コロナ完全収束後の新たな世界とキャリアに備えて、年末年始に読むべき本9選
プレジデントオンライン / 2020年11月29日 8時15分
■グローバルな信頼と連帯が、早期収束のカギに
新型コロナウイルス感染症問題については、まだまだ予断を許さない状況ですが、これは自然現象なので必ず終わります。それまでに、われわれ人間はいかに自覚して行動して犠牲を最小限に抑えるか。それを考えるしかありません。
その基本はグローバルな信頼と連帯です。それぞれの国が互いに信頼し、連帯しないとウイルスには打ち勝てません。たとえば、このウイルス騒動が起こってから、諸外国や日本は出入国を制限しました。もしほかの国が出国を自由にして、飛行機や船がどんどんやってきたら対応できません。これはすべての国がお互いに出入国を管理しているからこそできること。国際的な信頼と連帯があったからできたわけです。
こういったウイルス災禍の最中でも、人間性や社会性といった、われわれの貴重な財産を守るために合理的な考えを持とうというのは、はるか昔からいわれてきました。ミラノの高校の校長先生がマンゾーニの『許嫁』という小説を引用して、そのことを伝えています(翻訳文参照)。
■市民レベルでも信頼と連帯は重要
市民レベルでも信頼と連帯は重要です。たとえばフランスでは2020年3月17日に外出禁止令が出されましたが、即座に市民がSNSで夜8時に帰る医療従事者を拍手で迎えようという動きが起こりました。日本で最初にこのような動きが起こったのは20年4月10日の福岡市役所でしょう。遅いですよね。しかも日本では医療従事者の子どもが保育園に行ったら隔離されるとか、スーパーに買い占めに走るとか、信頼と連帯と、逆のことを一部でやっている。
なぜ、こうなるかというと、正確な知識がないからです。農林水産省のサイトを見れば、トイレットペーパーも食料も十分にあることがわかります。新型コロナウイルスについても、信頼できる情報をきちんと得ることが大切です。
基本は政府の専門家会議の話をよく聞くことです。たとえば憲法改正や女系天皇といったイデオロギーに関する問題であれば、政府の選ぶ専門家の発言をうのみにすることに議論の余地があるのはよくわかります。
しかし今は人の命がかかっています。人命にイデオロギーは関係ないので、どんな政府であっても、最高の専門家を選んで市民の命を救おうと考えるでしょう。だから政府の専門家会議での発言を聞くのがいちばん正しいと思うのです。
歴史上で最も大きな被害を及ぼした感染症の1つはペストですが、流行が収束したあとにはルネサンスが生まれました。ペストがルネサンスを生んだように、今回の新型コロナウイルスも新しい世界を生むでしょうね。
安倍晋三首相が全国の小・中・高校に20年3月2日からの臨時休校を要請し、私が学長を務めるAPUの職員も、小学生の子どもを抱える親は仕事に来られなくなりました。そこで2日で子連れ出勤ができる環境をととのえた結果、仕事の能率は子連れでもほとんど落ちないことがわかりました。
国は働き方改革を重要課題に掲げ、生産性向上をめざしていますが、ニューノーマル(ポストコロナ)の世界では、子連れ出勤やテレワークがふつうになって働き方改革が進むでしょう。少なくともITリテラシーは格段に上がります。もしかすると投票率も上がるかもしれない。リーダーの役割が、いかに大事かをみんながわかったわけですから。ですから、ニューノーマルの世界は希望が持てますよ。そのカギは、やはり信頼と連帯ですよね。
・グローバルな信頼と連帯の重要性を一人一人が自覚する
・ITリテラシーが向上し、働き方改革が進む
・リーダーの役割の大切さが見直されて、きっと投票率が上がる
▼ウィズコロナの時代だからこそ、読んでおきたい“ブックリスト”
“感染症”をキーワードに、秋田さんと出口さんがおすすめの本をご紹介。新型コロナウイルス問題への理解がより深まること、間違いなし!
■時間のある今こそ、タフな本を読んでおきたい
「知識は力。良書を読むことが自分の力となってアフターコロナの世界でも頑張れると思います」と話す出口さんおすすめの本は、どれも分厚い読み応えのある本ばかり。時間のある今だからこそ勉強も兼ねて読んでおきたい。余裕のない人は秋田さん推薦の本で、感染症の幅広い知識に触れてはいかがだろうか。
400年前の先人は、世界にどう対応したか
信長、秀吉の時代に、はるかローマに派遣された4人の少年使節団の世界見聞録。「日本とグローバリゼーションの関係を見るのに最適な書」(出)
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若桑みどり著●集英社/3800円
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“序”と“序論”だけでも、感染症の概要がつかめる
感染症の歴史における古典的著作。「感染症が世界史の中で大きな要素であったことが見渡せます。文量が多いので、まずは“序”と“序論”だけでも」(秋)
ウィリアム・H・マクニール著、佐々木昭夫訳●中公文庫/各1200円
どんな状況でも、ユーモアを忘れず楽しく語り合う
14世紀のフィレンツェ、ペスト禍で郊外の別荘にステイホームしていた人々が互いに語り合う物語。「大変なときこそユーモアが大事と教えてくれます」(出)
ボッカッチョ著、平川祐弘訳●河出文庫/各1000円
世界の感染症の歴史を俯瞰して見るならコレ
主要な20の感染症について発生から病状、治療まで病気と人類の歴史的な関わりを紹介。「感染症図鑑ともいえる幅広い知識が得られる一冊」(秋)
サンドラ・ヘンペル著、竹田 誠・竹田美文監修、関谷冬華訳●日経ナショナル ジオグラフィック社/2600円
■▼ほかにおすすめの本はこちら!
人間がつくる社会とはどうなっているのか。個人と社会の相互作用を追求した名著
心理と社会の両面から人間理解にアプローチする書。「人間とは何か、社会とは何か、を考えるよい機会になります」(出)
小坂井敏晶著●筑摩選書/1900円
生物や文明の交換が行われた結果、世界はどうなった?
コロンブス新大陸到達後に起きたグローバリゼーションとパンデミックが骨太に描かれる。「世界がどう影響し合っているかがよくわかる」(出)
チャールズ・C・マン著、布施由紀子訳●紀伊國屋書店/3600円
合理的な思考を身に付けて、フェイクニュースを見破ろう
3.11の原発事故後、事実だけを発信した早野龍五氏と糸井重里氏の対談集。「虚偽情報を見破る思考力が付く」(出)
早野龍五・糸井重里著●新潮文庫/430円
ペストが象徴するものは? 不条理を描いた不朽の名作
閉鎖された一都市の中でペストと闘う市民たちの群像劇。悪疫が戦争や貧苦などの不条理の象徴として描かれる。
カミュ著、宮崎嶺雄訳●新潮文庫/750円
現実とフィクションが交錯する、究極のエンターテインメント
新型コロナウイルス問題の予言書として話題の2013年発行の小説。猛毒ウイルスから日本を救うために奔走する主人公に希望が持てる。
高嶋哲夫著●講談社文庫/950円
※コメント内の(秋)=秋田さん、(出)=出口さん、表記のないものは、編集部コメントです。価格は税抜きです。
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世界史研究家
企業に勤務するかたわら、社会科系の著作やセミナーを行う。著書に『“中心”の移り変わりから読む 一気にわかる世界史』(日本実業出版社)がある。
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立命館アジア太平洋大学(APU)学長
1948年、三重県生まれ。京都大学法学部卒業後、日本生命保険に入社。2006年、ネットライフ企画(現・ライフネット生命)を設立、社長に就任。12年に上場。18年からは立命館アジア太平洋大学(APU)学長に就任。ベストセラーの新刊『還暦からの底力』など著書多数。
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(立命館アジア太平洋大学(APU)学長 出口 治明 構成=池田純子 撮影=小林久井(近藤スタジオ))
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