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家電、ゲーム、金融……まもなくGAFAに呑み込まれてしまう8つの業界

プレジデントオンライン / 2020年11月9日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Chinnapong

「アマゾンエフェクト」という言葉があるように、GAFAのようなテック企業が業界ごとのみ込んでしまう例が増えている。ベンチャー企業投資家の山本康正氏は「データの活用が進んでいない企業が多い業界ほど危ない。具体的には小売りやエネルギーなど8つの業界に淘汰のリスクがある」という――。

※本稿は、山本康正『2025年を制覇する破壊的企業』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

■GAFA、テスラ、新興ベンチャーが業界をのみ込む

テクノロジー化が遅れている、データの活用が進んでいない企業が多い業界は、これからの未来では淘汰されていきます。特に、次に挙げた8つの業界が危険です。

①小売り

すでに淘汰は起き始めています。アメリカの高級百貨店「ニーマン・マーカス」が2020年5月に破綻。同じくアメリカで100年以上の歴史を持ち、850近くもの店舗を展開する大手百貨店チェーン「JCペニー」も同時期に破綻を申請。このような流れは、今後も続くでしょう。

ウォルマートは生き残ったのに、なぜ、彼らはダメだったのか。おそらく、これだけの規模の小売店ですから、データそのものはあったはずです。ただデータは持っているだけでは意味がなく、分析・活用して初めて価値が出ます。

そのことに気づいていなかったか。あるいは気づいていたけれど、実行できるデータサイエンティストなどの人材がいなかったことが原因でしょう。

またこの手の老舗企業は危機感がない場合や、顧客がいま何を求めているかが把握できていない場合も多く見られます。

たとえば店に立ち、お客様とコミュニケーションすることや、実際に商品に触れてもらうことに価値があるといったことだけを考えるとデジタルの手段を見逃してしまいます。新しいデジタル活用の1つの形としては有楽町などにオープンした、小売店舗をショールーム化しているシリコンバレー発のb8ta(ベータ)が参考になると思います。

■業界の壁や常識を何とも思わない経営者が参入

②エネルギー

エネルギー業界は国とのつながりも大きいですから、炭素を排出する火力発電が時代遅れだと多くの人が分かっていても、「でも、なくなりはしないだろう」と考えるわけです。このようなマインドは未来では成り立ちません。

イーロン・マスク氏のような業界の壁や常識を何とも思わない経営者が次々と参入し、業界を壊していく可能性が十分にあるからです。

テスラはすでにその動きを見せています。先に紹介したとおり、太陽光発電事業はまさにエネルギー業界への参入であり、環境への意識が高いカリフォルニア州などでは、テスラ自動車も含め、テスラの環境関連事業の推進に賛同。2035年からのガソリン車の新車発売禁止や税控除などで拡大を支援しています。

③金融

店舗を構える必要がなく、かつ利用者は手数料がかからないベンチャーの台頭などにより、従来型サービスを手がけている金融会社は、淘汰されていくでしょう。

銀行も同じです。ペイペイなどの決済サービスは次から次に登場していますし、フェイスブックを使えば、アメリカでは同じように送金が行えます。わざわざ手数料のかかる、既存の金融機関のシステムを使う人は、今後ますます減っていくことは間違いありません。

ただ先述したように、賢い金融機関はすでにこのような未来をイメージしていますから、台頭してくる企業の裏方に徹していくと思われます。つまりサービス業という業態から、インフラ的な業種への転換です。逆に、このような転換ができない企業は淘汰されることになります。

経済的困難
写真=iStock.com/imagedepotpro
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/imagedepotpro

■ゲームの成否を決めるのはハードの性能よりも体験

④ゲーム

スマートフォン用のゲームアプリを開発している企業は、この先も問題ないでしょう。

淘汰されるのは、もともと家庭用のゲーム機ならびに、ソフトウェアを作っていたゲーム会社です。クラウドストリーミングゲームへの対応の遅れが、その理由です。

これからのゲームは、ネットにつながっていることが標準機能となります。にもかかわらず昔からあるゲーム会社は、この機能が標準でついていないことが往々にして見られます。もちろんネットにつながるゲームもあるにはあるのですが、利用者が求めているニーズは、インターネット中継で大勢の人とゲームを楽しんだり、次から次に新しいソフトウェアがストリーミングされる体験です。

つまりハードの性能が成否を決めるのではなく、体験が重要なのです。

言い方を変えれば、いくら高性能なゲーム機であっても、ネットを介した大勢の人との体験できなければ、魅力が半減してしまうかもしれません。

ソニーと任天堂を見ていると、このあたりのトレンドに対する動きの違いが如実に分かります。ソニーはいち早く顧客のニーズをキャッチアップし、手元のゲーム機はクラウドにつながるためのエッジコンピュータと割り切って、開発が進められていきました。

一方、ニンテンドースイッチは確かにクラウドとつながりますが、常に、ではありません。さらにソニーはマイクロソフトと組むことで、クラウドに関する知見まで手に入れました。

■任天堂が再起するための選択肢

おそらくこの先、任天堂もマイクロソフトのような企業と提携すると、私は見ています。

ソニーと同じくマイクロソフトなのか。あるいはアマゾンなのか。アマゾンは月額600円程度で遊び放題のアマゾンルナを発表しています。それともグーグルなのか。

アップルに関してはゲーム業界への参入も表明していますから、ゲーム業界はこの先大きな転換期が必ずや訪れます。音楽が定額制になったように、ゲームもストリーミングで定額制になるでしょう。その際の目玉コンテンツとして各社はゲーム開発会社を買収して囲い込んで競っているのです。

一つ言えることは、任天堂はファミリーコンピュータやスーパーファミコンといった製品で、業界のプラットフォームを取った実績がある、日本では数少ない企業です。

そして現在、代表取締役フェローの宮本茂氏は、マリオシリーズやゼルダの伝説シリーズなどを開発した世界からレジェンドと称される稀代のクリエイターであり、彼の遺伝子を受け継ぐクリエーション能力が、任天堂にはあります。

この価値を活かし、再び世界のプラットフォームを獲得してほしい。個人的にはそう願っています。音楽ではソニーはアップルに市場を取られました。同じことが任天堂に起きてほしくないのです。

古いポータブルゲーム
写真=iStock.com/Thankful Photography
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Thankful Photography

■クラウド導入で旨味を失うシステム業界

⑤システム(SIer)

アメリカではクラウドでシステムを構築するのが広まっています。一方、日本はオンプレミスがまだ主流です。またアメリカではシステムは基本内製化で、自分たちでは難しい箇所だけをSIer(エスアイアー)に頼むのに対し、日本ではエスアイアーに丸投げしている企業が多いです。

そのため、エスアイアーの言われたままにシステムの設計や金額にも応じている状況もあります。

なぜ日本のエスアイアーがクラウド化を積極的には進めないのか。従来どおりサーバを使って構築したオンプレミスなシステムであれば、永続的にメンテナンス費用が発生しますから、ビジネス的に旨味があるわけです。

一方、クラウドを導入してしまうと、当然ですがそのフィーは入りません。クラウドを運営するGAFA、マイクロソフトなどに、主にお金が流れるからです。

しかし黒船GAFAは、日本の本丸とも言える政府基幹システムの一部を受注をするような状況です。その結果、デジタル庁構想もあり自治体などの公的機関のシステムはもちろん、ありとあらゆるシステムがクラウド化の流れに進みます。

クラウドと人工知能において日本の企業ならびにエスアイアーは遅れていますから、同分野での競争では劣勢です。

極端に言ってしまえば、日本のエスアイアーは自動車ディーラーや保険代理店のような、中間業者とも言えます。そして中間業者は、未来では業態転換を余儀なくされる可能性が高いです。

■データで製品とサービスを改善させる

⑥家電

データ取得ができるアマゾン冷蔵庫のような家電は、これからますます増えるでしょうし、アマゾン冷蔵庫のような家電をつくるコングロマリット企業は、家電事業単体で利益を出す必要はありません。

山本康正『2025年を制覇する破壊的企業』(SBクリエイティブ)
山本康正『2025年を制覇する破壊的企業』(SBクリエイティブ)

その結果、同じスペックの家電を、家電事業単体でしか手がけていない企業よりも安く提供できます。もっと言えば、テスラのように日々利用者の利用データをフィードバックすることで、より良い家電にもブラッシュアップしていきます。どちらが生き残るかは明白です。

⑦モビリティ/⑧対面だけの教育

残り2つは、自動車業界、そして対面だけの教育業界です。教育においても、アプリやデータの利活用は必須ですが、対面に固執したサービスでは、それができていないのが理由です。対面もアプリなどのデータ活用も両方していかなければなりません。

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山本 康正(やまもと・やすまさ)
ベンチャー企業投資家
1981年、大阪府生まれ。東京大学で修士号取得後、米ニューヨークの金融機関に就職。ハーバード大学大学院で理学修士号を取得。修士課程修了後グーグルに入社し、フィンテックや人工知能(AI)ほかで日本企業のデジタル活用を推進。日米のリーダー間にネットワークを構築するプログラム 「US Japan Leadership program」フェローなどを経て、2018年よりDNX Ventures インダストリーパートナー。自身がベンチャーキャピタリストでありながら、シリコンバレーのベンチャーキャピタルへのアドバイスなども行う。ハーバード大学客員研究員、京都大学大学院総合生存学館特任准教授も務める。著書に『次のテクノロジーで世界はどう変わるのか』(講談社)、『シリコンバレーのVC=ベンチャーキャピタリストは何を見ているのか』(東洋経済新報社)がある。

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(ベンチャー企業投資家 山本 康正)

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