美容意識の高い人ほど不足しがちな「意外なビタミン」の正体

プレジデントオンライン / 2020年11月13日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Aja Koska

現代人に不足している栄養とは何か。満尾クリニック院長の満尾正氏は、「日本人の約8割はビタミンD不足に陥っている。そのため17世紀の病気である『くる病』が再び流行しつつある」と説く――。

※本稿は、満尾正『医者が教える「最高の栄養」ビタミンDが病気にならない体をつくる』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■13年間、日本では知らされてこなかった事実

「現代人にはビタミンDが不足している」という報告が米国でなされたのは、今から13年も前、2007年のことでした。最初にビタミンD欠乏論を唱えたのは米ボストン大学教授のマイケル・ホーリック博士という、皮膚でビタミンDが作られていることを発見した有名な医師です。

ホーリック博士によってこの事実が報告されてから、欧米諸国ではビタミンDを積極的に補充する動きが広がってきました。しかし、残念ながら日本では、ビタミンDの重要性も、多くの人がビタミンD不足であることも、まだあまり知られていないようです。

当院外来受診者の血中ビタミンD濃度
『医者が教える「最高の栄養」ビタミンDが病気にならない体をつくる』(KADOKAWA)より

図表1は当院の外来受診者(約1700名)を対象にした血中ビタミンD濃度〔25(OH)D3濃度〕の分布です。至適値は40ng/ml以上とされているのですが、外来受診者の8割近くの方が30ng/ml未満の「不足状態」にあり、4割近くの方が20ng/ml未満の「欠乏状態」にあると考えられます。40ng/ml以上であった方は、わずか5%でした。

男女別の分布と平均値を見ても、平均値は30ng/ml未満と低い傾向にあります。日に当たる機会が多いのか、男性でやや高い傾向があったものの、性別を問わず、多くの方が不足状態にあることがわかりました。8割近くが不足または欠乏というのは由々しき事態です。

■紫外線を避ける習慣がビタミンD不足を招いた

図表2は韓国の20代の男女(男性311名、女性438名)の血中ビタミンD濃度の分布を表しています。ビタミンD濃度を表す25(OH)D3濃度が20ng/ml未満であると欠乏状態にあると言えますが、この研究により、男性の65.0%、女性の79.9%がビタミンD欠乏であることが明らかにされています。

20代の韓国人を対象にした血中ビタミンD濃度「20ng/ml」未満の割合
『医者が教える「最高の栄養」ビタミンDが病気にならない体をつくる』(KADOKAWA)より

ビタミンDはコレステロールを原料とし、紫外線を浴びることによって、皮膚で作られます。ということは、日光を浴びなければビタミンDを作ることはできません。

もともと人類は野生動物と同じように屋外で活動していましたが、現代文明のもとでは室内空間で過ごす時間が多くなり、皮膚でビタミンDを作る機会が減ってしまいました。さらに追い討ちをかけるかのように、「紫外線を浴びると皮膚がんになる」など紫外線の弊害に関する情報が蔓延し、1980年頃から現代人の多くが紫外線を避けるようになってしまいました。

これらが現代人にビタミンDが不足している大きな理由です。

■美容意識の高い若年女性がいま危ない

このままビタミンD不足を放置していてもよいものでしょうか。韓国の若者の例は決して対岸の火事ではなく、日本でも同じ現象が起きていると考えられます。

ビタミンD欠乏は若者の健康状態を損ねるだけでなく、彼らの子どもたちの健康リスクも増やすことになります。

厚生労働省の「国民健康・栄養調査」(2018年)によれば、20歳以上の成人女性で平均6.5μg、20~40代女性に限定すれば平均4.8~5.6μgしか食事からビタミンDを摂取できていません。当院で血中ビタミンD濃度を調べた結果でも、年代別に比較してみると、女性に関しては20~40代がもっとも低かったのです(図表3)。

女性の年代別 血中ビタミンD濃度
『医者が教える「最高の栄養」ビタミンDが病気にならない体をつくる』(KADOKAWA)より

美容を意識して徹底的に紫外線をカットし、ビタミンDの供給源となる魚もあまり食べないという生活を見れば、決して不思議な結果ではありません。

■17世紀の病気が日本で流行りだした理由

小児骨軟化症患者数の推移
『医者が教える「最高の栄養」ビタミンDが病気にならない体をつくる』(KADOKAWA)より

子どものビタミンDレベルが低下していることを示唆する事象も現れ、警鐘が鳴らされています。

「頭蓋癆(ずがいろう)(頭蓋骨の石灰化が不十分で軟らかいため、容易にへこむ状態)」が増えており、2008年に京都大学発達小児科学の依藤亨先生が「日本の新生児に潜在性のビタミンD欠乏症が非常に多く、特に母乳栄養児ではビタミンD欠乏の改善が遅れる」と指摘されました。

頭蓋癆は「くる病」という、骨が曲がって折れやすくなってしまう病気の初発症状として現れることが多く、これはビタミンD不足によって起こります。くる病は17世紀のイギリスで初めて報告され、のちに原因・治療法も明らかとなり過去の病気と思われていましたが、図表4のように、2014年までの10年間で2.5倍も小児の患者数が増えているということが、赤坂ファミリークリニック院長の伊藤明子先生によって報告されました。

■3割以上の乳児が「ビタミンD不足」に陥っている

母乳と調整乳/混合による乳児の血中ビタミンD 濃度の違い
『医者が教える「最高の栄養」ビタミンDが病気にならない体をつくる』(KADOKAWA)より

また、2017年の順天堂大学小児科の中野聡先生らの報告によれば、国内における乳幼児のビタミンDの体内蓄積状況を調査したところ、生後半年までの乳児の3割以上が「欠乏状態」、約半数が「不足状態」にあるということでした。

しかも、驚くべきことに、母乳栄養が中心の乳児では約半数が「欠乏状態」、約25%が「不足状態」と血中ビタミンD濃度が極端に低かったのです。

母乳栄養群(28例)と、調整乳(牛乳や豆乳に糖質・ビタミン・ミネラルなどを添加したもの)を使用する調整/混合栄養群(21例)に分けて、血清25(OH)D3値を解析したものが図表5です。母乳栄養群では、調整/混合栄養群に比べて明らかに血中ビタミンD濃度が低く、20ng/mlより低い「欠乏状態」にある乳児が多かったことがわかりました。

■子育てで知っておくべき母乳に関わる功罪

「母乳で子どもを育てたい」というのは親として自然な思いであり、誰しもそのほうが子どもの成長にとっても有益だと考えると思います。しかし残念なことに、母乳だけでは子どもの健康リスクが高まってしまうという逆の現象が起こっていることがわかります。

原因は明白です。母乳中のビタミンD濃度は母体の血中ビタミンD濃度によって決まるため、妊娠可能年齢の女性の血中ビタミンD濃度が低いことが、乳児のビタミンD欠乏状態を招いているわけです。けれど母乳は本来、免疫系のタンパク質の供給源であることなど多くのメリットがあります。

つまり、次世代にさまざまな健康リスクを残さず、母乳のメリットを生かすためにも、まずは母親となる女性の血中ビタミンD濃度を適正値に保つことが大切なのです。

■ビタミンDはほぼ全身の機能で重要な働きをする

くる病予防につながることからもわかるように、「ビタミンDは骨を作る大切なビタミン」であると教わった覚えがある人は多いのではないでしょうか。

満尾正『医者が教える「最高の栄養」 ビタミンDが病気にならない体をつくる』(KADOKAWA)
満尾正『医者が教える「最高の栄養」ビタミンDが病気にならない体をつくる』(KADOKAWA)

もちろん、これは今でも変わらない真実です。骨は体を支える以外にも、カルシウムやリンの貯蔵庫としての役割を果たしており、これらはビタミンDの作用によって代謝がコントロールされ、最適な血中濃度が保たれています。腸管におけるカルシウムの吸収、血液中でカルシウムを運搬するカルシウム結合タンパク(CBP)の合成、腎臓におけるカルシウム再吸収の促進など、カルシウム・リン代謝に欠かせない脂溶性ビタミン(脂質に溶けるビタミン)がビタミンDです。

ただし、ビタミンDの働きは、カルシウム代謝の調整にとどまりません。数十年間の医学の進歩により、骨だけでなくほぼ全身のさまざまな領域で欠かすことのできない重要な働きをしていることがわかってきたのです。

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満尾 正(みつお・ただし)
医学博士、満尾クリニック院長
1957年横浜生まれ。北海道大学医学部卒業。ハーバード大学外科代謝栄研究室研究員、救急振興財団東京研修所主任教授を経た後、2002年、日本で初めてのアンチエイジング専門病院「満尾クリニック」を開設。主な著書に『食べる投資 ハーバードが教える世界最高の食事術』(アチーブメント出版)、『世界最新の医療データが示す 最強の食事術』(小学館)など多数。

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(医学博士、満尾クリニック院長 満尾 正)

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