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「スマホをいじっていたら休日が終わった」そんな僕らに欠けているもの

プレジデントオンライン / 2020年11月10日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/damircudic

スマートフォンで暇つぶしをする人生は幸せといえるのか。そんな疑問に応えるエッセー集『1cmダイビング 自分だけの小さな幸せの見つけ方』(宝島社)が話題だ。この本は、韓国の男性デュオ「東方神起」のユンホさんが勧めたことから、韓国では17万部のベストセラーになっている。一体どんな内容なのか。一部を紹介しよう――。

※本稿は、テス、ムンジョン、岡崎暢子訳『1cmダイビング 自分だけの小さな幸せの見つけ方』(宝島社)の一部を再編集したものです。

■「1cmダイビング」とは?

このプロジェクトは2019年8月9日、各自それぞれの問題に苦しんでいた僕ら2人(1号と2号)が始めたものであり、目指すところは「日常生活に影響を及ぼさない程度の小さな幸せを探す」――という、些細なものだった。そこまで大それたことでもないのに、かっこだけはつけたかった僕らは、このプロジェクトに名前を付けることにした。

「1cmダイビング」

最初の1カ月間は好きなことをやりさえすれば、答えが出ると思っていた。しかし、僕らは初日から壁にぶち当たってしまった。「ぼ、僕が好きなことってなんだったっけ……?」。あれこれ試してみるには資金不足だった。困り果ててネットの掲示板に打ち込んでみたところ、こんな答えが書き込まれた。「スマホよりおもしろいものがほかにあるのか?」

本稿には、ダイビングの話は一切登場しない。登場するのは、些細な幸せを探すためにかっこ悪くもがき続ける話だけだ。だが僕らは、読んでくれたアナタ――そう、3号にも、同様のプロセスが必要だと信じている。このプロジェクトに参加するためのガイドを記しておこう。

■「1cm自由になる」3つのステップ

1.1cmダイビングとは

実際に水面めがけて飛び込むダイビング(高飛び込み)のことではなく、いわゆる比喩表現だ。わかりやすく説明するならば、こういうこと。「現実からほんの1cm自由になるくらいの、小さな幸せ探しプロジェクト」

2.準備するもの

1cmのダイビングだって準備は必要だ。まず、自分自身がどういう人間なのかを知っておかなければならない。楽しいことをする前に、どんなときに自分が楽しいと感じるのかを知らないと基準がわからないからである。

3.期待される効果

このプロジェクトがアナタの人生に大きな変化をもたらすことは、たぶん、ないだろう。ごくごくわずかなスタートだからだ。しかし、「自分の人生に楽しいことなんて1つもない」と思い込んでいた僕らでさえ変化があったことを鑑みると、きっとアナタも変われるんじゃないかと思う。

「ムンジョンさん、僕らまずここから考えてみません?」
「なんです?」
「スマホ以上におもしろいものがほかにあるのか」
「……あのう、私、毎日8時間くらいスマホいじってるんですけど……」
「……」

■1号にとってスマホよりも厄介で魅力的なのは

スマホでできないことなどない世の中だ。テレビだって見られれば音楽も聴けるし、本だって読める。おまけに友だちまで作れるときた。そんなわけで僕らは1日平均2時間強の時間を、この四角いプラスティックにくぎづけになっている。これが悪いとは言わないまでも、体によくないものの方がより楽しく感じられるというのは否定できない事実である。もはやスマホはビョーキだ。それもやたらに口当たりのよいビョーキ。

ところで少し前から、僕にとってスマホよりもっと厄介なやつが現れた。約9千年の昔から人類のために君臨してきたという生命体。猫である。こいつは性格からして有害である。呼んだところでガン無視されるだけだし、触ろうとするとやわらかな体をひねらせ、するりとかわす。かと思えば、こちらがテレビに集中していたりするといつの間にかそばにやってきて、ゴロゴロソングを歌い出す。ヒヤヒヤさせるぜ。

けれどこの生命体が僕にとってヤバい本当の理由はほかにあった。僕はひどい猫アレルギーなのだった。正しくは猫の唾液アレルギー。重症だ。

かわいいベンガルねこ
写真=iStock.com/Ingus Kruklitis
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Ingus Kruklitis

■実際に触れて、声を出して笑いたい

どんな猫とだって1時間もいれば、僕のまぶたは水餃子みたいに腫れ上がる。6歳の時にお別れしたひどい鼻炎と再会したのも、まあ、当然っちゃあ当然だろう。初めて猫を触った日、僕の全身は真っ赤に腫れ上がり救急治療室に運ばれる一歩手前までいった。だからスマホごときは致命的な存在とは言えない。到底比較にならないのだ。制限時間以内で最大限、猫ちゃんをなでまくり、魅力的なヒップをポンポンしなければならない。1分1秒がゴールデンタイムだからスマホにかまけている余裕なんかないのだ。

スマホの中にはすべてがある。本も音楽も映画もある。だけど猫はいない。こんな冗談みたいなこの状況、僕は気に入っている。スマホを上回るレベルで致命的で厄介なものができたからってわけじゃない。ただ、「何が好き?」という質問が一番嫌いだった僕に、30分以上かけて説明できる好きなものが生じたからだ。

「スマホ以上におもしろいものってある?」。これほどに難しいテーマはないということを知っている。しかし、それでも答えたかった理由は、スマホを開けば目に飛び込んでくるSNSの「www(大草原)」ではなくて、実際に声を出して笑いたいと望んでいたからではないだろうか。

最近はスマホがなくても考えることがある。気になる人と出会えたら、まず話してみるというテーマもできた。ささやかだけど、しっかりしたものが生まれた気分。

うん、悪くないだろう。

■2号のスクリーンタイムをチェックしてみると…

iPhoneにスクリーンタイムという機能がある。1日の間にどれだけスマホを使ったかという機能なのだが、この機能について、「自分のスクリーンタイムをチェックしたら“4時間”と表示されて反省しきりである」といった誰かのツイートを見かけたので、試しに私も自分のスクリーンタイムを確認してみた。6時間。まだ夕方にもなっていない明るい時間だった。乾いた笑いしか出なかった。

ある日は8時間、またある日は10時間もスマホをいじっている私であった。1号が言うように猫は本当にかわいいと思うし、野良猫なんかに出会った日にはスマホはただ、彼らのかわいい姿を撮影する道具になる。しかしだ。スマホ以上に楽しいこと?

「私……そういうものありませんよ」。目の前で熱弁をふるっていた1号が意気消沈していくのを感じた。当然だろう、私にそんなものがあれば日がな1日スマホに支配されることなんてあるわけないじゃないか、と言ってやりたい気持ちは山々だったけど、のっけから水を差すわけにはいかなかった。

■あなたが「スマホから手を放す瞬間」はいつですか

「私がスマホから手を離す瞬間っていつかなあ?」

テス・ムンジョン『1cmダイビング 自分だけの小さな幸せの見つけ方』(宝島社)
テス・ムンジョン『1cmダイビング 自分だけの小さな幸せの見つけ方』(宝島社)

ビールを飲むとき。違うな。それだけじゃあ弱い。私は片手にビールを持ったなら、もう片方の手では必ずスマホをいじるほどの中毒者だ。

ならばビールを飲みながら映画を観るときはどうか。私の大好きなことを2つ選ぶなら映画とビールだからだ。たしかによく考えてみると、その2つを同時に行っている間だけはスマホを見ていなかった。映画を観ながら飲むために買ってきた缶ビールを冷蔵庫にしまうときほど、充実した瞬間ったらない。

スマホより楽しいこと。のどかな平日の午後、カフェで1号と向かい合って、こんなことを探り合っている状況は、妙に居心地が悪い。だけど私は日誌には、こう書き留めることにした。

「後で家に帰ったら缶ビールを1本飲みたい。ずっと先延ばしにしてきた『レミーのおいしいレストラン』を観ながら」

――さあ、あなたに訪れた最初の質問です。「スマホ以上におもしろいことがありますか?」

書かなくてもOKです。気楽に考えてください。そして実践してみてください!

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テス(1号) 心は中2の三十路男。 ひょんなことから本を書いた。作家ではない。

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ムンジョン(2号) 人生あきらめモードの26歳女。 物書きとして生計を立てている。が、作家ではない。

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(テス(1号)、ムンジョン(2号))

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