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「匿名だからバレないは大間違い」相手から訴えられるネット投稿4タイプ

プレジデントオンライン / 2020年11月10日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/stevanovicigor

人の悪口を言いふらしたり、誹謗中傷のコメントを書き込んだりすると名誉棄損罪や侮辱罪に問われるおそれがある。いったいどこからがNGなのか。弁護士の上谷さくら氏が、インターネット上でトラブルになる4つの投稿事例を紹介する——。

※本稿は、上谷さくら、岸本学『おとめ六法』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■「うざい」「きもい」と悪口を書かれていたら

DVやハラスメント、性犯罪に娘のいじめ……。「女性が巻き込まれやすいトラブル」は数多くあります。でも、そうした悩みを解決したくても、「誰かに相談したら逆に悪化するかも」とどうしていいかわからない人も多いです。本稿では、インターネット上でトラブルになりやすい「名誉棄損罪」と「侮辱罪」について紹介していきます。

【事例1】
学校の裏サイトに、私のことを「うざい」「きもい」と中傷する内容や、「援交をしている」など事実ではないうわさが書き込まれた。
【ANSWER】
サイトに問い合わせフォームなどがあれば、まずそこに状況を記載して削除を求めてみましょう。法的措置を取るなら、まずは中傷やうわさを、証拠として保全する必要があります。そのうえで、裏サイトを運営している管理者に、中傷やうわさの削除を求めることができます。

愚痴や悪口、噂話なども、度が過ぎれば名誉毀損罪や侮辱罪に該当します。

まず名誉毀損罪は、以下の条件を満たす場合に成立します。

■「デマ」も犯罪の要件に当てはまる

名誉毀損罪と侮辱罪
図表=KADOKAWA『おとめ六法』

「公然と」……大勢の人の前などで
「事実を適示して」……「本当の事実」や「虚偽の事実」を示して
「人の社会的評価を低下させた」……世間や周囲からの評価を下げた

ここでいう「事実」は、その内容が本当かどうかは関係ありません。

そのため、嘘の内容でも名誉毀損罪の要件にあてはまります。

侮辱罪は、名誉毀損罪と同様「公然と」「人の社会的評価を低下させる」ことですが、名誉毀損罪とは異なり、「事実を摘示」せずに悪口を言った場合などに成立します。

二人きりの会議室で相手を罵倒するなどの場合は「公然と」にあたりません。

しかし二人きりであっても、聞いた人が第三者に伝えることが明らかなのに、その場にいない他人の悪口を伝えれば、「公然と」に該当する場合があります(伝播可能性)。

■会社の悪口を投稿して内定取り消しになる場合も

【事例2】
就活中の学生。無事内定は出たものの、あまり満足していない会社。思わず「サービス残業多いブラック」「セクハラあるらしい」など、内定先の会社の悪口と会社名を出してSNSに投稿。もしこの投稿が内定先にバレたら問題になる?
【ANSWER】
SNSでこのような会社の悪口を書き込むと、名誉毀損に該当します。書き込んだのがあなたと特定されれば、内定先企業の判断次第で内定の辞退を求められたり、内定が取り消されたりする可能性があります。

内定とは、開始時期の定められた解約権留保つきの雇用契約です。

雇用契約なので、会社は簡単に解除(内定取り消し)はできませんが、入社までにやむをえない事由が発生した場合には内定を取り消されることがあります。

面接の順番を待つ女性
写真=iStock.com/Promo_Link
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Promo_Link

たとえば、学校を卒業できなかったり、犯罪行為で逮捕されたりなどした場合です。事例のような書き込みは、内定先企業に対する名誉毀損行為にあたる可能性が高いものです。

■匿名で人の悪口を書くのはセーフ?

もっとも、この書き込みだけで、法的に内定取り消しが認められるかは微妙なところです。裁判になれば「内定取り消しは重すぎる」との判断が裁判所から下される余地もあります。

しかし法的に内定取り消しが認められなかったとしても、内定先企業がこの書き込みを発見し、書き込んだ人を特定すれば、なんらかのトラブルになる可能性は高いでしょう。

匿名アカウントであっても完全な匿名はありえません。「発言には責任を伴う」ということを意識する必要があります。

【事例3】
会社の取引先に苦手な人がいる。ストレス発散に、その人の悪口を盛大にSNSに投稿していた。自分の名前を明かさない匿名アカウントで、相手の実名も出していなければバレても犯罪にならない?
【ANSWER】
匿名アカウントで、なおかつ相手の実名も出していないとすれば、名誉毀損罪や侮辱罪などの犯罪が成立したり、慰謝料を請求されたりする可能性は低いと考えられます。しかし匿名アカウントであっても、その持ち主の個人情報が特定されて、インターネット上で晒される場合もあります。内容によっては、重大なトラブルを引き起こしてしまう可能性もあります。

■ポイントは「故意」または「過失」があるかどうか

名誉毀損罪や侮辱罪という犯罪は、その投稿をした人が、「相手の名誉を毀損してやろう」という「故意(わざと)」または「相手が特定されて相手の名誉が毀損されてもかまわない」といった「未必の故意」がなければ成立しません。

慰謝料請求するにも、投稿した人に「故意」か「過失」があることが必要です。

相手が誰かわからない表現で書き込みを行っていれば、相手の社会的評価を下げようという「故意」や「未必の故意」「過失」があるとは認められにくいと考えられます。万が一、投稿を見たほかの人が、悪口の相手を特定してネットで晒すことがあっても、刑罰を受けたり慰謝料を請求されたりする可能性は高くありません。

もっとも、裁判などの法的手続きでは、故意があるかどうかは書き込んだ内容から総合的に判断されます。

外見について書くなどして、悪口の相手が誰か、読んだ人が想像つく表現であれば、故意があると認められてしまう場合もあります。

■低いレビューをつけたらバズってしまったケース

【事例4】
カフェに行ったらサービスが最悪。あまりにも腹が立つからSNSで悪い感想を書き込んだら、バズってしまった。誹謗中傷になる?
【ANSWER】
内容によっては名誉毀損罪にあたる場合があります。少なくとも、ひどい悪口を書き込むと、トラブルに巻き込まれる可能性もあることを念頭に置いておきましょう。苦情は直接そのお店に伝えるのがよいでしょう。

誹謗中傷への対応は、大きく分けて2つあります。

削除請求……匿名掲示板やサイトの管理者に対して書き込みの削除を求める
発信者情報開示請求……書き込んだ人物を突き止めて、その人物に損害賠償請求などをする

iPhone Xの画面にソーシャルメディアが表示されている
写真=iStock.com/bigtunaonline
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/bigtunaonline

まずは削除依頼フォームなどの問い合わせ窓口を通じてサイトやSNSの運営者、管理者に、問題の書き込みの削除を求めるという方法があります。

しかし、それでもサイト側が削除しない場合は、サイトを運営している会社に対して書面を送って削除を求めます。

それでもだめなら、裁判所に訴えることで削除を求めることになります。また、警察に被害を訴えるほか、加害者を特定して民事上の損害賠償請求を行うこともできます。

■中傷してくる相手を特定する方法は

加害者を特定するには、裁判所に対し、運営会社などを相手取って「発信者情報開示」の仮処分の申し立てや訴訟を提起します。

この「発信者情報開示」は「プロバイダ責任制限法」に定められているもので、「自己の権利を侵害された者」が、運営会社やインターネット・サービス・プロバイダ(ISP)など一定の事業者に対し、投稿や書き込みをした者の個人情報を開示するように、裁判所から命じてもらう手続きです。

IPアドレス開示請求
図表=KADOKAWA『おとめ六法』
上谷 さくら(著)、岸本 学(著)、Caho(イラスト)『おとめ六法』(KADOKAWA)
上谷 さくら(著)、岸本 学(著)、Caho(イラスト)『おとめ六法』(KADOKAWA)

「匿名アカウント」が誹謗中傷などの被害を受けたときは、その相手に法的責任を問えるでしょうか? というのも、匿名アカウントに対しての誹謗中傷は、その持ち主の「本人」に対するものではない、とも考えられるからです。

匿名アカウントは、法的には保護しなくていいという考え方もありえます。この問題にはまだ最高裁判所による判例はありませんが、加害者に法的責任を問える場合もあると考えられます。

なぜならば、その行為が名誉毀損をされたアカウントの「社会的な評価」を低下させるからです。

■匿名アカウントで被害を受けても罪は認定される

SNSなどの限定された「世界」でも、そのアカウント自体の評価はあり、その評価は「社会的な評価」といえる可能性があります。

アカウントの「社会的な評価」が低下すれば、そのアカウントを使った活動に差し障りが生じるなど、「本人」にとって実害が発生する場合もあるからです。最高裁判所ではありませんが、実際に匿名アカウントに対する名誉毀損を認めた裁判例もあります。

【あなたを守る法律】
刑法 第230条 名誉毀損
1 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役、もしくは禁錮、または50万円以下の罰金に処する。
2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。
刑法 第231条 侮辱
事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留、または科料に処する。

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上谷 さくら(かみたに・さくら)
弁護士 第一東京弁護士会所属
福岡県出身。青山学院大学法学部卒。毎日新聞記者を経て、2007年弁護士登録。犯罪被害者支援弁護士フォーラム事務次長。第一東京弁護士会犯罪被害者に関する委員会委員。元・青山学院大学法科大学院実務家教員。保護司。

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(弁護士 第一東京弁護士会所属 上谷 さくら)

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