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身勝手な勝利宣言をするトランプ氏が、このまま大統領でいいはずがない

プレジデントオンライン / 2020年11月6日 17時15分

アメリカ東部ペンシルベニア州フィラデルフィアの集計会場前で行われたトランプ支持者(左手前)とバイデン支持者(右奥)のデモ=2020年11月5日 - 写真=時事通信フォト

■「率直に言ってわれわれが勝った」と一方的に勝利をアピール

アメリカの大統領選は全米各州で投開票が行われ、共和党候補のドナルド・トランプ大統領(74)と民主党候補のジョー・バイデン前副大統領(77)が、当選に必要な270人の選挙人の獲得をめぐって大接戦を繰り広げている。

報道によると、バイデン氏が優勢だ。だが、選挙人の獲得に勝っても今回は裁判での争いが予想され、最終的に勝敗が確定するまでにはかなりの時間がかかりそうだ。

投票日翌日の11月4日未明(日本時間同日夕)には、新型コロナウイルスの感染対策で郵便投票が大幅に増え、開票に遅れが出る異例の事態となるなか、トランプ氏がホワイトハウスで「勝利が見えてきた。率直に言ってわれわれが勝った」と一方的に勝利をアピールした。事実上の“勝利宣言”である。この時点で勝利を宣言するトランプ氏の行動には、開いた口がふさがらない。

トランプ陣営は開票・集計の打ち切りを要求する訴訟を複数の州で起こしている。トランプ氏自身も「不正の温床」と主張していた郵便投票を指し、「われわれは選挙の正当性を守らなければならない」と訴え、これも法廷闘争に持ち込む考えを示した。

■「バイデン陣営は大統領選を盗もうとしている」

郵便投票を行った有権者は民主党支持層に多い。トランプ氏は難癖を付けて、自分にとって不利なことをすべて否定し、自己主張を押し通す。なんと強引で卑劣なやり方だ。

5日にもトランプ氏はホワイトハウスで記者会見し、改めて「郵便投票で不正が行われている」と主張するとともにバイデン氏が制したすべての州に提訴を拡大する意向を表明した。

このトランプ氏の“勝利宣言”を予想していたのだろう。バイデン氏はトランプ氏の“勝利宣言”に先立ち、デラウェア州の自宅近くの屋外会場で「私たちはこの選挙の勝利の道筋にある」と演説した。

このバイデン演説の直後にもトランプ氏はツイッターにこう投稿していた。

「われわれは大差で勝っている。バイデン陣営は大統領選を盗もうとしている」
「昨夜多くの州でリードしていたが、ひとつひとつ魔法のように消え始めた。とても奇妙だ」

この書き込みを見たツイッター社はすぐに「誤解を招く可能性がある」と警告した。当然である。

■「トランプ氏だから仕方がない」などと諦めてはいけない

一方的な“勝利宣言”。これが現職の大統領のやることだろうか。アメリカ国民だけでなく、日本を含む国際社会はあのトランプ氏だから「仕方がない」などと諦めてはならない。このままではアメリカから民主主義の精神が消えてしまう。世界から正義が無くなる。いまこそ、国際社会がトランプ氏の一連の不正を追及すべきである。

繰り返すが、トランプ氏の異常な言動に慣れてはならない。トランプ氏のような人物が民主主義のアメリカの大統領に就いていたこと自体が、おかしいのである。トランプ氏には大統領を辞めてもらうしかない。

これまでの米大統領選では、主要メディアが各州の開票結果をもとにして当選確実の候補者を投開票翌日の未明までに報じ、敗者は速やかに自らの敗北を認めた。この「敗北宣言」はアメリカ国民にとっての新しい政権をスタートさせるための第一歩である。1896年に敗北した民主党のウィリアム・ブライアン候補が、共和党のウィリアム・マッキンリー候補に対して祝電を送ったのが、敗北宣言の始まりだった。

勝った大統領候補は「勝利宣言」を行い、しこりが残らないように選挙戦の幕は閉じられる。

■なぜ、トランプ氏はそこまで大統領職にこだわるのか

たとえば、4年前のヒラリー・クリントン候補(民主党)は、投開票翌日の未明にトランプ氏に電話し、敗北をきちんと認めた。実に潔かった。これがアメリカの伝統なのである。

ヒラリー・クリントン
写真=iStock.com/ginosphotos
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ginosphotos

それがどうだろうか。4年前に大方の予想に反して勝利したトランプ氏は大統領に就任するやいなや、連日ツイッターに「己の正義」を投稿してアメリカ社会を分断の渦に巻き込んだ。トランプ氏のこれまでの言動は大統領として恥ずべきである。

今回の選挙では、トランプ氏は敗北が濃厚になっても負けを認めようとはせず、根拠も示さずに「開票作業の透明性が確保されていない」と主張している。訴訟という手段まで持ち出して、大統領職にしがみ付こうとしている。なぜ、トランプ氏はそこまで大統領職にこだわるのか。

理由は簡単だ。大統領を辞めた途端に脱税などいくつもの容疑で刑事訴追される可能性が高いからだ。大統領に就いている限り、その身は大統領特権で守られている。

新型コロナ禍で自身の不動産業が落ち込み、トランプ氏には500億円以上の借金があるとされる。これも大統領特権で返済が猶予されているが、辞めた途端に金策に走らなければならないだろう。我が身を守るために優秀な弁護人を雇う資金もない。それだけにいまのトランプ氏は大統領職にしがみ付くしかないのである。

■郵便投票など期日前投票を行う有権者が過去最多の規模に

11月5日付の読売新聞の社説は冒頭からこう主張する。

「開票を巡る混乱が長期化し、政治空白が生じれば、悪影響は世界全体に及びかねない。公正な手続きを進め、迅速に勝敗を決してもらいたい」

見出しも「米大統領選 混乱と対立を早期に収拾せよ」である。

力は衰えつつあるとはいえ、アメリカはまだまだ「世界の警察」だ。混乱が続くと、ISIS(イスラム国)をはじめとする国際テロ組織が活動を活発化させ、多くの犠牲者が出る危険性もある。読売社説が主張するように混乱と対立を早く解消させるべきだ。

読売社説は解説する。

「米大統領選で、共和党のトランプ大統領と民主党候補のバイデン前副大統領が接戦を展開し、投票日から一夜明けても勝者が決まらない状態が続いている」
「郵便投票など期日前投票を行う有権者が過去最多の規模となり、開票作業に時間がかかっているのが一因だ。新型コロナウイルスの感染拡大という異例の事態下の選挙を象徴していると言える」

本来ならばコロナ禍での大統領選だからこそ、投開票をスムーズに進められるように民主、共和両党の候補が協力していかなければならない。トランプ氏の“勝利宣言”は、あまりにも杜撰であり、日本の同盟国のトップとして情けない。

■先に「勝利」に唾を付けたほうが勝てると思っている

読売社説は指摘する。

「郵便投票について、民主党支持者が積極的に活用する傾向が目立つのに対し、トランプ氏は不正の可能性を提起してきた。勝敗を左右する接戦州の結果が不透明なのに、一方的に勝利をアピールし、開票の打ち切りを要求した」
「投票用紙の偽造や、なりすまし投票など、不正の具体的な根拠は示されていない。大統領が自ら、選挙の正当性を否定する言動は、米国の権威を落とすだけだ」

トランプ氏は先に「勝利」に唾を付けたほうが勝てると思っているのだろう。根拠のないことウソでも、百回言えば、事実のように見えてしまう。

■支持層と反対派の対立は、死者が出てもおかしくない異常な事態

読売社説は続けてこう指摘する。

「今回の選挙は、トランプ氏に対する事実上の信任投票だった」
「この4年間、トランプ氏はツイッターによる宣伝活動を重視し、『米国を再び偉大にする』というスローガンの実現を強調してきた。民主党や、自らに批判的なメディアへの敵意を煽り、熱狂的支持につなげる独特の手法だ」
「その結果、支持層と反対派の溝は、かつてなく深まった。選挙後の暴動や騒乱を恐れて、首都ワシントンをはじめ各地で警備体制が強められているのは、民主主義の大国とは思えない事態である」

「支持層と反対派の溝」、つまり分断である。大統領選にからんでトランプ派とバイデン派が激しく対立してすでにけが人も出ている。穏健な民主党支持層のなかにも拳銃を入手する人々がいるという。死者が出てもおかしくない異常な事態である。

読売社説は最後にこう訴えている。

「コロナ対策や経済の再生策など、喫緊の課題は山積している。不毛な法廷闘争で時間を空費している余裕はない。敗者は潔く結果を受け入れねばならない」

トランプ氏ほど、「潔い」という言葉から遠い人物はいない。

■選挙中に暴徒から身を守るために銃が必要になっている

11月5日付の東京新聞は「米大統領選開票 静かに見守るべきだ」との見出しを付け、こう指摘している。

「暴動と略奪を懸念してショーウインドーを板で覆った繁華街はゴーストタウンと化した」
「護身用に購入する人が急増し、銃は記録的な売れ行きだ。連邦捜査局(FBI)が十月、銃購入希望者の身元調査をした件数は三百三十万件を超え、この数年間の平均より百万件ほど多かった。不穏な空気が漂う中での選挙だった」

「ゴーストタウン」に「拳銃」。早打ちガンマンが活躍する西部劇ならともかく、選挙中に暴徒から身を守るために銃が必要になる社会はやはり異様である。

東京社説は書く。

「社会の物々しさには分断が下地にある。社会分断を深めたのは、立場や意見が異なる者を敵と見なして攻撃するトランプ氏だ」
「トランプ氏の信任投票となった大統領選は有権者の関心が高く、記録的な投票率になるのは確実だ。対立と破壊を繰り返したトランプ政治が続けば、米社会は大きく変質する。それを是とするのか非とするのか。多くの有権者が選挙の重要性を理解したのだろう」

どう考えてもいまのアメリカ社会の分断を深めたのは、トランプ政治である。アメリカ社会を再び、トランプ氏に渡してはならない。

■2000年の大統領選でも1カ月以上の法廷闘争になったが…

東京社説は最後にこう指摘する。

「2000年の大統領選では、フロリダ州の集計結果をめぐって法廷闘争になり、決着が長引いた。今回、訴訟合戦になればあの時以上の混乱が起きよう。両者とも選挙結果を尊重すべきなのは言うまでもない」

2000年の大統領選では、ジョージ・ブッシュ候補(共和党)とアル・ゴア候補(民主)が1カ月以上も法廷で争った。フロリダ州での得票はブッシュ氏がゴア氏を上回った。だが、1784票という僅差。この僅差に再集計を求めるフロリダの州法が適用された。ゴア陣営は手作業による再集計を求め、フロリダの州最高裁がこの訴えを認めた。

しかし、ブッシュ陣営はこれを不服として連邦最高裁に上訴したのである。結局、連邦最高裁は12月12日、州最高裁の判決を破棄した。再集計で票の有効や無効を判断する際の基準が郡によって異なることを理由に挙げ、憲法修正第14条の「法の下の平等」に反する可能性を指摘したのである。

ゴア氏は敗北を認めざるを得ず、翌13日に敗北を宣言し、ブッシュ氏の勝利が確定した。11月7日に投開票された後、ブッシュ氏の勝利が決まるまでに37日もかかった。

■トランプ氏の狙いは「下院が投票で大統領を選ぶ」ではないか

今回の選挙でも、トランプ陣営が郵便投票の開票を不正だとして州裁判所に訴え、違憲性を理由に連邦最高裁に持ち込む可能性は否定できない。

その場合には、連邦議会が勝者を決めることになる。議会は通常、1月6日の上下院合同会議で選挙人の数を集計して勝者を正式に決める。

ただし、開票の遅れからその6日にまだ一部の州の選挙人が確定していないと、トランプ氏もバイデン氏も過半数に届かない可能性が出てくる。その場合、下院が投票で大統領を選ぶことになる。

大統領職にしがみ付くトランプ氏はこの下院での戦いを狙っているのかもしれない。混乱はまだ長引きそうだ。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩)

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