて交渉することで、どこまでがその記事による売り上げの低下なのか、といった議論をして、妥当な範囲に落ち着かせることができるかもしれません。

■専門家を頼って適切な対応を

加害者となってしまった方は、感情的にならず、早期に削除、場合によっては謝罪することで傷口を広げずに済む可能性があります。ただ、社会的に意義があるので投稿を残したい、という場合には、きちんとその正当性を説明することで、目的を達成できる可能性が高まります。

いずれの場合にも事案を的確に分析し、適切なタイミングで適切な打ち手を講じることが非常に重要です。そこで、被害者でも加害者でも、この問題に詳しい弁護士に早めに相談をすることを心がけてください。

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松尾 剛行(まつお・たかゆき)
弁護士(第一東京弁護士会)・ニューヨーク州弁護士
桃尾・松尾・難波法律事務所パートナー弁護士。東京大学法学部卒業(法学士)。ハーバード大学ロースクール卒業(法学修士)。北京大学法学院修了(法学博士)。豊富な情報法(ネット炎上対応を含む)の実務経験に基づきさまざまな著書・論文を著している。主著に『最新判例にみるインターネット上の名誉毀損の理論と実務(第2版)』(勁草書房、2019年)他。その他、共著に『ICT・AI時代の個人情報保護』(きんざい、2020年)等。連絡先:mmn@mmn-law.gr.jp

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(弁護士(第一東京弁護士会)・ニューヨーク州弁護士 松尾 剛行)

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