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バイデン勝利で急浮上「ヘンリー&メーガン夫妻」が公の場に舞い戻るシナリオ

プレジデントオンライン / 2020年11月12日 9時15分

ヘンリー英王子(右)とメーガン妃(イギリス・ロンドン=2020年3月5日) - 写真=AFP/時事通信フォト

■英王室のメーガン妃が異例の投票

11月3日投票の米大統領選で激戦の上、現職のドナルド・トランプ氏を破ったジョー・バイデン氏は7日夜(日本時間8日午前)に行った演説で勝利を宣言した。選挙人のうち、過半数の270人を獲得すれば勝利とされる方式のもと、「バイデン氏は290人を獲得(11日午前現在)」と伝えられており、これでほぼ結果は確定したとみて良いだろう。

一方、トランプ氏は依然として「不正選挙」と非難を続け、敗北はまだ認めていない。

こうした状況の中、イギリスのメディアで大統領選をめぐり角度が少々違う話題が取り沙汰されている。2018年に英王室のヘンリー王子と結婚したメーガン妃が「バイデン氏に投票した」というのだ。

英王室には「選挙権も被選挙権も行使しない」という歴史的な不文律があり、「政治的に中立を保つべき」という考え方のもと、ロイヤルファミリーがこれまでの選挙で投票を行った例はない。

もともと米国籍で、現在は王子と共に米国で暮らしているメーガン妃は、3日の投票日までに、郵便で投票。「投票先は確認されていないが、筋金入りの反トランプ大統領派のため、民主党のバイデン前副大統領であることは確実」とみられている。

メーガン妃はこれまでも、王子との結婚前にトランプ氏について「分断をあおる」とトーク番組で批判し、トランプ氏の不興を買った経緯がある。米共和党下院議員のジェイソン・スミス氏は、「(メーガン妃の政治的発言は)米国の選挙を妨害するもの」と断罪。駐米英国大使館を通じ、「英国政府は2人を王室から追い出すよう、エリザベス女王に促すべきだ」と書簡を送ったという。

メーガン妃はなぜ異例の投票を行ったのか。その理由は明らかにされていないが、夫妻の置かれている立場と英国政府の現状を分析すると、意外なシナリオが見えてくる。

■“殿下”ではないが民間人でもない微妙な立場

エリザベス女王の孫でウィリアム王子の弟であるヘンリー王子は、立場がすでに微妙な位置にある。

よく知られているように、ヘンリー・メーガン夫妻は今年3月末をもって王室の公務を引退している。これはスポーツ選手のように自ら現役から退くといった性格のものではなく、英王室側が同夫妻の処遇を示したという経緯がある。

夫妻は、王室との距離をとりながらも結婚を機に得た「サセックス公夫妻」という称号を使ってビジネスを立ち上げ、“Sussex Royal”なる商標を用い、いわばキャラクター商品で儲(もう)けようとしていた。しかし、王室は夫妻に対し、「王室を意味するRoyalという言葉を使わせない」と明確に宣言、ヘンリー王子に冠されていたHis Royal Highness(HRH=殿下)の敬称も使わせないと決められてしまった。

では、全くの民間人として野に下ったかといえばそうでもないのだが、王室のさまざまなしきたりに従う義務からは遠い立場となったことは疑いがない。

そうした中でメーガン妃による大統領選への投票という、異例の事態が起きてしまった。

これまでに王室側から、妃による「選挙権の行使」に関するコメントは出されていないが、当事者らはおそらくモラル違反が起きたと考えていることだろう。

■「英米のトランプ同士」蜜月だったが…

一方、英米関係に目を向けると、トランプ氏によるボリス・ジョンソン首相への「入れ込み」はただならぬものがあった。

トランプ氏はジョンソン氏を「英国のトランプ」と呼んで好意を示し、英国の欧州連合(EU)離脱、いわゆるブレグジットを支持した数少ない世界の指導者の1人だった。

そもそもトランプ氏は、ジョンソン氏が2019年9月に首相に選出された際、「ジョンソン氏はイギリスのトランプと呼ばれている。良いことだ。私は向こうで好かれている。ジョンソン氏は必要とされている」と公言。首相選出のレースが行われている最中にも、外国元首でありながらジョンソン氏応援の姿勢を辞さないなど、その入れ込みようは異常とも言えるこだわりようだった。

2011年のロイヤルウェディングで、英国旗を持つ人々の手元
写真=iStock.com/Moonstone Images
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Moonstone Images

英国側がトランプ氏の姿勢を全面的に受け入れていたわけではなかったにせよ、ギクシャクしているEU・米国間の関係と比べれば、トランプ氏とジョンソン首相との関係は英米関係の安定にいくらか寄与してきたとみて良い。

ただし、実務者レベルでは英政府とトランプ政権との関係は安定していたわけではない。

トランプ氏の人種差別的発言や気候変動問題軽視の姿勢は英国が推し進める方向性とは対立している上、次世代通信規格「5G」分野から、それまで依存していた中国の華為技術(ファーウェイ)を追い出すよう米国から執拗に要求を受けるなど政策上の摩擦は小さくなかった。

■EU離脱をバイデン氏が認めるのか

英国が抱える最も頭の痛い問題は、12月31日に期限が迫っているEUからの完全離脱に向けた各国との各種交渉だ。2月1日付で正式離脱したものの、そこから10カ月余りの間、英政府はもとより各国政府は新型コロナウイルス対策に追われ、離脱に向けた交渉が順調に進んでいるとは言い難い。

一方、米国との間では今年5月から、2国間の自由貿易協定(FTA)の交渉をはじめた。もともとトランプ政権は他国・地域との協定締結には否定的で、在任中に日本などとの間で批准が進められていた環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の交渉から離脱。オバマ政権が締結を目指したEUとの包括協定「大西洋横断貿易投資パートナーシップ協定(TTIP)」樹立に向けた交渉が進められていたがこれも途中で打ち切りとなった。

英国にとって、米国は国別で最大の貿易相手国だ。現状では、英EU間の交渉が進まない中、英米FTAも模様眺めの状況が続いている。

朝日に照らされるオランダ・ロッテルダムのコンテナターミナル
写真=iStock.com/donvictorio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/donvictorio

英米間の貿易取引は現在、WTOルールにより関税が発生する。それに加えて「両国の貿易は英側の大幅な黒字のため、FTAの発効はEUを離脱した英側に大きなメリットがある」とされる。

しかし、ここでも問題が立ちはだかる。トランプ氏はTPPやTTIPといった多国間との包括協定には消極的だったのに対し、英国のEU離脱を支持。その流れで英米FTAの交渉も前向きだった。ところが、バイデン次期大統領はEU離脱に懐疑的な上、アイルランド系の血を引くことから、ブレグジットの影響でアイルランドと英領北アイルランドとの紛争が再燃することを危惧しているとも伝えられている。

■「お騒がせカップル」が交渉パイプ役に?

これまで述べたように、メーガン妃はバイデン氏支持(それがアンチトランプであるとはいえ)の姿勢をとり続けてきた。

一方、EUとの交渉がおぼつかない英国は、ブレグジット後、特にモノの輸出入で相当なハンディを抱えることは間違いない。幸いにも日本との協定は、他国との交渉に先立ち無事に妥結した。しかし、EUを除けば最大の貿易相手である米国との交渉が暗礁に乗り上げるとなれば、コロナ禍で弱体化した英国の経済にもさらなる打撃となる。

このような状況で、バイデン支持に傾いたメーガン妃が、交渉パイプ役として浮上するのか。

米国でも、同夫妻が英王室の公務から引退したことを引き合いに「重要な案件についてより自由に発言ができるようになるだろう」との見方もあり、政治や外交関係では解決しにくい現状を打破するのに一役買う可能性もあろう。

ヘンリー王子、メーガン妃夫妻は、これまでも王室の伝統にない所業を次々と行い、世間の注目を浴びてきた。メーガン妃は「今回の選挙はわれわれの生涯で最も大事」と訴え、英王室の構成員ながら母国・米国の行く末を案じる異例中の異例なメッセージを人々に送り、選挙参加への後押しを進めた。

大西洋を挟んで英国と米国の双方で「お騒がせカップル」として知られる同夫妻が英米の橋渡し役をきっかけに公の舞台に舞い戻るのだろうか。米国でのバイデン新政権誕生で起こり得る大穴シナリオとして頭に留めておきたい。

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さかい もとみ(さかい・もとみ)
ジャーナリスト
1965年名古屋生まれ。日大国際関係学部卒。香港で15年余り暮らしたのち、2008年8月からロンドン在住、日本人の妻と2人暮らし。在英ジャーナリストとして、日本国内の媒体向けに記事を執筆。旅行業にも従事し、英国訪問の日本人らのアテンド役も担う。■Facebook ■Twitter

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(ジャーナリスト さかい もとみ)

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