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バイデンのスキャンダル拡散を、SNS・リベラルメディアが阻止している

プレジデントオンライン / 2020年10月30日 18時15分

民主党大統領候補のジョー・バイデンは、2020年10月28日にデラウェア州で行われた医療専門家とのビデオ会議に出席し、オバマケアとCOVID-19についての発言をした後、フェイスマスクを着用している。 - 写真=AFP/時事通信フォト

米大統領候補バイデン氏のスキャンダルときいて、「初耳だ」と驚くのも無理はない。SNSやリベラル系メディアが、軒並み黙殺し続けているのだ。

■ウクライナ大統領への脅迫

大統領選投票日が目前に迫る今、米国ではジョー・バイデン大統領候補にまつわるウクライナや中国がらみのスキャンダル情報が次々と出されている。そしてそれに対する大手SNS企業やリベラル系大手メディアの姿勢は、ほとんど検閲や情報操作、隠蔽とさえ呼べる域に達している。

2014年、バイデン氏の息子であるハンター氏は、ウクライナの大手ガス会社「ブリスマ」の役員に就任したが、同じ頃ウクライナの検察は、このガス会社が関わっていた贈収賄事件を捜査していた。その翌年の2015年、当時オバマ政権の副大統領であった父親のバイデン氏がウクライナを公式訪問し、同国大統領に対して10億ドルの政府借款をちらつかせつつ「ブリスマ」の捜査を指揮していた検事総長の解任を強く求めた。

その時のことをバイデン氏は、後に自慢げにこう振り返っている。

「彼らを見て言ったんだ、『私は6時間後に帰る』『あの検察官がクビにならなければ金(著者注:10億ドル)はもらえないよ』って。そうしたら、くそったれめ、奴はクビになったんだ」

こんなバイデン氏の「脅迫」は、息子を守るために副大統領の地位を私的に利用した利益相反ではないのか、として保守派から強く非難されてきた。それに対してバイデン氏はこれまで一貫して「息子の仕事に利益を与えるようなことはしていない、ブリスマ社の関係者には会ったことすらない」と言い続けていた。

■崩れるバイデン氏の主張

そんな氏の主張をひっくり返すような事件が10月14日に起こった。ニューヨーク・ポスト紙(以下、NYP)が、ハンター・バイデン氏のパソコンから見つかったという怪しい電子メールをスクープしたのである。

そこには、「ブリスマ社」のある顧問が、2015年に息子のハンター氏に対して、「ワシントンに招いてくださり、あなたの父上と面会する機会を与えてくれたことに感謝します」と書かれていた。

さらにその翌日、NYPはハンター氏が中国のエネルギー合弁企業に関して送ったメールをも公開したが、そこには「大物(Big Guy)」に対して、「H」という人物が同社の10%の株式を提供するという内容が書かれていた。トランプ陣営は、この「大物」こそバイデン候補であり、「H」とは20%の株を持つハンター氏であったと主張、後にこのメールの受取人であったハンター氏の元ビジネス仲間の男性も会見を開き、メールもその内容もすべて本物だと証言したのである。

■「メールは偽物」と言わぬバイデン陣営

こんなNYPのスクープに最初に強く反応したのはTwitterとFacebookである。TwitterはNYPの記事へのURLをユーザーが閲覧できないようにブロックし、また実際にその記事を拡散しようとしたNYPの幹部やホワイトハウス報道官のものを含む多くの人々のアカウントを凍結した。一方のFacebookも、この記事へのリーチを減らす対策をとった。

Twitter ホームページ
写真=iStock.com/RomanOkopny
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/RomanOkopny

巨大SNSプラットフォームを運営するこれら2社の対応は、明らかに偏ったものであり、もはや検閲ともいえるが、アメリカの大手主要リベラル系メディアもまた、このニュースを「本物かどうかの確証が取れない」などとして、無視を決め込むという対応を行った。

通常であれば、贈収賄や利益相反行為、さらに国民への虚偽説明といった疑惑が出れば、大統領候補にとっては致命傷となりうる。そして、その真偽を求めてマスコミ各社は一気に動き出し、報道合戦が過熱するはずだ。今回の疑惑の主人公が、トランプ大統領やその息子であったとしたら、マスコミのトランプ陣営に対する追及がどれほど苛烈になっていたであろうかは想像に難くない。しかし、リベラル系大手メディアはハンター氏への取材すらまともに行わず、この電子メール情報をNYPに流したのがトランプ派のジュリアーニ元NY市長であるため「信頼性に欠ける」とケチをつけ、さらには同氏がロシアの情報工作に乗せられているとする「匿名の情報機関高官」の話などを載せるなどして世論誘導を試みたのである。

そうして大手メディアに守られたバイデン氏は、トランプ大統領に対し、「息子ハンターのビジネスに関する確証のない疑惑でロシアの偽情報を拡散した」と非難したが、今回の騒動でもっとも興味深いのは、一連のメールが完全な偽物であり、ハンター氏のものではないとする声明が当のバイデン陣営側からはいまだに出されていない点であろう。

通常、なんらかの疑惑がかけられた政治家が、みずからの不正の証拠品を突きつけられ、それに対して何週間も沈黙していたら、マスコミは間違いなく「有罪の可能性」を疑い、徹底的に追及するはずである。しかしフォックス系列のような一部保守系メディアを除けば、高級紙と言われる新聞などを含め、そんな動きはほとんど皆無である。

■ロシアの選挙妨害を叫びつつ、プーチンを信用するリベラル派

この一連の疑惑について、最近になって出されたロシアのプーチン大統領の発言が注目された。プーチン氏は「ウクライナで(ハンター氏が)過去に事業を行っていたというのはその通りで、現在も行っているのかもしれないが、それはロシアには関係なく、米国とウクライナに関係がある話だ」とした上で、「私には犯罪的なものは見当たらない。少なくともわれわれは本件については何も承知していない」と述べた。

この発言もリベラル系メディアにかかれば「プーチンがトランプの主張に反論した」とか「バイデン氏への疑惑を否定した」ということになるわけだが、プーチン氏は詰まるところ「ロシアには関係ないし、詳しいことは知らない」と言っているにすぎない。

そもそも、バイデン氏本人や民主党の一部議員が主張し、リベラル系大手メディアの多くも追従しているのは、今回のメール問題はすべて、ロシアから選挙妨害工作の一環として流された偽情報のはずで、そんな彼らが今回のプーチン氏の発言を無条件に信じるのは矛盾しているが、トランプ氏攻撃のためであればそれはどうでも良くなるようだ。

ちなみに最近は、何かまずいことがあるとすぐに「ロシアの陰謀」と主張するのがリベラル系メディアの習いになっているが、かつてトランプ氏のロシア疑惑について、かなり執拗に煽動的な報道を行ってきた彼らから、そんな陰謀の証拠が出されたことなど一度もなかったことは記憶されるべきだ。

■目覚め始めた米国世論

このような米巨大SNS企業による検閲まがいの対応や、リベラル系反トランプ派メディアによる情報隠蔽工作はもはや尋常ではない域にあるが、それに対して多くの批判が保守系のみならず、一部リベラル派からも挙がりつつある。

例えばスティーブ・スカリス下院議員(共和党)などは、かつてトランプ攻撃のために、元英国情報部員が作成したロシア疑惑関連のインチキな怪文書を流し続けたマスコミ人らについて、「彼らは今、バイデンのスキャンダルをわれわれに見せないようにするために残業している。完全なダブルスタンダードだ」と述べている。

また、イギリスのテレビ番組の共同ホストを務め、みずからをリベラル派と自認するピアーズ・モーガン氏は、FOXテレビの番組インタビューで、今の左派運動の中には明らかに何らかの「陰謀」があり、報道の多くには明らかに嘘があるとした上で、「事件がネタにならないのはどんな時だろうか? それは、TwitterとFacebookがそう決めた時だ」とまで述べている。

こんなトランプ大統領の再選阻止のために検閲までする大手SNS企業や、フェイクニュースを拡散する偏向メディアの背後には、引き続き巨額の軍事費を使った米国による世界覇権を維持し、多国籍企業の利益を最大にしたいと考えるエスタブリッシュメント層(グローバリスト)がいる。彼らは今、そんな覇権などさっさと放棄して米国人にこれ以上無駄な血を流させず、余った金は米国自身を豊かにするために使うべきだとするトランプ派(反グローバリスト)から権力を取り戻そうとしているのだ。

かつて米国政治や世論を思いのままに動かしてきたエスタブリッシュメント層が、SNS検閲やメディアの隠蔽工作などを通じてここまで露骨に世論操作をやろうとするのは、それだけ多くの米国民が、大手メディアの偏向報道や嘘に気づき始め、かつトランプ氏のやり方に共感を覚え始めたことに対する強い焦りの裏返しであるのだろう。そしてそんな米国民の傾向は、今回の大統領選挙の結果のいかんにかかわらず、今後も拡大していくに違いない。

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丸谷 元人(まるたに・はじめ)
危機管理コンサルタント
日本戦略研究フォーラム 政策提言委員。1974年生まれ。オーストラリア国立大学卒業、同大学院修士課程中退。パプア・ニューギニアでの事業を経て、アフリカの石油関連施設でのテロ対策や対人警護/施設警備、地元マフィア・労働組合等との交渉や治安情報の収集分析等を実施。国内外大手TV局の番組制作・講演・執筆活動のほか、グローバル企業の危機管理担当としても活動中。著書に『なぜ「イスラム国」は日本人を殺したのか』『学校が教えてくれない戦争の真実』などがある。

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(危機管理コンサルタント 丸谷 元人)

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