1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

日経平均バブル崩壊後の最高値更新でも消えない「コロナショック二番底」の恐怖

プレジデントオンライン / 2020年11月12日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/DragonImages

日経平均株価が11月6日、バブル崩壊後の最高値を更新した。コロナ禍の3月、世界同時株安の直撃で1万6552円まで下落した日経平均は、アメリカ大統領選の大勢が決したことなどにより、7カ月でV字回復した形だ。青山学院大学大学院教授の榊原正幸氏は「今後は日経平均株価が高止まりする可能性がありますが、株価の再度暴落、つまりコロナショックの二番底がやってくる恐れもある」と指摘する――。

*本稿は、榊原正幸『現役大学教授が教える「お金の増やし方」の教科書』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

■株価の大暴落は「10年に一度」くらいの頻度で起こっている

株価の大暴落に関しては、それを扱うだけで1冊の本が書けてしまうくらい奥が深いテーマです。そして、株価の大暴落に関して研究することには、大きな意義があります。なぜならば、株価の大暴落は実は「10年に一度」くらいの頻度で勃発してきているからです。

リーマンショックの時に、アメリカのFRBの前議長だったグリーンスパン氏が、リーマン・ブラザーズの破綻に端を発した金融危機(=リーマンショック)のことを「100年に一度の危機」と述べました。この発言があまりにも有名になり、リーマンショック級の株価暴落も、あたかも「100年に一度」の出来事であるかのように印象づけられました。

しかし事実はどうかというと、そうではないのです。戦後以来の70年間において、株価の大暴落は「10年に一度」くらいの頻度で勃発しています。少なくとも、日経平均株価については、それが事実です。ここでは、まずこの事実をつまびらかにしてみましょう。

■「バブル崩壊」以前の株価大暴落の歴史からわかること

日本における株価大暴落の歴史を紐解きますと、1989年の年末以降の大暴落(「バブル崩壊」)以前にも、株価の大暴落は起こっているのです。それを簡潔にまとめますと、次のとおりです。

【「バブル崩壊(1989年末~)」以前の株価大暴落の歴史】

①戦後において東京証券取引所が開所した直後の1949年9月の高値(175円)から1950年7月の安値(85円)まで
下落期間10カ月、下落率51.4%

②1961年7月の高値(1829円)から1965年7月の安値(1020円)まで
下落期間4年、下落率44.2%

③1973年1月の高値(5,359円)から1974年10月の安値(3,355円)まで
下落期間1年9カ月、下落率37.4%

④1987年10月の高値(26,646円)から同年11月の安値(20,513円)まで
下落期間2カ月、下落率23.0%

日本は1986年から「バブル経済」が始まっていますので、1987年10月のブラックマンデーの時の下落は、期間も率も小幅なものに留まっています。

このように、1989年の年末以降の「バブル崩壊」以前にも、1949年・1961年・1973年というように、かの「奇跡の高度経済成長期」の過程でさえも、「12年に一度の周期」で株価大暴落は起こっていたのです。

1987年のブラックマンデーの時の下落は、株価下落の期間も率も小幅だったので「大暴落」からは除外すると、日本は1974年10月から1989年12月まで例外的に15年の長きにわたって株価の大暴落がなかったので、忘れられているだけで、こうして歴史を紐解いてみると、株価の大暴落というのは「12年に一度の周期」でやって来るものだということがわかります。

ただ、これらはあまりにも古いので、現在の市場参加者は意識していませんし、記憶もしていません。現在の市場参加者が記憶しているのは、1989年の年末以降の大暴落(バブル崩壊)とそれ以降の株価推移でしょう(年配の方は、1987年のブラックマンデーを覚えている方もいらっしゃるでしょう。私は、このブラックマンデーの少し後から株式投資を始めました)。

■バブル期以降の大暴落の歴史に学ぶ

さて、1989年の年末の大暴落(バブル崩壊)とそれ以降の株価暴落は、次のように簡潔にまとめられます。

⑤1989年12月に38,915円でピークアウトし、1992年8月に14,194円で底打ちしています。下落期間は2年8カ月で、下落率は63.5%の大暴落です。

⑥その後1996年までは14,000円台から21,000円台の往来相場となり、1996年6月に22,750円の高値を付けたところから、1998年10月に12,787円の安値を付けるまでの2年4カ月間も、明確な下落局面です。この時の下落率は43.8%でしたから、5や以下の7,8よりは小幅な下落率です。

⑦戦後2番目に大きい株価暴落は、ITバブルの高値である2000年4月の20,833円から「小泉・竹中不況」の底値である2003年4月の7,603円までの3年間にわたる長期の下落相場です。下落期間は3年で、この時も、1989年の年末以降の「バブル崩壊」と同じ規模の63.5%の大暴落です。

⑧その次は、「ミニバブル」といわれた2007年2月の高値(18,300円)から2008年10月のリーマンショックの大底(6,994円)までの1年8カ月にわたる大暴落です。下落期間は1年8カ月で、この時も、1989年の年末以降の「バブル崩壊」とほぼ同じ規模の61.8%の大暴落です。

頭を抱えるビジネスマン
写真=iStock.com/D-Keine
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/D-Keine

■バブル崩壊以降も10年余りの間隔で大暴落は起こっている

⑤~⑧の「ピークの時期」と「下落期間」と「下落率」だけをまとめると、次のようになります。

⑤ピークは1989年12月、下落期間は2年8カ月、下落率は63.5%
⑥ピークは1996年6月、下落期間は2年4カ月、下落率は43.8%
⑦ピークは2000年4月、下落期間は3年、下落率は63.5%
⑧ピークは2007年2月、下落期間は1年8カ月、下落率は61.8%

⑤~⑥の期間が6年6カ月、⑥~⑦の期間は3年10カ月です。

⑥は比較的小幅な下落率でしたから、大暴落からは除外して、⑤~⑦の期間を見ると10年4カ月で、⑦~⑧の期間が6年10カ月です。このように、バブル崩壊以降も、⑥~⑦年と10年余りの間隔で大暴落は起こっています。下落期間は1年8カ月~3年で、下落率は43.8%と61.8%と63.5%です。

■「コロナショック不況」の大暴落は時期的に見て「歴史の必然」

そして問題は、今回の(2020年2月下旬から始まった)コロナショックによる大暴落です。

⑨今回のピークは、2018年10月で、最高値は24,448円です。

⑧~⑨の期間を見てみますと、「11年8カ月」です。⑤~⑦の10年4カ月よりもやや長かったですが、上で見たように、バブル経済の前の「12年に一度の周期」とはほぼ合致していますから、今回の大暴落は、このように歴史的に考察してみれば、まさに「来るべきものが来た」ということでしかなかったのだということがわかります。コロナショックがあろうとなかろうと、今回の大暴落は、時期的に見て「歴史の必然」だったといえます。

そして、⑤~⑧の事例に従えば、下落期間は「1年8カ月~3年」ということになりますが、今回の場合はピークの間隔が⑤~⑨の中では一番長くて、底値(2008年10月、6,994円)からの上昇率も約3.5倍でとても大きいので、下落期間が長引く可能性もあります。

そうすると、今回のコロナショックによる大暴落が底打ちするのは、「早くて2021年2月、遅いと2021年10月」ということになります。

■11月にバブル以降の日経平均株価の高値を更新も再度暴落の恐れも

一方、2020年11月9日の時点で、日経平均株価は⑨の高値(2018年10月、24,448円)を更新しました。このような現状を踏まえますと、コロナショックによる大暴落は2020年3月に底打ちしていることになりますので、下落期間は1年5カ月となり、かなり短くて変則的なものになりました。

榊原正幸『現役大学教授が教える「お金の増やし方」の教科書』(PHP研究所)
榊原正幸『現役大学教授が教える「お金の増やし方」の教科書』(PHP研究所)

これから先は「資産インフレ」が続いて、日経平均株価が高止まりする可能性がありますが、何らかのショックが発生して、日経平均株価が再度暴落する可能性もあります。再度暴落した場合は、それが「コロナショックの二番底」になります。

トランプ大統領が落選した場合には、NYダウが大暴落すると予想していました。

しかし、11月9日の時点ではバイデン氏の当選がほぼ確実視されていますが、大方の予想に反して日米の株価はむしろ上がっています。株価が下がらないのは、バイデン氏が大統領になっても、経済の面ではあまり大きなマイナスはないだろうとの思惑が台頭してきたためであるといわれています。

また、リーマンショック以上の「ジャブジャブの金融緩和」が日米で実施され続けていますから、「コロナショックの二番底」は形成されず、当面は日経平均株価もNYダウも高止まりしそうな気配になっています。

「コロナ不況」との関係でいうと、まさに「不況下の株高」という現象になっており、「資産インフレ」が進行しているとしか考えられない状況です。そうだとすれば、今後も右肩上がりの株価推移が予想され、その中で株価急落の局面があるとすれば、それは今年3月のコロナショックの最安値の時と同様に、絶好の買いのチャンスとなるでしょう。

日米の今後の株価推移は、ことさらに要注目です。

----------

榊原 正幸(さかきばら・まさゆき)
青山学院大学大学院国際マネジメント研究科教授 会計学博士
学生時代から株式投資を始めるも、知識不足のため大きな損失を出す。その反省から、自身の研究内容を踏まえた科学的な投資法を追求し、継続的に大きな成果を上げるようになる。ビジネススクールで教鞭を取るかたわら、ファイナンシャル教育の普及活動を続けている。 シリーズ10万部突破の『株式投資「必勝ゼミ」』(PHP研究所)の他、『現役大学教授が実践している堅実で科学的な株式投資法』(PHP研究所)、『会計の得する知識と株式投資の必勝法』(税務経理協会)など、著書多数。

----------

(青山学院大学大学院国際マネジメント研究科教授 会計学博士 榊原 正幸)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください