「割れた腹筋をゲット」4カ月で体脂肪率を18%→8%にした医療記者のメソッド
プレジデントオンライン / 2020年11月6日 15時15分
■「ふつうの人」でも割れた腹筋は手に入る
テレビCMや雑誌の表紙などでアスリートの肉体美を見かけるにつけ、「自分も割れた腹筋を手に入れたい」と夢想する、なんて人はいないだろうか。
しかし、彼ら彼女らはいわば「本職」。日々の仕事に追われ、健康診断の悪い結果に目をつぶり、つい食べすぎ飲みすぎ、運動不足の自分には縁がない――そんなふうに思ってしまうかもしれない。
ここで、私は伝えたい。「ふつうの人」でも割れた腹筋は手に入る、と。
いや、「ふつう」でなくてもいい。今、太っている人でも、アスリートのような肉体を実現することはできる。他ならぬこの私がその実例だ。
私はかつて体重115kg・体脂肪率33%の高度肥満であり、そこから現在の体重74kg・体脂肪率8.9%まで体を絞った経験の持ち主だ。今、私の腹は腹筋の線がしっかりと確認できるほどになっている。
私が合計40kg以上の減量に成功し、割れた腹筋を手に入れられたのは、医療記者として取材してきた、科学的な根拠に基づいたダイエットをしたからだ。
2017年からの4年間、私は医療を専門にする記者として、「人はなぜ太るのか」「人はどうすればやせるのか」を取材してきた。数々の専門家に話を聞き、論文を読み漁り、そうして得た正しい知識に基づいて、自分の体を使って実践したのである。
その結果、肥満はすっかり解消。健康診断の結果もオールAとなり、見た目も大きく若返った。
しかし、勘違いしてほしくないのは、私は特別ではないということだ。極端な話、これから説明する方法を実践すれば、誰でもやせることができる。自分には無理だと諦める前に、ぜひ一度、取り組んでみていただきたい。
■1日たった300kcalを減らし続けるだけ
私の場合、体脂肪率12%あたりから、腹筋の線が見え始めた。「割れた腹筋を手に入れる」を目標にしたのは、体脂肪率18%前後になった頃だ。しかし、それ以前もそれ以降も、したことは変わらない。「115kgから40kg減量した」と言うとすごいことをしたようだが、方法はずっと同じだ。
であれば、115kgでは数字が大きすぎて参考になりにくいと思うので、2020年の1月、体重78kg・体脂肪率18%だった時点から話を始めよう。
これは最大体重時よりは当然、やせているが、服を脱げば下腹がちょっとぽっこりしている状態だ。この時点で、私の脂肪量は約14kg。ひとまずの目標として体脂肪率12%を定めると、脂肪だけ5kg落とすことができれば達成できる計算になる。
では、脂肪を5kg落とすというのは、科学的にはどのようなことか。
医師らが治療の参考にする『肥満症診療ガイドライン2016』には、減量の結果が「食事によるエネルギー摂取と身体活動などのエネルギー消費のバランス」に左右されることが記されている。
平たく言えば、摂取カロリー<消費カロリーの状態を維持すれば人はやせるということだ。
人間の体がクルマだとすると、どれくらいのガソリンを入れて、どれくらい使うか、というシンプルな考え方だ。近年よく言われるように、食事で摂取した栄養素がすべて同等に身体活動で消費されるわけではないが、原理としてはこうなる。
つまり、入れるガソリンの量(食事)を少なくし、使うガソリンの量(運動)を多くすれば、予備タンクに貯蔵されているガソリン(脂肪)が消費されていく。これが「やせる」ということだ。太っている人は予備タンクに大量のガソリンが貯蔵されている状態、と言い換えることができる。
ここで、予備タンク、つまり5kgの脂肪を落とすために消費するべきエネルギーをあらためて計算してみよう。
脂肪細胞は2割の水分を含むので、5kgの脂肪には残りの8割、つまり4kgの脂質が存在する。1gの脂質のカロリーは9kcalだから、消費したいエネルギーは理論上、3万6000kcalとなる。
目標達成までの期間を4カ月(120日)に設定すると、1日あたり300kcalずつ摂取カロリーよりも消費カロリーが多くなるようにすれば、体についた5kgの脂肪を使い切ることができるのだ。
そう、たった300kcal。これを毎日、セーブし続けさえすれば、その「ちょっとぽっこりした下腹」は消滅するのである。
■食事をセーブしながら有酸素運動と筋トレ
では、どのように300kcalの摂取カロリー<消費カロリーを実現するか。
取り組んだ方法はいたってシンプル。「食事をセーブしながら有酸素運動と筋トレをする」、これだけだ。
前述のガイドラインには、肥満症治療において「食事療法を必須とし、運動療法を併用すると効果が高まる」と記載されている。やせたいのであれば、食事へのアプローチが基本ということだ。
なぜかというと「食事のほうが圧倒的にパワーがある」から。これは北里大学北里研究所病院の内分泌・代謝内科部長で糖尿病センター長の山田悟医師を取材したときの言葉だ。
「私たちは1週間に20回くらい食事をするわけですよね。一方、一般的な社会人であれば、運動はがんばっても週1~2回に留まるのではないでしょうか。頻度からしても、食事を改善する優先度が高いことは明らかです」(山田医師)
そうした意識を持ち、併用して取り組むべきは有酸素運動だ。
順天堂大学医学部代謝内分泌内科学講座教授の綿田裕孝医師も、私の取材に「運動療法において、メニューの主体になるのはエネルギー消費量を高めやすい有酸素運動」であると答えている。
■ファスティングの問題点
ただし、注意点もある。人間の体がエネルギー不足になったとき、都合よく脂質だけが使われるわけではない。筋肉が分解され、そのたんぱく質がエネルギー源になってしまうことがある。筋肉量が落ちると基礎代謝と呼ばれる、生きているだけで消費されるカロリーが下がるだけでなく、ボディラインが崩れることにもつながる。
これこそがよくある“ダイエット法”、ファスティング(プチ断食)の問題点だ。絶食の期間に、本当は減らしたい脂肪ではなく、筋肉が減ってしまうとしたら。ちょっとぽっこりした下腹はそのままに、他の部分の皮がたるんできてしまう、なんてこともあり得るのだ。逆に、これらを防ぐのが筋トレだ。
「レジスタンス運動、いわゆる“筋トレ”は筋肉量を増やすことによって基礎代謝を増やすため、トータルのエネルギー消費量を増やし、減量に有利になります」(綿田医師)
34歳男性で、記者という仕事柄、運動以外の身体活動量が比較的多い私の摂取目標カロリーは1日約3000kcal。1日に必要なエネルギー量は例えば日本医師会のサイトで簡単に計算できるので、試してみてほしい。
これを1日約2700kcalにするか、1日に300kcal分余計に消費するように有酸素運動をしながら、筋肉量が落ちないように週に2~3回の筋トレを続ければ、4カ月後には割れた腹筋が手に入っていることになる。
■「カツ丼」を「親子丼」にすると……
ここで行き当たるのが「300kcal分の食事、あるいは運動とは?」という疑問だろう。
例えば、ご飯一膳が約200kcalなのでその1.5杯分だ。しかし、運動を併用するのであれば、糖質は運動の大事なエネルギー源でもある。イメージとして、人間の体は最初から予備タンクは使えないので、ある程度はしっかり、運動前に糖質を補給しておいたほうがいい。
とすると、脂質を減らすほうがカロリー制限上は有効だ。例えばカツ丼(1000kcal)を、親子丼(700kcal前後)にかえると、それだけで300kcalの削減。卵やベーコンの入ったカルボナーラ(約850kcal)を、あさり入りのボンゴレや明太子スパゲティ(約550kcal)にすると、やはり300kcalの削減になる。コーラなどの甘い清涼飲料水を飲む習慣があるならそれを止めたり、ポテトチップスなどの菓子類を控えることでも同等のカロリーオフになる。
このような食事の選択は、コンビニであれば成分表示表のラベルや、チェーン店であればメニュー表に記載されているカロリー量で判断できるだろう。もしそれがない場合も、最近は無料で使用できる「カロママ」や「あすけん」などのダイエットアプリがある。それらをダウンロードしておくと便利だ。
一方、運動で同等のカロリーを消費しようとするとどうなるか。運動の消費カロリーはメッツ(運動強度)×体重kg×運動時間×1.05で表され、運動によってメッツが決まっている。体重78kg時点の私であれば、時速8kmのゆっくりペース(約8メッツ)で30分ジョギングすると300kcalちょっとだ。
ただしこれもいちいち記憶・計算するのは面倒なので、スマートウォッチの消費エネルギーの測定機能を試してみるといい。安価なものであれば1万円ほどで購入できる。
食事のセーブか運動、このどちらかを毎日、続けること。そうすれば5kgの脂肪は理論上、減らすことができる。
そしてほぼ予定どおりの4カ月で、私の体重は71.7kg、体脂肪率は12.3%になった。さらにそれをもう2カ月ほど続けたところ、筋肉量は増えて体重74kg、逆に脂肪量は減って体脂肪率8.9%になった。この期間に筋トレの量を増やしたことが功を奏したようだ。筋肉量が増えれば基礎代謝が増えるため、それだけやせやすく、太りにくくなるのだ。
■ダイエットのハッカーを目指そう
ここまで理解はできても、納得できない人もいるかもしれない。実際のダイエットでは「続ける」ことが何よりも難しいことは、経験者なら誰もが知っていることだからだ。
もちろん、その対策も必要だ。私が心がけているのが、SNSへの投稿。なぜSNSに投稿するのか、これにも科学的な根拠がある。
東京大学院医学系研究科准教授で健康格差対策を専門にする近藤尚己医師は「SNS上のソーシャルインフルエンスも、現実世界の人間関係同様、健康に大きな影響を与えると考えられる」とする。
「例えば『ダイエットします』と宣言することで力を得るコミットメント効果という心理学的効果がある。また、ダイエットする様子を投稿して“いいね!”をもらうことをモチベーションにするうちに『どうすればより“いいね!”がもらえるかな』とさらに努力するようになるのは“ゲーミフィケーション(ゲーム化)”の一種で、ナッジとしても有効です」(近藤医師)
ナッジとは「健康になることを後押しする」要因。自然とダイエットができるような仕組みを作ることが、「続ける」ためには有効ということだ。他にも私はLINEで友人たちとその日の食事内容やトレーニング内容を報告し合うグループを作るなど、ダイエットをハック(攻略)する方法を駆使して臨んだ。
■アスリートの肉体は地続きなのだ
私の「割れた腹筋」は、ここまで説明したように、科学的なメソッドに基づいて手に入ったものだ。そしてそれが決して特別なものではないことも、よくわかっていただけたのではないだろうか。
もちろん、アスリートの肉体は、私などよりも遥かに高いレベルの努力によって鍛え上げられている。しかし、われわれの肉体と全くの別物というわけではなく、地続きなのだ。
ただの医療記者である私も、正しい知識を持つことで、彼ら彼女らに近づくことができた。まずは今晩の食事から、週末の運動から、自分の行動を変え、それを続ける工夫をしてみてほしい。
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ライター・編集者
地方の国立大学医学部を卒業後、新卒でメディア運営企業に入社。その後、編集プロダクション・有限会社ノオトで基礎からライティング・編集を学び直す。現在は報道機関に勤務しながら、フリーライターとしても雑誌『Mac Fan』連載「医療とApple」など執筆中。主著に『健康を食い物にするメディアたち』(ディスカヴァー携書)。近著に『医療記者のダイエット 最新科学を武器に40キロやせた』(KADOKAWA)がある。
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(ライター・編集者 朽木 誠一郎)
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