「知らないと丸損」実家の親を年末調整で"扶養親族"に入れるワザ

プレジデントオンライン / 2020年11月16日 11時15分

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年末調整には見落としがちな控除がいくつかある。元国税調査官で税理士・産業カウンセラーの飯田真弓氏は、「例えば親に仕送りをしている場合、離れて暮らしていても扶養親族に含めることができる」という――。

■今年の申告書は前年とフォーマットが違う

早いもので2020年も残り約2カ月となった。サラリーマンには年末行事として年末調整がある。年末調整を受けるためには、各自で申告書を作成し提出しなければならない。“毎年のことだから、前の年の申告書を見ながら、同じ箇所を埋めていけばいいんだよね!”と、たかをくくっていてはいけない。

なぜなら、令和2年からは所得税のルールが大幅に変わり、記載する書類も大きく変わることになったからだ。ネットで「年末調整2020」と検索してみると、国税庁の「年末調整がよくわかるページ」というサイトがヒットする。

“よくわかるページ”とうたっているだけあって、このページは年末調整について網羅されている。給与担当の方ならじっくり読み込むことも必要だと思うが、サラリーマンの方が知りたいと思っている情報は一人ひとり違うだろう。

今回は、この国税庁のHPを横目に見ながら、サラリーマンの方が押さえておきたい年末調整の際の所得控除について考えてみたいと思う。

「年末調整がよくわかるページ」をスクロールしていくと、「給与所得者向けリーフレット」という項目にたどり着く。その中の「各種控除について(年末調整では、勤務先に「各種申告書」を提出することで、いろいろな控除が受けられます)(給与所得者用)」というPDFに、所得控除についてまとめられている。

各種控除について(年末調整では、勤務先に「各種申告書」を提出することで、いろいろな控除が受けられます)(給与所得者用)
出典=国税庁

■昨年から変わった3カ所に注意

点線の囲みで、【昨年から変わっています!!】とあり、「基礎控除」「ひとり親控除」「所得金額調整控除」が挙げられている。

それぞれに計算方法も網羅されているが、「ひとり親控除」に該当するかどうかは、デリケートな問題でもあり、給与担当者の方から確認しづらいのではないだろうか。自分の状況がどれに該当するのか、各自で確認し、申請することが必要だと思う。

一通り、申請書の記入が終わったら下記の「年末調整を受ける際の注意事項(給与所得者用)」と照らし合わせて、記入もれや考え違いをしていないか確認しよう。

さらにスクロールすると「年末調整チェック表(誤りやすい点)」として、「令和2年分年末調整チェック表(源泉徴収義務者用)」がある。こちらは、本来、給与担当者がチェックのために使うために作成されたものだが、サラリーマンの方が申告書を提出する前に誤りがないか確認する際に利用してもよいだろう。

申請書
写真=iStock.com/marchmeena29
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■扶養親族と離れて暮らしている場合はどうなるか

さらにスクロールしていくと「年末調整に関するQ&A」という項目がある。その中の、「年末調整Q&A」というPDFでは、年末調整について、税務署等に比較的多く寄せられる質問や誤りやすい事項について問答形式で解説している。

[問3]当社の従業員Aは、国内で離れて暮らす両親を控除対象扶養親族として「給与所得者の扶養控除等申告書」に記載しています。別居している親族を控除対象扶養親族としてもよいのでしょうか。
[答]別居している親族であっても所得者本人の扶養控除の対象とすることは可能ですが、その場合、別居している親族に対して常に生活費、療養費等の送金が行われているなど、所得者本人と生計を一にしている必要があります。

(注)扶養控除の計算を正しく行うため、銀行振込や現金書留により送金している事実を振込票や書留の写しなどの提示を受けて確認することをお勧めします。
なお、国外に居住する親族について扶養控除等の適用を受けるためには、当該親族に関する「親族関係書類」及び「送金関係書類」が必要となります。

上記の[問3]のQ&Aを読んで、どんな感想を持たれただろうか。

「別居している親族に対して常に生活費、療養費等の送金が行われているなど、所得者本人と生計を一にしている必要があります。」という部分。

ここで、ちょっとわかりにくいのが「生計を一にしている」という言葉だ。所得税法の中には、寝食を共にしていなくても、生活できるだけのお金を渡していれば、扶養親族として構わないという考え方がある。そして、その金額については、具体的に提示されていない。

■払い方次第で社会保険料控除を受けることもできる

年老いた両親を田舎に残して都会で生活しているというサラリーマンは少なくないと思う。ここで、大阪府在住のAさんの場合で考えてみたいと思う。Aさんは、46歳。妻は専業主婦で、子どもは東京の大学に通っている長男(21歳)と、地元の公立高校に通っている長女(17歳)の二人。

父親は既に他界しているが母親が認知症になり、実家(福岡県)の近くのグループホームに入居している。グループホームの入居費用は、Aさんが、毎月振り込みをしているという場合。Aさんは、母親を控除対象扶養親族にできるだろう。

そして、母親が認知症の場合、障害者手帳の交付を受けていなくても、市町村に申請することで障害者控除を受けられる可能性もある。

母親の後期高齢者医療制度の保険料を、年金からの天引きではなくAさんが送ったお金から支払っている場合、その保険料はAさんの社会保険料控除とすることができる。

また、社会保険料の納付書が大学生の長男宛てに届いていても、支払いはAさんがしていれば、Aさんの社会保険料控除に含めてよい。

■税金は自己申告しないと安くならない

所得控除は、各自が申請書を提出することで認められる。給与担当者が、「あなたの場合、○○控除が受けられるはずだと思いますよ」と言ってもらえるものではない。

年末調整は、サラリーマン一人ひとりが、自分の家族の収入等を確認し申告するべきものなのだ。

例えば大阪市の場合、HPに下記のような記載がある。

【障がい者控除対象者に認定書を交付します】
 身体障がい者手帳などの交付を受けていない方でも、65歳以上で、ねたきり高齢者または認知症高齢者の方は、その程度が身体障がい者手帳などの交付基準に準ずる場合は、申請により障がい者控除対象者認定書の交付を受けることができます。
 認定されると、障がい者控除または特別障がい者控除の申告において、所得税や個人市府民税の軽減を受けることができます。
 税負担の軽減は、対象高齢者が控除対象配偶者に該当する場合や、扶養親族に該当する場合でも、受けることができます。税金控除の申告にかかる手続きについては、お住まいの区を担当する市税事務所(個人市民税担当)へお問い合わせください。


【対象者】
認定書の交付対象者は、次のとおりです。
・障がい者控除対象
介護保険の認定調査を受けた65歳以上の方で、認定調査票の『認知症高齢者の日常生活自立度』がIIaまたはIIbの方

※『認知高齢者の日常生活自立度』がIまでの方は、精神保健指定医師が発行した診断書を提出していただくことで認定書の交付対象となる場合があります。

・特別障がい者控除対象
介護保険の認定調査を受けた65歳以上の方のうち、次のいずれかに該当する方
1.認定調査票の『障がい高齢者の日常生活自立度』がB1以上の状態が引き続き6ヶ月以上にわたる方

※『障がい高齢者の日常生活自立度』がA2までの方は、主治医が発行した診断書を提出していただくことで認定書の交付対象となる場合があります。

2.認定調査票の『認知症高齢者の日常生活自立度」がIIIa以上の方
【申請に必要なもの】
申請には印鑑と、次のものが必要です。
・ねたきり高齢者の方
介護保険の認定調査を受けていない方、もしくは認定調査を受けているが認定調査票の『障がい高齢者の日常生活自立度』がA2までの方は、主治医の発行した診断書
認知症高齢者の方
介護保険の認定調査を受けていない方、もしくは認定調査を受けているが『認知症高齢者の日常生活自立度』がIまでの方は、精神保健指定医師(精神科医師)が発行した診断書
【申込み】
申請は、各区の保健福祉センター保健福祉業務担当で受け付けています。
障がい者控除対象者認定申請書

出典=大阪市HP

申告し忘れや、申告できないものを申告していないかどうか。扶養控除のことをよく知ることで、令和2年分の年末調整では該当しなくても、来年からその控除が受けられるように工夫することも可能だろう。

医療費控除や住宅借入金等特別控除など、確定申告書を提出することで還付される場合は、別途還付金が振り込まれるので、お金が戻ってきた実感がある。年末調整の場合、手取りが増える形なので差額をゲットした感は得られないが、勤務先に必要書類を提出するだけで事足りる。

離れて生活する子どもや両親に対して、どれくらい収入があるのか、認知症の度合いがどれくらいなのかは聞きにくいことなのかもしれない。日頃からコミュニケーションをとることで、日常生活の状況やお金の話もできるような関係性をつくっておくことが所得控除を活用して節税することにつながっていくと思う。

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飯田 真弓(いいだ・まゆみ)
飯田真弓税理士事務所 代表税理士
元国税調査官。Credo税理士法人顧問。産業カウンセラー。健康経営アドバイザー。日本芸術療法学会正会員。初級国家公務員(税務職)女子1期生で、26年間国税調査官として税務調査に従事。2008年に退職し、12年日本マインドヘルス協会を設立し代表理事を務める。著書に『税務署は見ている。』『B勘あり!』『税務署は3年泳がせる。』(ともに日本経済新聞出版社)、『調査官目線でつかむ セーフ?アウト?税務調査』(清文社)、『「顧客目線」「嗅覚」がカギ!選ばれる税理士の”回答力”』(清文社)がある。ホームページ

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(飯田真弓税理士事務所 代表税理士 飯田 真弓)

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